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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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第一話 魔法少女はじめてます


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 二人じゃないけど魔法少女よ。


 でも実際は、魔法少女なのかよくわからないの。

 ただ、ある日ある時――。

 突然に、唐突に、不思議な力に目覚めた――って、ただそれだけ。

 何の予兆もなく、ほんとにどうでもいい時に、ふっと目覚めたの。

 真夜中にパチッと目が覚めるようにね。

 そして私は、その不思議な力を「魔法」だって思ってるの。

 だから魔法少女。

 そう勝手に名乗ってる――ん?

 前置きはいいから、どんな魔法か教えろ?

 …そうね。

 自慢できるような魔法じゃないんだけど――言うなれば、地味な私にぴったりな、地味な魔法だし。

 期待されても困るくらいの、そんな魔法…。

 えーと、まあつまり――。


 モノを一秒だけ止められるの。


 ――それだけよ、たったそれだけ。

 それ以上でもそれ以下でもない、そもそも使い道もよく分からない、些細な魔法。

 そして使える魔法も、これただ一つだけ。

 まさか、これだけで世界を救えだなんて、神様は言わないわよね?

 って、神様がくれたものかどうかすら、分からないんだけども。

 何しろ、ただ突然目覚めただけなんだから。

 ――ま、とにかく。

 魔法に目覚めた以外に、何も変わりないの。

 だから今日もいつも通りに登校中。

 いつもの時間、いつもの通学路を歩いてね。

 それでも、いつもと違うのは、魔法を覚えているってこと。

 だから、いつもより注意深く、周りを見て歩かないと。

 モノをたった一秒だけ止めることができる、ただそれだけの魔法だけど――。

 だからこそ、使うタイミングは逃せないから。

 …とは言っても、本気でこんな魔法が活躍する場面なんてあるとは思ってないのよ?

 なにしろ効果が一秒しかないんだから。

 まあ仮にそんな場面があったとしても、都合よく私の目の前で起こるとは思えないしね。

 …はぁ。

 ほんと、つまらないわ、世界。

 こんな魔法じゃ、私の人生は何も変わらないのよ。

 

 ――ほんっと、何も起こらないわね!

 給食も終わって、もうお昼休みよ?

 ああは言ったけど、ほんの少しは何か起こるかと期待してたのに。

 せっかく魔法が使えるようになったってのに、出番が全くないじゃない!

 …。

 はぁ…まあ仕方ないか。

 何も起こらないものは、仕方ない。

 世界なんて、そんなもんよ。

 なら、いつものように本を広げて深窓の令嬢を気取りましょう。

 いわゆる本バリヤー。

 こんな私に話しかけてくる子は、そうそういないのよ。

 みんなも、私も、世界も、ほんとめんどくさい。

 ま、とにかく、これで今日もいつも通りのお昼休み――だと思っていたんだけど、なんかいつもより騒がしくない?

 本に集中できないじゃない、今から主人公が悪を懲らしめるって所なのに!

 一体どうしたの!?

 …。

 んー…と?男子たちが…教室の入り口で何やら騒いで…る?

 やかましいわね、何してるのかしら。

 えーと…あ、男子の一人が何か、持ってる?

 ああ、黒板消し、ね。

 それに椅子を持ってくる子も一人――なるほど。

 あれね、古典的ないたずら。

 年甲斐もなく、恥ずかしくないのかしら。

 というか今時やらないでしょ、昭和かって話よ。

 しかも中二よ?中学二年生よ?

 天然記念物として、逆に国に保護されるべき貴重種じゃないの、彼ら。

 昭和時代なんて知らないけどね、私。

 で、なんだっけ、次の授業は英語だっけ?

 英語の教師は、あの新米の女性教師。

 かわいい…かどうかは分からないけれど、男子からは人気がありそうな、そんな印象。

 思春期真っ只中の男子たちには、恰好の的ね。

 ――さて。

 どうしようか。

 扉の前では、黒板消し爆弾を仕掛け終えた男子たちが、はしゃいでる最中ね。

 あ、でも――鳴り響いた予鈴の音で、自分の席にぽつぽつと戻り始めたわ。

 ふふっ、なんか滑稽じゃない?

 なんでそこは従順なのかしら、今まさに悪いことしてるのにね。

 って、そんなことより、えーっと…周りの様子は?

 んー…他のクラスメイトも自分の席に戻りはじめてるけど――、爆弾に口出しする人は誰もいない、か。

 …はぁ。

 しかたない、私が助けてあげるか。

 魔法を使うにはちょうどいい。

 普段の――というか、数日前の私だったら、他の子同様知らないふりを決め込んだんだろうけど…。

 今日の私なら、助けることができる。

 しかも、目立たずに。

 イタズラは止められなくても、モノは止められるの、たとえそれが、たった一秒でも。

 こんな魔法じゃ、世界を危機から救えないだろうけど――。

 黒板消し爆弾から、先生を救うくらいなら――出来る。

 ふふ、顔がにやけそう。

 ここまで淡々と語ってきたけど、魔法を使えるのが、実はすごく嬉しいのよ。

 役に立てるのが、すごく嬉しいのよ。

 ふふふ。

 ――んと、そうこう考えてるうちに本鈴ね。

 ということは、そろそろよ、そろそろ先生が入ってくる…。

 あ、ちなみにだけど、魔法を使うのに変身なんて必要ないわ。

 ステッキなんてのも使わない。

 その時、その場で、その瞬間、魔法を使うだけよ。

 つまりは、ただ念じるだけ。

 止まれと、念じるだけ。

 ――簡単。

 簡単よ。

 たったそれだけで、人が助かる。

 人を助けるってのは、こんなにも簡単――あっ!

 ガラガラって、ドアが開いたっ。

 今っ――!


 黒板消し、止まって――!


 ――っ!!

 うんっ、黒板消しちゃんと止まった。

 よかった。

 そしてそのたった一秒の間に、すかさず先生が通り過ぎて大成功!!

 ――の、予定だった。

 予定だったのに、今は男子たちが大笑いしてるのは…なんで?

 先生が怒声を教室中に響かせて、半泣きで教室を出ていったのは…どうして?

 女子たちが例の男子たちに非難の声を浴びせに浴びせて、七瀬委員長がどうにかことを収めようと奮闘してるけど――、結果は芳しくなくて。

 でも、今の私にはそんなことどうでもいいのよ。

 いったい何が…起こったの?


 ――えーと、結果から言うと、魔法の発動は成功していたんだと思う。

 失敗したのは私の作戦の方。

 ガラガラとドアを開けた先生は、すぐに入ってこなかったっぽくて――。

 つまり、一秒。

 たった一秒、ドアの前で立ち止まった。

 ドアの前で立ち止まって、ひと呼吸した。

 先生の、そんな何気ない動作。

 そのたった一秒の動作が、私の止めた渾身の一秒と運悪く重なったの。

 これが今回の失敗の考察。

 もちろん…推測だけど。

 魔法が発動したのは確かだから、だいたいあってると思う。

 …はぁ。

 結局、私は先生を救えなかった。

 むしろ、先生に黒板消し爆弾が直撃したのは、()()()()だ。

 いまだ罵声と怒声が飛び交う混沌とした教室、この惨状を招いたのも、私。

 人を助けるなんて、全然簡単じゃなかった。

 私が何もしなければ――。

 …。

 先生…ごめんなさい。


 ――いつの間にかの帰り道。

 あの事件の後の私は、茫然自失と残りの授業を過ごしてたらしい。

 午後の授業の内容、あまり覚えてないもの。 

 あの事件の反省をしながら、先生の話を右から左へ聞き流してた。

 ほんとに文字通り、()()()()()()()()()、よ。

 反省してたって言っても、なにも建設的な考えなんて浮かんでないけどね。

 あ、ちなみに教室の惨状は、あの後進路指導の先生がやってきて、無理やりにことを収めてくれたわ。

 犯人として祀り上げられたあの男の子たちは、こってり絞られて半べそよ。

 そして私も、半べそ。

 ほんとは、私もあの中にいないといけないのに――。

 …はぁ。

 私には…、過ぎた力なのかな。

 いや、たった一秒しか止められないんだし、出来ることなんてほとんど無いに等しいし――。

 これが過ぎた力だなんて、ありえない。

 …と思う、いや、思いたい。

 そう思いたんだけど、でも――。

 でも、その一秒を使い誤ったせいで、先生が被害を受けた。 

 私が何もしなければ、助かってたのに…。

 

 ――で、また気が付いたら、もうベッドの中。

 ご飯を食べてからお風呂に入ったことは、ぼんやりとは覚えてるわ、かろうじて、ね。

 あ。

 宿題、やってないや。

 …。

 まあいいか、私が怒られればいいだけの話だし。

 幸い、あのあと出された英語の宿題だから、贖罪(しょくざい)にはちょうどいいし。

 …先生に黒板消しを当ててしまった罪への贖罪。

 うん、そう考えると気持ちが少し軽くなった気がする。

 気持ちが軽くなると、思考も少しずつ回り始める――気がする、あ。

 そうか!

 黒板消しじゃなく、先生を止めればよかったんだ。

 動きの読めない人間の方を止めればよかったんだ。

 なんだ。

 そんな簡単なことだったんだ。

 そうすれば、黒板消しは重力に従って先に地面に落下したはずで――。

 …。

 うん、反省終わりっ。

 次は間違わないようにしよう。

 失敗したのが、黒板消しでよかった。

 先生には悪いけど。

 加害者は私だけど。

 次に生かすから、だから先生許して。

 ――って、前向きに考えてはみたけど…やっぱりダメ。

 頑張って眠ろうとしたけど、ぎゅーって目を瞑ってみたけど、全然ダメ。

 頭ん中ぐるぐるで、全然まだ整理出来ない。

 反省が終わったからって、心が整理できたわけじゃない。

 失敗を次に生かせば罪が許されるなんて、そんなのありえないし。

 はぁ…今日は、どうも寝られそうにないわ。


 翌日、もちろん英語の時間に怒られたわ、予定通りに。

 そしてそれは、私にとっての贖罪だから、甘んじて受け入れた。

 受け入れたんだけど…。

 …でもこれって、ただの自己満足じゃない?

 先生にとっては、ただの迷惑…よね?

 …はぁ。

 ダメダメね、私。

 どうも今日の夜も眠れそうにないわ。

 こんな些細な魔法じゃ世界なんて救えないけど…。

 一番救えないのは――きっと私だ。


どうも、煮木倫太郎と申します。

ある日、いつものようにお風呂に入っていたら

ふと物語が頭に降りてきたので

適当にキーボードをカタカタしたら、できたお話です。

なので、本作にプロットはほぼありません。

今後も思いつくまま、100%趣味で書いていきます。

一話完結の短いお話をどんどん追加していく予定です。

不定期更新になりますが、追ってくださると嬉しいです。


追記:物語が終盤に差し掛かったため、文章を大幅修正しました。

   少しは読みやすくなってるはず。たぶん。

   以降のお話も、同じように修正が入っています。

   が、文章のフォーマット修正はあまりありません、世界観の都合上。

   以降のお話は、今回のフォーマットを基準として、修正が加わります。

   私としては、書きにくくて仕方ないのですが。

   それは皆様には関係のないところだと信じたいです。

   まあつまりは、今後もよろしくお願いします、という事です。

   …ついでに。

   あくまでつぐみちゃんの考察です。

   しかし、先生を止めれば、まず被害は止められたのかなと思います。


追記2:完結まで書ききりました

    つたない文章ではありますが、最後までお読みいただけると嬉しいです

    面白く読める出来になってる…はずです。


ちなみに本作品は、私の2作目の作品です。

1作目はまだ完結どころか、まだまだ序盤ですけどね。

転生物『女神様といっしょの異世界冒険 ―輪廻転生で神になる―』を連載してます。

↑がメインなので、その合間に時間があれば更新するという形です。

よろしければ、こちらもよろしくお願いします。

他の転生物とは一味違った話になっていれば、うれしいかなと。

そう思い、書き連ねてます。


では、最後まで読んでくださりありがとうございました。

是非とも評価、いいね、コメントをお寄せください。ブックマークもお願いします。

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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

応援よろしくお願いします。

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