第十二話 魔法少女ふやけます
私はつぐみ。星河つぐみ。
なんの計画も立てられない、情けない魔法少女よ。
そもそも、私以外に二人しか魔法少女を知らないのよ。
バトルロワイアルとかあり得ないわ。
そんなことよりも、私が今育成に夢中なのは、この子。
星河空太・0歳1か月と半分くらい。
…赤ちゃんがここまで可愛いなんて、予想外だったわ。
あ、いや、もちろんよ?
もちろん、赤ちゃんは可愛いものなのは、当然分かり切ったことだけど、よ?
それでも、実際に赤ちゃんが目の前でダァダァってしてて――。
それが、なんと自分の弟で――。
…。
あ゛~、もうっ!!
何、この『可愛い爆弾』!?
どこのテロ組織が投下していったの!?
星河つぐみという国家は、あっという間に落日に至ったわよ!
完全降伏――いや、完全幸福よ!
はぁ~~~ああああああ゛ぁ。
―――。
――オホン、ごめんなさい、取り乱したわ。
えーと、とにかく、とにかくよ。
弟か妹が欲しいって、今までに思ったことはあったけど、ここまで可愛いとは思ってなかった、想像の遥か上だったって話。
だって、寝てる空太のちっちゃいお手てに、指をそっとあてがうと、ギュッてしてくれるのよ!
ぐっすり寝てる空太を、眺めてるだけで一日終わっちゃうわよ、そんなの。
ねえ、わかる?
…分からないわよねぇ、ふふん。
そもそも空太は15も歳が離れてる弟だけど――いや、だからこそ、こんなに可愛いのねきっと。
うんと大切にしてあげないとね。
って、あ。
…目、覚めちゃった?
はいはい、つぐみお姉ちゃんはすぐそばにいますよぉ~。
―――おかしい。
全然、泣き止まない。
どんだけあやしても、あやしても、全く。
…仕方ない、おかーさんにバトンタッチね。
流石に母親には勝てないわ。
空太が家に来てから、それなりにお世話してるんだけどな。
まあでも、普通にお腹が空いてるんだと思うし、こればかりは仕方ない。
空太はおかーさんに任せて、私はちょっと調べものね。
内容は――文系と理系について。
昨日の放課後、先生に呼び出されたのよ。
場所は職員室じゃなくて理科準備室だったわね。
流石に呼び出しを無視するわけにはいかないから、重い足を引きずって準備室にむかったわ。
いったい、私は何をやらかしたのかって――。
でも、呼び出されるような事した覚えは、まったく無いのにって――。
そんな事考えながら、恐る恐るその扉を開けると…中には、茂野玲人先生が居たわ。
化学の先生ね。
生徒たちからは、モルって呼ばれてるわ。
化学で習った物質量の単位のmolと、茂野玲人の頭の文字三つを取ってモル。
…誰よ、そんなうまい事言った人は!
その名づけの才能に、嫉妬しちゃうじゃないの!
――オホン、まあ、そんなことはさておき。
そのモル先生に、理科準備室で言われた事は『理系に進まないか?』だったわ。
私は既に文系志望でプリントを提出してたはずだけど、モル先生がそれを見て、わざわざ私を呼び出したらしいのよ。
理系の点数がいいんだから、理系に進むのを考えないかって。
私は昔から本を読むのが好きだったから、正直何も深く考えずに文系を選択したんだけど…。
モル先生曰く、理系の方がいろいろと応用が利くらしくてね。
理系はいつでも文系になれるけど、文系から理系に転向するのはかなり大変だ、とかなんとか。
まあつまり――。
『せっかく才能があるんだから、選べるなら理系の方がいい。志望の紙はしばらく預かっておくから、この土日にもう一度考えて欲しい。それでも文系を選ぶなら、もちろん止めはしないし、応援するよ。ただ、今言ったことを知った上で、選択して欲しかったんだ。』
って言われたわ、要約だけど。
でもまさか、担任でもない先生にそんなこと言われるとは思ってなかった。
いい先生ね。
クラスの子達が、キャーキャー言うのも――まぁ、分からなくもないわね。
で、それはさておき。
そんなことがあったから、今こうして理系について調べてるのよ。
インターネットってほんと便利。
それでえーと…なになに?
理系の科目…は、…数Ⅲ、数C、物理。
うん、軽く学校で聞いたの大差はないかな。
あ、でも、少しだけ詳しく学習内容が乗ってるわね。
極限、微積分の応用、行列…、うーん、数学は特に興味ないわね、というか、よく分からないわ。
物理の方は何するのかしら。
えーと…、力学、電気、熱力学、波…、あまりパッとしないなぁ。
まあでも、もう少しだけ調べてみよう。
せっかくだし――。
将来のことだし――。
大事なことというのは、さすがに分かるもの。
――ふぅん、なるほどね。
うん、とりあえず、なんとなくはわかったわ。
でもまあ、私は文系がいいかな。
就職先の幅が増えるのは魅力的だけど――。
さすがに未来の話すぎて、あまりピンと来ないのよねぇ。
やっぱり本読むのとかが好きだし、そっちに進も――。
「つぐみー!ちょっと空太見ててくれるー?」
――へ?空太を?
みるみる!
はーい!今行く―!
…。
あー、こら、そこ。
今までの私と、キャラが大分違わないか?とか、言わないの!
赤ちゃんを前にして、キャラが変わらない人なんていないわよ!
絶対。
というか、これも私よ。
今までと変わりないわ。
ねー、空太ぁ?よしよし。
「じゃあ、少しだけよろしくね。」
うん、任せて。
…えーと、まだ首座ってないから、大事に受け取らないと。
でも、赤ちゃんの頭が自分の肘の上に乗るこの感覚、すごくイイのよ。
なんかこう…、えーと、うまく説明できないけど、なんかイイの。
分からない?
分からないわよねぇ。ふふん。
まあ、とにかく。
ベビーベッドまで運びましょう。
――ヨイショ。
ふう、これで安心。
抱っこは好きだけど、ずっと抱えてるのはちょっと怖いのよ。
例えるなら、そうね、グラスをお盆に乗せて運んでる気分になるのよ。
だから、少し堪能したら眺めるのにシフトするの。
それが私の空太への愛情表現ね――って、あ。
泣き始めたわ…。
ああ、はいはい、オムツね。
お姉ちゃんが、すぐ替えてあげるからね~。
――だー、もうっ!
空太、おねがい、暴れないで!
今、今替えるから。
うんち、うんちが飛び散っちゃう。
あー、早く拭かないと!
もおおっ!
一秒でいいから動き止めて―っ!
よしっ!今のうちね!
―――ふう。
オムツ替えるのは、まだまだ慣れないわ。
でも、なんとか出来てよかった、…ちょっとズルしたけど。
…って、いやいや、ズルじゃないわよ。
私ができることをフルに活用しただけで、誰も損はしてないんだから、ズルじゃないわよね。
うん。
ほら、空太も満足そうにしてるし。
よかった――って、あっ!
…。
…そうか、魔法、か。
それについては全く考えてなかった。
うん、そうね、もう一度考え直した方がいいの気がするわ…。
――へ?何の話かって?
進路のことよ。
せっかく魔法が使えるんだから、それを生かす進路をとるのもアリかもしれない、って今思ったの。
もしかしてだけど、私の魔法の「物を一秒止める」ってこれ、この能力。
これって、さっき見た力学に関係したりする?
ニカの魔法だって、もしかしたら――。
…。
…ちょっともう一回、調べてみましょう。
「ああ、オムツまで替えてくれたのね。ありがと、つぐみ。」
あ、ううん、かわいい弟の為だもん、ぜんぜん。
じゃあ私、ちょっと部屋に戻るから、あとはよろしくね、おかーさん。
――さあて、どれどれ。
力学、運動エネルギー、力の分解…。
ふんふん、なるほどなるほど。
やっぱり魔法の事を考えると、理系は選択肢として悪くないわ。
いや、むしろ取るべきだとも思える。
さっき、なんとなくで眺めてた時よりも、大分学習内容に興味がそそられるし。
それに魔法を使える幅が増えるかもしれない…わよね。
それはつまり、もっと便利に魔法が使えるかもって事だし…。
……。
―――よしっ、決めた!
理系に進みましょう。
うんうん、それがいいと思う。
だって、空太が導いてくれた気がするんだもん。
さっそく今日の夜、おかーさんとおとうさんに、やっぱり理系に進むって伝えよう。
ありがとね、空太。
―続―
お疲れ様でした。
つぐみちゃんがお姉ちゃんになりましたね。
可愛い弟に篭絡されてます。
もうデレデレです。
それはさておき、今回はちょっと短めです。
短めですが、そもそも当初の予定では、全話これくらいの予定でした。
つぐみちゃんの魔法の様に、私のお話づくりも中々にままなりませんね。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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