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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第二十五話 魔法少女我慢します


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 月に代わってお仕置きはしない、いたって普通の魔法少女よ。


 というか『月に代わって』って…、不遜にもほどがあると思うのよ。

 些細な魔法しか使えない、弱小魔法少女の(ひが)みじゃないのかって言われれば、まあ、そうなんだけども。

 そうとしか言えないんだけども…。

 あー…えーっと、つまりよ。

 私が何が言いたいかっていうと、目的があるってのは羨ましいわねってことよ。

 それが月の代わりの悪人退治であったとしても、ね。

 ――ん?なに?

 前と言ってる事が違うって?

 悪い怪人を倒すなんて面倒、世界を救うなんて面倒、とか言ってたじゃないかって?

 はぁ…いつの話をしてるのよ。

 3年も経てば、私だって成長するわ。

 それに私の魔法――いや、私たちが使ってるこの魔法の存在価値は、未だに分かってないのよ。

 使えるようになってから3年程も経ってるのに、未だ分からない。

 ニカの魔法も、ナユの魔法も、ね。

 流石に気持ち悪いでしょ?

 分かってる事といえば、こんな些細な魔法でも意外と応用が利くって事ぐらい。

 でもそれだって、自分たちの経験から、実験から、一つひとつ学んだってだけ。

 だから、突然マスコットが現れたり――。

 そのマスコットから使命を与えられたり――。

 果ては、銀河をかけての戦いに発展したり――。

 なんて、そんな事は相変わらず全くないのよ。 

 結局、魔法の本質については何一つ分かってない。

 はぁ…。

 こうやって、魔法の意味について考え始めると深みにはまるのよね。

 出口のない迷路、ってやつ?

 落ち着かないから、いい加減答えが欲しいわ。

 誰か回答を持ち合わせてない?

 高く買うわよ?

 って、本人が分からないのに、他の人が分かるはずもないか。

 このことについて、ニカはともかくナユはどう思ってるのかしら。

 今度時間があるときにでも聞いてみましょう。


『あ、つぐみちゃーん!なゆぽんが放課後――。』

 ミナエちゃん、おはよう。

 ちょうどよかった、はいこれ、頼まれてたやつ。

 完全版だから、鞄が重くて仕方なかったわ。

『あー!!ありがとう!この巻だけどこ探しても無かったから助かる!』

 へぇ…最近人気なのかしら、セーラームーン。

 でも、電子書籍ならいつでも買えるんじゃない?

 って正面玄関で話すのもなんだし、とりあえず教室に向かわない?

『あーうん、それはいいけど、電子書籍ねー、電子書籍…。私思うんだけど、電子書籍って漫画読みにくいのよ!だから紙がいい!』

 慣れ、よ、慣れ。

 慣れたらそんなことないわ。

 まあ、紙がいいってのは否定しないけど。

『でしょ!?って、そうじゃなくて、なゆぽんが放課後すぐ、校門で待ってるってさ!』

 え?ナユが?

 まあ、分かったわ。

 でも何で伝言?携帯に連絡くれれば良くない?

『あー、なんか充電出来てなかったって言ってた!』

 なるほど。

 伝えてくれてありがと。

『というか、つぐみちゃん!つぐみちゃんはうちの部のスーパールーキーとどうして仲いいの?』

 スーパールーキー?

 …あの子、そんなバレー上手いの?

『そりゃもう!強いってもんじゃないよ!部活後のジュースじゃんけんじゃ負けなし!』

 あー…。

『だからスーパールーキー!って私が勝手に呼んでるだけだけど!ちなみに、バレーは普通!』

 ああ、そう。

 今日会ったら、たまには負けてあげなさいって言っておくわ。

『ん?言ってどうにかなるもんなの?』

 ん?え~と――。

 まあ、たぶ…ん?

『よくわかんないけど、なゆぽん、つぐみちゃんのこと信奉してるし、あり得なくはない?』

 ん?信奉?

 ナユって誰に対してもあんな感じじゃないの?

『え!?違うよ?つぐみちゃんに対してだけだよ、あんな仰々しいの!』

 え、うそ、初めて知ったわ…。

 それにしても仰々しいって…。

『それに、私がつぐみちゃんと友達って知ってから、私への尊敬度もあがった気がする!うん、先輩としては悪くない気分!ありがとう、つぐみちゃん!つぐみちゃんのおかげだ!』

 いわれのない事でお礼を言われて…、なんか私、今すごく複雑な気分よ?

『あはは!あ、もう教室だね!じゃあ、またお昼に!』

 あぁ、今日は4人で食べる日だったわね。うん、じゃあまたお昼に。


 ――っていう、事が今朝あったんだけど。

「つぐみん先輩、セーラームーン持ってたんすね。渋いっす。」

 私の、というか正確には、母の、なんだけど――。

 って、そこ?

「ほへ?」

 いや、そんな不思議そうな顔されても。

 気にして欲しいのは、そこじゃないんだけど――。

 でも、むしろそれがナユらしいっちゃ、ナユらしいか。

 ちょっとズレてるというか、天然というか、…見てて飽きないわ。

 ――とりあえず、話をつづける前に、パンプキンパイでも食べて一旦空気をリセットしましょう。

 ちなみにナユは今、シナモンティーにご満悦のご様子よ。

 連れてきてよかったわね、このお店。

 …まあ、連れて行くって約束した日から、だいぶ空いちゃったけどね。

「確かに、たまたま今朝会った時、言伝(ことづて)を頼んだっすね。んー、でもミナエパイセンがそんな事を…。おけまるっす、確かに勝ち過ぎてたっす、次から気を付けるっす。」

 うん、それが良いと思うわ。

 なんだ、ちゃんと通じてたのね、よかったわ。

 というか、もしかしてナユ、わざとボケてたりする?

 うーん…。

「うん?つぐみん先輩?どうしたんすか、じっと見つめて。シナモンティー美味しいっすよ?」

 確かに、すごく美味しそうな顔してるけども。

 そのご満悦そうな顔からは、おいしい以外の感情が読み取れないくらいだけども。

 うーん…。

 ニカとは全然性格が違うけど、掴みどころのないとこはそっくりだわ。

 まあでも、その性格含めて、ニカのことも、ナユのことも好きなんだもんね。

「――せんぱい?」 

 あー、うん、何でもないわ。

 気に入ってくれて何よりよ、この店連れて来た甲斐があったわ。

 それで話は変わるけど、ミナエちゃんのことパイセンってよんでるの?

「そっすね。ミナエパイセン、新入部員に『私はミナエパイセンだ!』って自己紹介したんすよ。だから、そのまま呼んでるっすね。と言ってもあたし以外の一年はもう呼んでないっすけど。」

 あー…ふーん。

 まあ、たしかにそんな事言いそうね、ミナエちゃん。

 ありありとその自己紹介の様子が想像できるもの。

 ふふっ、ちょっと可笑しいわね。

「つぐみん先輩?どうしたんすか、急に微笑んで。アリの巣穴にお湯を流した時の事、思い出したんすか?」

 そんな事したことないわよ!?

「あ、すみません。液体のりだったっすね。夏休みの自由研究として、アリの巣の型を取りたいって事でしたっすもんね。いやー、さすがつぐみん先輩っす、そこらの小学生じゃできない発想っす。御見それしたっす。」

 やめてやめて、具体例を挙げて、嘘に真実味を持たせるのやめて!

 そんな事したことないから!

 そもそもそんな悪魔的発想、私には無理だから!

「あれぇ?おかしいっす。あたしのつぐみん先輩プロファイリングが間違ってるっすか?」

 間違ってるも、間違ってる!大間違いよ!

 というか、私ってそんなイメージなの?

 そんなこと、ないわよね?

 ――ん?

 …ってか、あれ?

 昔、誰かにも似たようなこと言われた気がするんだけど、あれはいつだったっけ――。

「深窓の令嬢と一年の間で有名なつぐみん先輩のことを、まさかこのあたしが間違えるなんて…。」

 え?

 いや、ちょっとまって、まだその噂続いてたの?

 もう七十五日以上たってるじゃない!

「風化させない様、頑張ってるっす!」

 元凶!

 私を信奉してるって設定どこ行ったのよ!

「設定って…。いや、まあ確かにつぐみん先輩の事、信奉してるっすよ。あたしが先輩って呼ぶのはつぐみん先輩だけっすから。」

 いや、それもどうかと思うけれど…。

 まあ、いいわ。

 よくないけど、まあいいわ。

「いいんすか?」

 ええ、ナユの事信じてるもの。

 悪いようにはしないでしょ、私のこと。

「へへー。だから、つぐみん先輩の事大好きっす。」

 はいはい、私も大好きよ、ナユ。

 ふぅ、とりあえず私もシナモンティーを飲みましょう。

 また空気をリセットよ。

 って、あ、冷めちゃってる…。

 冷めても美味しいからいいけど、せめて一口くらいは、あったかい時に飲みたかったわ。

 はぁ…まあとにかく。

 それで、なんだけど、ナユ――。

「あ、先にあたしからいいすか?」

 うん?

 いいわよ、どうしたの?

「魔法、の話なんすけど、この力って一体なんなんすかね。…ってどうしたっすか、目をパチクリさせて。」

 ――いや、ちょっとびっくりしただけ。

 私もちょうどその話をしようと思ったのよ。

 まさか話題が被るなんて。

「つぐみん先輩と一緒の発想だなんて、光栄の極みっす。」

 え?いいの?

 アリの巣に液体のり流す女よ、私。

「あー、すみませんっす、調子に乗ってたっす。だから根に持たないで欲しいっす。」

 ふふふ。

 勝った、ちょっと嬉しい。

 まあそれはさておき。

 で、魔法の話なんだけど、私もちょうどナユに聞いてみたかったのよ。

 どうして魔法みたいな力を私たちが使えるのかって。

 どう思う?

「えー。あたしも分からなかったっすから、つぐみん先輩に聞こうと思ったんすよ。あー、でも分かったっす。つぐみん先輩から聞かれたならしかたないっす、もう少し考えてみるっす。」

 ええ、ゆっくり考えていいわよ。

 別に今日じゃなくてもいいわ。

 ちなみに、私の愛すべき親友の答えはこれよ。

 『体の弱いわたしに、神様が贈り物をくれたとそう思ったなのよ。だから、好きなように使ってるなのよ。』

 たしかニカと出会った頃に、そんなことを言ってたはず。

 なんともニカらしいわね。

 さらにちなみにだけど、もちろん私はそこまで割り切れてないわ。

 相変わらずよ、相変わらずの私。

 ああ、そういえば――。

 『その贈り物は、思ってた以上に大きかったなのよ。』とも言ってたわね。

 まあ、魔法だからね。

 人知を超えた力だもの。

 そりゃそうよね。 

「…あー、うん。あれ、じゃないっすか?」

 あれ?

 何か思いついたの?

「思いついてはいないっすけど…。――おそらくこれ、考えても意味無いってやつっす。でも、少なくともあたしは魔法に感謝してるっす。つぐみん先輩と会えたのは魔法のおかげっすからね。むしろ、もうあたしたちの為に魔法はあると言っていいんじゃないっすかね。」

 それは私も同じ気持ちよ。

 ナユと会えたことが――、あっ!

 今………分かった。

 そう言う事……か。

 ニカがあの病室で言った『思ってた以上に大きかった』ってのは、そういう意味だったんだ。

 思ってた以上に大きかったのは…、つまり『私』だ、私のことだ。

 そんなの私だって――!

 …。

 …あ、ヤバい。

 これはヤバい。

 ヤバいくらい、思いが溢れてくる。

 人前だっていうのに、ナユの前だってのに、胸の底から泉のように!

 ニカ…ニカ…、ニカっ!

 もうダメ、胸が苦しくって息ができない。

 そしてすごく熱いっ、胸が熱い!

 胸から喉、顎、あーもうみるみる上がってきてる!

 おねがい、今はやめて!

 目に行くのは待って!

 ちょっとだけ待って、私の心!

「ん?つぐみん先輩?急に俯いて、大丈夫っすか?」

 え?え、ええ。

 だ、大丈夫、大丈夫。

 大丈夫、よ。

 ありが…とう、参考に、なったわ。

「え?こんな答えで良かったんすか?ってか、声震えてないっすか?」

 じゅう、ぶん、よ。

 それに、ふ、震えてない、わ、気にしないで。

「いや、十分おかしいっすよ。」

 あー、ダメよ、泣くのはダメ。

 だって、後輩の前で泣くなんてカッコ悪い、もの。

 だから、ごめんだけど――。

 1秒だけでいいから、涙をこっそり拭う時間をちょうだい。

 とりあえず最小の、最低限の言葉と動きで、ナユの視線を外そう。

 えーっと――。

 な、ナユ、あっち。

「へ、向こう?何かあるっすか?」


 今――っ!

 ナユの動き、止まれ――っ! 


「――っ!何するんすか!なんで魔法使ったんすか!ってか、指差す先に何もないっすよ!」

 ごめんごめん。

 もう大丈夫よ。

「何がっすか!それに、なんで魔法無駄打ちしたんすか!」

 え?

 べつに無駄打ちなんて、してないわよ?

「じゃあ、なんだったんすか?」

 それは――、…内緒。

 ぷくーって頬膨らませても、内緒。

 気が向いたら、いつか教えてあげる。

「むぅ。まあ、いつものつぐみん先輩に戻ったから良しとするっすよ。」

 うん、それでお願い。


 ――ふぅ。

 なんとか無事に家に帰ってこれたわ。

 色々あったけど、よく泣くの我慢したわよね、私。

 ナユだけじゃなくて、自分自身にも魔法使ったってのもあるけど――、もう一つの魔法を。

 それでも、後輩(ナユ)以外の前だったら、多分我慢できなかったんじゃないかしら。

 うーん…。

 これも成長…っていうのかしら?

 いや、ただの後輩への見栄か、お恥ずかしい。

 …まあ、ともかく。

 まさか二年以上も経った今日、ニカの言葉のホントの意味が分かるなんて、ね。

 ナユには感謝しきれないわ。

 そのお礼にってわけではないけど、今度ナユを連れてニカに会いに行きましょう。

 ん?

 今度ってのは、いつなのかって?

 えーと、ほら、もう少し気持ちの整理がついたら、よ。

 口には出さないけど、ナユもニカのこと気になってるっぽいしね。

 うん、いいと思う。

 そうしましょう。

 よし、じゃあ今日はおしまい!

 おやすみなさい。


                                    ―続― 

お疲れ様でした。

予定より投稿するのが遅くなりましたが、無事二十五話目です。

この話自体は何か月も前に書いた話なのですが

いろいろと調整だったり、補足だったりと話を足しているうちに

かなりの時間が経っていました。

それにしてもつぐみちゃんの魔法は、なかなかに応用が利きますね。

私としても助かってます。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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