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「リリィ」
アーサー様はとても悲しそうな顔をして私の名前を呼んだ。
ハッと我に返った私は自らを落ち着かせてゆっくりと話を続ける。
「私の役目は終わりました。殿下は愛する人と結婚なさるのですから、どうぞ私の事はお気になさらず。私は田舎で旦那様とのんびり暮らすのが夢なのです。」
落ち着きを取り戻した私は穏やかに笑顔を見せた。
「リリィ。私との未来は考えてくれないのだろうか。」
アーサー様は困惑した表情を見せる。
殿下との未来?
「考えたこともありません。そもそも私達はそのようなことを考える仲ではないでしょう。」
言い終えたあと、ハッと思い立った。
もしかして、私を側室にでもするつもりなのでは!?
だから教育も受けさせて、私に王太子妃の仕事をさせる気なの?
セリシア様に負担をかけたくないから・・・
セリシア様愛されてるわね。
でも一夫一妻制の国で生きてきた記憶のある私には無理。
一側室にされるのなら国外追放されるか修道院に入った方がいい。
数多くいる側室の一人にされるなんてごめんだ。
早くこんな私でも引き取ってくれる人を見つけないと。
欲を言うと私を愛してくれる人。
私も精一杯愛するから。
そんなことを考えていたら私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ーーーリリィ?聞いているか?」
「あ、申し訳ありません。考え事をしていて。」
しまった。
全く話を聞いてなかった。
「もう一度言うからよく聞いてくれ。まず、私はセリシアとは結婚しない。私はリリィとの結婚を望んでいる。王太子妃になるのも、私の妻になるのも、リリィ、あなただ。」
え?セリシア様と結婚するんじゃなかったの?
では誰と結婚するんだろう?
リリィは始めの言葉に衝撃を受け後半の言葉は殆ど頭に入ってこなかった。
ありがとうございました。
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