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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第二十七話 魔法少女再び参ります


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 今年で18になる魔法少女よ。


 って、いやいや、さすがにもう『少女』とは名乗れなくない?

 だって、十八よ?()()()()()

 あと少しで結婚できる年を迎えちゃうのよ?

 『少女』と言うには、さすがに抵抗があるわよ。

 まぁ、でも。

 二十七歳の人妻でも魔法少女として活動できるんだから――。

 私もまだ十分魔法少女で頑張れるの…かも?

 ふふっ。

 いつか私の唇が初めて誰かに奪われたときに、魔法が使えなくなったりするのかしら。

 …なんてね、そんな冗談はさておいて。

 今年はまだ始まったばかり。

 残された17歳という貴重な時間を、余すところなく満喫しましょう。

 今年の抱負はこれでいいんじゃないかしら――って、あら。

 電話がなってる。

 一体誰かしら――。

『あけおめっす、つぐみん先輩。今何してるっすか?』

 ことよろ、ナユ。

 んー、今は維管束(いかんそく)と格闘してるわ――うん、きれいに剥けた。

 我ながら、惚れ惚れする剝き具合ね。

 あ、そういえばさっきソレ用のチラシ折ったんだった、皮はそこに――ぽいっちょ。

『そんなの気にせず口に放り込めば、ワンサイドゲームっすよ?栄養豊富っすし。』

 お言葉だけど、ナユ。

 じゃあナユはいつもご飯は、玄米ばかり食べてるってこと?

 はむっ――、ふぅ。

 この口の中に広がる酸味と甘味、そして柑橘のかおり。

 ああ今私、ビタミン取ってるー!っていうこの感じ、いいわよね。

 こたつでみかん、最高。

 あ、「みかん」は平仮名で書くのよ。

 だってその方がかわいいじゃない。

『なんでいきなりお米の話になって――。ああ、なるほど、それは一理あるっすね。』

 そ。

 栄養なんて考えず、手間をかけておいしいところだけを頂く。

 最高の贅沢でしょ?

 でも、みかんって、手がちょっと汚れるのが、アレよね。

 と言うわけで、ティッシュ、ティッシュはどこっと――あ。

 こたつの端にあるわね、とど…とど、届け…あと少し――。

『人類ならではってことっすか。つぐみん先輩らしいっすね。』

 ――テッシュ、こっちに動け!

 よし、…ふぅ。

 これで、ねっちょりなお手てとおさらばね。

 ほんとこの魔法は、地味に便利――じゃなくて、えーと、なんだっけ?

 私らしい?

 んー、そうかしら。

 いつもなら、維管束なんて気にせず口の中に放り込むわよ?

『えー!じゃあ、今のくだり何だったんすか!?』

 ナユの私に対する偏見については、今度じっくり話し合わないといけないわね…。

 出会った時からだけど。

 一体どこで間違えたのかしら。

 出会い方――が、悪かったのかな。

 ――ま、考えても仕方ないか、それはさておきよ。

 それくらい、今日は暇を持て余してたって事よ。

『あー、なるっす。あたしも無駄に液晶のドットを数えるときとかあるっすし。』

 いや、それと一緒にされると悲しくなるわ。

 っていうか、あれ見えるの!?

 今の時代、4Kよ?

 3840×2160よ?

 あんな小さな画面の中に800万以上の粒があるのよ?

 すんごく小さいの。

 このみかんの粒とはわけが違うんだから。

『いやぁ、さすがに4Kテレビじゃないっすけどね。そもそも家にまだ4kテレビないっすし。』

 あらそう、残念。

 ――って、あれ?なんで私、みかん二個目たべてるの?

 一体、いつの間に…。

 ビタミンCの誘惑恐るべしね。

 せっかく、さっき手を拭いたのに。

『残念がるのは謎っすけど…。それより、つぐみん先輩。暇なら初詣一緒に行きましょうっす!』

 え?

 あー、うーん…。

 初詣…初詣ねぇ。

 うーん…。

『あれ?駄目っすか?あ、もう行ったとかっすか?――いや、でもつぐみん先輩なら2回目だとしても、快く引き受けてくれそうなもんっすけど…。』

 駄目…じゃないわ。

 …うん、付き合う、どこに行けばいい?

『ほんとっすか?うれしいっす。じゃあ、一時半にシラホウ神社で待ち合わせっす!』

 はいはい、了解。

 じゃあ、またあとでね。

 ――プツンっと、さて。

 予定も出来たし、早めのお昼ご飯にしましょう。

 今日は――そうね。

 空太が飲めるようなスープにでも、挑戦してみましょうか――。


 というわけで、久々に来たわよ、シラホウ神社。

 麻芽市のお稲荷様の神社より大きくて、しかも繁華街のど真ん中にあるのよ。

 だから最盛期――うん?最盛期という言い方は変かな?

 えーと、とにかく年始には人だかりで、おしくらまんじゅう状態ね。

 みんな、願い事は早い者勝ちとでも思ってるのかしら。

 先に行こうと後に行こうと、叶うはずもないのに――オホン。

 いけないいけない、新鮮早々、そういうこと言うの良くない。

 仕切り直しまして――、今日は五日よ。

 一月五日。

 だから鳥居下の階段前は、人通りもまばら。

 我先にと好き勝手願いを吐き捨てた人たちは、今はもう我関せずとばかりに、既に日常に戻ってる頃合いね。

 まったく――たった一日、新年の気分に流されて都合よく願い事したくらいで、願いなんて叶うと思う?

 叶えたい願いがあるんだったら、お百度参りするくらいの根性見せなさいよ。

 それでも叶いなんかしないけど!

 まあ、そんな人たちから金を巻き上げてる神社も神社で――。

「あの、つぐみん先輩?なんか元気ないっすね。…やっぱり初詣気乗りしないっすか?」

 ――え?いやそんなことは…いや、まあ…。

 うん、それもあるんだけど、それよりも空太が――。

 えーと…つまり、今日こんなに私がやさぐれてるのは、実は理由があるってこと。

 それは――ね、お昼に空太に作ったスープが、あまりに不評だったのよ。

 ネットで調べたレシピと、にらめっこしながら作ったオニオンスープが、ね。

 一口飲んだら、顔背けられちゃってさ…。

 私的には美味しく出来たつもりだったんだけど――、…赤ちゃんは難しい。

 そんなわけで、その私の作った不評スープを、ショボくれながら自分の胃の中に流し込んでここに来たのよ。

 ショボくれた気分も、スープと一緒に吞み込めればよかったんだけど、そうは問屋が卸さなくて、今に至るわけ。

 …はぁ。

 まあ、とにかく、気を付けないと。

 ナユに気を使わせちゃってるじゃない。

 それにお昼にもお父さんに、気を遣わせちゃったし――。

 ままならないわね、いろいろと。

「ああ、なるっす。ままならないっすね、人生。でもママじゃないんだから、仕方ないっすよ。」

 慰め方が雑すぎない?

 あーあ、新年早々いいことないわ。

 とりあえず――、鳥居、くぐってしまいましょう。

 ほらナユ、行くわよ。

「はいっす。」

 ――ああ、ちなみにだけど。

 私たち二人はふつーに私服よ。

 初詣に振袖着るのなんてアニメの世界にしかないのよ。

 着るのが面倒とかそんな話じゃなく、そもそも高いじゃないアレ。

 普通持ってないわよ。

 レンタルしてまで着ようとも思わないし――、そもそもレンタルでも高いし。

 現実世界の庶民はこんなもんよ。

 …なんか似たような事書いた覚えあるわね、気のせいかしら。

 ――って、なに?

 サービスシーン?

 何馬鹿なこと言ってるの。

 そんなこと言ってたら、頭ニカかよっ!って言われちゃうわよ?

「あー、つぐみん先輩。どうやら前厄らしいっすよ?」

 え?あー、うん。

 確かに書いてあるわね。

 ナユを待ってる時に、私も目にしてるわソレ。

 だって、参道の脇に備えられた木製のでかい掲示板に、でかでかと書かれてるんだもの。

 数え年で十八が前厄ってね。

 鳥居くぐる前だったのに、嫌でも目についたわよ。

 …神社の経営も大変ね。 

「お祓ってかないんすか?」

 お祓ったら空太、スープ飲んでくれる?

 それだったら、お祓ってくのも(やぶさ)かでもないわ。

 お祓うと言う謎の動詞を、私自ら実行するのも吝かでもないわ。

「あー…いや、それはないっすね。なんかすみませんっす。」

 うん、じゃあ手清めて、奥まで行くわよ。

 ――ん?

 いや、もちろん手くらいは清めるわよ。

 あれだけ神社に悪態ついててなんだけど、集団圧力には逆らえないもの。

 さすがに鳥居で一礼まではしないけどね。

 

 ――というわけで、お賽銭箱の前に到着。

 つまりは、拝殿ね。

 まずは――ガランゴロン、ガランゴロンって鳴らしましょうか。

 うん、これ鳴らすのだけは、いくつになっても楽しいわ。

 鈴とは思えないこの鈍い音が、ちょっと癖になるというかなんというか。

 まあ、これが何のためにあるか分からないけど――、信者の頭を空っぽにするには十分すぎる響きだと思う。

 ――で、この後はどうするんだっけ。

 二礼拍手一礼?

 去年お参りしてないから、もううろ覚えよ。

 あ、その前に賽銭か。

 あったかなー、小銭――というか財布。

 あ、あった。

 よし、準備おっけい。

 じゃあさっそく、願い事願い事――。

 えーと…、願い事。

 …。

 願い…、事?

 …。

 ……。

 どうせ叶わないのに、願う事なんてある?

「つぐみんせんぱーい。まだっすかー?」

 ――あ、早くしないとね。

 待たせるのは悪いわ、と言っても特に…。

 …。

 まあ、適当でいいかしら――うん。

 はい、終わりっ。

「お疲れ様っす。なんかやけに熱心に拝んでたっすけど、何願ったんすか?」

 え?世界平和だけど?

 ナユは?

「いやいやいや、そんなお願いに、あんな時間使ったんすか?」

 そのお願いを考えるのに、時間を使ったのよ。

「はぁ…よくわからないっすけど、まあいいっす。あ、私の願いは内緒っす。言ったらかなわないらしいっすから。」

 ふーん、たしかにそう言うわね。

 っていうか、それ、もう引いたの?

 我慢――、できなかったのかしら。

 待たせすぎちゃったわね、申し訳ない。

「末吉っすね。微妙…というか、負けた気分っす。一番中途半端っす。凶の方がいっすよね。」

 わかりみ。

 なんというか、毒にも薬にもならないというか、話題にもならないもんね、レア感もたりないし。

 ガチャで言うならノーマルって感じかしら。

「あーあー、そうっす、わかりみが深いっす。ま、持ってても邪魔っすから、縛ってくっす。ここでいっすかねー。」

 ()()用にあつらえられた縄紐の、ど真ん中にキュッとナユ。

 ふふっ。

 ナユらしいというか、男らしいというか。

 参拝客もピークをかなり過ぎてるせいで、ナユに結ばれたその末吉は、かなりの存在感よ。

 ――ん?

 あ、そういえば、魔法使えば末吉避けられたんじゃない?

「そんなことして末吉避けても嬉しくないっすよ。それに、そもそもたった一秒で引いてから開封とか無理っすし。」

 あ、そうか、それもそうね。

 ジュースじゃんけんでは、惜しみなく魔法使うのにね。

 おみくじじゃ使わないのが、これもナユらしいっちゃらしいわ。

 人との距離間を図るのがうまいというか――、いやそうじゃないわね、えーとつまり、憎めないのよこの子。

 ジュースじゃんけんで勝ち続けられたとしても、笑って許せるくらいにはね。

 つまり、ナユにとってジュースじゃんけんは友達との戯れってこと。

 「冗談」の範疇をでないから、ナユも惜しみなく力を使えるんだと思うわ。

 それがわかるくらいには、ナユとの距離は、出会って半年とは思えないくらい近くなったのよ。

 嬉しいことにね。

 それにしても――、あいかわらず使い道が微妙な魔法ね。

「ほんとっす。つぐみん先輩をもってしても、いい使い道が浮かばなかったくらいっすからね。」

 面目ない。

 ナユの魔法、すごそうなだけで、ほんとに使い道思いつかない、ごめん。

「いや、いいんすよ。ああ、そういえばさっきから思ってたんすけど…、いつもの仲良し3人と初詣いかなかったんすか?」

 ああ、うん、行ってないわね。

 …というか、寒いから近くの喫茶店にでも入らない?

 そこでゆっくりお話ししましょう。

「賛成っす。」


 ――あれ?

 ナユ、そういえばブラックコーヒーはどうしたの?

 挑戦中とかじゃなかった?

「あれは無理っす、諦めたっすよ。私は甘々がいいっす、つぐみん先輩に甘やかされたいっす。」

 ふーん、まあそれでいいと思うわ。

 無理せず美味しいと思うのを飲むほうがいいに決まってるし。

 ――というかナユのこと私、甘やかしてる?

 まあ、可愛がってるのは確かだけど。

「いつも感謝してるっすよ。」

 …そう。

 ちょっと恥ずかしいわね。

 可愛がってるって言った、私も私だけど――ふふ。

 2年前の私には、絶対言えなかったわね。 

「あ、これ、つぐみん先輩の分っす。で、ミナエパイセンたちはどうしたんすか?」

 ありがと、こっちはナユのね。

 二人でそれぞれ別のケーキを頼んで、それを半分こするのが最近の私たちの暗黙の了解。

 お得感満載でしょ?

 それくらい、仲良くなったのよ。

 で――ああ、そうだったわね、三人の話ね。

 えーと、ミナエちゃんは、全身痛くて動けないユイちゃんを介護してるわね。

「あー…ユイさんには申し訳ないことしたっすね。結局、8合目あたりでリタイアしてご来光も拝めなかったっすから。ひとり登山小屋で寝てたらしいっす。」

 あ、それもミナエちゃんから聞いた。

 一緒に登山小屋にいるって言ったら、『せっかく来たんだから、二人は私の分までご来光見てきなさい』って諭されたって。

「ユイさん、ぱないっす。そう言われてちょっと泣きそうになったっすよ。自分は体調最悪なのにっす。おかげできれいなご来光がみれたっすし、感謝しかないっす。」

 そ。

 ユイちゃん、すごくいい子なのよ。

 低い山とは言え、文化部には厳しいわよね、周りも暗いし。

 それが分かったうえで、二人に付き合うんだから――いや、まあ半分以上はミナエちゃんに強引に連れてかれたみたいなもんだったけど。

 …まあその事を差し引いても、私とノノちゃんにはあり得ない話ね。

 あ、ちみにそのノノちゃんとは今年すでに2回くらい会ってるけど、初詣には行ってないわ。

「…それはやっぱり、つぐみん先輩が初詣に乗り気じゃないから…っすか?」

 まあね、気を遣ってくれてるわ。

 ノノちゃんだけじゃなく、ミナエちゃんもユイちゃんも。

 初詣が楽しめないのは、私のわがままなのにね。

 三人とも優しいから、何も詳しい事聞かずに、そうしてくれるのよ。

 …。

 いや、ミナエちゃんの告白の後押しした時に、父親を亡くしてる過去話してるから――。

 それで、私の昔のこと聞きにくいだけかもだけど、ね。

 まあ、どちらにしても優しい子たちなのは間違いないわ。

 ほんと、みんなと出会えてよかったと思う。

 今度、改めてお礼言っておこう。

「その理由…あたしも聞いてもいいっすか?えーと、その…つぐみん先輩が初詣楽しめない理由。」

 いいけど…。

 ――まあ、ナユは聞いてくるわよね。

 そういう子よ。

 でも、だからといって優しくないわけじゃないくて、それが逆にナユのいいところよ。

 それに――私もナユには話しておきたいし、ちょうどいい。

 というわけで――。

 でも、えーっと…もちろん楽しい話にはならないわよ?

「お願いするっす。」

 わかったわ。

 …といっても、長い話じゃないのよ。

 長くはならないけど、コーヒーが美味しくはならない話だからね、先に飲み干してしまいましょう。

 ん、ふぅ。

 よし、じゃあ少しだけ語るとしましょう。

 事細かに語っても仕方のないことだから、ほんとに少しだけね。


 ――あのね。

 小さいころ父親が死んでるのよ私。

 毎年家族で神社にお参りに行ってたにも関わらず、ね。

 ああ、大丈夫。

 気を遣うくだりはいらないわ。

 ナユはナユらしく、元気にしててくれたら私の気が楽よ。

 で、一昨年(おととし)も懲りずに大好きな友達と一緒に初詣に行ったのよ。

 ええ、よく話に出すニカとね。

 それで、願った内容は『ニカとずっと一緒にいられますように。』――よ。

 …でもね、やっぱり叶わなかったのよ。

 ええ、そう。

 その時嫌というほど、痛感したわ。

 『ああ、神様ってやっぱりいないんだ…』って。

 『いたとしても、願いなんてかなえてくれないんだ』って。

 悟った――っていうのかしらね。

 まあとにかくよ。

 それから、ずっと死んだように生きてた私を救ってくれたのは、やっぱりニカだったわ。

 神様じゃなくってね。

 つまり――。

 今こうして、みんなと幸せに過ごせてるのも、ニカのおかげなのよ。

 神様なんて何もしてくれないわ。


 ――とまぁ、そんなところよ。

 つまり、こんな想いを内に抱えた私が、神社に足を運ぶのは忍びないって所かしら。

「なるほどっす。――うん、なるほどっす。」

 あ。

 別に参拝するみんなを否定するつもりはないのよ?

 私はそう、ってだけで…。

「あ、はいっす。わかってるっす。」

 歯切れが悪いナユとか、珍しい。

 ――いや、こんな話されたら当たり前か。

 話した本人の私だって、ずっと昔に押し殺したはずの…あの昏い感情がせり上がってきてるのが分かるもの。

 …はぁ。

 お冷で押し戻しておきましょう――んっ、ふぅ。

「――でもっす、つぐみん先輩。」

 ん?どうしたの?

 いつの間にか腕まで組んじゃって…、ほんと申し訳ないわ。

 ごめんねナユ、新年早々こんな話聞かせて。

「それって、結局願いかなってるんじゃないっすか?」

 え?

「父親のことは私にはわからないっすけど。少なくともニカさんの方は、っす。そのつぐみん先輩の『ものを動かす魔法』。それって元はニカさんのもんっすよね?結局、ニカさんはずっとつぐみん先輩と一緒にいてくれてるってことじゃないっすか?」

 ――――っ!

 本当に――。

 本当にこういう時って頭の中で音が鳴るのよ、パンッ――て、この何かがはじけるような音が。

 創作の中だけの、ただの誇張表現じゃなくてね。

 初めてそれに気づかせてくれたのもナユで――、あの時もニカのことだった。

 昔ニカが言った言葉のホントの意味を、時を超えて私に気づかせてくれたのよ。

 何とかナユの前で泣くのを我慢したのは、昨日のことのように覚えてるわね。

 でも前回のあの時と違って――。

 今回ばかりは涙を拭うのに、一秒じゃとても足りそうにない。

 ほんとナユに――、ナユに会えてよかった。

 いとも簡単に、埋もれて風化したはずの宝物を、私の中から救い上げてくれるんだもん。

「ちょ、ちょっとマジ卍っス!つぐみん先輩、なんでそんなに泣くんすか!号泣じゃないっすか!私なんかまずったっすか!?まずったなら、謝るっす!つぐみん先輩!」

 だ、だいじょう、ぶ、…よ。

 だいじょうぶ、だいじょうぶ。

 ナユ…は、何も悪くないわ。

 む…しろ、ありがとう。

 ――あはは。

 私すごい声震えてる。

 それに、ナユがこんなにうろたえるのも珍しくて、おかしいわね。

「大丈夫な人はそんな泣き方しないっすよ!目から滝のように涙流してるのに、笑いながらで、しかも目は逸らさないって…ちょっと怖いっすよ!」

 だいじょうぶ、だいじょうぶ。

「お礼言われた意味も分からないっすし…。ミナエパイセンが言ってた、つぐみん先輩は泣き虫って本当だったんすね。」

 あはは。

 ミナエちゃんには今度お灸をすえておくわ。

「それは止めませんっすけど…。まあ、いつものつぐみん先輩に戻ったと思っておくっす。」

 ねえ、ナユ。

 この後付き合ってほしいとこがあるんだけど。

「なんっすか?それはいいっすけど、その涙止めてからにしてくださいっす。」

 ああ、ごめんごめん。

 でも、あと10分は止まりそうにないわ。

 声の震えは、たぶんぎりぎり抑えられてるけど。

 いや、抑えられてるつもりだけど。

 胸の震えは、まったくもって止まりそうにないもの。

「じゃあ、せめて顔伏せるなりしないんすか?つぐみん先輩らしくないっすよ?」

 まあまあ、いいじゃない。

 ナユの顔を見ていたいのよ。

「んん?…まぁ、あたしの顔くらい好きなだけ見ればいいっすけど…。で、どこに行くんすか?」

 え?

 それは、さっきの神社よ。

「へ?何しに行くんすか?」

 ん-…お礼参り?

 それと、新年のお願いをしに?

「今さっきの話と真逆じゃないっすか!」

 うん、ナユのおかげね。

 ありがと、パラダイムシフトってこんな簡単に起こるものなのね。

「パラダイムシフト?なんすかそれ。まあでも、私の適当な言葉がつぐみん先輩の役に立てたなら光栄っす。」

 それは、もうものすごく。

 だから、初詣改めて行きましょう、ナユ。

「私はもう終わったんすけどね、初詣。まあ敬愛するつぐみん先輩のいくとこなら、どこでもついて行くっすよ。」

 あ、じゃあ。

 えーっと――今年の7月15日あけといてね。

「なんすかその日にち!そんな半年以上先のことわからないっすよ!!」


 ――うん、今年もいい一年になりそうね。

 予想外にもいい初詣になったわ。

 すべてナユのおかげ。

 神様に今年を祈願しようと思ったのも、全部ね。

 もちろん、ニカの魔法が私の手元に残ったのは、ニカのおかげ、なんだけど…。

 でもきっと、それだけじゃないんだって、そう思ったから。

 私たちにこんな魔法の力が与えられてるんだもの。

 神様がいたとしても、おかしくないわよね。

 ――でも言われてみると、どうしてその考えに至らなかったのか、ちょっと不思議ね。

 ナユにそう言われる前に、思い至ってもおかしくはないもの。

 まあでもそれは、そのことに気づいた今だからこそ、そう思えるのかもね。

 それに、魔法受け継いだって知った時、そんなとこまで気が回る心境でもなかったもの。

 ――まあ、とにもかくにもよ。

 だから――えーっと、神様のおかげとも思えたから、今までのお礼と新たに祈願をしてきたの。

 ちょっと遅くなっちゃったけどね。

 あ、ちなみにわざわざ引き返してまで何を祈願したのかって、ナユにしつこく聞かれたけど…。

 でも、ナユと言えど、それだけは教えてあげない。

 だって――。


 願いは言葉にすると叶わないんでしょ?


                                    ―続―

うわ、なっが。

4000文字くらいに抑えたいといつも思ってるんですけどね。

気が付くとこれくらいの文字数になってます。

それにまた、当初予定してた話と全然違うものになっちゃいましたし。

まあ。生きることはままならないということで、ここはひとつお願いします。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


是非とも評価、いいね、コメントをお寄せください。ブックマークもお願いします。

このページを下にスクロールして頂くと出来ると思います。

めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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