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011_七年後のキョウジ

「メルルが長期休暇で戻ってくるんですね。レディターニャ。」


「ふふっ、嬉しそうね。まぁ無理もないか。7年ぶりですものね。」


メルルがこのグリプス領から旅立って7年。この時俺は14歳。身体は7年前より更にデカくなり身長190センチ超え、体重はおよそ200キロとなっていた。

この年の春、長期休暇を利用してこちらに帰省するというメルルの手紙がレディターニャ宛に届いていた。

しかし7年というものは本当にあっという間だ。

10歳になった時に正式に冒険者となり、それからは近辺のモンスターを狩る事で生計を立てるようになった。

俺はそれなりに優秀らしく、冒険者ギルドでも一目置かれる存在となった。

親父殿には今すぐ追い出してくれと頼んでいるのだが、世間体があるからやはり15歳まではダメだと駄々をこねた。

仕方ないから15歳までは我慢する事にしたが、代わりに領主が手に入れられる危険モンスターの情報を俺に寄越す様、息子らしくおねだりしてみた。

親父殿は顔を引き攣らせていたが、満面の笑み(他人にとっては強烈な威圧)でお願いしたら、言葉を詰まらせながら了承してくれた。

こうして時々ではあるが強いモンスターとも戦えてそれなりに楽しい毎日を送っているわけだが、やはり旧知の友と会えるというイベントには心踊らされるものがある。


俺はレディターニャから齎された嬉しいニュースを胸に冒険者ギルドに向かった俺だが、そこでまたしても嬉しいニュースに巡り合う。


「おい!キョウジ!お前に指名の依頼だ!地竜が出た!」


ギルド職員のこの言葉に俺の心は歓喜の声を上げた。地竜とは空こそ飛べないものの地上型のモンスターとしては最大級の力を有するSランクの危険モンスターである。

俺は今までAランクを複数倒してきたが、単独Sランクのモンスターは初めてだ。自然に笑みが零れるのを必死で抑えるが昂る感情は抑えられない。

血沸き肉躍る戦いを想像し、いつも通りの笑い声を挙げながら俺は職員の依頼に応じる。


「ハハハハハァァ!!とうとうSランクモンスターのご登場か!その依頼、確かに承った!」


そう告げてから俺はすぐに現場の草原へと向かう。そして走る事暫し、俺は地竜の元へとたどり着いた。

奴の体長はおよそ10m、体重は推定10トン以上。その上鋭い爪と牙を有しており動きも非常に素早く、全身を覆う緑の鱗は鋼の様に強靭…相手にとって不足なし!

俺は強敵との邂逅を運命神に感謝しながら、地竜との距離を詰める。

だがその時、勝負に水を差す無粋な闖入者が姿を現した。貴族の馬車である。

どうやら地竜もそちらを発見したらしく、猛然と馬車を襲いだす。それを見た瞬間、俺は怒りに体を震わせる。


「地竜ーーーッ!!!!!お前の相手は俺だ!!!!」


俺は恋人を取られたような気分だった。

せっかく出会えた運命の人(きょうてき)が自分ではなく別のものへと目を向ける。

俺の熱い想いに対する許し難い裏切りだ。怒りと嫉妬に狂った俺は地竜の横っ面に渾身の拳を叩き込む。


Gaaawwwwww!!


俺の拳を受けた地竜は、咆哮を上げその奥歯を砕きながら50mほど後方まで吹き飛ばされる。

そしてすかさず地竜と馬車の間に割って入る。何者にも俺と地竜の楽しい戦闘(デート)の邪魔はさせない。

そんな思いを込めて、俺は馬車に対して怒鳴り声をぶつける。


「おい!そこの馬車!邪魔だ!さっさとここから離れろ!!」


するとその声を聴き、座席の方から上等な服を着た14~15歳くらいの少女が顔を出す。


「あの、助けて頂いて「邪魔だと言っている!さっさと失せろ!!」」


もたもたする少女に対して俺が再度怒鳴りつけると、少女ではなく御者が悲鳴を上げながらその場を足早に去っていった。

そんな事をしていると先ほど吹き飛ばした地竜(こいびと)も戦線復帰してきた模様だ。

俺は顔全体に満面の笑みを浮かべながら、戦闘(ステージ)の第二部の開幕を高らかに宣言する。


「よし、地竜よ!!!これで邪魔者はいなくなった!!さぁ、存分に愛死合おうじゃないかァッ!!!!!」


Gaaaaaaaaawwwwww!!!!!!


こうして俺と地竜の一生で一回限りの熱い戦闘(ダンス)が始まった。

俺がローキックで地竜の後ろ脚を砕けば、地竜は俺の右肩にその爪を突き刺し、俺が手刀で尻尾を切り落とせば、地竜は牙で俺の左腕に食らいつく。

俺が左腕を守るために右手で歯をへし折ると、地竜は首を振って折れた歯ごと俺を投げ飛ばす。

俺が殴りば相手がひっかき、相手が噛みつけば俺が蹴り飛ばす。まさに泥仕合。ひたすら殴り殴られの繰り返し。

そこには技も何もなく、あるのは獣の闘争だけ。前世では出来なかった力任せの戦いに俺の心は舞い上がった。

そして殴り合う事、数時間。先に音を上げたのは地竜の方である。地竜は降参の意を示してか、その首を垂れて俺に介錯を要求する。


楽しい戦闘(ゲーム)が終わるのは名残惜しいがこれ以上、地竜(こいびと)を待たせるわけにはいかない。

俺は速やかに且つ苦しまないように地竜の首を手刀で落とす。

俺は強敵との楽しいひと時に心を躍らせながらギルドで手続きを済ませ、家路につく。

まさか後日、あんな事が起きるなんて夢にも思っていなかった。

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