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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第十五話 魔法少女復活します


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 魔法少女はもういいです、と最近まで思ってた魔法少女よ。


 別に恥ずかしい恰好に変身するわけではないけどね。

 それに、無神経なマスコットがいるわけでもないわ。

 むしろ、可愛いマスコットの一匹や二匹くらい、現れてくれてもよくない?

 …まぁ、現れないものは仕方ないから、魔法の話に戻すけども。

 実は私、つい先日まで魔法をほとんど使ってなかったのよ。

 もう魔法少女じゃなくていいと、本気でそう思ってたからね。 

 いや、魔法少女だけじゃなくて――人生が、もうどうでもよかった。

 死にたいとさえ思ってた。

 そう…思ってたのよ。

 それなのに――。

 死にたいと、毎日死ぬほど思っていたはずなのに――。

 私は人より簡単に死ねたはずなのに――。

 命を簡単に止められたはずなのに――。

 それでも、そう…出来なかったのは、他の人と同じように、どれだけ死にたくても、「死ぬ」のが死ぬほど怖かったからに他ならないのよ。

 世の中には、これ程までに恐ろしい()(つい)ぞ選んでしまえる人がいて、その人たちはきっと、私なんかよりも不幸で、不遇で、残酷な現実を歩んでしまったに違いない。

 だから――私なんかよりも辛い日常が世界にありふれているのだから、私の境遇なんてまだ全然不幸の内に入らない。

 だから大丈夫、大丈夫。

 ――と、こんな風に、「死にたい」と「大丈夫」を繰り返す日々だったわ。

 え?

 ニカとそんな魔法の使い方をしないって、約束してたからなんじゃないのかって?

 …。

 …そんな約束なんて、どうでもいいくらいに、私が落ちぶれていたって話よ、察して。

 まあでも、今こうして前を向けたのは、今話に出てきた憎い親友の()()ね。

 「おかげ」というには、まだまだ割り切れてない私だけど、それでも――。

 今日からパトロールを再開しようと思うくらいには、なんとか前を向けているわ。


 ――さて。

 久々にパトロールするなら、まずはここでしょう。

 そう、商店街。

 久しぶりに来たけど、記憶にある光景とあまり変わりはないわね。

 ま、数か月くらいじゃ変わるわけないか。

 変わったのは、私だけで――。

 …。

 って、いやいや、私はバカか。

 今さっき、思考のデフレスパイラルから何とか抜け出せたって宣言したところでしょう。

 考えが深みにはまる前に、さっさと以前の様に散歩しましょう。

 ほら、酒屋さん、お肉屋さん、お魚屋さんよ?

 半年前と変わりなく、今日も営業中。

 変わってないは、いいこと。

 変わらないは――いいこと。

「あら、つぐみちゃん。久しぶりね。」

 ん?

 ああ、八百屋さんの奥さんか。

 こんにちは。

「はい、こんにちは。って、あらぁ、髪の毛さっぱりしたわね。きれいな長い髪だったのに。」

 あはは、ええ、高校に入ってすぐ、スパッと。

 ――あ。

 あまり掘り下げられないように、笑顔も張り付けておかないとね、――ニコッ。

「そう?でも、セミロングも似合うわねぇ、元が美人さんだものね。で、今日はおつかい?」

 ありがとうございます。

 今日は、お散歩です。

「あら、残念。美味しい春キャベツが入ったのに。――あ、春と言えば、おととい、高校入学式だったんじゃない?って、あらやだ、もう『おつかい』っていう歳じゃないわね、ごめんねぇ。」

 いえいえ、大丈夫です、私はまだまだ子供ですよ。

 実際、つい先日まで半引きこもり状態だったし。

 春キャベツと普通のキャベツの違いが分からないほどに、私はまだまだ子供よ。

 でも、そんな私でもなんとか――。

 おかげさまで、なんとか高校生になりました。

「おめでとうね、つぐみちゃん。あ、で、聞いたわよ?水良江(みらえ)高校だっけ?勉強がんばったのねぇ、おばさんも鼻が高いわ。」

 ありがとうございます。

 でも、自慢できるような事じゃないんですよ。

 勉強くらいしかすること無かったっていう、さみしい理由なんですから。

「やだ、もう謙遜しちゃって。」

 いえ、謙遜だなんて、そんなつもりじゃ――ないんですけど…。

 うーん…困ったわね。

 謙遜なんて以ての外で、言葉通りの情けない理由なのに。

 誇れることなんて何もない、ほんとに後ろ向きな、そんな理由なのに。

「相変わらずいい子ね~。うちの子も、つぐみちゃんみたいになってくれればいいのに。」

 チナちゃんも、きっと素敵に育ちますよ。

 なんたって可愛いですから。

「だと、いいんだけどねぇ。」

 じゃあ、私はこれで。

「ああ、引き留めちゃってごめんね。今度また野菜買いに来てね、サービスするから。」

 はい、いつもありがとうございます。

 …。

 ……はぁ。

 私はやっぱり全然成長してないわ。

 こういう会話は相変わらず苦手。

 なによ、かわいいから素敵に育つ、って!

 受け答えが雑にもほどがあるじゃない。

 …。

 …はぁ、まぁとにかく、また少し歩きましょう。

 滑り出しがうまくいったとは思えないけど、今日は長らく休止してたパトロールを再開するために来たんだもの。

 やると決めた以上、ニカにそう誓った以上、これくらいで挫折するわけにはいかないもんね。

 うん…。

 ……。

 それにしても――()()()、ねぇ。

 八百屋さんの奥さんには、今のこんな私でも、そう見えたのかしら。

 確かに、そうなるように半年前までは努力してたけど…。

 今はまだ、その言葉を受け入れられる程、私の心は全然落ち着いてないのよね。

 そもそも、その私の目指した()()()は、あまりに私に都合のいい、()()()だったと思うのよ。

 今思うと――だけどね。

 小学校高学年の時、あんな無理して()()()してた私に、おかーさんが気づいてなかったと思う?

 普通に友達を作って、普通にわがまま言って――。

 そんな私の方が、おかーさんを安心させられたんじゃないかって、今ではそう思ったりもするのよ。

 ま、この半年は、その『取り繕い』すらも、()()、出来てなかったけどね。

 …。

 …はぁ、まったく。

 まったくもって、まったく。

 どれだけ親を心配させたと思ってるのよ、ねえ?

 ほんと、ここ半年、周りに沢山迷惑をかけまくりよ。

 特に、おかーさんとお父さんには、どれほど心配をかけたのか、想像もつかないわ。

 この半年以上もの間、ほんと何もしたくなかったし、何もする気になれなかったし――。

 実際、ほとんど何もしてなかったもの。 

 でも、何もしないと死にたいって考えちゃうから、だから勉強だけををしてたのよ。

 ひとりで黙々と。

 ひとりで延々と。

 有名な進学校に受かったのは、そのおかげ、その副産物。

 だから、とくに感慨はなかったわ。

 死んだように生きていたもの。

 高校に受かろうが、どうでもよかったの。

 機械的に選んだ高校に、機械的に試験を受けに行って、機械的に合格通知を受け取って――。

 ほんと、いい子なんて程遠い。

 ――でも、おととい。

 つまり、高校の入学式の日。

 郵便受けに届いた一通の手紙が、私を救ってくれたのよ。

 憎いことをしてくれたわね、ニカ――って、あ。

 いつの間にか中央広場まで来てたのね。

 ちょっと疲れたし、少しベンチで休憩しましょう。

 昔、ニカの胸で泣きじゃくったベンチで。

 懐かしくて、恥ずかしいそんな記憶だけど、それも今では大切な思い出ね。

 そう思えるのも、おとといの手紙のおかげ、かな――。

「ひぃあっ!!――――っ!!ひ、ひったくり!だれか!」

 ん?叫び声?

 こんな平和な商店街の往来で?

 いったい何事!?

「大丈夫ですか、おくさん!?おいっ、サブロー!追え!」

「――っす!!」

 え!?ひったくり!?

 なにその、穏やかじゃないイベントは!

 どこ!?どこにいるの、ひったくり――あっ!

 いた!アイツね!

 サブローさん…じゃ全然追いつけそうになさそう。

 ただのクリーニング屋さんだし、足が速そうなイメージもないもの。

 ――という事は、久々に私の出番ね。

 だれかの役に立つのは、ホント久しぶり。

 うーん、それにしてもあの犯人、せめて自転車でも使えばいいのに。

 身一つで犯行に及ぶなんて、それほど足に自信でもあるのかしら。

 ま、どっちでも結果は一緒なんだけどね。

 じゃあ復帰一発目、行きましょうか!

 せーのっ!


 止まれ――っ!!


「――うおっ!!」

 うわぁ…痛そう。

 ビタン!!って音がここまで聞こえそうなくらい、見事にすっ転んだわ。

 つまりは成功ってわけね。

「ははっ!ドジな奴め。今、警察に突き出してやるからな。おーい、だれか手伝ってくれ。」

 ドジと言うか、私がやったんだけどね。

 犯人の靴を一秒止めたの。

 あとはもう、説明しなくても分かるわよね?

 もし自転車乗ってたら、もっと怪我してたと思うから、ラッキーだと思いなさい、ひったくりさん。

 それで、えーと、その後の首尾は……ああ。

 サブローさんが馬乗りで押さえつけてるし、人も集まってきたからもう大丈夫そう。

 よかったわ。

 でも、こんな白昼堂々ひったくりとか、ここの治安が少し不安になるわね。

 私も気を付けないと。

 でも――。

 おかげで、少し自信が戻ったわ。

 不謹慎だけど、犯人さん、ありがとう。

 私が心から人のためになったって思える魔法の使い道って、滅多にないのよ。

 笑顔にすることはできたりするんだけど、それで私が満足できるかは、別なの。

 今回は…満足、そう思っていいわよね?

 (いいなのよ!つぐみん、よくやったなのよ!)

 ――うん。

 ありがと、ニカ、嬉しいわ、妄想でもね。

 今度会った時ちゃんと報告するから、その時に、また褒めてね。

 いつになるかは…分からないけど。 

 ま、とにかく、私ももう少し頑張るわ。

 

 ただいま。

 夕飯…までは、まだ少しあるわね。

 部屋でゆっくりしましょう。

 明日は学校だし、その準備でもしようかな。

 準備っていっても、ほぼほぼレクリエーションで終わるから、あまりすることないんだけどね。

 ――というか、金曜日に入学式やるとか変な学校ね水良江(みらえ)高校、これから3年間、ちゃんとやって行けるかしら。

 まあでも、そのおかげで泣きはらした顔で学校に行かずに済んだんだから、良しとしましょう。

 じゃあ、はい、準備おわり。

 ふう、夕方にベッドで横になるのって、なんでこんなに気持ちいいのかしらね。

 …。

 あっと、ちょっと寝ちゃいそうだったわ。

 ん?いや、10分くらい意識飛んでたっぽい、時計が少し進んでるわ。

 こんな時間に寝ちゃうと夜が大変だから、しっかり起きておきましょう。

 入学2日目から遅刻とか、洒落にならないものね。

 高校ではちゃんと頑張るって、昨日泣きながらそう決めたんだから。

 ニカの手紙を、なんども、なんども読み返しながら、そう決めたから。

 だから――。

 まだニカに会いに行く勇気はないけど、それでも明日、学校で友達を作る勇気くらいは、振り絞ろう。

 うん。

 ――でも、とりあえずは、親二人に安心してもらわないと、ね。

 私はもう大丈夫って、ね。

 じゃあ、まずは…。

 おかーさーん!私も、夕飯手伝うわ!


                                ―続―

お疲れ様でした。

今日も今日とて時間が行ったり来たりしています。

コロコロと場面が変わるのを

つぐみちゃんの独り言だけで説明するのは中々に難しいです。

これからも精進しますので、生暖かい目で見て頂けると幸いです。


では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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