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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第三話 魔法少女活躍します!

 

 私はつぐみ。星河つぐみ。

 リリカルとは口が裂けても形容できない、魔法少女よ。


 ま、そもそも、リリカルという言葉がよく分からいんだけどね。

 調べてみても――うん、やっぱりよく分からない。

 分かったのは、明るいニュアンスで使われるって事くらい?

 すなわち――。

 先週の失敗を、いまだ引き()ってる私は、リリカルとは縁遠い。


 ――さて、気を取り直して、今日は金曜日。

 この魔法を覚えてから、だいたい二週間くらい経ったらしいわね。

 魔法と言っても、ご存じのとおり、何とも微妙な魔法なのだけど――。

 まあ、とにかく2週間経ったのだから、合計で14回ほど魔法を使ってるって計算よ。

 全然大したことには使ってないのだけどね。

 …ええ。

 実は、魔法を使うのを少し躊躇(ためら)ってるってが本音。

 なるべくポジティブに考えようとしたけれど、そう上手くはいかなかったわ。

 黒板消しのトラウマは、思ってた以上に深いってこと。

 まったくもって、気を取り直せてなかったわね。

 でも、ま、それでも一応、毎日一回はちゃんと魔法を使ってたのよ。

 また失敗しないように、経験を積もうって。

 もう、あんな思いはしたくないから。

 それで、その2週間の成果なんだけど――。

 どうやら、魔法で止められないものがあるらしいのよ。

 といっても、まだサンプルが少ないから、詳しいことは全然わからないんだけど…。

 ――あ、でも。

 ただ一つだけ、はっきりした事があったわ。

 止められないものを止めようとしたときは、魔法がそもそも発動しないみたい。

 だから失敗した後も、魔法を使えるのよ、成功するまでね。

 どう?

 少しは進歩してるでしょ?

 …牛歩の歩みだけど。

 それでも、亀よりはきっと早いはず――よっ!

 んっ!

 …ふぅう、伸ばした背中が気持ちいいわ。

 え?

 いきなりどうしたって?

 いや、別にどうもしないわ。

 あと一限で、今週の学校が終わるからね。

 だからこの最後の休み時間を、満喫しようとしただけよ。

 羽はまだ伸ばせないけど、凝り固まった背筋を伸ばすくらいはいいじゃない、ねぇ?

 休みが近づいてるだもの。

 ――って、うん?

 隣の席が少し騒がしいわね、えーっと?

 仁科さんと…、あぁ、香坂さんね。

 携帯覗き込んで、何してるのかしら。

 6限目始まっちゃうわよ?

 ――。

 あー、なるほど、パズルゲームね。

 何千万回とダウンロードされたとかなんとかの、有名なパズルRPG。

 内緒だけど、実は私もやってるのよ。

 楽しいわよね。

 …。

 はい、ごめんなさい。

 内緒にしてるんじゃなくて、話す人がいないだけです。

 ――オホン、それはさておき。

 仁科さんが少し前、好きな子との共通の話題が欲しくて始めた…んだったかな。

 で、香坂さんはその付き添い、だったはず。

 ――あっ!別に、聞き耳立ててたわけじゃないわよ!?

 聞こえてしまっただけ!

 だって隣の席だもの、二人とも声大きいもの、仕方ない――いや、違うわね、認めます。

 魔法を使えるようになってから、私が周りをよく気にするようになったのよ。

 だってそれ以前の私は、二人の会話なんて、気にも留めなかったもの。

 …まあ、ともかく。

 盗み聞きか、盗み聞きじゃないかは、ともかく。

 黒板消しのトラウマはあっても、誰かのために力を使いたいとしっかり思ってるのよ、今でもちゃんとね。

 また、上手くいかないかもだけど…。

 でも、思うくらいは、いいじゃない。

 思うだけは、タダなんだから。

 って、私の事はいいのよ、今は隣の二人よ。

 ほら、仁科さんが、「またダメだったー」って叫んでる。

 どうやら、一生懸命ボスを倒そうとしてるっぽいわ。

 諦めずに、何度も指をせわしなく動かして、今もまた再戦中ってところね。

 んーでも、今回は調子がいい…のかな?

 香坂さんが、あと少しって応援してるし。

 でも香坂さん、逆効果よ、集中させてあげて。

 ――。

 それで、一体どこに挑んでるだろう。

 気になるわね。

 ちょっと失礼して、覗かせてもらおうかな。

 そーっと………ああ、その子ね。

 たしかに強かったわ。

 仁科さんのパーティじゃギリギリってところかしら?

 仁科さんの腕も…、中々にギリギリ。

 というか、今まさにギリギリだわ。

 ボスの残りHPもギリギリで、盤面もギリギリ。

 赤を2回消しつつ6コンボくらいすれば削り切れそうだけど…、いやもうホント、ギリギリ。

 スキルも残ってない。

 パズル開始までは、制限時間無限なのが唯一の救いだけど…。

 限られた操作時間内に6コンボは、仁科さんの腕じゃギリギリ無理そうかな。

 ――ん?なに?

 私の力の出番だよって?

 いやいや。

 実は画面の中の物には効果ないのよ、私の魔法は残念ながら。

 さっき言ってた、魔法で止められないものが、これよ。

 おととい、テレビで試したもの。

 アンパンがバイキンを懲らしめる、あの国民的アニメを見てた時にね。

 例のパンチを、上手い事止められれば、バイキンが避けるんじゃないかって――。

 勝たせてあげられるんじゃないかって――。

 彼の涙ぐましい日々の努力が、実を結ぶんじゃないかって――そう思って。

 でも、残念。

 パンチは一瞬たりとも止まらなかった。

 ただ強く生まれてきたってだけのアンパンは、その暴力をもって、努力というバイキンの全身全霊を、今日もやすやすと打ち砕いたわ。

 それでバイキンはいつもの捨て台詞を吐いて、いつものように山の向こうでお星さまになりましたとさ。

 めでたし、めでたし。

 …。

 ほんと、いまいち使いどころが分からない能力ね。

 バイキンのために魔法を使おうという私の発想も、おかしいのかもしれないけど。

 まあ、それはさておきましょうよ。

 えーとつまりは、魔法で仁科さんのお手伝いするのは無理ってこと。

 泣きそうな顔で、仁科さんが長考してるけど…。

 ごめんね、どうしようもないわ。

 自分の力でどうにかしてね――って、あら?

 どうやら覚悟を決めたみたいね。

 香坂さんも励ましてる。

 私も一応、応援してるわよ。

 がんばれー。


 ――うん。

 いい調子ね、仁科さん。

 動き出しはいい感じ。

 あ、ちょっと迷った、今のはイタいわ。 

 あと2秒よ!

 …。

 ……。

 ん---、もうっ!

 

 えいっ――!止まれ――っ!


 ――えっ!?

「やったよー!エミちゃん!!」

 うそ!?止まった!?

 しかも都合よく、制限時間だけが!

 なんで!?

 なんで魔法…使えたの?

 一応使ってみるかって、ただそれだけの、ほんと軽い気持ちだったのに。

 成功するなんて、思ってもなかったんだけど…。

 ――でも。

 使えた理由は分からないけど。

 仁科さんが喜んでるのは確かで。

 そしてその笑顔を、私が嬉しいと思ってるのも確か。

 …魔法を使えた理由は分からないけど、それでもいいわ。

 少なくとも今は。

 また明日からゆっくり検証してみましょう。

 それよりも今は――。

 ガッツポーズしておきましょう、やった!

 …まぁ、小さく、机の下でこっそりだけどね。

 それにしても私の魔法にも、人を喜ばせる力があったのね。

 誰かを助けられるかは、まだ分からないけど。

 少なくとも喜ばせることはできた。

 すごく。

 すごく、嬉しい。


 ――ふう。

 今日はいい日だった気がするわ。

 明日、自分の携帯ゲームにも試してみましょうかしら、魔法。

 …。

 いや、やめとこう、ズルするのは好きじゃないのよ、私。

 完全にチートじゃない――あ。

 …。

 ……。

 …チート、か。

 仁科さんも、自分の実力でクリアしたわけじゃないのよね。

 …いいことだったのかな、魔法つかったの。

 ……うん。

 ――うん。

 いいこと――にしておこう。

 そうしとかないと、私がつぶれちゃう。

 そもそも、私が何も言わなければ仁科さんは絶対に気付けない…のよ。

 私が一人、この悶々を抱え込めば、仁科さんのあの喜びは嘘にならない。

 そう、そうよね。

 それに、どうせ真実を言ったところで、信じてもらえるはずないし。

 ―――うん。

 もう、今日は寝ちゃいましょう。

 疲れちゃったわ。

 また、明日。

 むずかしいことは、明日の私に丸投げしましょう。

 今日は、私、いいことを、しました、まる。

 はい。

 おやすみなさい。

 

はい、お疲れ様、おかえりなさい。

二話から一話の後に戻ってきました。

よかったよかった。

そしてツグミちゃん初めての成功譚です。

嬉しいですね!

…。

誰が何と言おうと成功です。やったね!

では読んでくださり有難うございました。

次回は…また一秒で出来るネタが思いついた頃に上げます。


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すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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