第十六話 魔法少女押します
私はつぐみ。星河つぐみ。
なんの魔力の暴走もなく、無事に文化祭を乗り越えた魔法少女よ。
ちなみに私は、みかんさん推し。
桃色は魔族にあげるわ。
――って、そんなことはどうでもいいわね。
そんなことより、魔力の話。
私が魔法を使いだしてから、もう2年にもなるけど、その間に一度も魔力なんて感じたことないのよね。
んー…いや、それは少し言い過ぎかな、思い当たる節がないわけでもない…かも?
えーと例えば――ニカが魔法使った時、たまにだけど『あ、今使った』って気付けてたのよね。
それを『魔力を感じ取ったからだ』って言えそうではあるんだけど――。
でも、絶対気付けるんじゃなくて、気付けない時は気付けないのよ。
だからそれもあって、魔力を感じ取ったからニカの魔法に気付けた、とはちょっと思いづらいのよ。
けど、一日一回という謎の回数制限があるのは確かだから、実は私に魔法が一回使える分だけの魔力がある、と思えなくはない。
そしてその魔力は、魔法を使うと消費されて、眠ると回復する…とか?
うーん…。
あり得なくはない、あり得なくはないけど――しっくりは来ないわね。
しっくりこないというか、釈然としないというか…。
んー…つまり、私自身に魔力を使っているという感覚が…ないのよね。
だから、理屈が通っていてもピン来ない。
私の感覚の話だから、説得力なんてないのは分かってるけど、でもそうとしか言えないのよ。
というかそもそも、寝なくても回復するんだったわ、魔法の使用回数――あ!
あー…そうよ、そうそう、感覚的にソシャゲのログインボーナスに近いわね。
時間が来ると自動的に回復するの。
どう?
言い得て妙でしょ?――って、分からないか。
でも私的には、そんな感覚なのよ、魔法回数の復活って。
――ん?
でもそうなると、魔力を感じない私は、正確には魔法少女じゃないのかしら?
んー…魔法少女で、いいわよね?
超常的な現象を起こせるんだもの。
普通の人には出来ない事ができるんだもの。
そう、だから私は魔法少女よ。
…少女っていう年齢は、もう超えたのかもしれないけど。
――さて。
そうこうしてるうちに、やっと片づけが終わったわ。
出払っていた机も椅子も、元の位置に元通り、もういつもの見慣れた教室よ。
でも、一生懸命みんなで作った飾りを、一つひとつ捨てていくのは切ないものがあったわね。
せっかくみんなで作ったのに――って、ん?なに?
そんなキャラじゃないだろって?
はぁ、私だって成長するのよ。
この文化祭のおかげで、友達だって出来たんだから、ふふん、どうよ。
…まあ結局、高校入ってすぐ友達作るつもりが、半年以上もかかっちゃったけどね。
あー…で、話を戻すけど、その友達と作った物を、どんどん捨ててくのよ?
そりゃセンチメンタルにもなるってもんでしょ。
それで、ちょっと不安なことがあるんだけど…。
――。
えーっと…。
…友達って、どういう物なんだっけ?
教室の壁から引きはがしてポイっちょした、きらびやかな飾りと一緒に、友達との仲も失ったりしない?
しない…わよね?
ブランクが長くすぎてよく分からないのよ。
ニカ以外の――それこそ魔法少女仲間じゃない友達なんて、ほんと何年振りか分からないわ。
――でも。
ちゃんと友達出来たわよ、ニカ。
約束、守れたわよ――。
「つぐみちゃーん!よかった、まだ教室にいた!ふぅ。ねえ!みんなで街に寄ってかない?」
あ、ミナエちゃん。
もちろんいいけど、みんなって?
「そう、みんな!ゆっちと、のんと!」
ああ、なるほど、打ち上げよね?
もちろん文化祭の。
「そうそう!『お疲れ様会』!美味しいもん、食べに行こ?」
そうね、ちょうどお昼時だし。
お腹空いたもんね。
「文化祭の後、片づけだけの半日なんて!ああ、素晴らしきかな我が高等学校!」
あはは、それは私も思うわ。
入学式の次の日が休みなのには、正直どうかと思ったけどね。
…それにしても、クルクルーっと回りながら、われらが高校をほめたたえるミナエちゃんは今日も元気一杯ね。
その背の高さでクルクル回られると、圧迫感がすごいわ――特に胸部からの。
回るだけで、胸ってこんなに揺れるもんなんだ、すごい。
ショートカットをまとめてるせいで、髪が全く揺れない分、余計にそこだけ存在感があるわ。
「じゃあ、いこ!つぐみちゃん!」
へ?え、うん。
おっと、変なこと考えてたら油断してたわ。
それで、えーと…ユイちゃんとノノちゃんは?
「こうもーん。あ、繋がった。あ、ゆっち?――うん、つぐみちゃん、ゲットだぜー!」
どうやら私は野生だったらしいわ。
でも、ま、みんなのポケットに収まるのも悪くないか。
だって、やっとできた大事なお友達だしね――。
「水良江市ショッピングストリート!んん!久々!」
「みーな、ちょっと声が大きいと、ののは思うの。」
「そーよ。せっかく来てくれたつぐみちゃんが、驚いて帰っちゃうでしょ?」
いや、流石に帰ったりなんてしないけどさ。
でも、私も久々だわ、水良江市ショッピングストリート。
入学して間もないころに、何度か散策に来て以来かしら。
小さいころからも数えるなら、それなりの回数は来てるけど――、ちょっと遠いから、あまり来ないのよね。
――いや、ごめん。
一人で来るのがなんか切ないから、あまり来なかったと、ちゃんと訂正しておくわ。
だってみんな楽しそうに、友達や彼氏と買い物してるんだもの。
爆発しろとは言わないけど、寝る前に昔のトラウマでも思い出して寝不足になればいいくらいは思う。
あ、リア充と呼ばれる皆さんが、じゃなくて、私が、ね。
「それより、みなえ。どこに食べに行くのかそろそろ教えてくれない?」
「えー!ネタバレ良くなくないっ!?ゆっちはせっかちだなあ!」
おっと、話ちゃんと聞いてないと。
こんなことで一人勝手にナーバスになってたら、皆に迷惑だわ。
「ネタバレとかどうでもいいの。何を食べるのか分からないと、お腹の準備ができないとののは思うの。つぐみちゃんはどう?」
前髪で隠れ気味の目で、下からねだるように喋るのがノノちゃんのスタイル。
でも大きな目のせいで、前髪に隠れ切ってない。
口ちっちゃい。
鼻もちっちゃい。
ぶっちゃけかわいい。
じゃなくて、えーと何だっけ?
お腹の準備?ああ、何か分かる気がする。
そうね、私も教えて欲しいわ。
「ほら。観念しておしえなさいよ、みなえ。」
「えー!」
ユイちゃんは、2人のお守り役みたいな子って印象。
中肉中背の――って女の子に使うとあまり可愛くないわね、この表現。
オホン、訂正。
平均的な身長体重で普通の長さの髪を、よく後ろで一つに束ねてる女の子よ。
今は、街に出かける様なのか、二つに分けて前に垂らしてるけどね。
とにかく、一番しっかりしてる子よ。
文化祭の準備は、ユイちゃんのおかげで、スムーズに進んだと言っても過言じゃないわ。
まあ、とにかく3人は仲が良い。
だからこそ、この輪の中に居ると、まだちょっと疎外感を感じるわ。
でも、私が話に入れるよう気を遣ってくれる、いい子達よ。
文化祭も一緒に回ってくれたし。
まあ見ての通り――というか今言った通り、それほど私まだ馴染めてないですけど。
「むー、しょうがにゃいにゃー!では!今日のお昼はなんとー…、でろでろでろでろ、でん!ガッツリチョーザ!」
「あ、新しく出来た店なの、ガッツリチョーザ。美味しいパスタががっつり食べられるの。いい案だとののは思うの。」
「この辺になかったもんね、ガッツリチョーザ。みなえにしては、なかなかいいチョイスじゃない、リーズナブルだしパーティって感じで。ねえ?」
うん、いいと思う。
パスタ、パスタかぁ、トマトクリームとかいいなぁ…。
いや、でもここはジェノベーゼかな、つくるの面倒だし。
…松の実高いし、代替のカシューナッツだとちょっと寂しいし。
うん、お腹空いたわ。
「じゃー早く行くよー!」
うん、行きましょう。
たしか…ここからだと、5分くらい歩かないとだしね。
――あ。
美味しい、予想以上に美味しい。
やるじゃない、ガッツリチョーザ!
「美味しいの。いくらでも入ると、ののは思うの。たくさん食べるの。」
「よろしくね、のの。確かに美味しいけど、これ、思ってた以上に量多いから…。みなえが頼み過ぎなのよ。」
「任せるの。ののの得意分野なの。」
ちっちゃい体で、よく食べるみたいねノノちゃん。
トマトクリームパスタがどんどん減っていくのを見るのは、中々に爽快だわ。
きっと太らないタイプなんでしょう、うらやましい限りね。
ん?ジェノベーゼ?
多数決で負けたのよ、仕方ないでしょ。
「それにしても、水祭うまくいってよかったよね!」
「そうね。つぐみちゃんとも仲良くなれたし。」
「そうなの。準備期間中、たくさん助けてもらったとののは思うの。」
いえ、こっちのセリフよ。
皆のおかげで、たのしく過ごせたわ。
「つぐみちゃんはもっとクールな子だと思ってた!だから話しかけにくかったんだよ!」
「ちょっと、みなえ!何言って――。」
いーのいーの、気にしないでユイちゃん、ホントの事だから。
確かに中学の時はそんな感じだったしね。
そもそも、友達と言えるのはニカくらいだったし。
ニカ以外に友達なんていらないって思ってたし。
…さすがに、こんなことまでは皆に言えないけどね。
「ん?という事は、高校に入ってからは違ったの?ののはそう捉えたの。」
う…ん。
一応は、友達作ろうと、頑張ろうとはしてたんだけど…なかなかうまくいかなくて。
ほんとに、苦笑しか出てこないわよ。
友達作るのって、なんでこんなに難しいのかしら。
声をかけるっていう、ただそれだけの事が、どの科目よりも難しいのよ。
なんで学校では、その辺のことを教えてくれないのかしらね。
…まあ、入試にコミュニケーション能力という科目があったら、全く受かる自信ないから、それはそれで嫌だけども。
――でも、よ?
こんなどうしようもない私に声をかけてくれる子達が、遊びに誘ってくれる子達が、今、目の前にいるのよ?
すごく恵まれてるわよね、私。
正直、まだ全然、幸せや幸運を素直に受け入れられないんだけど、でも――。
…喜んでもいいのよね?
友達3人もできたんだものね。
だから、これだけは皆に言っておかないと――うん。
みんな、今日は誘ってくれてありがとう。
「ののたちも、つぐみちゃんが来てくれて嬉しいと思ってるの。」
「そうよ、こちらこそありがとうよ。」
「私たちを仲良くしてくれた水祭にも感謝ね!」
「…みなえ。さっきから、水祭、水祭言ってるけど。そう呼んでるのあんただけだからね。」
「来年から流行るんだよ!」
「流行らないと、ののは思うの。」
「私が生徒会長になって流行らせるんだよ!」
「あー、はいはい。」
あはははは。
みんな優しいわ。
そういえば、この3人は中学からの腐れ縁って、ユイちゃんが言ってたっけ。
見てて気持ちが良いくらいに、気心が知れてるって感じだわ。
ほんと、誘ってくれてありがとね、みんな。
この中に、私を入れてくれてありがとね、みんな。
「――では!お腹も膨れたところで、今日の2つ目のメインイベント!パチパチパチ!」
え?なにそれ。
ただの打ち上げじゃなかったの?
聞いてないわ。
「いっぱい食べたの。満腹と、ののは感じてるの。満足。」
「おつかれさま、のの。おかげで綺麗に無くなったわ。」
うわ。
ほんとに、全部綺麗に無くなってる。
ノノちゃん、すごい。
「これこれ!3人とも注目!特にゆっち!主役はゆっちなんだからね!」
「わ、分かってるわよ。」
ユイちゃんが主役?
あ、なんかユイちゃん、顔が赤くなってる。
「ちなみに影の主役はつぐみちゃんだと、ののは言っておくの。」
わ、私?
どういうこと?
寝耳に水なんだけど!?
「そう!つぐみちゃんが影の主役!」
そんなビシッと両手で指さされても!
どういう事?
「えー、こほん。何を隠そう、このゆっち!吹奏楽部の憧れの先輩に告白したいと、常々思い幾星霜!だがしかし!中々勇気が出せずじまいで、文化祭という一大イベントを逃してしまい候!我々二人がどれだけ背中を押しても!押しても!押しまくっても!一歩を踏み出せぬこのチキン!」
「チキンなの。」
ほんと仲いいなぁ。
無茶苦茶な文法が、逆にいい味出してるわ――。
って、おっと、そんなほんわかしてる場合じゃなさそうね。
それで、それで?
「それ故に、つぐみちゃんという新しい風に、一肌脱いでもらおうと!いや!チキンの一皮むいてもらおうと!そう思い至っては我々、今日のこの打ち上げの場に、つぐみちゃんに馳せ参じてもらったので御座候!」
べべんっ!――って、どっから三味線が?
ああ、ノノちゃんが携帯でならしたのね。
用意周到か!
「つまり、見るからに大人っぽいつぐみちゃんに、ゆいっちの背中を押してもらおうと、のの達は思ったの。」
あー、それで私が陰の主役ってわけか。
なるほどなるほど――って、え?ちょっと待って!
それ、期待が重すぎない?
大人っぽいどころか、恋愛経験なんて欠片も――いや、微塵も無いわよ?私!
「いいのいいの。のの達も皆無なの。でも、つぐみちゃんは周りの子と雰囲気が違うと、のの達は思うの。大人っぽいと思うの。」
「つまり!なんか私たちより人生経験豊富そうだから、いい感じに良い事い言ってくれそう!って、そんな感じ!そんなノリ!」
ええー…。
「細かい事情は気にしなくていいの。ただ、先輩に告白する勇気がない女の子に、一言なにか言ってあげて欲しいと、ののはそう思うの。勇気を出させる一言を、お願いするの。」
おふ…。
なんという、無茶ぶり…。
「無責任な一言で構わないから!お願い!」
えーと…。
そんな拝まれても、困るというかなんと言うか…。
さっき食べた、ミートソースが逆流しそうよ…。
――え?
ああ、2種類頼んだのよ。
トマトクリームとミートソースね。
それと、マルゲリータ一枚。
いや、そんなことよりもよ。
この状況、ゆいちゃんはどう思ってるの?
「よろしく…お願いす、るわ…。」
あー、覚悟決まっちゃってる系、決まっちゃってる系ね。
顔赤くして、そんなに委縮しちゃって。
あーもう、わかった、わかったわよ。
こんな私をせっかく誘ってくれたんだから、その無茶ぶりに乗らせてもらいましょう。
一肌脱がせてもらいましょうよ。
ほんとに無責任に言っちゃうけど、悪く思わないでね、ユイちゃん。
「うん…お願い。」
じゃあ…えーと、ユイちゃん、あのね。
言いたいことを伝えられる時間って、ユイちゃんが思ってるより、ずっと短いのよ。
ユイちゃんの気持ちは――うん、いつまでも変わらないかもしれないけど、ね。
でも、先輩に彼女ができるかもしれないし、先輩がそもそも居なくなっちゃうかもしれない。
ああ、例えよ、たとえばよ、気を悪くしたらごめんね。
でも、私はその経験を小学3年生の時に初めてしてるの。
――え?
ああ、うん、父親が死んだのよ。
あ、大丈夫よ、もう整理ついてるから、気を遣わなくて大丈夫よ。
で、うん、だから、私と同じ思いをユイちゃんにして欲しくないって話ね。
伝えられる今を、大切にして欲しいなって、そう思うわ。
…と言っても、こんな経験を話してる私自身も、未だ同じ失敗をしちゃうんだけどね。
生きるのって難しいと思うわ。
――。
はぁ、つい長々と喋ってしまったわ。
しかも最後の方とか、ただの愚痴じゃないの。
整理がついてるとか、それもちょっと嘘だし。
というかそもそもの話よ!
こんな重い話、するべきじゃなかったんじゃない?
みんな引いちゃうわよね。
「――つぐみちゃんの大人っぽさの一端を、ののは垣間見たの。」
「うん。そりゃみんなと雰囲気違うわけだ。なっとく。」
ほら!引いちゃってるじゃない!
ミナエちゃんなんか、喋りのトーンがストンと落ちちゃってる!
もっと元気に喋ってよ!
語尾のエクスクラメーションを忘れないで!
「た、大変だったのね…、つぐみちゃん。」
ユイちゃんも、自分が話題の中心だって忘れちゃってるし!
ああ、えーっと。
と、とにかく、伝えたい思いがしっかりあるなら、伝えられる間に伝えようって事よ。
明日いきなり、一生叶わない願いになっちゃったりしちゃうんだから。
「う、うん…。」
あー、やっぱり無理だよね。
言葉の上では、肯定してくれてるけど、感情がついてきてない感じかな。
仕方ないわよね。
こんな気持ち、経験しないと分からないと思うし…。
はぁ、気持ちの後押し、か。
なかなか上手くいかないものね。
――ん?
押す?
ああっ!気持ちを押してあげればいいんじゃない!?
たぶん…できると思うわ。
だって、前に身をもって経験してるはずだし――、裏は取ってないけど、というかニカ、教えてくれなかったけど!
――うん、まあとにかく、やってみましょう。
できなかったら、魔法が発動しないだけよ。
よしっ!
じゃあ行くわよ!
ユイちゃんの気持ち、すこし前へ動け――っ!
…。
……。
どう?
なにか変化ありそう?
「――わかったわ。今から、連絡してみる。」
お?
ユイちゃんに動きが。
携帯…で、メッセージ送るのかな?
「さすがは大人なつぐみちゃん、とののは思うの。」
「ほんとに!あのチキンがこんな簡単に動くとは!」
買いかぶり過ぎないでよ?たまたまだから。
えーと、つまりは…上手くいった、のかな?
テーブルに転がる紙ナプキンに魔法使ってみても――。
うん…どうも発動しないっぽいし。
おそらくは、成功してる…と思う。
「――はい、えっと。明日、放課後二人で会う約束をしました。みんな、ありがとうございました。」
「ゆいっちが、しおらしいの。珍しいと、ののは思うの。」
「成功したら、ガッツリチョーザ奢りね!」
「はいはい、わかったわよ、みなえ。で、つぐみちゃん、ほんとにありがとね。おかげで勇気が出たわ。」
お役に立ったなら、よかったわ。
明日、頑張ってね。
「うん。ありがと。」
こっちも魔法がこんな使い方ができるって知れてよかったわ。
ありがとね、ユイちゃん。
――あれから数日後、というか週末の土曜日。
半日の授業のあと、また四人でガッツリチョーザに集まったわ。
もちろん、ユイちゃんの奢りで。
前回は『お疲れ様会』だったけど――今回は『ユイちゃんを励まそう回』ね。
…。
…そうよ、振られたの。
水木金と、ユイちゃんはほんと酷い顔してた。
だから『ユイちゃんを励まそう回』が開催されたの。
そういう経緯。
でも、登校するだけ偉いと思うわ、私だったら絶対学校休んでるもん。
って、そんなことはいいのよ。
ユイちゃんが偉いのは、前々から分かり切ってることだもの。
問題は――別の所よ。
つまりは………はぁ。
こんなことになるんだったら、押さない方が良かったな、背中。
私が魔法使わなければ――。
あんな無責任なことしなければ――。
もっと時間をかけて関係を育んでいれば――。
先輩がユイちゃんを好きになってくれる未来があったかもしれないのに…。
その未来を、私が奪った。
無責任に、私が奪った。
普通の人には出来ない方法で、奪ったのよ。
――ユイちゃん、本当にごめんね。
ごめん、なさい。
だから。
この罪悪感を一人で抱え込めなかった私は、『ユイちゃんを励まそう回』でユイちゃんに謝った。
未来を奪ってごめんなさい。
無責任に奪ってごめんなさい。
って、そう何度も謝ったんだけど――。
『なんでつぐみちゃんが泣くのよ…もう。あのね、私は、つぐみちゃんが背中押してくれて嬉しかったわ。それにほら、まだ好きになってくれないって決まったわけじゃないじゃない。だって、先輩はまだ生きてるんだもの。そう言ったのはつぐみちゃんでしょ?』
と、逆にそう励まされてしまったわ。
なにが、つぐみちゃんは大人っぽい、よ。
ぜんぜんユイちゃんの方が大人じゃない。
私もまだまだだと、実感したわ。
かなり成長してると思ってたんだけどなぁ、これでも。
…はぁ。
結局、ガッツリチョーザは今までの迷惑料ってことで、ユイちゃんが払わせてって言うし。
ユイちゃんに比べれば、私なんてミジンコよ。
――。
――まあ、とにかく。
こうして素敵な友達が3人、私にできました。
高校に入学してから、半年以上もかかっちゃったけど。
ちょっと苦い経験になっちゃったけど――、ね。
魔法…については、まだ内緒かな。
言える日が来るかは分からないけど、秘密があると友達じゃないなんて――。
そんなことは多分ないはずだから。
それを私は知ってるもの。
そうよね、ニカ。
―続―
お疲れ様でした。
今回はちょっと長めで申し訳ない。
色んなキャラが急に出てきて、短くまとめられなかったんです。
ほんと、いっぺんに3人も友達になるとか、つぐみちゃんには反省して欲しいです。
こっちの苦労も知らないで。
―とにかく、つぐみちゃんには私の方からきつく言っておきますので、
安心して今後も読んでいただけると、嬉しいと思います。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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