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014_格闘王と魔法王の始まり

「なぁ、メルル。こいつら護衛にしては弱すぎないか。」


「そう言ってあげないでよ。キョウジに勝てる人間なんてそうそういるわけないんだから。」


「……」×3


誤解からメルルの護衛3人をぶちのめしたキョウジであるが、事情を聞いて出てきた言葉がこれである。

呆れながらも一応フォローするメルルと黙り込む護衛。

そんな中、ターニャがその話に割って入る。


「取り敢えず所属と姓名を名乗ってもらいましょうか?」


「……」×3


「ほぅ、だんまり?全く最近の若い騎士は礼儀がなってないのね。元とはいえ騎士団長に挨拶が出来ないだなんて。」


「!!!」×3


「レディターニャ、それはどういう意味ですか?」


ターニャの思わぬ一言にキョウジが疑問を口にする。

それに対して、ターニャはいつもの柔らかな口調で答える。


「あぁ、キョウジ君にはまだ自己紹介してなかったわね。私は元ガルズベルク王国騎士団長ティターニア=ベルフォルマよ。

もっとも定年退職して久しいけど。」


「…15年前に引退した伝説の女騎士。『戦場の妖精女王』ティターニア=ベルフォルマ…だと。」


「おい!貴様ら!レディターニャが名乗ったのだ!貴様らも名乗るのが礼儀だろうが!」


キョウジの一喝により騎士達は慌てて居住まいを正し、責任者と思われる男が代表して挨拶をする。


「はっ!失礼した。自分はガルズベルク騎士団近衛隊副長のリンドベルク。

こちらは部下のカズンとデギンズ。お目に掛かれて光栄です。ベルフォルマ卿。」


「あらあら、私はただの田舎で暮らすお婆ちゃんよ。

それよりキョウジ君。私が身元を隠していた事について思う事はあったりする?」


「いえ、特には。あなたがどのような身分であろうと、私にとっては敬愛するレディである事に変わりはありません。」


「そう、あなたは本当にいい子ね。じゃあメルルもいい加減に自分の身分を明かしたらどう?」


ここに来て何故かメルルに水を向けるターニャ。

その言葉にメルルは表情をこわばらせながら、それでも意を決し言葉を紡ぐ。


「キョウジ、わたしの今の名前はメルティア=エル=ガルズベルク。この国の第一王女なの。」


「………」


不安そうな表情で語るメルルに対して、手を顎に当て少し考えこむような仕草をしながらキョウジが口を開く。


「メルル、グリプス家に対して俺への護衛依頼を出したのはお前か?」


「うん、そうだよ。」


「何故、先触れを出さずにいきなり訪問予定を取り付けた?」


「そうすれば、キョウジは絶対にへそを曲げて断ってくれると思ったから。」


「何故、そんな真似をした?」


「キョウジなら王女なんて得体の知れない人間より友人のわたしを優先してくれるって思ったから。」


「それで俺が王女に抗議に行って、大暴れしたらどうするつもりだった?」


「キョウジはそんな事しないよ。それをやるとお婆ちゃんや領主様に迷惑が掛かるから。」


「俺が魔法学園なぞに興味がない事は分かっているよな。お前の依頼も断られるとは思わなかったのか?」


「全然。だってわたしと一緒に冒険者稼業をやって訓練まで出来るっていう、素敵な餌があるんだから。

しかも今回はわたしを狙う暗殺者とかの相手もついて来るんだよ。戦闘狂のキョウジには願ったり叶ったりじゃないかな。」


「お前!暗殺者って!お前の立ち位置はそんなに危険なのか!」


「うん、第一王子と第二王子がわたしの命を狙ってる。なんせわたし魔力量だけで言ったら王族の中でも最強だから。」


「…ちっ!面白くない!俺はまんまとお前の手のひらの上で転がされていたわけだ。」


「ふふ~ん。初めてキョウジに勝ったね。どう、わたしも成長したでしょう?」


悔しそうな顔で頭を掻くキョウジに、満面の笑みで答えるメルル。

メルルの少女の可愛らしさと女性の美しさが同居する笑みにキョウジも思わず頬を緩ませる。


「ところで、報酬の支払いだが王女が冒険者稼業なんてやって大丈夫なのか?」


「そこは大丈夫だよ。この国って基本実力主義だから。鍛錬の為とでも言っておけば大抵の事は通るよ。」


「そうか、それじゃ今度こそ交渉成立だな。これからよろしく頼む。メルティア=エル=ガルズベルク王女殿下。」


「メルルでいいよ。王女付き護衛隊長キョウジ卿。」


「……」×2


暫しの沈黙、見つめ合う2人、そして、


「ふふっ…ふふふっ。」


「ははっ…はははっ。」


「ふはははははははぁぁああああああ~~~~~。」×2


2人は大笑いをしながら再び握手を交わす。

こうして格闘王と魔法王の物語は幕を開けた。

彼らに訪れるのは栄光の未来か、それとも破滅の道か。

それは神のみぞ知る所である。

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