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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第二話 魔法少女続けてます!


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 何度でも繰り返せないけど魔法少女よ。


 というか、何度でも繰り返せるとかずるい。

 私の力は繰り返すどころか、たった一秒モノの時間を止められるだけ。

 しかも一日一回の制限付きの。

 …。

 …この制約って必要ある?

 謎でしかなくない?

 ――うーん、まあそれはそれとして、その一日一回限定の魔法を、私はほぼ毎日使い続けてきたのよ。

 世界を救った――みたいな、そんな大層な出来事は何も起こってないけどね。

 というかそもそも、世界が危機に瀕してすらないわよ、ありがたいことに。

 そんな平和でつまらない世界の中で、もうだいたい2年半…いや、差し引き2年近くかな。

 とにかくその間、ちまちまと魔法を使い続けてきたってわけ。

 今じゃ使えて当たり前になっちゃたわ、魔法。

 初めてこの魔法が使えるようになった頃は、あんなに嬉しかったのに。

 えーと確か、『魔法少女★ツグミ!!』って自分で名乗りあげながら、鏡の前で決めポーズを考えてたわね。

 星マークの部分でこう目の横で掌を返して、キラっとかやってみたり。

 …。

 …思い出すとかなり恥ずかしいわ、黒歴史に時効って存在しないのね、初めて知ったわ。

 ――オホン、とりあえず、それはおいておきましょう、というか忘れて。

 とにかく!よ。

 そんなこんなで、しばらくは浮かれポンチにはしゃいでたんだけど、その後、急に不安に駆られたことも覚えてるわ。

 なんでかっていうと、それは――。

 この魔法は、いつの間にか使えるようになっていたんだから、それなら、いつの間にか使えなくなってもおかしくないんじゃないかって思ったから。

 有り得るでしょ?

 だから、そうなるのがとてつもなく不安で不安で仕方なくて――。

 …。

 まぁでも、今だにまだ使えているんだから、その心配も完全に杞憂だったんだけどね。

 杞憂というか、懸案(けんあん)事項?

 ま、どちらでもいいか、使えることには変わりないしね、ありがたいことに。

 ――で、それはさておき。

 今日は土曜日、学校はお休みね。

 毎週土曜日は、「見回りの日」と2年と半年前から決めてるの。

 見回り、とは言っても特には何もしないのだけど。

 なにか魔法が使えそうな、役に立てそうなタイミングがあれば、そっと使う。

 そんな土曜日を、2年半の間繰り返して来たのよ。

 自分でも馬鹿らしいと思う、そんな習慣。

 まあ、少しの充電期間、えーっと…休んでた時期があったけども――、それはさておき。

 だから差し引き2年近くなんだけど――、それはさておき。

 それで、えーっと、なんだっけ。

 あー、そうそう、その見回りね。

 どうしようかな、パトロール場所はいつも気分で決めてるのだけど…。

 今日の見回る場所は…、んー…よし。

 おかーさんに買い物を頼まれてるから、そのまま商店街にしましょう。

 一石二鳥でちょうどいいわ。

 

 ――はい、到着。

 いつもの通り閑散としてるわ。

 まあ今の時代、活気がある商店街なんて都市伝説よね。

 むしろ商店街が機能しているだけで、奇跡に近いと思う。

 で、それはそれとして、買い物というかおつかいだけど、メモを貰ってきてたのよね。

 えーと、なになに――――は?

 なんかあり得ない言葉が書いてあるんだけど。

 『お米2㎏』って…えー。

 あのおかーさんやろうは、か弱い娘になんてものを頼むのかしら。

 さすがにあり得ないでしょう。

 …はぁ。

 さっさと買い物を済ましてから、ぶらぶらする予定だったけど、変更ね。

 そんな物を持ってたら、ぶらぶらとぶら付けないわ。

 そういうわけで、先に商店街を一通り巡ってみましょうか。

 

 肉屋、魚屋、米屋…。

 うん、やっぱりいつものとおり、いつもと変わらぬラインナップ。

 店員さんの顔も、いつもと一緒、見慣れた光景。

 いや、べつに変わってほしいとか思ってないのよ?

 この時代、商店街での『変わる』は『潰れる』と同義なんだから。

 変わらないことはいい事よ。

 私も、いつものように店内を覗き見ながら、お店の前を通り過ぎるのよ。

 いつもと同じは、安心する。

 変わるのは――いつでも怖いもの。

 あ、米屋だけはちょっと睨んでいこうかしら。

 別にお米屋さんに罪は無いけどね。

 ――と、そんなことしてたら、もう少しで商店街の中央ね。

 そこのベンチで少し休憩しましょう。

 ヨイショ――ん?

 なにかイベントやってるわね。

 えーと…へぇ、くじ引き。

 しかも珍しいやつよ?

 あの、下から吹きあがる空気でくじが舞い上がる、アレ。

 ほら、プラケースに空いた小窓から手を突っ込んで捕むやつ、見たら無性にやりたくなる、アレ。

 商店街の抽選券で出来るんだって。

 あっ、そう言えば補助券何枚か持ってた気が…えーと。

 ――あ、あった、3枚。

 …2枚足りないわね。

 はぁ。

 お米、買いに行きましょうか。


 ――はい、買ってきました。

 と言っても、お米はお米屋さんに少し預かってもらってるけど。

 2年以上も通ってると、少し顔が利くようになるのよ。

 くじ引いてくるって言ったら、預かってくれたわ。

 ありがたい。

 ま、そんなわけで、今の私は見事抽選券を追加で手に入れて、くじの列に並んでる真っ只中よ。

 これで一回は引けるわ、ふふん。

 で、私の前には、今ちょうど吹き荒れるくじを掴もうとしている、おばさん一人と――。

 その後ろに、5歳くらいの男の子を連れた、若いお母さんが並んでる。

 あ、ちょうどおばさんが終わったみたい。

 自由に舞うくじにかなり翻弄されてたけど、結果はティッシュ1箱。

 いわゆる参加賞。

 ポケットティッシュじゃないだけマシね。

 ま、人生なんてそんなもんよ。

 努力は結果を伴わないし。

 苦労しても報われない。

 手を差し伸べても助けられないし。

 どれだけ願っても叶わない。

 特にね、人を助けるのはホントに大変で――。

 魔法使えても、ぜんぜん簡単にはいかないのよ。

 それに私の場合は、もし助けることに成功したとしても、誰にも気付かれないし。

 こんな地味な魔法に気付くなんて普通ありえないしね、ほんと報われないわ。

 この事について、ニカは――。

 『別にお礼を言われたいわけじゃないのよ。助けられるから助けてるだけだからいいなのよ。自己満足なのよ。』

 って言ってたけど…、私はそこまで割り切れてないわ。

 やっぱり、すこしは認めて欲しいって、褒めて欲しいって、今でもたまに思っちゃうのよ。

 ――ふふ。

 「いい子」を小学3年のころから目指してた私が、こんなこと言うのは、おかしいにもほどがあるけど。

 まあでも。

 それでも、助けられる時は助けるようにはしてきてるのよ、魔法を使えるようになったあの時からね。

 ちゃんと…できてるかしら。

 ん?

 ()()()くじくらいで、何言ってるんだって?

 違うわよ、たかがくじ()()()()()、思っちゃうもんなのよ。

 軽口を言うみたいな感じで、ね。

 ――って、いろいろ話飛んじゃったけど、私が何を言いたかったかというと。

 つまり、ああいうのに当選する人は、きっと何か裏で悪いことやってる人なんだってこと。

 この2年半…、いや、私の人生十六年で学んだことよ。

 ――え?

 そんな人生に対して斜に構えてるのに、くじ引くのかって?

 …それとこれとは別なのよ。

 ハズれるのが分かってても、引きたくなるのが人間でしょ?

「僕がやりたい、僕がやりたい~!」

 ――ほら、男の子もかわいくおねだりしてるじゃない。

 そうよね、そうなのよ、くじ引きたいわよね、わかりみ。

 その男の子を、仕方ないわねぇと袖を(まく)ったお母さんが抱き上げて…って、ちょっと重そうね。

「ちゃんとつかめるかな~?」

 ふふ、仲睦まじい。

 見てて微笑ましい。

「あー!とれない、とれない~!」

 でも、挑戦は難航中と。

 うーん、何度か惜しい場面もあるんだけど、うまく掴めずに空振ってるわね。

 ぼくには、まだ少し難しかったかな。

 ほら、元気だった声にもだんだん陰りがさしてきてるし。

 あ~もう、よし!

 使いましょう、魔法!

 今使わずに、いつ使うの!

 じゃ、いくわよ!


 ――くじ、止まって!!


「――っ!あ!やったぁ!」

 飛び交うくじの一つを止めたのだけど――、どうやら上手くいったみたいね。

 男の子が泣き出す前に成功してよかった。

 人を助けるのは難しいけれど、実は笑顔にするのは少しだけ簡単だったりするのよ。

 少しだけ、だけど。

 まあともかく、男の子の嬉しそうな表情を見ると、私も嬉しくなるわ。

「あぁ…、ティッシュ…。」

 …。

 ごめんね、そんな泣きそうな顔しないで。

 くじの当たりまでは分からないの。

 はぁ…。

 …。

 結局。

 結局ただの私の自己満足なのかなぁ。

 男の子を笑顔に出来たのは、ほんの一瞬だったし。

 こんな結果で、満足なんかできないわよね。

 そもそも、お母さんが変わりにくじを引いてれば、もっといい景品だったかもしれないし。

 ほんと、ままならないわ。

 …はあ。

 ため息が止まらない。

 私も適当にくじをひいて、さっさと帰りましょう。

 そうしましょう。

 …。

 適当に腕突っ込んで、えーとまあ、このくじでいいかな?

 よいしょ、と。

 これをおじさんに渡せばいいのよね?

 はい、お願いします。

 それにしても、なんでくじって引いた人が開かないのかしら。

 いつもお店の人に渡すわよね――って、ん?

 なんか、おじさんの様子が――。

「おめでとう、3等だ!」 

 ひっ、いきなり大きい声!びっくりした!

 って、へ?当たったの?

 …当たった――のね。

 当たるものなのね、くじって、そのことにもびっくりよ。

 おじさんが、未だやかましいほどベルを振り回してるし――って、あっ、そんなことより!

 3等って確か――!?

「コシヒカリ3キロ、嬢ちゃんついてるねぇ!」

 はは…。

 …ついてないわね。


 2キロと3キロ、計5キロのお米。

 家族に助けを求めたけれど、今ちょうど手が離せないって。

 だから結局、商店街を2往復する羽目になったわ。

 はぁ、明日は筋肉痛かな…。


                               ―続―

はい、お疲れ様です。

一話からなんと二年もたってますね。

こりゃビックリだ。

正直、書いた本人が一番吃驚してます。

どうしてこうなった?

というか、ニカってだれ?

私が聞きたいですね。誰なんでしょう。

話数が進めば、いつか出てくると、そう信じています。

では読んでくださり有難うございましたなのよ。

次回は…一分で出来るネタが思いついた頃に上げます。


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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。


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