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000_修羅の世界から魔法世界へ

今回は思いつきで短めの話を書いてみました。

好評なら追加を書く予定ですので感想等、頂ければ幸いです。

「うむ、ここはどこだ。俺は確か…」


俺は今、真っ黒な空間にいた。光も含めたありとあらゆる物が存在しない。まさに虚無の空間だった。

俺が戸惑っていると目の前に眩い光が発生し、10歳くらいの少女が姿を現した。

その少女は腰ほどの長さの流れる様な美しい銀髪と吸い込まれそうな深い色の銀の瞳、整った顔立ちはまさに絶世の美少女。

空色のワンピースを身に纏ったその姿は誰が見ても愛らしく感じるだろうが、彼女の最大の特徴はその背中、そこには1対の純白の羽が生えていた。その明らかに人ではない出で立ちに俺は思わず身構える。

すると少女はそんな俺を安心させる為か、その美しい顔で微笑みながら言葉を紡ぐ。


鉤崎(かぎざき)京志郎(きょうしろう)さん。あなたはつい先ほどお亡くなりになりました。」


その言葉を聞いた瞬間、俺の脳裏に先ほどの、つまり死ぬ前の記憶が蘇る。


俺はいわゆる喧嘩師という奴でその日も街中で遭遇した猛者と戦っていた。

相手は身長2mを超える巨漢、筋骨隆々で体重もおそらく200キロを超えているだろう。

その身体には頭のてっぺんからつま先まで全身くまなく傷跡があり、その顔の異様は彼の戦歴を物語っている。

腕も足も人の数倍のデカさ、その拳で殴られたなら鉄板でも貫くだろうし、その巨大な掌で握り潰されれば電柱だってへし折られる事だろう。

俺もこんな体に生まれたかったと羨望すら感じる。まさに強い漢の出で立ち、まさに力の体現者。

彼を一言で表すなら『武』である。


対する俺は身長170センチほどで体重もせいぜい70キロ、

これでも鍛えているのだが、如何せん体がデカくならない。

そんな俺が今まで喧嘩師としてやって来れたのは、ありとあらゆる手段を使って敵の裏をかき、力に対して技で対抗してきたからだ。

大体の奴らが俺の喧嘩師としては小柄な体を見れば油断して隙を作ってくれる。

俺はそこを徹底的について先手必勝で相手をぶちのめす。まぁ名前が売れてない頃はそれでよかった。

だが最近少し名前が売れ始めてそんな手が使える機会もめっきり減っていた。

それでも今まで戦って来た技があるから負ける事はなかったのだが今回はどうも分が悪い。


相手はデカくて強いにも関わらず、チビの俺に対して一片の油断もない。

その巨体から決して大声ではないにも関わらず、大気を震え上がらせるような重たく響く声で俺に話掛ける。


「お前は…鉤崎京志郎だな。」


「そういうあんたは対暴科の園山金剛(そのやまこんごう)だな。」


「もうやる事は分かっているな。」


警視庁対暴力科特別決闘班班長_園山金剛。簡単に言ってしまえば街でやんちゃし過ぎた喧嘩師への制裁を担当している漢だ。

つまり俺は喧嘩のし過ぎで国家権力に目をつけられたというわけだ。

この対暴科だが普通に喧嘩師を抹殺に掛かる。まぁこの国での喧嘩師が起こす被害は年間に数兆円と言われているから分からなくもない。


園山の言葉を合図に両者は動きだした。そして勝負は一瞬で着いた。

奴はおもむろに近くの電柱をその巨大な掌で本当に握り潰し、それを俺に向けて振り下ろしてきた。

俺は回避する事も受け流す事も出来ず、瞬く間に人間からひき肉へと姿を変えた。

それが俺、鉤崎京志郎の死である。


記憶が蘇って呆けている所に先ほどの少女が声を掛けてくる。


「しかし、あなたの世界は本当に大概ですね。

文明が発展していながら素手での決闘が容認された世界。

素手同士で両者の同意があれば、そこで起きた事は全て自己責任。

決闘の勝利数こそが強者の証明であり、強さこそが漢の価値であり全て。

こんな修羅の世界は他の所ではまず存在しませんよ。」


「そうなのか。まぁ、俺はその世界しか知らないから何とも言えんが。

しかし、俺ってあの園山金剛と相対して負けたんだよな。

あれはマジで本物の漢だったぜ。あんな奴に敗れて終わるなら俺の人生も捨てたもんじゃなかったってもんだ。」


「自分がミンチにされて出て来る感想がそれですか?あなたはもしかして馬鹿なんですか?」


「いや、漢ならみんなそうだろう。まぁ心残りと言えば俺の体が弱くて園山とまともに戦えなかった事くらいかな。」


「それがあなたの望みですか?その望み、叶えて差し上げましょうか。」


「本当か!…でも俺って死んだんだよな。普通こういう場合天国とか地獄に行くんじゃないのか?

それに聞きそびれていたがあんた一体何者だ?」


「私ですか?私は運命神ノーラ、またの名を異世界転移の女神です。」


俺の質問に少女ノーラはその美しい顔に文字通り女神の笑顔を浮かべる。


「その異世界転移の女神のノーラ様が俺の望みを叶えるってことは、俺に異世界にでも行けって言うのかな?」


「はい、あなたには剣と魔法の世界で世界の安定の為にお使いをお願いしたいと思っています。」


「お使い?」


「はい、あなたって前の世界でしっかり鍛えている割に体が小さかったじゃないですか。

それってあなたが本来持っていた魔力と呼ばれる力のせいだったんです。

あの世界では魔力は毒でしかありません。それが肉体の成長を阻害していたんですね。

そこであなたには魔力が必要且つ枯渇している世界に行ってもらって世界に魔力を供給してほしいのです。

はっきり言ってあなたの内包している魔力の量は小神クラスで世界を支えるには十分な量ですが、あなたには魔力を扱う才能は全くありません。

あなたの魔力を有効利用するとともに、あなたの肉体の成長を阻害している魔力を取り除く。

まさに一石二鳥の案だと思うのですが。」


「つまり、異世界転生をすれば園山みたいな体が手に入るのか。」


「あっ…あなたにとって大事なのはそこだけなんですね。

それはあなたの訓練次第です。前世と同程度の訓練をしていればおそらく問題なくなれるでしょう。」


「では頼む。」


「分かりました。ちなみに転生が終わった瞬間、あなたの体内の魔力は消え去りますので何かと苦労されると思いますが頑張って下さいね。」


こうして俺は女神ノーラの手によって新たな世界へと導かれた。

最強の体と技を手に世界最強への階段を駆け上る事を夢見て。


でもこの時俺は気づいていなかった。これから行く世界は剣と魔法(・・)の世界だという事に。

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