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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第十八話 魔法少女抱かれます


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 …はぁ。


 え?…ああ、うん、魔法少女よ、一応。

 いつもの口上は述べないのかって?

 はぁ…、そんな気分じゃないのよ。

 えーと、例えば、だけど――。

 いきなり、核の発射スイッチを手渡されたら、どんな気持ちになる?

 ――つまり、そう言う事よ。

 おととい、いきなりそのスイッチを渡されたってわけ。

 まあ、核のスイッチ程じゃないけど…。

 でも、それでも――。

 私には、充分すぎる程に()()()()のよ――って、あれ?

 いつの間にか教室に着いてる…。

 さっき家の玄関を出たばっかりじゃなかったっけ?

 …。

 …あんまり道中の記憶が、無いわね。

 でもま、とにかく、週明けの誰もいない教室に一番乗りね。

 いつもだったら、この爽快感に感慨の一つくらいは覚えたのかもしれないけど――。

 今日に限っては、この空虚感が、私の心をそのまま表してるようで気分が悪いわ。

 というか、昨日と今日とあまり寝てないから、実際に気分が悪いのよね。

 しばらく机で仮眠でも取りましょうか。

 まあ…どうせ寝られないんだけどさ。

 

「――ぷに。」

 …ぷに?

 何よ、ぷにって。

 今、せっかくうとうとしてきたところのに、なんで邪魔するの。

 こんな、机に突っ伏してる私の頬を、わざわざ()()っとする(やから)はきっと――。

 ほら、やっぱり。

 今日はやけに早いわね、ニカ。

「おはようなのよ。」

 ――うん。

「おはよう、は?なのよ。」

 ああ、うん。

 …おはよう。

「やっぱりつぐみん元気ないなのよ。思った通りなのよ。早く来て正解なのよ。わたしの睡眠返して欲しいなのよ。」

 感謝すればいいのか謝ればいいのか、微妙なセリフやめて。

「感謝すればいいなのよ。それに、友達がいないつぐみんの頬をぷにってするのは、つぐみん唯一の友達のわたししかいないなのよ。予想があたったからって、ドヤれないなのよ。じめーの、り、なのよ。」

 むぅ。

「顔を膨らませたつぐみんも可愛いなのよ。えいっ。」

 ぷひゅー。

「ぷひゅーってなったなのよ!楽しいなのよ、もう一回お願いなのよ。」 

 もうやらないわよ、もう。

 で、なに?

 こんなどうしようもない私の為に、わざわざ朝早くから来てくれたの?

「そうなのよ。おとといのヘビのアレ以降、つぐみんの様子おかしかったなのよ。メッセージもなげやりだったなのよ。だからなのよ。感謝するなのよ。」

 ――ヘビの、アレ。

 私がヘビの『命』を止められた、というあの事件。

 つまり――。

 私はいつでも好きな時に、誰かの命――を奪えてしまうという、事実が発覚した事件のこと。

 その事実があまりにも重くて、昨日とおとといと、私はほとんど眠れなかった。

 だって、世の中で私にだけ、好きな時に命を奪える力があるのよ!?

 その力が例えば拳銃だったなら捨ててしまえばそれでおしまいだけど、私の魔法はそうはいかなくて――。

 そんなもの、恐怖以外の何ものでもないじゃない。

 願うだけで引き金が引けてしまう、安全装置すらついてない命中率100%の拳銃なのよ?

 そんなの漫画ですら見たことないし、フィクションの中でさえ有り得ない程の凄まじい力なのよ!

 そして、その凄まじくて恐ろしい力が私の中にある……らしい、の。

 つまり――。

 いつか私がその引き金を引いてしまう()()()()()()ってことに、他ならない。

 故意にしろ、過失にしろ、悪意にしろ、善意にしろ、保身にしろ、正義感にしろ――よ。

 どんな理由があろうと、起こりうる。

 ――私が土日に引きこもった理由としては、十分すぎるほどに十分すぎるでしょ?

 それどころか、正直、一生部屋に閉じこもっていたかった――けど、親二人を心配させるわけにはいかなくてね。

 特に、お父さんのほう。

 まだ、彼の優しさに甘えられるほど、打ち解けられてないもの。

 …とまあ、そんなわけで、足取り重く早朝から、ふらふらとこの教室まで歩いてきたってわけ。

 そしてそんな私を(おもんぱか)って――、私の心境を正確に穿(うが)って、ニカは朝早くにもかかわらず駆けつけてくれたのよね。

 私が居るかどうかなんて、分からないのに、ね。

 ほんと、感謝しか出てこない、だから――。

 うん、ありがと、ニカ。

「つぐみんが、素直なのよ。気持ち悪いなのよ。」

 むぅ。

「えいっ。」

 ぷひゅー。

「ふふん、楽しいなのよ。」

 悔しいことに、私もちょっと楽しい…じゃなくって!

 私を慰めるために早く来てくれたんじゃないの?ニカ。

「あっと、そうなのよ。でも、もう既にちょっと元気になってるなのよ。つぐみん、わたしの事大好きすぎるなのよ。」

 ぐぬ、否定できない。

 ニカの顔見て、すごく安心したもの。

 そんな嬉しそうな笑顔見せられたら、なおさらよ。

 でも――、否定は…まあできないんだけど――それでも、ちゃんと否定しておかないと。

 私の沽券(こけん)に関わるでしょ?だから――。

 そ、そんなことないわよ。

 今日の私は、マリアナ海溝より気持ちが深く沈んでるんだもの。

「まあ、確かにそうなのよ。ちょっと元気になったからって、いつも通りじゃないなのよ。」

 でしょ?

「だから、今日もパトロールに行くなのよ。」

 いや、だからニカ。

 私は魔法使う気分になれないんだけど――。

「だ、か、ら、なのよ。とにかく放課後いつもの公園に行くなのよ!」


 ――はい、というわけで到着。

 ニカん家の近くの、例の公園ね。

 もちろん放課後、学校はちゃんと終わった後、しっかりと授業を受けた後よ。

 これほど学校をサボりたかった日は、ここ数年、それこそ小3の時から記憶にないけど――。

 でもほら、私は『いい子』だからね、今はそんなことできないのよ。

 …はぁ、それにしても、ほんと長い一日だったわ。

 すごく長い一日だったのに、学校で何してたかなんて、全然記憶にない。

 あー…まぁそれはともかく、こんなとこで立ち往生してるわけにもいかないわね。

 はやく自転車止めて、いつものベンチに向かおう。

 でさ、公園に着いたわいいけどさ、まだ着いたばかりだけどさ――。

 私の心は、やっぱり朝から変わりそうもないのよね、今の空模様とおんなじ曇天模様なのよ。

 元気に広場へと駆ける子供たちを眺めても、心ひとつ動かないの。

 はぁ…キミたち、天気予報的には今日一杯曇りだったから、夜までくらいは持つと思うけど、振り出す前に帰るのよ。

 私の心は――まったく持ちそうにないけどね、…はぁ。

 さて着いた、座ろう、つかれちゃった、よいせっ。

 でも、こうやって空をぼーっと見上げるのは悪くないわ。

 曇ってるからかな、なんかこう、雲が私の嫌な思考を、スポンジみたいに吸ってくれる気がする…。

 まぁ、あくまで気がするだけだけどさ。

 ――あ。

 そういえば、ニカがどこ行ったのか、なんだけど、さっき――。

『ジュース奢ってあげるなのよ、ちょっと待ってるなのよ。』

 とかいって、自販機に走っていったわ。

 なぜかこの公園、自販機遠いのよ。

 普通入口とかに置いてない?

 それこそ駐輪場の横とかね。

 でもま、おいてないものは仕方ないから――。

 だからこうして一人、ニカを待ってる間、いつものこのベンチで、淀んだ雲を見上げるのよ。

 この体勢なら、目から雨もこぼれないしね。

「――お待たせ!なのよ!」

 うん。

「はい、いつもの甘ったる~いカフェオレ。というか、よくそんな甘いの飲めるなのよ。甘さMAXなのよ。」

 甘いからいいのよ、ありがと。

 いつもだったら変なジュース買ってきたりするのに、さすがのニカも、今日の私にそんなことする気は起きなかったか。

 まあ、そうされても気の利いた返しは――確かに今日はできそうにないしね。

 ほんと私のことをよく見てるというか、気が回るというか――、端的に言うと、ありがたい、かな。

 さすがに恥ずかしくて、ニカには言えないけどね。

 で、ニカはいつものブラックコーヒー?

 いつも思うけど、よくそんな苦いの飲めるわね。

「昔我慢して、無理やり飲めるように練習したなのよ。」

 え?なんでそんな事したの?

「………。はやく、大人になりたかった、なのよ。」

 ふーん?

 早く大人になりたい、か。

 その気持ちだけは、分からなくもないわね。

 じゃあ、今も我慢して飲んるの?

「ううん、今は美味しく頂いてるなのよ。つぐみんより大人なのよ。えへんなのよ。」

 私は、ブラックコーヒーが飲めたからと言って、大人とは思えないけど。

 まあ、言うだけ野暮ね。

「きっとつぐみんも、いつか飲める日がくるなのよ。」

 特に飲みたいとは思わないけど、まあそうかもね。

 じゃあ、ありがたく飲ませて頂くわ、カフェオレ。

「どうぞどうぞなのよ。」

 いただきまーす。

 うん、甘くて美味し――。

「はい!ドーン!!」

 ブフッ―!

「…なのよ。」

 ちょっと、いきなり大声出さないでよっ!

 指もこっちに向けないのっ!

 まったく、淑女らしからぬ醜態を晒すところだったじゃない!

「いや、もう盛大に噴き出してたなのよ。醜態見せびらかしてたなのよ。」

 誰のせいよ!もうっ!

 ってか、なに?ドーンって何っ!?

「つぐみん、今もしそのカフェオレにトリカブトが入ってたなら、もう死んでるなのよ。」

 …。

 …はあ?何言ってるの?

 入ってないわよ、そんなの、入ってるわけないわよ。

 というか、ニカ、鳥兜って何か知ってるの?

「そんなことはどうでもいいなのよ!とにかく、毒が入ってると仮定して、なのよ。わたしがもしトリカブトをカフェオレに入れてたら、つぐみんはもうアウトってことなのよ。」

 う、ん?

 いまいち――いや、いまいちどころか、全く言いたいことが分からないわ。

 こんなことの為に、私はさっき淑女を口から爆発させたの?

「――おほん。つまり、なのよ。つぐみんの魔法も一緒なのよ。」

 ん?

 わたしの、魔法?

「そうなのよ。結局使う人次第ってことって言いたいなのよ。つぐみんは一昨日ヘビの命を止めて、自分の力の恐ろしさを怖がってるのは分かるなのよ。それを人に向けたら――って。でも、その命を止める使い方に気付く以前から、使い方しだいで人の命を奪うなんていくらでも出来たはずなのよ。それこそ、走ってる車を止めれば一発なのは、つぐみんも知ってる事なのよ。」

 う…ん。

「そもそもなのよ!あの時はちゃんと、あの小さな兄妹を助けたなのよ!つぐみんなら、きっと使い方間違えないなのよ。」

 …うん。

 それはそう、うん、分かってるん…だけどね。

 そう簡単に割り切れない――というか、割り切れるはずがない。

「もうっ、つぐみんの分からず屋なのよ!」

 あっ!

 もう、急に腕引っ張らないでよ、ビックリするじゃない。

 でも――。

 この、やさしくて、あったかくて、落ち着く――、そんなニカの腕の中は、あの商店街の時以来だわ。

 なんか…。

 なんか少しだけ、物事を前向きに考えられるような、そんな気がしてくる。

「つぐみんなら、大丈夫なのよ。」

 …うん。

 ありがと、ニカ、頑張るわ。

 ――というか、あれ?

 今湧いたこの気持ち。

 さっきまであんなに、心が(すす)けて淀んで腐ってたのに、急に少し前向きになれたこの感じって。

 全く気配が無かったけど、感じ取れなかったけど――。

 ニカ、もしかして魔法使った?

「え?さ、さあ、なのよ。なんのことかぁ、分からない、なのよ。」

 そう。

 ふふ、ありがとね、ニカ。

「し、知らないなのよー。」

 ええ、分かってるわよ。

「…むぅ。と、とにかく、人を不幸にするために魔法が使えるんじゃないなのよ。つぐみんなら大丈夫なのよ。」

 うん、わかったわ。

 ニカみたいに、優しい使い方をするわ。

「だから知らないって言ってるなのよー!」

 ふふふ。

「…まぁ、いいなのよ。それはおいとくなのよ。そのかわり、今のわたしの言葉を心に留めておくなのよ。一秒でいいから言葉を心にとめるなのよ。」

 ええ?そんな事して意味ある?

 そもそもニカがまたこうして励ましてくれればいいのよ。

 そう、私が折れそうなとき、こうしてたまにギュッてしてくれれば、それでいい。

「一秒心に止めたら、風化する思い出も、もしかしたらずっと心に留めておけるかもしれないなのよ。…それに、わたしがいつまでも隣にいられるとは限らないなのよ。その事を、つぐみんはもう昔に経験してるはずなのよ。」

 そんな悲しい例え、言わないで欲しい。

 けど――。

 わかったわ、ニカ。

 そこまで言うなら――。


 ニカの思い、私の心に一秒止まれ――っ。


 よし。

 言われた通り、魔法、使ったわよ。

「よろしい、なのよ。満足なのよ。」

 そう、なら良かったわ。

 励ましてくれたお礼に、私からもギュッてしてあげる、ぎゅー。

 ――って、あれ?

「どうしたなのよ、つぐみん。」

 ねぇ、ニカ。

「うん?目がコワイなのよ?どうしたなのよ、つぐみん。」

 もしかして、胸、太った?

「胸が太るってなんなのよ!Cになっただけなのよ!」

 な――っ!


 ――はあ。

 また、ニカに慰められちゃったわね。

 あの子、普段はあんななのに、時々私より大人びてるのよね。

 小さい時から病気がちで、少し達観してるのかしら――いや、うん、まあそれは今はいいか。

 考えても仕方ないし、わからないし、折を見て探りを入れてみよう。

 まぁとにかく。

 昨日まで――というか今日の夕方までだけど。

 今日の夕方までの沈んだ気分が、随分と回復したわ。

 ありがとね、ニカ。

 あ、そういえば。

 前に私が時間止めた時もそうだったけど――。

 どうやら、自分以外が魔法を使ったって分かる時と、分からない時があるみたいね。

 私が時間止めた時は、ニカは察知出来てなかったみたいだし。

 まあ、実際時間を止められてたかは定かではないけど、おそらく止めれてたとして、だけど。

 今回のニカは、明言してくれなかったけど、おそらく私に魔法使ったし。

 うーん…、なにか法則でもあるのかしら。

 ある条件でのみ、察知されないとか、その逆か…。

 うーん…分からないわね。

 考えても仕方ないか、分からないことよりも今はこっちね。

 悔しかったから、帰り道で買ってきたのよ。

 豆乳。

 お風呂あがった今、牛乳代わりに飲んじゃいましょう。

 んっんっ――ふぅ。

 うん、飲むの初めてだけど、美味しいとも不味いとも言えない味ね、調整豆乳。

 ほんとに効果あるのかしら。

 イソ、イソ、イソフ…、何だっけ?

 忘れちゃったわ。 

 まあいいや。

 いろんな味あったし、今度は杏仁豆腐味にでも挑戦してみましょう。

 美味しく飲めるかもしれないわ。

 あーあ、それにしても。

 胸を一回り大きくする魔法とか、あればいいのになぁ。


                                  ―続― 

お疲れ様でした。

この二人は見てて安心しますね。

それにしてもイソフラボンは本当に効果があるのでしょうか。

男性の私には分かりかねる所ではありますが…。

とにかく、キッ〇ーマンの豆乳シリーズはいつか制覇してみたいです。

ちなみに作品内に出てきた杏仁豆腐は…、まだ売ってるのかな?

結構レアなのあるんですよね、甘酒味とか、ね。

皆様も目にした時にご購入を検討してください。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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