表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

可愛いカーライルちゃん。

魔術師の王国追放~先にしたのはお前だろ。


スーと流して下さい。



「カーライル、可愛い貴方は今日で王国魔術師長を罷免よ!国を出て行って貰うわ!」


1年に及んだ隣国の戦争を勝利で終え、王国の主催する祝賀会が後わる頃、突然部下であるアシュリーから追放を宣言された。


「...また?」


突然の事に理解が追いつかない。

だって追放って国王とか偉い人の方からするんじゃないの?


俺、一応魔術ギルドで選出された最高ランクの魔術師だよ?

世界には数百人いるらしいけど...


「あら命を奪われそうな魅力的で(とぼ)けた顔ね。

心を奪われたのは敵だけじゃなかったのね」


余りの事に呆けていると王国魔術師団で部下の、いや元部下で第八王女アシュリーが蕩けた表情で笑った。


「アシュリー仕方ないよ、部下に追放を宣告される位の魅力的な魔術師様なんだから」


「ああユーリ...」


アシュリーの後ろから現れたのは王国騎士団長で戦友だったユーリ。

奴は公爵の息子、今回の報奨に新たな爵位を賜る予定だった。


一魔術師とはいえ最高ランクと認められている俺だ。

今回の戦争で殆ど被害を出す事無く勝利をもたらした事で最高の魔術師長と称賛されたんだぞ?


世界から認められた王国魔術師長を追放宣言した時点で2人共アウトだ。

奴等の評判と共に魔術師の地位まで落としたな。


「おいカーラ、こりゃ何だ?」


隣に居た戦友で傭兵の狂戦士(ベルセルク)サザーランドが呆れた顔で呟く。

幼馴染みの奴は昔から俺をカーラと呼ぶ。

女みたいだから止めろと何度言っても改めないから俺も愛称で答える。


「ランちゃん、俺が聞きたいよ」


「その呼び名を止めろ!どれだけ敵や部下に揶揄(からかわ)れてきたか!」


目を剥いて身体を震わせるランちゃん。

2メートルを超える最恐戦士だからな。

顔は爽やかなイケメンだが。


「2人共止めなさい。

それよりあの魔術師見習いよ、ヘルペスの潰瘍が潰れて脳が腐ったのかしら?」


身体を締め上げられ、息を詰ませる俺を睨みつつ、怒りを滲ませながらランちゃんを蹴り上げ更なる猛毒を吐き散らすこいつは同じく傭兵で幼馴染みのアナリシス。

黙ってりゃ美貌の拳聖様なのに。


「ヘルペスか、お前伝染うつってないか?」


それは心配ご無用だ。

アシュリーと肉体関係どころか一緒の部屋に行った事も無い。

しかしランちゃん、お前は傭兵のくせに雇い主の俺にとんでもない口を利くな。


「お前こそ大丈夫か?あいつの股の緩さが改めて解った以上、お前の水疱が実に心配だ」


「サザーランド、貴方まさか...」


アナリシスから立ち上る凄まじい闘気と殺気。

世界最強の拳聖アナリシス。

彼女の拳は城壁すら木っ端微塵に砕いてしまう。


この2人は昔から恋人同士で相思相愛。

1年前に戦争が始まりが絶対不利だったこの国。

俺はサザーランドに救援を依頼すると世界の果てから駆けつけてくれた。

そんなサザーランドが心配で一緒に戦う事を選んだアナリシス。


信頼出来るパートナーがいない俺との違いが悲しい。

(何故かすぐ副官は辞めてしまう

『自信がありません』って。なんで?)


「馬鹿な事を言うな、俺は女はアナリシスだけだぞ!」


「...サザーランド」


「アナリシス...」


見つめ合い抱き合う2人。


今なんかサザーランドは気になる事言わなかった?

こら皆サザーランドを讃えるな!


「すまんアシュリー、なんだったっけ?」


「...ふざけないで」


「は?」


「ふざけないで!

部下がとんでもなく可愛いあなたに追放を宣言してるのよ、悔しがるとか無いの?」


何でまた俺が怒られるの?


「お前の親父さん国王陛下だろ?

良いのか、こんな兵士や傭兵の居る面前で」


アシュリーの馬鹿らしい振る舞いに国王陛下が心配になる。

あいつはどうでも良いが陛下は良い人だ。


三年前、魔術師として仕官の為に来た俺。


『本当に魔術師か?』


『こんな...つくしい子が魔術師など...』


周りからそう言われ仕官が危うかった俺を一存でこの国の魔術師団に加えてくれた。

更に魔術師長にまで抜擢して貰い本当に感謝だ。


(それでもなかなか団員は俺を魔術師として認めてくれなかった。

母親に似過ぎたのが原因かもしれない)


「話を誤魔化さないで、私分かってるのよ!」


「分かってる?」


「しょっちゅう戦線を離れてばかり!

私を放ったらかしにして可愛い貴方は遊び歩いてたんでしょ?」


「アシュリー?」


何でそうなる?


魔術師長には補給や物資を王国に報告し、戦場に届ける任務もある。

ポーションや魔法杖等の消耗品は高価だ。

道中で敵や盗賊から奪われない為にサザーランドとアナリシスの3人で行ってたのに。


大勢で行っては目立つ為、少人数で行っていた。

(アシュリーとユーリにも声を掛けたが来なかった。)


「気安く呼ばないで。

それに引き換えユーリは寂しい私を慰めてくれた。

カーライルが居ない間、楽しかったわね」


「ありがとう。

愛しいアシュリーに寂しい思いをさせる可愛いくて天使みたいなカーライルみたいな事、僕には出来ないよ」


あいつら俺達が隊を離れている間に前線を離れてナニや、これやら致してたのか。

よく戦争に負けなかったな。


アシュリーが身に着けている宝石はユーリからの贈り物だろう。

何と身内に甘々な公爵様だ、そりゃああなるわな。


「お金目当てなんかじゃない、私はユーリとの愛に生きる事にしたの。

可愛くて目も眩むカーライルが私を放ったらかしにしたのが悪いのよ」


アシュリー、お前は自分の言葉が本当に理解出来てるのか?


「んな訳あるかよ」


「馬鹿王女いい加減にしなさい」


寝言にランちゃんとアナリシスが言い返した、すまん。


「あんた達もカーライルと一緒に消えてたわね。何よ3人で身も身体も繋がってるの?」


「「はい?」」


サザーランドとアナリシスと俺が?

それに『身も身体も』はおかしいだろ?


昔からの二輪の百合花だと言われてた俺とアナリシス。

意味は解らんが当然そんな関係では無い。


サザーランドのハーレムパーティーと俺が間違われ...止めよう。


「今、何て言ったの...」


アナリシスがキレた、こいつは昔から異性はサザーランド一筋だ。


「何度でも言ってやるわ、カーライルを夜な夜な搾るサキュバス拳聖が!」


おいアシュリー今なんて言った?


「...貴様何を言っている」


ランちゃんまでキレた。


愛する彼女を淫魔(サキュバス)呼ばわりされりゃキレるわな。

誰もアシュリーの言葉を信じちゃいない...

ちょっと待て、誰だ?股を押さえてる奴は!


「無理矢理魔術師団の副官を国王から押し付けられただけの癖に、偉そうにしないで!」


おいアナリシス、それを言うな!

確かに誰も副官になってくれなかったが。


「仕方ないでしょ?

みんな嫌がってなり手が居なかったんだから!」


今『嫌がって』と言ったな!


「おいカーラ、嫌がってだってよ」


頼む繰り返さないで...


「茶番劇は止めよう、アシュリー行こうか」


「ええ、こんなのに構ってると脳味噌が溶けて鼻から流れるわ。

さようならカーライル、私はユーリと行くわね」


「行くって?」


「カーライル、貴方は本当天使の様に可愛いのに最後まで馬鹿ね。

王宮に決まってるじゃない、私はユーリを婿に取って女王になるの」


「...おいカーライル、あいつら知らんのか?」


「....サザーランド、どうやらそうみたいだ」


「...本物のドアホを見たわ」


俺達は顔を見合わせる。

いや俺達だけでは無い、アシュリーとユーリを除いた兵士達は呆気に取られていた。


「国王はお前達の廃嫡を正式に決めたぞ」


「え?」「誰?」


扉が開き、黒いローブに身を包んだ威厳溢れる1人の男が入って来た。

会場の皆は慌てて跪ひざまずく。

なぜなら男は世界の魔術師を束ねる魔法協会の会長で俺の、


「...親父?」


「こらカーラちゃん、ちゃんと会長と呼べ」


いや思わず言っちゃったけど、今やっぱり「ちゃん」を2回言わなかった?


「王国はアシュリーとユーリの廃嫡を正式に決めたぞ。

発表はまだだが王国は既に兵士や傭兵に通達されておる」


親父は先程と同じ内容を繰り返す。

やっぱり大事な事だから二回言ったんだね。


「...嘘だ」


「嘘では無い、貴様達王国から連絡を受けて無いのか?」


受けて無いよね、だって戦争終わると別荘に籠って今日までナニやらしてたみたいだもん。


「嘘だ!追放された(まばゆ)く可愛いカーライルが哀れでこんな嘘を!」


「いやカーラが哀れとか関係ない。

それほど可愛いと感じるのは、私も痺れる程当然と思うが」


『俺は河豚か!』


心で叫んだ。


「確かにカーラを見ていると脳が...」


「ええ、ユーリがカーライルを見る目が怪しくなるのは仕方無いでしょう。

私だって早く服を剥きたく...」


ラン!アナ!貴様等!!

だからなぜ皆頷く?前傾姿勢を止めろ!


「...嘘、私が廃嫡?」


お。アシュリーは信じたか?

世界の魔術師を束ねる会長が冗談でそんな事言うわけ無いからな。

世界の魔術師を敵に回したらどんな王国もひとたまりも無いし。


「王女でありながら戦線に赴かず、ユーリは実家の公爵家が補給の品を売りさばき、私腹を肥やしていたんだ。

王国は公爵家を取り潰し、2人共廃嫡だと」


仕方ないから説明してやった。


「どうして教えてくれなかったの!」


何故教える必要があるんだ?


「そうだ、お前は魔術師長でで王女アシュリーの上官だろ!

どうして俺にも教え無いんだ!」


「ユーリ...」


滅茶苦茶だな、勝手に追放を宣言する部下に教える訳ないだろ。

それに今は元部下で元王女だ。


「あのな、カーラはお前達の為に頑張ってくれたんだぜ」


「そうよ、本当なら廃嫡の上国外追放される所を収めて...」


ランちゃんとアナリシスは糞馬鹿な2人に説明した。


俺が国王に頼みアシュリーとユーリの廃嫡だけで済ます様にお願いした事、

貴族籍を取り上げられた2人が新たに貴族として男爵の爵位を賜れる様にしてあげて欲しいと言った事を。


「そんな、お前は俺達を救おうとしてくれたのか、魔術師と言うより女神(アテナ)みたいな可愛いお前が...」


今何て言った?


「お前に恩人呼ばわりされるのは嫌だ」


「え?」


「魔術師長を追放しようとしたんだ。

それに公爵家から金の出所くらいは知っていただろ。

戦争そっちのけで贅沢三昧したお前を許すと思うか?」


「お、カーラがキレた」


「やっぱりね」


「「「「「待ってました!!」」」」」


サザーランドどアナリシス、そして兵士達が嬉しそうに踊っているが、どうでも良い。


「そんな、じゃあ俺はどうなるんだ?

男爵じゃ今までの生活が...」


「知るか!」


「俺が嫌いなのかカーラ!?」


「好きな訳ねえだろ!」


ユーリは泣き叫び俺にすがりついた。

兵士達が無理矢理引き剥がして...

...誰だ?俺の魔法のマジカルステッキ)を奴の尻に突っ込んだ奴は!


しかし何で嫌いと聞く必要があるんだ?

あと俺はカーライルだ。


奴も一応は騎士のままだ。

平隊員でも贅沢しなきゃ食っていけるだろ。

どれくらい強いかは知らんが。


「...あのカーライル」


まだこいつが残っていたな。


「なんだ」


「私目が覚めたわ!

やっぱり副官たるもの魔術師長を支えるべきよね。

貴方が美しくて可愛い過ぎるとかカーライルは正に女神なんて関係無い!

私これからも着いて行くわ!」


「先ずは頭の病気を治してから言え」


「カーライル?」


「目が覚めた?最初から寝たままで起きた事が無かったの間違いだろ?

追放しといて今更副官?

お前はそこの膿んだ騎士ユーリと貧乏貴族がお似合いだ」


「ひ、酷いわ、恩人の娘に何て事を...」


恩人?

国王陛下の事か。


「会長」


「なんだカーラ...イルちゃん」


「陛下は何か言ってましたか?」


「馬鹿な娘を押し付けてすまなかった、アシュリーは平民に落とす事も考えたが、この際隣国に人質として降嫁すると言ってたな」


そうか、残念だなアシュリー。

敗戦国の嫁か、賠償金やらで隣国の財政は苦しいが、まあ大切には扱われるだろ。

国民から慕われはしないだろうが。


「カーラちゃんと、後始末は頼む」


親父は部屋を出ていく。

こんな馬鹿に付き合わせて申し訳無い。

いつも句切るとこおかしくないか?


「嘘、嘘よね?私が人質?

え?お父様様、嘘、どうして?」


アシュリー...壊れたかな?

第八王女でも王族がこいつの拠り所だったからな。

それでも哀れとは思わん、全て自業自得だ。

最後にちゃんと言っとくか。


「おい!アシュリー」


「...カーライル?」


「元王女アシュリー、貴様は魔術師長副官を辞めて貰うぞ!」


「嘘、カーラ私が嫌いなの?」


「嫌いに決まってるだろ!」


「ギャャアアアアァ!!」


髪を掻き毟るアシュリー、完全に壊れた様だ。

叫び声を聞き中に入ってに近衛兵に引き摺られて行く。

このまま隣国送りだろう。


「ついでに、そこで恍惚している奴も頼む」


ランちゃんはユーリを指差し、手際よく2人を部屋から連れて行ってくれた。


すっきり解決!


「うし、決まった!」


「カーラ、今それを言うか?」


「ランちゃん、けじめだよ」


「けじめなら奴等が追放を企ててるのに気づいた時にしろよ」


「やだね」


「何故だ?」


「あいつら3年前に俺を魔女と勘違いしやがったからだ!」



おしまい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ま、まさか感想欄に爆弾が仕掛けられているとは⁉️
[良い点] こ、これは、スターシステム!!
[良い点] >あいつら3年前に俺を魔女と勘違いしやがったからだ! うん。そうだね! カーラちゃんは、「魔女」じゃなく「魔法少女」だからね!(ここ重要)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ