第十七話 魔法少女また出会います
私はつぐみ。星河つぐみ。
赤いずきんは被ってないし、師匠もいないけど、一応魔法少女よ。
そもそも幼馴染に狼男なんていないし、ましてやペットになんかしたくないわ。
――でも、魔法少女仲間は欲しいわね。
例えば…後輩とか?
だってほら、魔法少女になって3年にもなるってのに、ニカ以外の魔法少女に出会ったことないのよ?
そして序列的には、私はニカの後輩にあたるわけで、それは――納得いかないわよね?
あーあ、私にも、かわいい後輩くらいできないかなぁ…。
「後輩?何の話か、ののに教えるの。」
…へ?
あ、いや、せっかく2年生になったんだから、後輩の一人くらい欲しいなぁ、って?
「意外と俗物的なの、つぐみちゃん。」
あはははは…。
…。
あ~~~油断してた、とりあえず笑ってごまかしとこ。
まだ冒頭なのに会話が発生するなんて、私もリア充になったものね。
いつもだったら、まだ私の一人語りが続いてる頃合いなのに。
ふふ。
自分の成長具合が、少し嬉しいわ、怖いくらいよ。
でも独り言には、今後気を付けないとね。
――というわけで、今はお昼休みよ。
目の前には、さっき私のモノローグにフライングで入ってきたノノちゃん。
二人で今日もお昼ご飯っ中ね。
あ、「今日も」とは言ったけど、まだ1週間も経ってない出来立てほやほやの習慣よ。
――ん?なに?
ユイちゃんとミナエちゃんはどうしたのかって?
それは――。
「つぐみちゃんが理系で良かったって、ののはすごく思うの。」
私も、ノノちゃんが理系でホント良かったわ。
でも、2人とクラス別れて淋しくない?
「そんなことないの。つぐみちゃんがいるから淋しくないと、ののは言っておくの。」
ふふふ、そんな嬉しいこと言っても、卵焼きくらいしか出てこないわよ?
「すごいもの出てきたの!いただくの!」
ふふふふ…。
あまあま卵焼きに夢中のノノちゃんはさておいて、えーとつまりは、文理選択で見事にクラス別れちゃったのよ。
ユイちゃんとミナエちゃんと、ね。
二人はお察しのとおり、文系よ。
「――というか、あの二人仲良すぎなの。3人で居てもたまに疎外感を、ののは感じるの。」
ああー…何か分かる気がする。
確かに、あの二人は気持ち悪いくらい仲が良いわね。
本人たちはそうでもないって言うけど。
「そうなの。去年ゆいっちが振られてから、ますます酷くなったの。実は最近、あの二人ちょっと怪しいと、ののは感じてるの。」
ああ、あの時…ね、確かにそう言われればそうかも?
ま、その前の二人は私あまり知らないんだけどね。
でも、ノノちゃんが言うなら確かなんでしょう、きっと。
あ、じゃあ明日、明日みんなでお昼ご飯の日だから、一緒に問いただしてやりましょう。
「そうするの。つぐみちゃんとの仲の良さを見せつけてやるの。」
う……ん?
あれ?なんか趣旨が変わってない?
言葉ひとつで、私の首をコテンと横に倒すなんて、ノノちゃん恐ろしい。
――オホン、まあ、それはさておき、学年が上がってノノちゃんとはホント仲良くなった気がするわね。
ラノベ好きどうし…いや、ラノベ好き同志、前からよく二人で話して盛り上がってたけど――。
こうやって二人ずつにクラス別れてからは、ホントに仲良くなったわ。
理系ってことで、クラスに女子が少ないのも、これに拍車をかけてるわね。
あ、ちなみに――他の女子たちとは、まだちょっと距離があるわ。
だって、まだ新学期になって1週間よ?
お近づきになるには、私には荷が重すぎるのよ。
ノノちゃんも社交的じゃないし、私と同じ人見知りだし。
だからゆっくり。
そう、ゆっくりと距離を近づけていきましょう。
今年は修学旅行もあるから、成り行きで仲良くなれるはずよ、きっと。
…ノノちゃんたちと友達になるのに半年以上かかったのに、どの口がって話だけど、ね。
でも、少し友達が出来たからって、調子に乗ってるわけじゃないのよ?
えーと…ほら、私には既に友達がいるでしょ?
「あんまり見つめられると、のの照れるの。」
ね?いるでしょ?
目の前でコンビニ限定カヌレにかぶりついてる、リスみたいにかわいいノノちゃんが。
だから、クラスの子と仲良くなれなくても、安心していられるってだけなのよ。
「――ふう、ごちそうさまなの。」
私も、ごちそうさま。
ね、つまり、そういうことなのよ。
それにしても、おかーさんが作った今日のお弁当、卵焼き以外は冷凍食品だったわ。
まあ、美味しいからいいけど。
ちなみにノノちゃんのお弁当はキャラ弁。
『ママの気分が乗った時、作ってくれるの。』だって、羨ましい。
私もおかーさんに頼んでみようかしら――。
いや。
自分で作りなさいって、一蹴されるに決まってるわ、やめておきましょう。
お弁当作りたくないもんね、そもそも料理別にそんな好きじゃないし。
それに私、朝にかなり弱いのよ。
お弁当なんて、作れるはずないじゃない。
それくらいは、おかーさんに頼り切ってもバチは当たらないと思うのよ。
あ、言っとくけど、別に料理ができないわけじゃないからね――。
「じゃあ、今日もやるの。つぐみちゃん、準備はいいの?」
ほへ?何を?
えーっと、キャラ弁作りじゃ…ないわよね?
んー…右手をグーパーグーパー…って、ああ、なるほど、今日もやるのね。
別に構わないけど、今日も負けないわよ?
「ふっふっふー。今日は、昨日までの私じゃないと、ののはそう告げておくの。」
あら?連勝中の私に向かって、よくそんな口が聞けたものね。
返り討ちにしてあげるわ。
「じゃあ、始めるの!ふんっ。」
かかって来なさいっ!
――って、ん?そのポーズ…確かそれって…。
…はぁ。
あぁ、足取りが重いわ。
自販機ってこんな遠かったかしら。
まさか――。
まさか、ノノちゃんが禁断のアレを使ってくるなんて。
あの禁断の、腕クロス必勝法を。
あんなのされたら勝てないわよ。
私が出す手は、きっとあの腕の隙間から丸見えだったに違いないわ。
もしかしてノノちゃんも魔法少女なんじゃないの?
はぁ…そんなわけないけどさ。
――で、なんだっけ?フル牛、だっけ?
…。
…ふる、ぎゅう?
何よフル牛って、初めて聞いたわよそんな略し方。
そもそも今このご時世、フルーツ牛乳という商品名が存在しないわよ!
分かるからいいけどっ!
というか、そもそも!フル牛って1階にしかないのよ!
ここぞとばかりに、面倒なの頼んでくれちゃって。
さっきのノノちゃんのドヤ顔が、まだ頭を離れてくれないわよ…。
はぁ…まあ、せっかく一階に行くんだし、私もフル牛にしよう。
たまに飲むと美味しいのよ、フル牛。
あの暴力的な甘さと、いかにも香料ですっていう、あの不健康感がたまらないのよ。
うん、なんか口の中がフルーツ牛乳になってきたわ。
はやく注ぎ込まなきゃね。
あ、ちなみにだけど、お金はちゃんと貰ってるわ。
買いに行く人を決める『じゃんけん』なのよ。
ほら、えーと、私たちは健全な高校生だから、賭け事はしないのよ。
コンプラ順守絶対。
あー…でもほんとに悔しいわ。
明後日は、負けたほうがジュース奢り、で再戦を申し込むことにしましょう。
ふふふ、楽しみね――って、あ、自販機だ。
やっと着いたわ。
さて、じゃあフル牛を――ん?
先客…が、いるわね。
でもあの子、地面に這いつくばって、一体何してるのかしら。
自販機の下に手を伸ばして――ああ、なるほど。
お金、落としちゃったのね。
仕方ない、少し手伝ってあげましょう。
役に立てるか分からないけど。
靴の色からして、おそらく新入生だしね。
――お金、落としたの?
「へ?あ、ハイっす。それで自販機の下に…。もう百回泣きそうっす。」
つまり百円落としたのね。
会っていきなり『百えーん』って洒落を利かすなんて、なかなか肝が据わった子ね。
あ、でも――。
さっきまで這いつくばってたから分からなかったけど、かわいい子じゃない。
膝は床につけたまま、顔を上げてくれたわ。
髪は――セミロングともショートとも呼べない長さで、毛先がすこしクルンってしてる。
あと一ヶ月もすれば、髪の毛染め始めそうな雰囲気がある、そんな子かな。
私の勝手な想像だけどね。
まあ、そんな私の印象はどうでもいいのよ、とりあえず地べたを這いずるとしますか。
私は、横から自販機の下を覗き込むとしましょう。
で?百円、どこに転がったの?
「あ、先輩っ!すんませんっす。え、えーと、あそこっス!」
ふーん、あ、確かにあるわね。
手、伸ばしてみて。
私が床に這いつくばったのを見て、すぐさま自分も地面に顔を近づけたわ。
それに携帯のライトも。
うん、悪い子じゃないみたい。
「どうっすか?」
あー、あと少しってところね。
もうちょっと頑張って、手、伸ばしてみて。
「分かったっすーー、んーーーっ!」
うん、これならくらいなら、どうにかなりそう。
じゃあ、彼女が手をパタパタしてる間に、決めちゃわなきゃね。
いくわよ、せーのっ!
百円、動け――っ!
「――あ。」
うん、中指が届いたみたいね。
良かった良かった――ってあれ?
この子の雰囲気からして、もうちょっと喜ぶものだと思ってたけど…。
そうでもないわね。
そっと百円を引き寄せて、無言でポケットに入れて――ん?
えーと…。
ど、どうしたの?こっちをじっと見て…。
「先輩っ!!」
痛ひゃっ!
び、吃驚するから!いきなり両肩掴まないでくれる?
「今。魔法使ったっすよね!?」
――っ!!!!?
えっと…。
それはつまり――、――そういうこと、よね?
「――つぐみちゃん。ちょっと遅いと、ののは思うの。」
ふう、ごめんごめん、新入生とちょっとね。
でもほら、ちゃんと買ってきたわよ。
あー…それにしても、やっぱり階段を三階分はしんどいわ。
少し休憩が欲しいところだけど、それよりも先に、遅くなった言い訳をもう少ししないとね。
「――ふーん、人助けしてたの。実につぐみちゃんらしいと、ののは思うの。」
そお?
ちゅるるるるーと二人並んでフル牛吸う光景って、現役JKなら絵になるのかな?
って、そうじゃなくて。
え?私らしい?
「うん。らしいの。」
らしい、か…。
確かに、普段からそうできるように目を光らせてはいるけど、それをノノちゃんたちに話したことは無いのよ。
さっきの自販機でのやり取りも、ノノちゃんには魔法の事は伏せて説明したし。
あ、ちょっと話飛んじゃうけど、さっきの子――えーと…結川さん、とは、あの後少しだけ話して別れたわ。
えーとまず、立つと思った以上に背が高いのに驚いて…。
そして一応軽い自己紹介をしあって、私の魔法についても少しだけ話して…。
で、予鈴が鳴ったからいそいそと帰ってきたのよ、って、ああ!
連絡先…聞くの忘れた、…ぬかったわ。
ま、まあでも、過ぎたことは仕方ない。
とにかく、今はノノちゃんね。
ノノちゃん、人助けが私らしいって、ほんとにそう思う?
「うんなの。結構つぐみちゃんにはよく助けてもらってるの。そう思ってるのは、ののだけじゃないと思うの。」
そ…う…。
それは、ちょっと嬉しいわね。
――噓。
ちょっとじゃなくて、かなり嬉しい。
それこそ、飛び上がるほどに。
今まで、自己満足で人助けっぽいことをやってきたつもりだったけど――。
誰にも気づかれなくていいって、言い聞かせてたけど――。
それでもやっぱり認められるってのは、すごく嬉しい。
それも、ニカみたいな魔法少女仲間に、じゃなくて、事情を知らない友達に。
三年間の私が肯定されたような、努力が報われたような、そんな…感じ。
ほんと…ほんとに死ぬほど嬉しい、震えが止まらない。
あ、ヤバ――ちょっと上向こう。
「ちなみに結構泣き虫なのも、みんな知ってると、ののは付け足すの。」
う゛…。
にんまりと笑うノノちゃんが、ちょっと憎たらしい。
な――泣いてないもん。
「つぐみちゃん、かわいいの。」
ぐぬぬ…。
――さて。
今日はノノちゃんに沢山からかわれたわ。
それでも、なんで泣いたのかを深く聞いてこないところが、ノノちゃんだなって。
だから私、ノノちゃん好きなのよね。
…まあでも、仕返しに強請るネタを、今度探しておきましょう。
おほん、それはさておき。
出逢っちゃったわね、魔法少女。
私を含めて3人目。
どんな魔法使うかまでは聞けなかったけど、私が魔法使えるって気付けたってことは――。
彼女自身も魔法が使えるっていう彼女の話に、おそらく嘘はないと思う。
ニカの時も、似たような感じだったもの――って、あ!
という事は、よ?
もしかして、念願の後輩魔法少女ができたってこと!?
――うーん…、いや。
歳が下だからって、必ずしも魔法少女として後輩という事にはならないのか。
私より先に、力に目覚めてるかもだしね。
まぁでも、年齢的には後輩には変わりないわ、うん。
名前は確か、結川…、結川…ナユさん。
連絡先交換できなかったけど、また会えるかな。
1000人以上の人が通ってるっていっても、所詮学校だものね。
また会えるでしょう。
その時にはちゃんと聞こう、連絡先。
もちろん私からね。
だってほら、私の方が先輩なんだから。
―続―
お疲れ様でした。
ののちゃん、いい性格してますね。
つぐみちゃんと相性バッチりな気がします。
ナユは…、うん。
まあ、彼女は彼女らしくていいと思います。
今後も皆の活躍に期待しましょう。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
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