第二十話 魔法少女出会います
私はつぐみ。星河つぐみ。
七畳一間で暮らす魔法少女よ。
いや正確には、普通の2階建て一軒家の一室を、自分の部屋として割り当ててもらってるだけなんだけどね。
アパートの一室の、しかもたった六畳一間に、2人で生活なんてしてないわ。
あぁでも、2人ってのは少し羨ましいわね。
だってほら、決めポーズを2人で考えたりとか、できるじゃない?
というのも、実は――。
昨日の夜、鏡の前で一人、悶々と色んな決めポーズを考えてたのよ、魔法少女のね。
ああ、もちろん決めポーズなんて取る機会はないだろうし、あっても取らないわよ?
でも、せっかく魔法少女になれたんだから、それくらいの妄想はしてもいいと思うのよ。
まあどれも、いまいちだったんだけど…。
――いや、そもそもよ。
そもそも今思うと、かなり恥ずかしいことしてたんじゃない、私。
中2にもなって、何をやってたんだろう、ほんとに。
でも、魔法少女仲間がいれば――。
一人だと恥ずかしいことでも、仲間と一緒にやるなら――、少しは許される気がするのよね。
だから仲間は少し、ほんとに少しだけ、羨ましい。
まあでも、友達一人作らない私に「仲間」だなんて都合が良すぎると思うわ。
それに仲良くなったらなったで、離れるときに辛いしね。
だからそんなもの、なくていい。
秘密に秘密の、魔法について語り合う、そんな友達なんて――。
全然羨ましくなんてないんだから。
「ちょっとちょっと、聞いてよ!」
――ん?
ふぁあ~あ、ふぅ、少しウトウトしてたわ。
冒頭で淡々と語ってたけど、昨夜は結構興奮してたからね。
えぇつまり寝られなかったのよ、テンション上がってね、お恥ずかしいことに。
で、それはさておき、よ。
なにやら騒がしいけど、どうしたのかしら。
「何よ?自習の時間なんだから、あまり大声出さないでよ。」
「あ、ごめん…。」
えーと。
ああ、仁科さんと香坂さんか。
相変わらず仲いいわね。
仲いい二人の席が縦に並んでるとか、前世でどんな悪行を積めばそんな幸運に恵まれるのかしら。
家に帰ったらグーグル先生に聞いてみま――。
…いや、『まずは友達を作りましょう』と答えられるのがオチね、やめとこう。
――で?
仁科さんじゃないけど、大声出してどうしたの香坂さん。
私の眠りを妨げるなんて大罪よ、大罪、八つ目の大罪。
そんなあなたには、罰として盗み聞きの刑を執行します。
さぞ、面白い話なんでしょうね?
「――で?どうしたの、エミちゃん。」
「ああ、うん。昨日の夜の事なんだけどさ、お兄ちゃんがノックもせずに部屋に入ってきたの!ひどくない?」
いやまあ、うん、そうね。
年頃の女の子の部屋にノックもせず入るのは、確かに感心できないけど…。
それって、自習中に大声で香坂さんを呼んでまでする話?
「ええ…ビックリするほどどうでもいい。」
ほら、文字通りの白眼視!
言わんこっちゃない!
「どうでもよくないよ!だって、私その時ちょうど雑誌見ながら、モデルのポーズの真似してたんだから!チョッパズじゃん!」
「チョッパズね。ご愁傷様、としか言えないけど――だからって、なんで今?」
「暇だったから、雑誌読もうとしたら思い出したの。」
「…勉強しなさい。」
「――痛たっ。」
おお、いい音した、ペチンって。
「もぉ、ゆーちんのいぢわる。」
仁科さんのおでこで、そんないいペチを鳴らすとは、香坂さん只者じゃないわね。
手首のスナップが違うのかしら、それとも指の使い方?
って、そこはどうでもいいわね、それより――。
正直、他人事じゃないわ、コレ。
よかったぁ、昨日お母さん入ってこなくて。
あの人いつもノックせずに入ってくるから、私も気を付けないと。
奇跡的にノックしたとしても、返事待たずに入ってくるし――オホン、まあとにかく。
決して面白い話だったとは言えないけど、為になる話ではあったから、今日の所は無罪放免にしてあげる。
感謝してね、香坂さん。
――さて、と。
昨日の睡眠不足を補おうと思ってたけど、目が覚めちゃったなら仕方ない。
私も勉強しましょう、自習の時間だしね。
たしか、数学の宿題出てたはず――ね。
――ふぅ、つかれた。
無事終了よ、宿題。
で、時間は?
ん-…あぁ、もう少しでチャイムなるわね。
次の授業なんだっけ?
たしか国語――って、あ。
左隣の子が起きた。
私と違って、ずっと寝てた大物。
この春に転校してきた、かわいらしい子。
名前は、…名前は――。
…。
……。
えーと、なんて名前だったっけ。
んー…学校にあまり来ないのよね、この子。
よく休むというか、なんというか、ね。
あ、そういえば、あの地獄の黒板消し事件の日も休んでたわ。
はぁ、私も休んでればあんな事にならなかったのにね。
あの日のことは今思い出しても憂鬱よ、なにしろ犯人の片棒は私が持ったんだもんね。
クラス中が阿鼻叫喚の中、私はそう一人落ち込みながら、隣の空席を羨ましく眺めてたのを覚えてるわ。
――あー、駄目ね。
今思い出しても鬱になるから、あの日のことは一旦忘れましょう。
まあとにかく、どんな理由があろうと、隣の席の子の名前が出てこないのは、自分でもなかなかに酷いと思うわ。
休みがちといっても、来てる日の方が全然多いのに。
どれだけ周りに興味が無かったのよ、今までの私!
反省しないと、ね。
まあ、それはそれとして――えーっと、なんだっけ名前、確か苗字に色が入ってたような…。
――あ。
そう、紺野さん。
紺野さん…だったはず。
うん、たぶんそう。
というか間違いない、朝のホームルームの欠席者で何度も聞いた名前だし。
よく思い出したわ、私、やればできるじゃない。
――で、その紺野さんが、今さっきむくりと起きた紺野さんが、何やらもぞもぞし始めたわね。
うーん、スカートのポケットを漁って、る?
…。
あ、表情に花が咲いた。
晴れやかな笑顔ね、つまりどうやら、目的の物を掴んだみたい。
で、一体何を掴んだの?
…。
……あー、もうっ!
もったいぶらなくていいから、早く掌あけてくれない?
こっちは気になって仕方ないんだから――って、あ、見えた。
見えたけど…あれって、パイの実?かしら。
バラエティパックの、あの二個が一つの袋に入ってる、アレ…よね?
で、それを手に、ニパーって笑ってるってことは…。
もしかして、今食べるつもり?
もう少しでチャイムなるんだから、休み時間に食べれば――って、ああ、袋破いちゃった。
…紺野さんって、ホントに大物だったのね。
ま、自習だし別にいいか、そんな目くじら立てなくても。
そもそも普通の授業中だったとしても、私は注意も告発もしないけどね。
いい子な私は、無駄な波風を立たせないのよ。
無駄に正義感を振りかざすなんて、逆に悪だと思うのよ。
何事もなく平和に事が進むなら、それに越したことは無いわ。
だからつまり、自習中の居眠りくらい、いい子でもするって事よ。
――あ。
そんなこと考えてたら、チャイム鳴ったわね。
そして紺野さんがそのチャイムに、すごくビックリしてる。
どれくらいのビックリかっていうと――。
大事そうに口に運んでたパイの実を、ポロっと指から落しちゃうくらいよ。
で、当の紺野さんはといえば、そのパイの実が落ちる前にと、慌てて空中キャッチの体勢に――。
って、ああ!もう!
感謝しなさいよね!
パイの実、止まれ――っ!
あ…。
……ごめんなさい。
間に合わなかったわ。
私の魔法は世界どころか、パイの実一つ救えないのね、情けない。
いや、ただ私がどんくさいだけか。
紺野さんごめんね、力になれなくて。
――って、紺野さん?
なんでこっち見てるの?
なんでそんな驚いた顔してるの?
怖いんだけど…。
「あなた、星河つぐみで、あってるなのよ?」
うわ、話しかけられちゃった。
え、は、はい?
えーっと…、うん、星河、つぐみ…だけど。
「じゃあ、つぐみん!」
つ、つぐみん!?
「つぐみん、今魔法使ったなのよ?」
へ?
「だから私と友達になる、なのよ!」
んん?…え、えーっと。
情報量が多すぎて処理しきれないんだけど!!
でも、とりあえず、よ。
うん。
と、とりあえず、床に落ちた物食べるのは、止めた方が良いわよ?
「3秒ルール、もぐもぐ、なのよ!」
…えーと。
咀嚼しながらしゃべるのも、やめたほうがいいと思うわ。
―続―
お疲れ様でした。
ご覧の通り、今回は二人の邂逅編です。
時系列があっちいったり、こっちいたりと忙しいです。
書くほうの私も、つぐみちゃんの精神年齢が毎回違うので混乱します。
なので何か変なところがあれば、ご指摘ください。
まあ、とにかく。
次回は珍しく、この話の続きになります。
またゆっくりお待ちください。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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