第十話 魔法少女誘います
私はつぐみ。星河つぐみ。
性別は“女”の魔法少女よ。
いや、まあ当たり前なんだけどね、魔法少女って言ってるんだから。
でも、最近は女の子とは限らないらしいのよ。
男の子?だったり、男の娘?だったり?居るらしいわ、よく分からないけど。
…うーん、この文化がいまいち理解できない私は、考えが古いのかもね。
あ、ちなみに結川さんも、ちゃんと女の子ね。
性格が体育会系っぽいし、身長も高めだけど、女の子。
というか、そもそも見た目は普通に女の子してるのよ。
私よりも断然ね。
髪は決して長くは無いけど、行き過ぎたショートカットってわけでもないわ。
あ、ちょっと癖っ毛かしらね。
顔立ちも、かっこいいというより、かわいい寄りの人懐っこい顔よ。
でも喋ると体育会系の女の子。
…。
キャラ濃すぎない?
まだ知り合って間もないけど、それでも印象に残る子だと思う。
…それに、語尾に『なのよ』ってつける人もいたし、今仲良くしてくれてる友達3人もキャラ立ってるし――。
彼女らに比べたら、私って平凡極まりないわね。
ちょっとは努力した方がいいのかしら…。
何を努力するのか、全く分からないけど。
――うー、んっ、ふぅ…。
そんなこと考えてたら、今日の授業ももう終わりっ!
あ~、背もたれで背中伸ばすのって、なんでこんなに気持ちいいのかしら。
癖になりそう…いや、すでに癖になってるか。
よくよく考えてみると毎日やってるもんね、私。
おほん、とにもかくにも、今日も授業長かったわ。
で。
えーと、この後は結川さんと待ち合わせ、ね。
ちょっと前に、学校で会ったばかりの女の子なんだけど――。
今日、1階の自販機の前で、偶然再会した時に誘われたのよ。
ええ、そうそう、初めて彼女と会った例の自販機よ。
私も話がしたいって思ってたから、丁度良かったわ。
だから、結川さんから誘ってくれて大助かりよ。
だって、誘うって勇気がいるでしょ?
少なくとも私はいるのよ、それが例え後輩って言ってもね。
――そう、結川さんは後輩の女の子。
それ以外に彼女について知ってる事は、ほとんどないわ。
新入生って事と、見た目と、話し方くらい――つまり、最初に言ったようなことだけよ。
仕方ないじゃないの、だってこの前会ったばかりだし、これもさっきも言ったけど。
あ。
でも、もう一つ、大事なことを知ってるわ。
すごく、大事な事。
それは―――。
どうやら、彼女も魔法を使えるらしいって事。
だから私も、もう一度会いたかったのよ。
――じゃあ、校門前に急ぎましょうか。
『放課後、校門で会いましょう。』
たったそれだけの約束だったけど、大丈夫かしら。
もっと詳細に決めておけばよかったわ。
現に結川さん、まだ来れてないし。
ホームルームの終わる時間なんて、そりゃまちまちよね。
さて、彼女が来るまで何して待とうかし―――。
「つぐみんせんぱーいっ!」
あ、来たわ。
「遅くなって申し訳ないっす!」
ホームルームのせいでしょ、気にしないでいいわよ。
「でも、先輩を待たせたことには変わりないっす!申し訳ないっす!」
わ、わかったわよ。わかったから、顔上げて。
とりあえず喫茶店にでも行かない?
「分かったっす!寛大なつぐみん先輩に、どこまでもついて行くっす!」
どこまでもって、大袈裟な…。
ま、とにかく行きましょうか。
…。
というか、あなたも私をつぐみんって呼ぶのね。
…まあ、別にいいんだけど。
「因数分解ってなんなんすか、せんぱーいっ!」
因数に分解することよ。
「そのままじゃないっすか!てか、そんなの将来何の役に立つんすかー。ラーメンの具っすかー?」
ラーメンの具?
…チャーシュー、メンマってこと?それはさすがに苦しくない?
「っ!?つぐみん先輩、なんで今ので分かったんすか?」
なんでかって言われても…、私の友達に奇想天外な人がいたから慣れてる?としか…。
ってか、そんなすごい速度で振り向くほど驚くなら、変なボケいれないでよ。
「へー、流石つぐみん先輩っす!」
流石って言われてもねぇ。
―――というか、思ってた以上に、おしゃべりな子ね。
学校からかなり歩いてきたけど、その間ずっと喋ってるわ。
まあ、話題提供が苦手な私には、すごくありがたいんだけどね。
あ、もちろん今の数学の話題も、結川さんが振ってくれたものよ。
振ってくれたと言うか、勝手に喋り出したというか…。
まあそれはさておき、数学、苦手のようね。
なんか誰かさんと似てるわ、この子。
あ、ちなみに因数分解は将来、微分積分で役に立つわよ。
「なんすか微分積分ってー!大手のコンビニっすかー?」
…あー。
それは私じゃなくても分かるわね。
―――というわけで到着、うん、コーヒーのいい匂い。
「数学のために数学やるっておかしくないっすか?それって将来の役に立ってるっすか?」
まだ引きずってたのね、その話題…。
数学以外にも、少なくとも受験には役に立つわよ。
で、何飲む?
「アイスココアがいいっす!あとシナモンロール!!」
はいはい、了解。
じゃあ店員さん、アイスココア、シナモンロール2つ、アイスコーヒーをブラックで。
「かしこまりました。アイスココアおひとつ、アイスコーヒーおひとつ、シナモンロールおふたつで、よろしかったでしょうか。少々お待ちくださいませ。」
お願いします――ん?
なに、どうしたの、そんなに目を輝かせて。
「つぐみん先輩、ブラックコーヒー飲むんすか?まじリスペクトっす!」
そうだけど…まさかコーヒー程度で尊敬されるとは。
元気な子だとは思ってたけど、思ってた以上に変わった子だわ。
まあ、それはともかく。
――それで結川さん、本題なんだけど。
「あー、つぐみん先輩!自分はナユでいいっす!というか、ナユって呼んでください!」
え?
あーうん、わかったわ。
えーと、ナユ。
それで本題なんだけど。
「むぐっ、ん―、本題っすか?」
あー、ゆっくり食べて大丈夫だから。私も食べるし。
それにしても、ここのシナモンロールって美味しいわよね。
「そうなんすよ!まじヤバいっす!しかも、おしゃカワで映えるっす!」
全面的に同意。
まあ、私はSNSそれほどしないけど。
でもソシャゲは好き。
「…なんか、つぐみん先輩って男っぽいっすよね。」
え?
初めて言われたんだけど――。
…いや、女子力が低いとは、昔散々言われてたわね。
でも、それって、イコール男っぽいってわけじゃない…でしょ?
…たぶん。
それに私に言わせると――。
男っぽいって、それはナユの喋りかたの方じゃない?
「んあ?そっすか?…うーん、そっすかねー?」
あれ?自覚ないの?
ま、そもそも私にも自覚ないし、言われないと分からないものか。
あーまあ、それより、魔法についてよ。
「あー、そっすね、本題っす。魔法っす。」
えーと。
ナユも、魔法使えるって事で…いいのよね?
「そうっす!まあ、つぐみん先輩に比べたらミジンコみたいなもんっすけど。あー、先日はどうもっす、助かったっす。」
いえいえ、お役に立てて光栄よ。
――で?
私に比べたらミジンコって、一体どんな魔法なの?
「あー、うーん…。じゃあ、つぐみん先輩、じゃんけん。やりましょうっす!」
え?じゃんけん?
まあ、別にいいけど。
じゃんけんに関係ある能力なのかしら。
「じゃあ、いくっすよぉ~。負けたほうは、ここ奢りで!さいしょはグー。」
へ?い、いや!ちょ、ちょっと、もうっ!
仕方ないわね!
「さいしょはグー、じゃーんけん――ぽんっ!」
ちょきっ!
「グー!」
あ…。
負けたわ。
「わーい、つぐみん先輩の奢りっす!」
はぁ…、はいはい。
まあ最初から、今日は奢るつもりだったから別にいいわよ。
「え?そうなんすか?」
そうよ、先輩だからね。
つよがりってわけじゃなく、ね。
後輩ができるって嬉しいものなのよ。
それこそ、私が後輩にカッコつけたくなるくらいには、ね。
実際に出来るまで、知りもしなかったわ、こんな気持ち。
まあそれはさておき、それで?
今のが魔法に関係あるの?
「はい、そうっす。じゃんけんの勝率高いっすよ!」
んん?
何、その魔法。
じゃんけんに勝てる…魔法?
地味…だけど、結構便利な魔法、なのかも?
「いやいや、違うっすよ、そんな魔法じゃないっす。一秒くらい先の未来が見える魔法っす。」
…。
……。
………。
えーと、その魔法を実演するのに、じゃんけんは向いて無くない?
証拠として微妙、というかそもそも3回に1回は何もしなくても勝てるんだし。
って、他にも言いたいこといっぱいあるけど、そうじゃなくって!
ええええ!?
それって結構すごくない?なにがミジンコよ!
「いやー、それがそんなことないんすよ。」
でも、未来が見えるんでしょ!?
「字面はカッコいいんすけど…うーん。あ、じゃあつぐみん先輩、この魔法の便利な活用方法って思いつくっすか?」
そんなのいっぱいあるでしょう。
未来が見えるのよ?
ほら、えーっと、例えば…、えーっと…。
えーと…。
…あ、あれ?
「ね?思いつかないっすよね?だからミジンコなんっす。」
うーん…釈然としないわね。
宿題にさせてちょうだい、次までに活用方法かんがえてくるから。
「いいっすけど。とにかく私には思いつかなかったっすから、じゃんけんで沢山勝てるように特訓したんっす!」
ん?未来が読めれば、じゃんけんなんて簡単に勝てそうだけど?
「それが、そんなことないんすよ。たったの一秒しか未来見えないんすよ?タイミングがシビアっす。」
あーなるほど。
言いたいことはなんとなくわかるわね、私も同じ一秒同士だし。
まあ、まだ私の力の事はナユに言ってないけど。
「特に、相手にじゃんけんの掛け声が取られた時は、魔法の使い時が難しいんすよ。それだけで成功率がガクっと下がるっす。だからなるべく自分から掛け声をかけるんすけど、それでも相手がすんなり出してくれるとは限らないんすよ。ちょっと待ってとかいきなり言われたら、魔法を無駄打ちしちゃうっす。」
そう言われると…そうね。
なめてたわ、じゃんけん。
「すよね?じゃんけんって奥が深いんす。魔法も一日一回しか使えないっすから、難しいっす。」
ああ。
ナユもやっぱり一日一回しか魔法使えないのね?
「そうなんす。だから特訓も大変っす。今のところ、勝率8割ほどっすかね。これくらい勝てるようになるのに、1年かかったっす。」
1年!?
え、ナユ、いつ魔法使えるようになったの?
「1年前っすね。あの時は確か、いつものようにジュースじゃんけんを友達としてたっす。でも、かなり負けが込んでたんすよ。ちょーじゃんけん弱かったんすよ、あたし。だから、その日とうとう、相手が出す手見たいって神頼みしたんす。そしたら、何か見れたっす。」
ジュースじゃんけんって、男子中学生か!
きっかけも何か情けないし!
って、人の事全く言えないんだけど―――おほん、とにかく。
えーとじゃあ何?
一年間をじゃんけんにだけ費やしたの!?
「男子中学生って…、運動部に入ってたらこれくらい普通っすよ。で、えーと、まあそうっすね。流石に毎日ってわけじゃないっすけど、大体はじゃんけんの特訓に費やしたっす。」
…。
えー…。
「一応、ほかの活用方法考えたんすよ?一応。でも、上手い事使えなくて…。例えば、お父のやってる株で未来を見てみたんすけど、でも1秒先が見えてもなんの意味もなかったっすし。だから仕方なく、じゃんけんに極振りしたんす。」
そんな、MMORPGのステ振りみたいに言われても。
「私も実はゲーム好きっす。ソシャゲはあまりしないっすけど。」
まあ、うん、わかったわ。
ソシャゲも今度教えてあげる。
とにかく、ナユの魔法は1秒先の未来が見えるのね。
…ただ、上手い事使いこなしてはないと。
「そういうことっす。ああ、じゃんけんしか取り柄が無いってのは、流石に言い過ぎっすかね。他の使い方も一応あるっすから、いつかお披露目するっす。」
うん、お願いするわ。
じゃあ私の話だけど――。
「ああ!つぐみん先輩、申し訳ないっす!愛する弟から早く帰ってきてって、メッセが!続きは今度でいいっすかね?」
――え?
ああ、うん、構わないわよ、っていうか弟がいるのね。
「そうっす。可愛い可愛い、マジヤバな弟がいるっすよ。将来おねーちゃんと結婚してくれるらしいっすよ!マジ卍っす。」
あーそれなら早く帰らないとね、というか早く帰ったほうがいいわ。
弟がかわいいのは仕方ないもんね、分かるわ。
私の話はまた今度にするから、弟を存分に可愛がって来なさいな――あ、そうだ。
「どうしたっすか?」
…よし、頑張れ私。
えーと…、もし、よかったらだけど、週に1度くらいこうやって会わない?
場所はどこでもいいんだけど。
「うん?私は構わないっすけど。こんなあたしでいいんすか?」
ナユがいいのよ。
魔法使える友達って貴重だし、もっと仲良くなりたいなって。
それに――ナユを見てると、なんでか安心するのよ。
「…ハイっす!こちらからもよろしくっす!つぐみん先輩!」
――はぁ。
今日はいい一日だったわ。
こんな気分は久しぶりかも。
ナユ、いい子だったわね、ちょっと変わってるけど。
けどそれは、誰かさんのおかげで慣れっ子だし、問題ないかな。
それに週一で会う約束もできたし。
はあぁ…、それにしても、ほんと誘うとき、ドキドキして心臓破けそうだったわ…。
でも――勇気出してよかった。
って、あ、連絡先聞くの忘れたじゃない!
…まあ、いっか。
同じ学校だし、また会えるでしょ。
うん。
とにかく、今日はいい夢見れそう。
ほんと、いい一日だった。
じゃあ、おやすみなさい。
―続―
お疲れ様でした。
ナユちゃんと仲良くなるきっかけのお話です。
シナモンロールおいしそうですね。
今度見かけたら買うことにします。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします
すると次回は少し早く上がるかもしれません。




