第十一話 魔法少女泣きます
私はつぐみ。星河つぐみ。
何度でも繰り返せないけど、魔法少女よ。
え?
それは前に聞いたって?
まあ、そうなんだけどね。
でもほら、ほむらちゃんって繰り返すだけじゃなくて、時間も止められるのよ。
どれだけ止められるのかは…流石に知らないけど。
でも、1秒という事は絶対にない。
かなり止められるんだと思う。
―――ずるい。
でも一応、彼女にも制約があるっぽくて――いや、私も詳しくは無いんだけど、敵に対して無双できる程万能じゃないらしいわ。
それでもズルいと思うけどね。
私なんて、たった1秒なんだから。
ま、私には戦う相手なんていないから、その1秒すら持て余してますけど。
…訂正。
敵がいたとしても、持て余すわ。
だって、たった一秒なんて、なんの役に立たないだろうしね。
「ねー、つぐみーん。」
ん?どうしたのニカ、テーブルに突っ伏して。
――今日は土曜日。
『一度つぐみんの家に遊びに行きたぁい、なのよ。』って、ニカが言うもんだから、昨日お誘いしたのよ。
特に断る理由もないしね。
それで、今朝から私の部屋で雑談を咲かせてたってわけ。
雑談の内容?
そんな事どうでもいいじゃない、でしょ?
女子中学生の世間話なんて、お茶の間に流せない話が多いのよ、そうなのよ。
だから聞かないこと。
――で、お昼も一緒にうちで食べて、今は一服してる所よ。
ニカはデザートにと、ポッキーかじってるわ。
いつの間にか、広げたままだったファッション誌に顎をのせて両手足をバタバタしながら、ね。
ちょっとかわいいわ。
あ、私にもポッキーちょうだい。
「ふっふっふー、つぐみんに普通のポッキーは勿体ないなのよ。だから、こっちの極細をお見舞いするなのよ。ふっふっふー、なのよ。」
え、二つも持ってたの?
というか、ポッキー2種類も買ってきたの?
「そうなのよ。こういう事もあろうかと、ノーマルと極細を買ってきたなのよ。今、箱開けるなのよ、ちょっと待つなのよ。」
こういう事って、どんな想定をしてたのよ…。
「今この時の想定なのよ。つぐみん程度には、この、ひ弱な極細で十分なのよ。」
な、なんて卑劣な――。
「ふははははー、なのよ。普通のよりも心許ない『ポキッ』を奏でるがいい、なのよ。」
くっ、そんな!
ポッキーからポキッと感を弱めちゃうと、それはもうポッキーじゃないじゃない!
「ふふふ、ふあーはっは!なのよーっ!」
ぐぬぬぬぬ…。
――ま、私は普通に極細の方がすきだから、それで構わないわよ。
ポキッ感もそこまで無いわけじゃないしね。
「ぬわぁ~んでなのよーーっ!!普通のより虚弱なのよ?極細。元気ないなのよ!」
極細ポッキーが虚弱って、初めて聞いたわ。
「虚弱なのよ!元気がいい方がいいにきまってるなのよ!」
あー、…うん、そうね。
元気がいい方がいいわよね、ニカはよく体調崩すからね。
「そうなのよ。元気なのは憧れなのよ。」
はぁ…でも、家に来るときお菓子買ってきて、って頼んだのは私だけど――。
まさか、ポッキーを2種類も買ってくるとは思わなかったわ。
「トッポとプリッツと迷ったなのよ。」
じゃあ、一つずつ買ってくればよかったじゃない。
「違うなのよ。トッポ2種類買うか、プリッツ2種類買うか、それともポッキーか、で悩んだなのよ。」
いやいやいや。
なんで、おなじの2種類買うのが決定事項なのよ…。
「つぐみん、どんな反応するかなーって、楽しみだったなのよ。」
…。
ニカのポッキー、ポッキポキにしていい?
「ダメに決まってるなのよ!!!なんでそんな事笑顔で言えるなのよ!?極悪非道にも程があるなのよ!わたしのポッキーから、アイデンティティを奪わないでなのよ!!!」
ふっ、しかたない。
必死でポッキーを守るニカが可愛いから、まぁ許してあげるか。
――と、そんなこんなしてたら、予定の時間ね。
この後の予定は、ニカと商店街へと散歩。
おやつも食べたし、そろそろ出発しますか。
「分かったなのよ。商店街、やっと行けるなのよ。」
そうね。ずっと行ってみたいって言ってたもんね。
「つぐみん家にも来れたし、ちょー満足なのよ。」
とくに何もない家だったでしょ?
「何もないことは無いのよ。つぐみんの部屋があるのよ。案の定、女子力足りない部屋だったなのよ。」
う、うるさいわね…。
ほら、今日はちゃんと私、オシャレしてるじゃない。
「…まあ、服装はマシになったなのよ、わたしのおかげなのよ。これからも励むなのよ。今日の講釈もわすれないように、なのよ。」
むぅ。
偉そうに言ってるけど――たしかにニカの恰好は今日も可愛いし、言われても仕方ない。
甘んじて、受け入れておこう。
私だって、めんどくさいってだけで、可愛いのが嫌いなわけじゃないし。
まあニカみたいに可愛い恰好はあまり似合わないけどね。
どっちかというとクール系?
「つぐみんが勝手にそう思い込んでるだけなのよ。可愛い恰好も似合うと思うなのよ。」
じゃあ今度ニカの服着てみるわよ。
「わかったなのよ。用意しとくなのよ。」
うん。
じゃあ、商店街行くわよ。
「了解っ、なのよー。」
――はい、到着。
うん、今日もいい具合の寂れ具合ね。
お迎え、何時だっけ?
「5時半なのよ。」
じゃあ、あと2時間程か、散歩するには十分すぎるわね。
「つぐみん、いつも遠いとこまで来てくれて、ありがとうなのよ。」
いいのよ、私が行きたくて行ってるんだから。
「大好きなのよ。つぐみん。」
あーほら、暑いからくっつかないの!もうっ!
たしかに、ニカの家は少し遠いけど、ニカに会いたいからね。
会いたいなら、私から出向くしかないのよ。
ニカに無理はさせられないもんね。
――もちろん、こんなことニカには言わないけど、はずかしいし。
あー、ほら、そんなことより、商店街歩くんでしょ?
まあ、何も無い商店街だけど。
「何もない事無いなのよ。つぐみんの部屋より、女子力あるなのよ。」
…ぷぅ。
「へ?つぐみん?どうしたなのよ。ほっぺ膨らませて可愛いなのよ。へ、ちょ、ちょっと怖いなのよ。あ、いは、いはいはほよ!やへふなのほーー!」
――で、しばらく歩いてきたけど、どう?商店街は。
「まだ、ほっぺが痛いなのよ。」
たしかに、ずっとほっぺすりすりしてるわね。
でもこれでわかったでしょ?
私の女子力。
「女子力(物理)なんて、女子力の風上にも置けないなのよ…。」
まだ言う?
「えーと…。あー!ガラガラやってるなのよ!」
逃げたわね。
まあ、今日はこのくらいにしといてあげましょう。
「つぐみーん。はやくー!」
はいはい。こうしてれば、ほんとに元気な子ね、ニカは。
「抽選券、持ってないなのよ?」
残念だけど、持ってないわ。
おかーさんが午前中回したらしいから、家にもないわね。
「残念、なのよ。でも。商店街楽しかったなのよ。」
そう?どこにでもある商店街だとおもうけど。
「よくわからない干物とか、何に使うか分からない骨董品とか、漫画でしか見たこと無いなのよ。」
そう?
私にはこれが普通だから、何とも思わないけど。
とりあえず、休憩がてらベンチに座りましょうか。
「わかったなのよ。よいしょ――って、あ!」
なに!?いきなり大声出して。
耳、キーンってなったじゃない。
「思い出したなのよ。ポッキーのせいで忘れてたなのよ。聞きたいことがあったなのよ!」
へ?
ああ、そういえば――何か言おうとしてたっけ、家にいるとき。
とにかく、私もニカの隣に座りましょう、よいしょ。
――で、何を聞きたかったの?
「つぐみんの魔法って、物を1秒止める魔法だったなのよ?」
だったなのよ?
だったなのよって、なんなのよ。
私の魔法への認識は、それであってるけども。
「細かいことはいいなのよ。で、なのよ。その魔法は、『悲しみ』とか『嬉しさ』とか実体のないものも止められるなのよ?」
一応…止められる、実験済み。
まあ、そんなの1秒止めても意味ないけど。
「やっぱりなのよ。」
やっぱり?
どういう事かしら。
「じゃあ、『時』は止められる、なのよ?」
――え?『時』?
…。
……。
考えたことなかったわ。
1秒物を止められる、その『物』に、『時』が入るって普通思わないわよね。
…。
ニカ。今日なにか悪い物食べた?
「どういう意味なのよ!!」
いや、あまりにも吃驚して。
それは試したことないわ、よく思いついたわね。
「崇め奉るがいいなのよ!」
えー…じゃあ、はい、これあげるわ。
「ん?なんで酢昆布なんか持ってるなのよ?」
女子力高いでしょ?
イケてる女子は酢昆布をポーチに忍ばせてるんだって。
「そんなわけないなのよ!そのイメージはメーカーの陰謀なのよ!!って、その言い方もなんかイケてないなのよ!」
えー…あ、でもでも。
メーカーの陰謀に、疑いもなく乗るとか、もう女子力の極みじゃない?
「全世界の女子に、ごめんなさいするなのよ、つぐみん。とにかく――モグ、なのよ。モグモグ――じゃあ、さっそく試してみるなのよ――モグ、魔法――モグモグ、つぐみん。」
いいけど…酢昆布食べ終わってから喋りなさいよ。
「結構おいしいなのよ。女子力ポイント、1点あげるなのよ。」
いらないわよ、そんなとってつけた、おまけポイント。
「とにかくやってみるなのよ。ほら、早くなのよ。」
わ、わかったわよ。
ふぅ。
…なんか釈然としないけど、でもこれ成功したら、結構すごい事よね。
どうしよう、不覚にもワクワクしてきちゃった。
ニカ、いい?いくわよ?
「いつでもいいなのよ。っていうか、成功してもわたしも止まっちゃうから、その確認は意味無いなのよ。さっさとやるなのよ。」
ああうん、そうね、じゃあ遠慮なく。
せーのっ!
時、止まれ――っ!!
…。
……。
………ん?
何も…起こらない?
「どうなったなのよ?」
え?いや、失敗したみたい…多分。
失敗というか、発動しなかったというか。
「何も起こらなかったなのよ?」
う、…うん。
「1秒間周りが止まって、自分だけ動けたとか、ないなのよ?」
な…ない、ないなのよ…。
すごく残念なのよ。
「うん。確かに残念なのよ。って、わたしのアイデンティティ取らないでなのよ。ポッキーに続いて、鬼畜、甚だしいなのよ。」
鬼畜とは酷い言いようね。
デコピンするわよ?
「何でなのよっ!?何で毎回デコピンしようとするなのよっ!!鬼畜なのよっ!」
え?何でって、ほら、みんな?が、望んでるから?
「みんなって誰なのよ!わけわかんないなのよ。いやなのよいやなのよ!つぐみん、魔法使ってまでデコピンしてくるなのよ!逃げられないなのよ!鬼畜なのよっ!」
あーほら、鬼畜って三回も言ったし。
スリーアウトね、じゃあ遠慮なく。
「遠慮なくなくない、なのよ!あああーーーっ!」
ニカの動き、止まれ~っ!
――。
―――あれ?
「うにゅ?」
んんん?
「ど、どうしたなのよ。つぐみんにも、人の心が芽生え始めたなのよ?」
元から人よ、失礼ね。
ってそれはいいとして――魔法、使えないんだけど。
「へ?」
いつも通り、ニカの動き止めようとしたんだけど…。
「止まらなかった、なのよ?」
う、うん…。
「確かに魔法使った気配なかったなのよ。今日、もう既に一回使ってたとか、ないなのよ?」
…ない、と思う。
さすがに今日の事だし、記憶違いじゃないと、…思う。
もしかして、使えなくなったのかな、魔法…。
それは、ヤダな。
すごく、すごく嫌。
すごく――あれ?どうしよう、なんか胸が辛い。
それに、なんかニカの顔がぼやけて…。
「うーん…明日になったら、また使えるかもしれないなのよ。だから、泣かないなのよ、つぐみん。」
だって…、だって!
なんも役に立たないって!魔法っ!そう、思ってたけど――っ!
いざ、いざ無くなったらって――ニカと、ニカと仲良くなれたのだって、魔法がっ、あったからでっ!
「うん、うん。泣かないなのよ。可愛い顔がくしゃくしゃなのよ。大丈夫なのよ、魔法が無くても、友達なのよ。だから、泣かないなのよ。」
ニカ、だって、泣いてる――ヒック、じゃない。
「わ、わたしのは嬉し涙なのよ。つぐみんがこんなにわたしを大切にしてくれてるなんて、嬉しいなのよ。魔法が使えなくっても、わたしたちは死んでもずっと仲良しなのよ。この事を、ちゃんと覚えておいて欲しいなのよ。」
死んでもって――バカ!
ニカのバカ!
ニカのせいで、涙が止まらないじゃない…。
――翌日。
『だから泣かないなのよ』って、何度もニカに慰められた、その翌日。
心配で心配で、眠れない夜を過ごした次の日の朝。
普通に魔法が使えました。
…あー、大失態だわ。
商店街のベンチで泣き散らかしたとか。
はぁ…。
でもまさか、あんなに魔法に思い入れがあったなんて、私自身全然思ってなかった。
使えなくなったって思った途端、あんな泣き崩れるなんて、ね。
――え?
…そうよ、うるさいわね。
はいはい、言い直します、言い直しますよ!
思い入れがあるのは『魔法に』じゃなくて『ニカに』よ。
仕方ないじゃない、ニカは特別なのよ、私にとって。
でも、嘘をついたわけじゃないからね。
魔法にもちゃんと思い入れあるのよ、半々と言った所よ、きっと。
あーでも!そのニカに慰められるなんて!
思い出しただけでも死にたいっ!
しばらく商店街に行けないわよっ!
というか、今日、どんな顔してニカに会えばいいのよ!
…はぁ。
学校、行きたくないなぁ。
世界、滅びないかなぁ。
って、そんな力私の魔法にはないんだけどさぁ。
あーあ。
…しかたない、学校に行きましょう。
学校を休みにする力すら、私の魔法にはないしね。
…でも不思議ね。
なんで昨日、魔法使えなかったのかしら?
今日、それについて、ニカと話し合ってみよう。
顔、合わせにくいけど。
会えないのは、もっと嫌だもんね。
じゃあ、行ってきますっ!
―続―
お疲れ様でした。
この二人は、なんか見てて安心しますね。
仲睦まじいです。
それはさておき、十話をとうとう超えてきました。
書き始めた頃には何も考えてなかった物語のオチも
一応それなりに見え始めたかなと、そう思います。
何話まで続くかはいまだ不明ですが、お付き合い頂けると幸いです。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします
すると次回は少し早く上がるかもしれません。




