第十九話(前編) 魔法少女進歩します
私はつぐみ。星河つぐみ。
両親ともにマグルの魔法少女よ。
マグル…つまり普通の人間ね。
こう言うと私が普通じゃないみたいだけど、ごめんなさい、全然そんな事なかったわ。
私もみんなと何も変わらない、ただの人間ね。
だからというわけじゃないけど、別に魔法学校に通ってもいないし、純血じゃないって侮蔑されることもないのよ。
同性の友達だって――うん、ちゃんといるし。
ハーマイオニーにだって負けてない、…と思うんだけど。
あー…うん、ごめん。
来週から始まる期末テストを考えると、秀才の彼女には遠く及ばないわね。
私には、あれほどまでに勉学に勤しむ情熱がないもの。
高校入試の時は、それ以外に何もする気が起きなかったって、ただそれだけだもの。
だから今は、必要な時にしかやってないのよ。
でもほら、私には可愛い親友がいるのよ?
今、私の目の前に、ね。
だからきっと、彼女も私を羨んでくれると思うのよ。
ね?そうでしょ?
「つぐみちゃん、つぐみちゃん。にやにやしながら私を見つめて、ちょっと気持ち悪いとののは思うの。」
えっ!?うそっ、そんな顔してた!?
「しーっ!声が大きいの。図書館では静かにするべきと、ののは注意するの。ほら、早く口を手で押さえるの。」
お、お恥ずかしい。
自分がしてた表情と、大きな声。
ダブルでお恥ずかしい。
とにかく、言われた通り口を手で押さえておこう。
出てしまった声は飲み込めないけど、反省の態度は伝わるかもしれない。
…というか伝わって、お願い。
「大丈夫なの。今日も人、少ないの。つぐみちゃんの醜態独り占めで、ののはご満悦なの。」
そう、ノノちゃんしかいないのね。
それはよかった。
「いや、いるの。奥に二人ほど。」
全然独り占めじゃないじゃないっ!
「細かいことはどうでもいいの。目の前で取り乱すつぐみちゃんを見たのは私だけと、ののは言っておくの。」
はぁ…。
あまりいじめないでね、ノノちゃん。
「約束しかねるの。」
しかねないで欲しいなぁ…。
でも、ま。
ノノちゃんになら何見られてもいい…いや、うーん。
まあ、いいという事にしておこう。
私とノノちゃんの仲だし、うん。
で、それはともかく。
二人ほど奥に座ってるって話だけど――。
数ある図書館の中から、ここを選んで正解だったわね。
相変わらずというか、予想通りというか、今日も人がまばらだもの、ここ。
その分、設備が古かったり、冷房の効きが悪かったりはするけど…。
でも、ノノちゃんや私のように、人が多いところが苦手な人種にはメリットの方が多いのよ。
そしてそんな図書館の自習室となると、人の少なさは他とはさらに群を抜いていて――。
だからこそ、今日もいそいそとここへやって来たのよ。
あ、でも別の図書館には行かないってことはないのよ?
現に、四人で勉強するときは新しい図書館が多いしね。
ミナエちゃんとユイちゃんは、よくそっちに行くらしいから、奥手な私たちが合わせる感じかな。
そもそも、新しい図書館は新しい図書館で良いところあるから別に文句ないのよ、設備整ってるし、涼しいし、ね。
でも今日はノノちゃんと二人だけだから、いつもの図書館で、扉の前のいつもの冷房の真下の席に陣取ってるって、そんな具合。
はい、説明終わりっ。
「ふぅ、みーながいないと静かでいいの。」
あはは。
ちなみに、今日二人は?
「ちちくりあってるの。」
へー、ちちくり…。
――はぁ!?
今ノノちゃん、なんて言った?
「しーーーっつ!つぐみちゃん、また声大きい、とののは思うの。」
あ、ごめん、また口押さえないとね。
…っていやいやいや、そんな事どうでも良いのよ、今ノノちゃんなんて言った?
え?どういう事?
あの二人、もうそんなとこまで進んでるの?
「冗談なの。…だぶん。」
たぶん…。
「でも、今日はみーなの家で二人、勉強会らしいの。『今日は二人で勉強するから!理系の二人はご理系くだせぇ!』って言ってたの。十分怪しいとののは思うの。」
うん、まあ、確かにね…。
怪しいっちゃ怪しいけども。
「ちなみに、そのウザいオヤジギャグはガンスルー決めてやったの。」
そういうところ、ノノちゃんドライよね。
「言ったのがつぐみちゃんだったら、きっと笑ってあげてたの。」
あはは…。
喜んでいいのか、どうなのか。
深くは考えないでおこう。
「――そんな事よりと、ののは話を変えるの。どう?物理。いい感じなの?」
え?あ、うん、まあまあ順調ね。
そもそも物理は嫌いじゃないし。
むしろ嫌いじゃないと言うより、好きな教科。
やっぱり身近に感じる学問は、興味が持てるわ。
つまり、私は自分の魔法のおかげで物理の授業が楽しいのよね。
まあ私の事はさておいて――。
そういうノノちゃんの方は、どうなの?
「うーん、自由落下でちょっと戸惑ってるの。というか、公式多すぎると、ののは思うの。」
あー、公式全部覚えてるんだ。
それだと確かに大変かも、公式多いし。
「うん?その口ぶりからして、つぐみちゃんは何か違うとののは踏んだの。教えて欲しいの。」
えーと…違う、ってほどではないけどね。
授業でも軽く先生が言ってたことだけど――。
例えば、ほら“v=v0+at”だけ覚えれば、自由落下は初速が“0”で加速度が重力加速度だから、代入すれば自由落下の公式になるでしょ。
他にも――。
「なるほどなの。というより、つぐみちゃんすごいとノノは思うの。」
それほどでもないと思うけど…。
「いや、自由落下の公式はさておき、その後ついでに教えてくれた、『求めるものの単位を見れば、何を掛けたり割ったりすればいいかある程度分かる』ってのは、初めて聞いたの。」
そお?
一応学校で習うと思うけど…、まあそんな細かい事覚えてる人は少ないのかな。
――あ、えーと、分かりにくいかもだから一応説明しておくわね。
例えば、みんなは速度の計算を『みはじ』で覚えてるわよね。
あー…地域によって違うかもしれないから、それはそれとして、でお願い。
でね。
それで、なんだけど、その速度の単位“m/s”に注目すると、”s分のm”て書いてあるでしょ?
つまり、距離(メートル)の“m”を時間(セカンド)の“s”で割ると求められるって意味ね。
逆に単位がわからない時も、参考になるわ。
…と言う事なんだけど、わかってくれた?
うーん、やっぱり蛇足だったかな。
「まあ、それを聞いたからと言って、実践できるかって言われると、すぐには出来ないとののは思うけど、参考にはなったの。今後役に立つかもしれないの。」
それならよかったわ。
あ、喉乾いたわね。少し休憩しましょうか。
「わかったの。じゃあ、今日もやるの!」
――え?やる?
何を?って聞きたいところだけど…。
手をグーパーグーパーさせてるノノちゃん見たら、一目瞭然か。
「負けたほうが奢りなの。あ、先に言っておくの、ののは190円のあのカフェオレでお願いなの。」
ぐっ、無駄にお高いやつを…。
勝つ気満々ねノノちゃん、私だって負けてばっかりじゃないんだから!
「せーのっ、じゃ~んけん――。」
――はぁ。
また、負けたわ。
自由落下の問題教えてあげたんだから、わざと負けてくれたっていいのに。
ノノちゃん、じゃんけんだけはホントに容赦ないんだから!
さっき、部屋の扉閉める直前に聞こえた、『今日もご馳走様なの』が耳から離れてくれないわ、もう。
はぁ…。
それにしても最近ずっと負けっぱなしな気がする。
今度、ナユに魔法を借りてみようかしら。
…なんてね。
で、えーと、自販機どっちだっけ。
この廊下をを入り口側に進んで、エントランスに行く途中の右側にたしかあったはず、ね。
仕方ない、行くか…。
今の私の背中の上辺りにはきっと、“とぼとぼ”っていうオノマトペが書き加えられてるんでしょう。
あーあ。
…。
それにしても――自由落下、か。
自由落下の落下中の速度は、落ち始めてからの時間で決まるのよね。
そして、その時物体が持つエネルギーも…。
という事はこれって、もしかして私の魔法に応用できるんじゃ――。
「つぐみん先輩!」
わっ!
「ちょっと先輩、声大きいっす!」
あ、ごめん。って、ナユ!?こんなとこで、どうしたの?
―後編へ続く―
お疲れ様でした。
そして申し訳ない。
無駄に長くなってしまったので、無理やり前後編に分割しました。
読みにくくなってしまった事を、ここでお詫び申し上げます。
だって、だってー、つぐみんとののちゃんが無駄に仲いいからぁ!
俺は巻きでお願いって言ったのにぃ、なんかイチャイチャが止まらないからぁ!
とか、まあそんな感じです。
後編はいつもより少し早めにあげたい思います。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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