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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第三十二話 魔法少女貸します


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 工房なんて組織はないけど、一応、陰ながら町を見回っている魔法少女よ。


 それも、もう6年以上にもなるわ。

 ――とはいっても、魔法の悪用を取り締まってるわけじゃないけどね。

 そもそも、魔法使える子が私たち以外にいないのよ、取り締まる必要なんて微塵(みじん)もあるわけないわ。

 だから私は、既にご存じのとおりに、ただ街をパトロールして市民を見守るだけ。

 別に特定の男の子を守るわけでなく、ただ街を見守るだけ。

 助けてる――なんて言葉はさすがに使えないけどね。

 だって、誰かを助けられたことなんて、ほんと数えるくらいしかないから。

 それこそ、今まで語ってきたくらいのものよ。

 ――ただ、まあそれでも。

 工房はないけど、魔法の研究っぽいことは一応始めてるのよ。

 そのために、専攻を物理学にしたんだもの。

 今はまだ進展はないけど、それでも出来ることから少しづつやってみようと思うわ。

 ――まあ、それより今は英語のレポートね。

 いくら専攻が物理だからって、英語はやっぱり必修なのよ。

 しかも高校の時とは違って、講義では日本語を一切喋ってくれないし…。

 なかなか大変なのよ、これが。

 ――ともあれ。

 一息入れ終わったし、もうちょっと頑張りますか!

 

 ――ふぅ、疲れた、こんなもんでいいかな。

 それなりに形にはなってると思うんだけど…。

 でもなんで英語の課題が『宇宙人は存在するか?』なのかしら。

 英語以外の知識も必要だし、なかなかに酷なお題だと思わない?

 そのお題に対して、自分の意見を述べよ、だって、もちろん英語で。

 最低文字数も決められちゃってるし、楽もできないのよ。

 そのせいで、今日の朝早くに実家から戻ってきたんだから。

 ほんとは今日も空太と遊びたかったのに――オホン。

 まあとにかく、よ。

 だから今日はお休みだったけど、お昼からずっとこの2LDKのリビングで、PCとにらめっこ。

 会話相手は、(もっぱ)らぐーぐる先生ね。

 『翻訳ソフトを丸写しすると、すぐ分かるからな!』って大学の先生にダメ押しされたけど――ああ、もちろん英語でね。

 でも、使うなとは言われてないし、たぶん大丈夫だと…思う。

 というか、そんなにすぐ分かるのかしら。

 翻訳ソフト、翻訳ソフトねぇ…、うーん。

 あ、海外のマイナーゲームを配信してる動画とか見てると、確かに日本語変なこと多い気が…。

 それと同じことなのかもしれないわね。

 そもそも、私から見ても翻訳ソフトで作った英文が、ちょっと変って分かるくらいだから、さもありなんか。

 考えるまでもなかったわね。

 ――ま、とにかく。

 そんなくだらないこと考えてないで、肩甲骨を軽く剥がしてから最終確認を――。

「ただいまー。」

 ――あ。

 もう、こんな時間か。

「つぐみん、ただいまなの。」

 うん、おかえりノノ。

「どう?レポート進んでるの?」

 うん、あとは確認だけ。

 興味があるのかないのか、そう私に聞いてコートを脱ぎながら、すてすてと自室へ荷物を置きにいくノノ。

 ついでとばかりに、私のパソコンちらっと覗くのも忘れてないわ。

 見られてマズいものはないから、別にいいけどね。

 そして――うん、いつも通り自室の戸を締めずに着替え始めたわ。

 今日も大人っぽい服で出かけてたのね。

 フリフリ…までとは言わないけど、もっとかわいい服でもいいのに――と、私は思うんだけど、本人的には子供っぽく見られるのが嫌なんだって。

 …本人が嫌というなら、まあ仕方ない。

 今度わがまま言って、かわいい服を着てもらうことにしよう。

 ――って、そんなことより今は、ノノの半裸を目に焼き付けないと。

 この2年ほどで見慣れた光景とはいえ、チャンスは逃しちゃダメよね。

「全裸も見せ合った仲で、今更なの。」

 よくお風呂に一緒に入るってだけでしょ!

 変な風に取られたらどうするの!?

「変な風?――というか、私たち以外に誰もいないの。」

 ――むぅ。

 それはそうだけど。

 というか、勝手に心を読まないでほしい。

 もしかしたらノノ、隠してるだけでほんとは魔法使えるんじゃないかしら。

「使えないの。その魔法使えるのはかいちょーだけなの。」

 もー言ってるそばから、また!

「もーじゃないの。あれだけ半裸を凝視されたら、ノノじゃなくても分かるの。」

 むぅ。

 こうやって軽くいじめらるのも、まあいつも通りよ。

 それに気分も悪くないわ。

 ただのじゃれあいよ、ちょっと私の頬がむくれるだけの。

 ね?楽しそうでしょ?

 …。

 それにしてもかいちょー…じゃなくてマキちゃんね。

 最近連絡とれてないけど、元気かな。

 後で連絡しとこう。

「かいちょーに手玉に取られるつぐみん。ぷぷっ。」

 う、うるさいわね。

 変なこと思い出さないでよ。

 相性が悪いだけで、仲が悪いわけじゃないわ。

 むしろ仲いいわよ。

「うふふ、なの。今日も一緒にお風呂入ってあげるから機嫌直すの。で、それはさておき、レポート終わったならよかったの。」

 あ、うん。

 あとで確認だけしてくれる?

「むぅ、まあつぐみんの頼みなら仕方ないの。そのかわり、おいしい夕ご飯をお願いするの。」

 はいはい、わかったわ、よりをかけて作るわね。

 今日はナポリタンよ。

「わーい、なの。」


「――ほふ。きょふほおいひいの、つふひん。」

 はいはい、ありがと。

 今日も今日とて、口いっぱいにパスタ詰め込みながら、料理を褒めてくれたわ。

 毎回ちゃんと感想言ってくれるのが、嬉しいわね。

 作り甲斐があるってものよ。

 …まあ、おいしくない時も忌憚なく言ってくるんだけど――、それも(むし)ろいいことよね、うん。

 あ、それと。

 もちろんルームシェアし始めてから『もの口に入れたまま喋らない』って、何度もノノに言ったわよ?

 ――でもね、私に出来ることなんて、たかが知れてるのよ。

 政治の腐敗を私が止められないように、私が世界から戦争を失くせないように、ノノのこの癖も私には直せなかったってだけ。

 結局、リスみたいで可愛いから、まあいいか――ってことで、落ち着いたのよ。

 ふふ、ユイちゃんの苦笑う姿が、目に浮かぶ様ね。

 って、そんなノノの悪癖はさておいて――。

 ナユは今日どうしたの?

 てっきり、(うち)に寄ってくもんだと思ってたけど。

「ん?ああ、なんか2択あてに行くっすー、って帰ってったの。」

 ああ…なるほど、スロットね。

 ノノは誘われなかった?

「つぐみんの夕ご飯の方が大事なのって断ってきたの。」

 えへへー。

 それは嬉しいわね。

「その、顔が見たくて帰ってきたの。その顔は私しか知らないの。ふふん。」

 ――え?

 恥ずかしいじゃない、そんな変な顔してる?

「一緒にお風呂入るときは、大体いつもその顔してるの。」

 …。

 今日は気を付けましょう。

 これ以上ノノにペースを握らせるわけにはいかないわね。

 ――あ。

 ちなみにだけど、話は変わるけど、ナユは脳科学の方へ進んだの。

 理由は私と一緒だけど、アプローチを変えてみるって。

 ああ見えて、頭いいのよ、あの子。

「つぐみんは、やらないの?パチンコ。勝てるんでしょ?」

 ナユに誘われたけどね。

 羽根ものっていうの?あの、玉がV(ブイ)って書いてあるとこに入ると当たりのやつ。

 あれなら私の魔法が使えるからって。

 というか、実際に一回試してみたら、ちゃんと使えたんだけどね…。

「あ、そうか。愚問だったの。つぐみんならやらないの。」

 うん、そういうこと、やっぱり罪悪感に耐えられないわ。

 というか、そもそもナユの魔法はただの勘のいい人で済むけど、私のは目に見えちゃうってのもあるしね。

 玉が不自然に動いちゃうから。

 ほぼほぼ犯罪だわ。

「ナユはいいの?」

 いいのよ。

 だって、これは私の考えなんだもの。

 いくらナユだからって押し付けられるものじゃないわ。

 ――というかナユにしたら、珍しく自分の魔法が活躍できる場面だし。

 それに、自身の能力をフルに使ってるだけだから、ズルじゃない――と思うし、所詮少し勘のいい人で済まされる問題だしね。

 そもそも、あの子はジュースじゃんけんに勝ちたいが為に、魔法に目覚めたのよ。

「あー…。」

 そ、だから今更なのよ。

 それに…。

「それに?」

 魔法使っても、勝ててるとは言い難いらしいわよ?

 負けてるわけでもないっす――とも言ってたけど、苦い顔しながら。

 あれは絶対負けてるわね…うん。

「なるほど。人生そんなに甘くないの。――あ、そうだ。」

 ん?どうしたの?

 ――ああ、お皿がいつの間にか空ね、なるほど。

 おかわりなら、まだあるわよ?

「そうじゃないの!いや、貰うけど!」

 …貰うのね。

 じゃあ、なに?

 席立ったってどこ行くの?

 おかわり取りに行くの?

 ――ってあら、こっち来たわね。

 うん?どうしたの?

 私の後ろに立って――。

「ぎゅー。」

 いきなり後ろから抱き着くなんて、ドキドキするじゃない、ノノ。

「これ返すの。」

 ん?もういいの?

 一週間借りるって話じゃなかった?

 まだ5日目だけど。

「うーん、そうなんだけど、あまりに使い道なくて、持て余すの。」

 あはは。

「昨日、それを実感したの。」

 昨日?

 私が実家に戻ってるときになんかあったの?

「昨日の帰り道、たまたま転びそうな男の子見つけたの。だから、前につぐみんが図書館でやったっていう助け方を真似しようとしたんだけど――、間に合わなかったの。べちゃって転んだあと、さらに男の子を1センチほど持ち上げて追い打ちで床にたたきつけちゃったの。二重(ふたえ)の転びなの、申し訳ないの。」

 あらら、それは確かに申し訳ないわね。

 ――そもそもの話だけど。

 私が昔図書館で成功できたのって、ナユがそばに居たおかげなのよ。

 ナユが未来を見てくれたおかげで、タイミングを計ることに集中できたの。

 ノノみたいに、いきなりそんな現場に居合わせたとなると、うまく魔法なんて使えなかったと思う。

 間に合わないのも、しかたない。

「大事に至らなかったのが救いなの。」

 なら、よかったわ。

 あ、でも、その魔法じゃどちらにせよ助けられなかったと思うわよ。

「どういうことなの?」

 その、物を動かす魔法では運動エネルギーはなくならないのよ。

 エネルギー保存したまま、ワープするのよ、1センチ。

 ――えーとつまり。

 魔法がうまく発動してたとしても、痛みは変わらないって事ね。

 むしろ落下距離が1センチ伸びた分、余計に痛いわ。

「なるほどなの。なら、尚更ののは男の子に申し訳ないの。」

 まあ、たしかにそうね。

 男の子を助けられないのに、無駄に助けようとして、もう一度地面に叩きちゃったわけだしね。

 でも、確かに男の子には申し訳ないかもだけど、ノノのその助けようという気持ちは大事にしたい。

 …うーん。

 ――あ、じゃあ時間止める方貸す?

 こっちなら、ちゃんと止めら――。

「それはいいの!遠慮しとくの!それは怖いの!」

 そんな早口で断らなくても。

 被せ気味に断らなくても。

 というか、怖いって?

 ――あ、ちなみに、ずっと抱き着かれてる状態よ。

 離れてなんて言わないわ。

 だっていい匂いだし。

 あたたかいし。

「さっきナユに聞いたの。その魔法は、世界を滅ぼせるって。そんなの怖くて持ってられないの。借りない方がいいっすよーって、言われたの。」

 ああー、なるほど。

 私的には無理だと思ってるけどね、それ。

「分からないの、可能かもしれないの。地球回り続けててって、常に皆が願ってるとは思えないの。だから、万が一もあり得るの。もしふと地球止まれって思っちゃって、もしほんとに止まったら――。…考えたくもないの。一秒自転が止まっただけで、全人類が滅んでも不思議じゃないの。」

 ふふふ。

 歩く核爆弾よ?私。

「そんな可愛いもんじゃないの。それよりも簡単に世界を滅亡させられるの。」

 魔法少女になったつもりが、いつの間にか魔王になっちゃってるのね、私…。

 ――ま、とにかく、返してもらったわ、魔法。

 また使いたい時は言ってね。

 ノノなら、いつでも貸すわ。

「わかったの、魔王様。」

 うむ、くるしゅうない。

 さすがにあげるのは無理だけどね、貸すならいつでもよ。

 ――それにしてもノノとナユ、だいぶ仲良くなってくれてよかったわ。

 今日も一緒に遊びに行ったらしいし。

 なんか二人の中で、つぐみんシェア協定ってのが締結されたらしいって風の噂で聞いたけど…。

 その協定のことは、深く聞かないでおこう。

 あまり知りたくないしね。

 でもほんと、いつの間に、仲良くなったんだろう?

 大学に入ったころには既にあのわだかまり――ノノからの一方的なものだけど、も、なくなってたし…。

「あ、つぐみん、今年もちゃんと7月15日空けておくの。ナユもそう言ってたの。」

 え、ああうん、分かったわ。

 じゃあ今年も一緒に行きましょう、ニカに会いに。

 マキちゃんにも連絡しておこう、来てくれるか分からないけど。

「そうするの。あ、そうそう、そういえばだけど――。」

 うん?何?

「その魔法、1cm以上動かせたの。」

 ――え!?嘘!?


 ほ、ほんと…ね。

 ノノに言われてすぐ試してみたけど…。

 ほんとに2センチちょっと動いてる。

 ああ、もちろん用意したのは紙と定規と消しゴムよ。

 つまりは例の、ニカセットね。

 そのニカセットの消しゴムのお尻が、JIS1級の定規(スケール)に書いてあるところの『20』を超えたあたりで自慢げに佇んでる…わ。

 間違いなく、ほんとに間違いなく2センチ以上動いてる…。

 だって、日本産業規格(JIS)が保証しちゃってるんだもの。

「でしょ?」

 うん、…気づかなかった。

 いつからこんなに動かせるようになってたのかしら。

 今まで生きてきた中で、魔法関係のイベントなんて何もなかったと思うんだけど…。

 いつの間にレベルアップのファンファーレがなってたの?

 …わからない。

 わからないってことは、つまり――。

「ふーんなの。じゃあ、魔法使うたびに少しずつ成長してたんじゃないの?」

 やっぱり、そう…よね。

 ノノもそう思うわよね。

 ということは――。

「だとしたら、時を止める方も時間伸びてるかもしれないの。」

 …そう言う事よね。


 ――お風呂から上がってベッドの中。

 今日はゆっくり寝たいから、一人でベッドの中よ。

 え?

 私たちのお風呂シーンはどこいったって?

 知らないわよそんなの。

 アニメになったら追加されてるんじゃない?知らないけど。

 また、頭ニカかよ、って言われたいの?

 そんなくだらないことより、魔法の話よ。

 これを一人悶々と考えたかったから、今日は一人でベッドインなのよ。

 えーっと、つまり。

 伸びてたわ、物が止まる時間。

 まだ一回しか試せてないけど、3秒弱くらい止められたわ。

 ノノにケータイで時間測ってもらって、3秒くらい。

 成長…するのね、魔法。

 いつも『一秒止まれ』って思いながら魔法使ってたからか、全然気づかなかった。

 6年も付き合ってきたのに、まだ知らないことあるのね。

 明日、ナユにも教えておこう、…それとマキちゃんにも。

 マキちゃんの魔法には、あまり関係なさそうだけどね。

 …。

 うーん、それにしても…。

 成長するってことは――じゃあ、もっと時間止められるようになったり?

 それとも、使える回数が増えたりもする?

 いや、もっと他にも可能性があるわよね。

 あー、今日は考えすぎて寝られなさそう。

 まさか今更、魔法のことで興奮する――えーっと、アガることがあるなんて思わなかったわ。

 とはいっても、6年もかけて、たったこれだけの変化なんだから、今日あれこれ考えたところで明日どうなるってわけでもないんだけど――。

 でも、成長したのよ?魔法。

 なんちゃって魔法少女が、いっぱし魔法少女になれるかもしれないわけよ?

 アガらないわけがないわよね。

 あー…やっぱり今日は寝られそうにないわ。

 ――仕方ない。

 背に腹は代えられない、か。

 よし。

 ノノー、やっぱり一緒に寝よー?

「もう全裸待機してるのー。」

 ふふ。

 あいかわらず、そういう冗談好きよね、ノノは。

                                    ―続―


お疲れ様でした。

約2ヶ月ほど、お待たせしました。

前話までの大幅修正が終わったので、連載再開します。

かなりの大幅修正なので気になる方は是非。

もしくは、完結してから読み直すのもいいと思います。

面白くなるよう、今後も頑張ります。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


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このページを下にスクロールして頂くと出来ると思います。

めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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