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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第九話 魔法少女休みます!


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 今日は私がんばらない。ただの腑抜けた人間よ。


 魔法少女?

 ふっ。

 なにバカな事言ってるのよ。

 こんなしょーもない魔法持ってても、なんの役にも立たないでしょ。

 一秒物を止めたって、勘違いの一言で済まされるのよ?

 限りなく勘違いに近い魔法。

 そんなの、神様のイタズラにもほどがあるわよ!

 …。

 あれ?なんか前も同じこと言ってた気がするけど、ほぼ毎日思ってることだから仕方ないわ。

 だから、いつも通り、よ。

 いつも通りの、なんの役に立たない魔法少女よ。

 ――え?

 なにそんなに、やさぐれてるのかって?

 それは――もっと凄い魔法が使えたらな、って思ったのよ、昨日。

 そうね、具体的には、マラソン大会を中止に出来るような大魔法がよかったわね。

 大雨を降らせるとかね!

 …あー、全身がだるい。

 もう今日はがんばらない。

 決めたもん!

 絶対がんばらない!


 ――というわけで。

 今日は土曜日だけど、一歩も外に出ません。

 というか、出られません。

 …だって動けないもん。

 いつもならパトロールという散歩に行くけど、今日はベッドの上から動かない。

 動かしたいなら、梃子(てこ)でも持ってきなさい。

 ま、それでも動かないけどね!

 はぁ…。

 ――ったく、誰が考えたのよ、マラソン大会って。

 あれはもう、日本からの虐待よ。

 国家規模で、子供たちを(しいた)げにきてるわよ。

 虐待やいじめを無くしたいんじゃないの?

 だったらまず、自分たちの行いから見直しなさいよ。

 まったく!

 まったくもう!

 まったくもうよ、まったくもうっ!

 …はぁ。

 あーあ、喉乾いた。

 甘いもん食べたい。

 …。

 杏仁豆腐が、たしかあったはず。

 仕方ない、下に降りるか。

 せーの、よっこいしょ――って、無理っ!

 絶対無理、起き上がるとかチョー無理。

 ベッドが私を離さないし、私も離れたくない。

 ちょっとの力も入らないし、入れたくない。

 …はぁ、諦めよう。

 一日くらい何も口にしなくたって、死にはしないわ。

 ――いや、ちょっと待って。

 諦めるには、まだ早いんじゃない?

 だって、今リビングにはおかーさんがいるもん。

 そして、私の手元には…、ふふふ。

 じゃーん、携帯電話っ!

 ね?簡単でしょ?

 頭いいわね、私!

 じゃあ、今より『カロリー召喚の儀式』を執り行いましょう!


 ――って、なんでよ!

 持ってきてくれたっていいじゃない。

 むう~。

 可愛い娘のピンチを何だと思ってるのかしら。

 溶けちゃうわよ?

 私ベッドの上でとろけちゃうわよ?

 いいの?

 …。

 はぁ、やっぱり諦めよう。

 動きたくないもの。

 すべてはマラソン大会のせい。

 いや、日本のせいね。

 恨み骨髄に徹するからねニッポン――って、なに?

 いま、日本を呪うのに忙しいんけど――え?

 マラソン大会のことが聞きたい?

 私が今、こうやってダレてるんだから、これ以上の説明いらないでしょ。

 …。

 …はぁ、仕方ないわね。

 別に、どうもしないわよ。

 特別なことは何にもない。

 ただ走っただけ。

 延々と5キロ。

 そう、()()()

 …現代人の走る距離じゃないでしょう、5キロって。

 文明に対する冒涜だわ。

 車使いなさいよ!

 自転車でいいじゃない!

 それに!ニカはお休みだし!

 もうっ!

 私も休みたかった!

 一人で黙々と5キロとか、拷問よ。

 それでも、皮肉なことに…。

 魔法少女になってから外を散歩してた()()で、走れちゃったのよ!5キロ!

 別にある程度の所でリタイアも出来たのよ。

 実際、3キロほどでリタイアした子が数人いたし――。

 去年は私もリタイアしたし――。

 でも、余力があるのにリタイアとかズルいじゃない。

 そんなの自分が許せないでしょ。

 だから無駄に最後まで走ったわよ。

 一人で黙々と。

 残り1キロ過ぎてからは、さすがにもう無理かと思ったけど、そこで止めるのは、なんか寝覚めが悪いから頑張ったのよ。 

 一人で黙々と!

 結果、ベッドの上から動けません。

 動きたくありません。

 疲れすぎて、昨日、どうやって家に帰って来たかすら記憶にないくらいよ。

 ――はぁ。

 あ、そうだ、ニカに恨み言を延々と送り付けてやりましょう。

 内容は…そうね。

 今話したことを、そのまま文章にしましょう。

 別にニカは何も悪くないけど。

 悪くないけど、たまには私の我儘も聞いてもらわないと、ね。

 割に合わないと思わない?

 じゃあ、さっそく文章打ち込みましょう。

 …というか、指くらいしか動かしたくないのよ、今日は。

 あ、間違えた。

 指()()動かせない、だったわ。


 ――ふぁあ、あ。

 あら真っ暗、いつの間にか寝てたみたいね。

 って、真っ暗!?今何時?

 じゅう…、いち時…、そんなに寝てたのね。

 とにかく、あかりあかり。

 あった、リモコン、えいっ。

 よし、点いた。

 ――あ。

 …なんだ、結局持ってきてくれたのね、おかーさん。

 飲み物とおかしが置いてあるわ。

 でも、オールレーズンはなんか違わない?

 いや、美味しいけども。

 杏仁豆腐はどこいったの?

 ――まあとにかく、ありがとおかーさん。

 夜も遅いから、メッセージを送っておきましょう。

 ケータイ、ケータイ…。

 あった。

 あら?

 ニカから返信がきてるわね。

 えー…と?

「私も今日は一日寝てたなのよ、おそろいなのよ。ちなみに、昨日も寝てたなのよ(´◉◞౪◟◉)☞」

 か・お・も・じ!!

 …。

 いや、忘れましょう。

 これくらいで怒るなんて、大人げないわ。

 明後日会ったらデコピンで許してあげましょう。


 ――さて。

 たっぷり寝たおかげか、かなり元気になったわ。

 もう夜中の11時半だけど――。

 今日がもう、終わっちゃうけど――ね。

 こんなに寝たら、今日はもう寝られそうにないから、とりあえず水分補給でもしましょうか。

 ちょうど、紙パックのオレンジジュースも置いてあるし――って、あ。

 …ぬるくなっちゃってる。

 しかたない、下に新しいの取りに行こう。

 やっぱり冷たいのがいいもんね。

 冷蔵庫、冷蔵庫ーっと。

 じゃあ、ぬるくなったのと、入れ替えて…と。

 あ。

 オレンジジュースはこれ一本しかないのね。

 じゃあ、まあお茶でいっか、麦茶も悪くないわ。

 えーと、コップ、コップ…、い゛ひっ!!?

 ―。

 ――。

 ―――。

 び、ビックリした…。

 今私、何秒くらい固まってた?

 ゆ、油断してたわ…。

 油断しすぎて、乙女らしからぬ声が出たじゃない。

 なんでいつも油断してる時に出てくるのかしら…。

 ごっきー。

 いや、可愛く呼んでも、見た目は全然可愛くないんだけどさ。

 出てくるたびに、何十秒とにらめっこしてる気がするわ。

 まあ、思考停止しちゃうだけなんだけど――それはともかく。

 放ってはおけないわね。

 …ヤりましょう。

 私は実はね、ごっきーを倒せる系女子なのよ。

 女子力で倒すのよ。

 誰かさんに女子力は皆無だって言われた事あるけど、それは言い過ぎよ、言い過ぎなのよ。

 …そうよね?

 『(女子力のかけらもない悲鳴をあげたなのよ)』

 ――ニカ、うるさいっ!

 わざわざ妄想の中にまで、私の女子力をバカにしに来ないでよっ!

 そもそも台所でごっきーに出くわして、叫ばない女の子なんていないわよ!

 だからむしろ、女子力が高いと言っても過言じゃないと思う――って今は、ニカ(妄想)に付き合ってる場合じゃなかった!

 早く対処しないと。

 …と言っても、流石に叩いて倒すのは無理だから、殺虫スプレー取ってきます。

 ちょっとだけ、待ってなさいよ、ごっきー。

 動いたら、許さないからね!


 ――あ、よかった、まだ居るじゃない。

 スプレー探す、このちょっとの間に居なくなられると、どうしようもないのよ。

 ごっきーに怯える地獄の生活を送ることになるのよ。

 よかった、そうならなくて。

 では、おまちかねの時間よ。

 今日は一日寝てたから、力が有り余ってるのよねー。

 ねぇ、ごっきー?

 この意味が分かるかしら?

 ふふふ。

 ふふふふふ。

 それはー、こういう事よっ!


 止まりなさい――っ!


 ふふふ…。

 私のテリトリーに無断で立ち入るから、こうなるのよ。

 今度はちゃんと、役所で許可取ってからくることね。

 ――へ?

 許可なんて下りないだろ、って?

 いやいや、10万円ほど払えば、一匹くらいは許可するわよ。

 ただ、許可しても、辿る運命は同じってだけで。

 結局、私の魔法の餌食に――あれ?

 ちょっとまって。

 実はこの魔法って、…結構強くない?

 いや、最近の殺虫剤が凄いだけなのかもしれないけど。

 それでも、虫相手になら無双できるんじゃないかしら。

 …そんなゲーム出てもやりたくないけど。

 ん?もう出てるんだっけ?

 まあ、どちらにしてもやりたくないわ。

 ごっきーを倒せる系女子だけど、虫好き系女子じゃないのよ私。

 …。

 …じゃあ結局、あまり使い道ないわね。

 虫相手に無双できても、仕方ないわ。

 そもそも、vs1匹でしか効果ないしね。

 それこそ、ごっきー退治くらいでしか、使えないわ。

 なんだ、残念。

 でも、ま、今日のところは役に立ったわけだし、心置きなくお茶を飲みましょう。


「――ねぇ、つぐみん。」

 なに、ニカ。どうしたの?

 今日は月曜日。

 久しぶりに、ニカと会った気がするわ。

「昨日のメールの話なのよ。ゴキブリに対して、罪悪感は無かったなのよ?」

 え?

 いきなり何?

 たしかにそんなメールは送ったけど、教室で会って早々、ごっきーの話はなくない?

 ニカの女子力は、地に落ちたの?

「その地面を見上げることしかできない女子力ひくひくなつぐみんに、言われたくないなのよ。それはそうとして、たしか、蟻地獄のときは罪悪感で押しつぶされそう、とか言ってたなのよ。」

 私の女子力を、いったん置いとかないでよ。

「置くほどの量がないなのよ。」

 ぐぬっ…。

 なんか最近、ニカにいじめられられてない?私。

 女子力がないのは自覚してるから、反論できないけども!

 で、なんだっけ?罪悪感?

 初めて魔法使った日…の、アレのこと?

 そういえば、前にその話をニカにした覚えがあるわね。

「そうなのよ。その罪悪感はゴキブリには無いなのよ?」

 言われてみれば確かにそうだけど…。

 でも、無いわね。

「偽善者甚だしいなのよ。」

 う。

 いや、仮にそうだとしても、ストレートに言い過ぎじゃない?

 もうちょっとオブラートに包んでよ。

「つぐみんと私の仲には、オブラート一枚の隙間も無いなのよ。」

 その表現は流石に気持ち悪いわよ。

 ――嘘。

 実は、すごく嬉しかったりする。

 絶対言わないけど。

「別に私はつぐみんが偽善者甚だしくても大好きなのよ。ただ少し気になるだけなのよ。」

 あんまり偽善者、偽善者言わないで欲しいわ、否定はしないけど。

 そんなの小学3年の時から、分かり切ってるもの。

 ――ちなみに、私もニカが大好き。

 絶対言わないけど。

「で、どうして罪悪感が無いなのよ?」

 うーん?なんでだろう?

 理屈とか無くて、ごっきーだから、としか言えないけど…。

「じゃあ、つぐみんは家の外の…、世界中にいる約1兆5千億匹のゴキブリに対しても罪悪感は芽生えないなのよ?」

 いや、それは流石に飛躍しすぎじゃない?別に外で出会ったら殺しはしないわよ。

 っていうか、ごっきーって世界中にそんないるの?

 数があまりにも莫大すぎて、なんの感情もわいてこないわよ。

 想像つかないもん、1兆とか。

「不思議なのよ。」

 私は、世界中のごっきーの数知ってるニカの方が不思議だけど。 

 ごっきーの数知ってる系女子だったのね、ニカ。

 でも、ほんと、どうでもいいこと気にするわね。

 まぁでも、せっかくだから、少し考えてみるか。

 んー…、自分のパーソナルスペースに入って来た害虫だから。かな?

「ふーんなのよ。わかったなのよ。」

 満足?

「満足なのよ。」

 で?なんでそんなこと聞いてきたの?

「特に理由は無いなのよ。ただ気になっただけなのよ。何かの伏線ってわけでもないなのよ。つぐみんのことを、もっとよく知っておきたいだけなのよ。それだけなのよ。」

 なにそれ。

 どういうこと?

 確かに、ニカからは何か含みのある雰囲気を感じ取れないけど――。

 …。

 …まあ、考えても仕方ないか。

 私の隣の席で足プラプラしてる、いつも通りのニカだもん。

 こういう、意味が有るのか無いのか、よく分からないこと言うのは、いつも通りだもん。

 気にしても、仕方ない。

 そんなことより――。

 伏線って何?

「休んでる間に推理小説読んでたら、面白かっただけなのよ。伏線って言葉、かっこいいなのよ。」

 それはたしかに。否定はしないわ。

 で、何読んでたの?


 ――その後は、いつも通り。

 朝からごっきーの話とか、何とも女子力の低い会話をした以外は、いつも通り。

 でも、その会話のせいで、無かったはずの罪悪感がちょっと芽生えちゃったわ。

 今度ごっきーに出会ったらどうすんのよ、もう…。

 ニカのせいなんだからね。

 あーほら、机に突っ伏して寝ちゃってるし!

 先生に怒られるわよ?

 ――って、あ!忘れてたっ!

 ニカにデコピンするんだった!

 うーん、どうにか上手い事デコピンできる様に誘導しないと。

 最近、うまいこと逃げられちゃうのよね。

 さて、どうしようかな。


                               ―続―

お疲れ様でした。

魔法少女にもお休みはあります。

まあ、つぐみちゃんには敵もいないので

いつでも休んでるようなものですが。

毎日ドラマチックとかありえません。

このシリーズは、つぐみちゃんの日常をそのままお届けする

そんなシリーズです。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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