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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第十四話 魔法少女助けます


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 別に、とあるウェブサイトでステッキなんて貰ってない魔法少女よ。


 そもそも魔法少女ってみんなの憧れじゃない。

 その憧れが、いきなり人を殺しちゃうって――なかなかにアレね。

 でもまぁ、私とは完全に無縁かな。

 だって、私の魔法は些細で小さくて、物1つを1秒だけ止めるだけの、ほんのささやかな魔法だもの。

 魔法単体だと、人どころか虫の一匹も殺せはしない。

 間接的になら、いくらか方法は考えられるけど…それなら、魔法少女じゃなくても可能だもんね。

 日常にありふれた道具を人にふるえば、いくらでも。

 つまりは結局、使う人次第って事。

 …うん、やっぱり私の魔法は些細な魔法だ。

 とても優しい、私のための魔法。


 ――というわけで、今日は月曜日。

 嬉しいことに学校はお休み、いわゆるゴールデンウイークね。

 だからせっかくだし、ニカと森林公園に行くことしたの。

 前に行こうとして引き返してきた、例の公園ね。 

 たしかあの時は――ニカが宿題してなかったから、引き返したんだっけ?

 時期は…うーん、去年の秋ごろだったかしら。

 ああうん、シルバーウイークだったわ。

 まあとにかく、今日はそのリベンジってわけ。

 ほんとはもっと早くに来たかったけど――。

 タイミングが合わなかったり、冬に入って寒くなったり、とまあ、いろいろあってね。

 今日ようやくといった感じよ。

 という事で、今はニカの家に向かって絶賛自転車を漕いでる最中ね。

 あの時は駅からバスの予定だったけど、今回は二人とも自転車で行こうって約束なのよ。

 ニカ、ちゃんと準備してるかしら。

 待たされたら、その時間分だけデコピンね。


「痛いなのよ…。」

 十発をたった一発に大負けしたんだから感謝しなさい。

 というか、ニカの家を出てからもう10分くらい経つじゃない、公園まではあと半分ってところよ?

 さすがにもう痛くないと思うんだけど…。

 なんで未だに涙目でおでこを()()()()してるのよ、もう。

 …まあ、涙目ニカ、オン自転車が可愛いからいいけどね。

 両手ふさがってて、この激レアの瞬間を写真に残せないのが悔やまれるわ。

「デコピンするならするって先に言うなのよ、ドSなのよ!というかそもそも、デコピンされたのも納得いってないなのよ!」

 先に言ったら、ニカの動き止めるのに魔法使っちゃうじゃない。

「ならしなきゃいいなのよ!」

 それは…えーと…ああっほらっ!

 ちゃんと両手で運転しなさい、危ないから。

「うー、わかったなのよ。ってそんな事どうでもいいなのよ!」

 全然そんな事じゃないわよ、どうでもよくない。

 ニカのお母さんから、ちゃんと見ててねってお願いされてるんだから。

「どうでもいいなのよ!うちの親は過保護すぎるなのよ!」

 過保護ねぇ、まあ確かにそういう気はしないでもないけど。

 でもそれはニカの身体が心配だからでしょ?

「それは…そうなのよ。わかってるなのよ。」

 私もニカがそれを分かってるって事を、分かってるけどね。

 それでも心配なのよ。

「う゛ー。」

 あ、それにしても、よく自転車買ってもらえたわね。

 確か、私の自転車に乗りたいって言ってた時――あれは去年の今頃だったかな?

 いや、6月か7月か、どっかそのあたり…だったかも。

 …えーととにかく、その時は買ってもらえないって言ってたはずよね。

 私としては、それを聞いた時その理由が分からなかったけど、まあ今となっては仕方ないとは思うわ。

 さっきも言ったけど、体弱いのよニカ、よく学校を休むくらいには。

 あ、一応注釈しておくと、当時の私でも流石それは知ってたんだけど――。

 でもまさか、自転車が買ってもらえない程に、体が弱いとは思ってなかったのよ。

 でも、それでも――それを知った上でも、ニカのご両親が過保護すぎる気は、しないでもないけどね。

「ふっふっふー、なのよ。じつは春休みに、わたしの巧みな話術で交渉した、なのよ!」

 交渉?巧みな話術で?ニカが?

 …嘘くさいわね。

 ニカにそんな事できたっけ?

「む、失礼なのよ、つぐみん。私だってそれくらいできるなのよ。作戦名はなんと!でろでろでろでろ、でん!!籠城大作戦!なのよ。一日引きこもってやったなのよ!」

 作戦名からして話術関係じゃない!

「難攻不落のクローゼットを前に、敵も白旗を振るしかなかったなのよ。」

 えーと…。

 うん、まあ、買ってもらえてよかったわね、ニカ。

 そういえば、改めて思い返してみるとだけど――春休みあたりから、ニカへの制限が緩くなった気がするわ。

 前までなら、今日みたいに自転車でお出かけも出来なかったと思うし…。

 ――あ、ということは、ニカの身体がだんだん良くなってるって事なのかな?

 それなら嬉しいわね。

 今後も、こうやって一緒に遊べるって事だもんね。

 ニカ!もう着くわよ!公園見えてきた!

「わかってるー、なのよー。」


「とーうちゃーく!なのよー。」

 うん、無事に森林公園に到着ね。

 麓の駐輪場に自転車を止めて、今は公園のマップがでかでかと書かれた大きな看板を眺めてるところ。

 へー、自転車で頂上まで行こうと思えば行ける様になってるのね、知らなかった。

 サイクリングロードが山頂まで繋がってるわ。

 ま、私一人だったとしても、自転車でなんか上りたくないけどね。

 ニカが一緒だと尚更よ、無理はさせられないもの。

 うん。

 だから、下のほうを散策しましょう。

 ほら、連休だからか人もそれなりにいるし、パトロールにはもってこいね。

「久々に来たなのよ。」

 あら?来た事あるの?って、家から遠いってわけじゃないし当たり前か。

「そうなのよ。小さい時はよく連れてきてもらったなのよ。」

 私もそれなりに連れてきてもらった記憶があるわ。

 最近は全く来てないけど。

「じゃあ、つぐみんも久々なのよ。」

 そうね。

 で?まず、何する?

「おやつタイムなのよー。」

 え!?家出て三十分しかたってないのに?

「まずはつぐみんとおしゃべりしたいなのよ。」

 …そんな嬉しいこと言われたら、従うしかないわね。

 はいはい、じゃあそこの切り株の椅子に座りましょ。


「――じゃあ、そろそろ散策に行くなのよ。」

 あら?一時間も喋ってたのね。

 こんな事なら、ニカん家で喋ってから来ればよかったわね。

「公園で喋るからいいなのよ。家だといつもと一緒なのよ。」

 うーん、まあそうか、それもそうね。

 喋った内容はいつもと変わらい、ふつーの会話だったけど。

「それでいいなのよ。でも一年前と比べると、変わってると思うなのよ。なにしろ、この一年でつぐみんは大分オシャレさんになったなのよ。よかったなのよ。」

 うん、確かにそうね。

 ファッションの授業が、最近減ったもんね。

 ありがと、ニカのおかげよ。

「素直過ぎて怖いなのよ!何企んでるなのよ!」

 そんな距離とらなくても、何も企んでないわよ!失礼ね!まったくもう!

 あ、一応だけど、今日のお喋りの内容はさっき言った通り普通よ。

 女子中学生がする、一般的なふつーの会話。

 オシャレとか、テレビとか、新作スイーツ(おかし)とか、学校の話題とか、エトセトラ。

 一年前は、これがファッション雑誌見せられてばっかりだったのよ。

 でも今はこの通り、そうでもないわ。

 自分の成長が怖いわね。

 うん?こいバナ?

 なにそれ、新しいバナナのお菓子かしら。

 コンビニに売ってる?100円で買える?

 …。

 …そもそも友達すら、ニカ以外にいないのよ。

 そんな話あるわけないでしょ?

 ――まあいいわ。とにかく散策よ。

「出発なのよ!」

 はいはい、じゃあ遊歩道でも回りましょう。

 こんなルートでどう?

「ちょっとつぐみん!それ!そのマップ、どっから持ってきたなのよ!?」

 近い近い、ニカ近いっ!

 もうっ、マップ破れちゃうじゃない!

 公園の入り口に普通に置いてあったでしょ、公園マップ。

 っていうか、私ずっと片手に持ってたじゃない、今更過ぎない?

「き、気付かなかったなのよ…。」

 どうやったら気付かずにいられるなのよ…。


「――こっちなのよ。」

 はいはい、了解。

 ふぅ、森の中を歩くのは気持ちいい。

 いつもは商店街や河原だけど、たまにはここに来ることにしようかしら。

 ちょっと――いや結構遠いけどね。

 それはそれとして、お察しの通り、今はニカがマップを持って案内してくれてるわ。

 あの後、『私が持つ私が持つ!』って小学生みたいにねだられたから、マップ渡したのよ。

 ニカに道を任せるのは、正直心配だけどね。

 現に結構分かれ道が多くて、分かれ道のたびにマップとにらめっこしてるし。

 …まあでも、楽しそうに道案内してるのを見ると、渡して正解だったと思うわ。

 それに、私の両手も空くしね。

 たとえ道を間違えても所詮公園内だし、遠回りになるだけで、ちゃんと広場に戻れるでしょ。

「あ、キノコなのよ。食べられるなのよ?」

 え?なにその毒々しい色、無理に決まってるでしょ。

「分からないなのよ。むしろ、見た目派手な色してる方が逆に安全なのよ。」

 なにそれ、どこ情報よ。

「ゆーちゅーぶ、なのよ。」

 胡散臭いわねぇ…。

「あ!つぐみん、あそこ!」

 ん?今度は何?

 指までさして。

「大変なのよ!」

 大変?

 ――んー…えーと、小学生の男女二人?兄妹かしら。

 お兄ちゃんっぽい子が女の子を(かば)ってるけど、何かあるの――って、ベビっ!?

 しかも、鎌首もたげて威嚇してるじゃない!?

「つぐみん!どうしようなのよ!」

 どうしようって言ったって――私たちに何ができるって言うの?

 私にできる事なんて、ヘビの動きを一瞬止めるくらいよ?

 ヘビの攻撃をたかが一回、それも一瞬だけ止めるにすぎないのよ。

 ニカの魔法なんて、今回の場合は(もっ)ての外だし…。

 それこそ、私たちが颯爽(さっそう)と駆けつけて、二人を救出できればいいんだろうけど――。

 そもそも私も、おそらくニカも、ヘビは怖い。

 だから結局、一番いい解決方法は、あの子達がゆっくりと後ずさることなんだけど…。

 小学生にそんな判断が下せるとは思えない。

 ほら、現に女の子は男の子の後ろにしゃがんで縮こまっちゃてるし、男の子の方は木の棒を振り回して声を張り上げてるし…。

 ヘビから離れるどころか、むしろ神経を逆なでしてしまっちゃってるもの。

 じゃあ、ここからあの子達に後ずさるよう叫ぶ?

 いやでも、もしそれがきっかけで攻撃に移ったらと思うと、それもできない。

 どうしよう…どうすればいい?

 ああ――とにかく。

 いつでもヘビを止められるように、動きをよく見とかないと!

「つぐみん!」

 急に袖を引っ張って何?

 今そんな場合じゃ――って、え!?

 あー、もうっ!!

 ニカの耳打ちに驚いている場合じゃない。

 一触即発のこの状況、その提案を試す価値は十分にあるわ。

 失敗しても、魔法はまだ使えるし、リカバリーできる。

 だからっ!

 

 ヘビの()、止まれ――っ!


「えーいっ!」

 クテっと倒れたヘビに、男の子が木の棒を何度も振り下ろしてる…。

 えーっとつまり…、あまり考えたくないけど。

 でも、これってやっぱり――。

「どうだー!まいったか!さーな、もう大丈夫だぞ!」

「ほんと?お兄ちゃん…。」

「ほら、もう動いてないだろ。」

「う、うん。ありがと、お兄ちゃん。」

「おう!じゃあ、行こう、さーな。」

 私たちの目の前で、心温まるストーリーが展開されてるけど――正直今はそんな事どうでもいい。

 と、とにかく確認しないと。

 ニカにも一緒に来てもらおう、私一人だと怖い。

 あれから珍しく言葉を一言も発してないニカだけど、取った手をしっかり握り返してくれてるから、私の意図は汲み取ってくれたみたいね。

 じゃ、じゃあ、近づくわよ。

「――死んでる、なのよ。」

 さっき男の子が振り回していた木の棒で、ニカが確認してくれてる。

 もちろん、そんな細い棒で何度叩かれようと、ヘビが死ぬはずがない、死ぬとは到底思えない。

 だから、もう一つ確認しないと。

 ニカ、その木の棒投げてくれる?

「ふみゅ?わ、わかったなのよ。」

 ふわりと投げられた木の棒がきれいな弧を描こうとする、今っ!

 よしっ、止まれ――っ!

「つぐ…みん?」

 お願い通り木の棒を投げてくれたニカがこっち見て私を呼んでる。

 …どうしよう。

 どうしよう、止まらなかった。

 木の棒っ!止まらなかったっ!

 ニカぁ…。

「ど、どうしたなのよ、つぐみん。なんで泣いてるなのよ。つぐみんのおかげであの二人助かったなのよ。胸を張るな――の…。」

 セリフを途中でほっぽり出して、ニカは私を受け止めてくれていた両腕を更にギュッとしてくれる。

 そしてそれから――。

「ふ、ふみゃぁ…。」

 私が泣いてる理由に、遅まきながらニカも気付いたんだと思う。

 ニカも私と一緒に泣いてくれた。

 だから私も、ニカを抱く腕を更にギュッとして――。


 ――しばらく、私たちはその場で泣き明かしたわ。

 30分程の間だったと思うけど…、まだ体の震えが止まってない。

 怖くてたまらない。

 だって…。

 だって!

 私の魔法は恐らく――。


 ()()()()()


                                      ―続―

お疲れ様でした。

あっちこっち時間軸をずらしながら

いろんな伏線っぽいものを張り巡らせていますが

連載が終わる頃には大なり小なりの訂正が入っているかもしれません。

というか現に入ってます。ごめんね。

ちなみに、あの場ではおそらく後ずされと声をかけるのが正解でしょう。

皆さまは、お間違えの無いように。冷静な判断を、是非とも。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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