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アーサー目線一旦ここまでです。
全て準備は整った。
やっと解放される。
何故俺が仲人をしないといけないんだ。
「ありがとうございます。この御恩はいずれ御返し致します。」
フィンは珍しく顔を引き締め頭を下げた。
フィンは先代魔女の子孫ではあるが、貴族ではない。
それがセリシアとの関係を発展させる事が出来ないでいた理由だった。
「だから前々から身分など気にするなと言っていたんだ。俺の側近なんだ。それなりの地位は約束されている。ソマフリー男爵だって分かっていた。気にしていたのはお前だけだ。はぁ…これでやっとリリィの事だけを考えられる。」
「そうですね…。リリアーナ嬢とのお茶会は二時間後です。それまでにこちらの書類を片付けて頂けますか。陛下から催促が来ています。」
「お前は容赦ないな…。」
*****
仕事を片付け、俺はリリィとの茶会に来ていた。
「それはそうと殿下。ソマフリー男爵令嬢とのことはどうなさるおつもりなのですか?今後の私達のこともありますし。そろそろ色々と手配をしないといけませんわよね。」
「セリシアがどうかしたのか?それよりリリィ。私のことはアーサーと呼ぶ約束だっただろう。」
俺は眉を潜めて言った。
最近何故かリリィは二人きりの時は殿下と呼ぶようになっていた。
何だか他人行儀で気に入らない。
「近くに誰もおりませんし、話の内容は聞こえませんでしょう。そのセリシア様との婚姻についてです。手はずは整っているのですか?」
いや、近くに誰もいないからこそ名前で呼んで欲しいのだが…。
もしや照れ隠しだろうか。
してセリシアとフィンのことか。
リリィは何故知っているんだろうか。
「あぁ。リリィ知っていたのか。リリィが心配することはない。全て整っている。大丈夫だ。」
なんせ俺が手を貸してやったのだから抜かりはない。
もう後はあの二人で何とかできるだろう。
「まぁ!そうなのですね。では私にお手伝いできることがありましたら何なりとお申し付けくださいませ。」
リリィは満面の笑みを見せる。
リリィはあの二人とそんなに親しかっただろうか?
あの二人の事より俺達の話をしたい。
結婚式は半年後だ。
リリィとの結婚…。
待ちきれない。
「あぁ。リリィは式を楽しんでくれればそれで良い。」
俺達二人の結婚式だ。
リリィの花嫁姿が目に浮かぶ。
「結婚式に招待していただけるのですか?私セリシア様とはまだお会いしたことがありませんし、立場的にもあまりよろしくないのではないでしょうか。」
「ん?セリシア?」
セリシアとは会ったこともなかったか。
それなのにセリシアを結婚式に招待したいのか?
よくわからないがまぁいい。
「リリィが望むなら招待するが。」
リリィの好きなだけ招待すると良い。
「殿下。そろそろこのお茶会も必要ないのでは?もう全て準備が整っているのであれば、これからは未来の妃との時間を増やしたいでしょうし。」
やはりリリィも寂しかったのか…。
「あぁ…。そうだな。これからは2人でいろんな時間を過ごすとしよう。」
まずはリリィと二人で城下へ出掛けてみたいと思っていたんだ。
早速手配するとしよう。
「それはよろしいですわね。では、婚約解消のお話は私の父に確認しますわ。もうお話は通っていますわよね?正式な手続きはその後すぐに。また後日父からご連絡させていただきますわね。それでは殿下。今までありがとうございました。ごきげんよう。」
...
「へっ…?」
ありがとうございました。