12
「特に殿下との結婚が嫌という感情は無いように見受けられます。」
フィンはさらりと答えた。
「俺はそんなことは聞いていないが。」
俺はフィンをじとりと睨む。
「失礼しました。知りたいと聞こえたような気がしまして。」
ふぅ。
少し安堵した俺にフィンは続けた。
「結婚が嫌なのではなく、数多くいる側室の一人になるのが嫌な様ですね。」
「俺のただ一人の妻になりたいということか!」
俺は一気に気分が向上した。
が、すぐにフィンによって落とされる。
「いえ。その様な感情は一切ありませんでした。」
一切か。
俺の気分は留目無く沈んでいく。
「しかし、あれだけはっきりと俺の意思を伝えたんだ。少しは関係が改善されただろう。」
俺がそう言うとフィンはまた憐れむ様な目を向ける。
「それなのですが、殿下がリリアーナ様を妻にと想いを伝えている際、リリアーナ様は別の事を考えておいでで・・・」
「ん?」
「殿下はセリシアと結婚するのではなかったのか。では誰と結婚するのだろう。と疑問に思われていましたよ。殿下は私の愛するセリシアと結婚なさるのですか?」
今度はフィンが俺を睨み付けてきた。
「冗談はよせ。あれだけ言ったのに何故その様な考えになるんだ・・・」
俺はガックリと項垂れた。
「私に言われましてもどうにも。どうやらリリアーナ様は殿下のお言葉が殆ど耳に入っていない様ですね。」
そうフィンは俺に追い討ちをかける。
これは・・・
少し考えを改めてリリィに接していかなくては。
全く俺の想いが届いていない。
俺は想いを理解してくれるまで、ちゃんと話をしようと心に決めた。
ありがとうございました。