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s05 不思議な少年

「くっそぉ!何故見つからないんだ!」


《グリフォン》の副団長、サイス・コーマットは、見つからない例の冒険者に腹を立て、目の前にいた中立モンスター、ジャイアンアントを斬り刻んだ。


ここはダンジョン16階層。


《グリフォン》の団員たちが例の冒険者、ツェーンを追跡し始めて、既に7時間が経過していた。


2階層に入った辺りから、5人ずつの分隊でバラバラに例の冒険者を追跡・創作し始めた。


だが、初心者冒険者であるはずのツェーンの姿はどこにもなく、副団長は焦っていた。


第3分隊の分隊長であるパトリック・グプタは、かっかする副団長とは違い、冷静に少年が見つからない理由を考えていた。


そして1つ思いついた。初心者冒険者の少年が見つからない理由が。


「副長。相手は団長が油断していたとはいえ、ひと蹴りで気絶させた奴です。未知のスキルカードや、身体強化系の魔法を持っている可能性もある訳ですよね?」


「あぁ。その可能性は高いだろう」


「つまり、過去にダンジョンに潜ったことがあり、セーブポイントも、踏んでいる可能性があります」


「そんなわけないだろう!奴は今日、冒険者登録したばかりのガキだぞ?それとも何か?違法侵入者だったとでも言いたいのか?」


「その通りです!」


「そんな奴が、ギルドに見つからないわけがないだろう!」


「では、奴は何故、団長とボスとの戦いの内容を知っていたのですか?」


「そ、それは.........」


「私の見立てでは、奴はダンジョンにの1階層に入った時点で、セーブポイントを使い、ポータルで20階層か、40階層、又は60か80、もしかすると100階層まで移動。攻略を進めているのでないでしょうか?」


「.........信じられる話ではないが...........そうなのかもしれん」


「もうそうなら、今の私たちだけで奴を捕まえるのは不可能かと.....」


「.......よし!1度地上に戻る。そして団長の回復後、すぐさま、奴の後を追う!団員達にもそう伝えろ!」


「了解!」



「よし!全員揃ったな。これより、1度地上に戻る。作戦は団長回復後、すぐさま決行に移す。それでは、各自、武器や防具の手入れや、ポーションの点検を忘れずに!それでは進めぇ!」


「「「「「「は!」」」」」」



「おい、《グリフォン》が帰還したぞ!」

「団長は不在か?」

「ギルマスも来たぞ!」

「早くねぇーか?」

「副団長のサイスだ。」

「カッケーなぁ!」

「隊列が一切乱れてねぇーよ」

「さすがだな」


《グリフォン》の早めの帰還に、ギルド内はいっそう騒がしくなる。


クランの団員たちに近づいてきたギルマスは、副団長に手招きし、例のひび割れた()()の壁を指差す。


「なんの事だ?」っと、思いつつも、ギルマスの指差す壁の方を向いた。


!?!?!?


なんということだ。壁が、何事も無かったように修復されている。


どういうことだ?意味がわからない。


サイスはすぐさまギルマスの元へ向かい、事情の説明を要求。ギルマスもすぐさま別室にサイスを案内し、説明を始めた。



─────────────────────


ボスを倒した後、18と19階層で倒していなかった3種類のモンスターを例の杭で倒し、また20階層に戻ったツェーンは、ポータルを使って1階層へと戻った。


ここでポータルの説明だが、ポータルとは、20階層ずつのボス部屋に存在するセーブポイントの事だ。


セーブポイントと言っているのだから、このポータルは、一度ボス部屋に入った者しか使えない。


しかし一度入れば、ダンジョンの1階層からでも、ポータルからでも、セーブしたポイントには、簡単にワープすることが出来る。


だが、ポータルのあるボス部屋にボスがいる場合は、ポータルからは行くことも、出ることも出来ない。


たぶん俺を階層ごと吹き飛ばした奴らも、俺のいたボス部屋のポータルを使って帰ってきたのだろう。


ちなみに、俺は体の時間を戻されているついでに、ポータルの使用権限も、リセットされている。


そりゃそうだよね。


そんなこんなで1階層までワープし、ギルド内に戻ると、入口に突っ立っていたギルド職員らしき男二人が、俺を認識するやいなや、飛びかかってきた。


「なんだいなんだい。抵抗なんてしないやい!」


抵抗なんてしないやい!な俺は、大人しく捕まり、ギルド内の関係者以外立ち入り禁止の扉をくぐり、応接室らしき部屋に運ばれる。


そこには、例の受付嬢と、知らないおじさんがいた。


「ギルマス。連れてきました。」


「ッ!?!?。よくやった!ゴルディックのクランの皆にも、感謝せねばな!」


「いえ。それがそうではなく」


「?どういうことだ?」


1人喜びに溢れるギルマス(って呼ばれてた人)の言葉に、戸惑うギルド職員らしき男達。


そのなんとも言えない雰囲気にギルマスも気づき、問い詰める。


「それが......実はその少年、1人で戻ってきたのです」


「は?《グリフォン》団員も一緒ではなくてか?」


「はい」


「.......おい!どうなんだ!」


俺は、部屋の隅の方で先程からモジモジしている受付嬢を観察していたのだが、ギルマス(と呼ばれてた奴)が怒鳴りかけてきたので、答えてやることにした。


「フツーに1人で戻ってきましたけど。フツーに」


「誰ともすれ違わずにか?」


「行きは何人もいましたけど、帰りは誰とも」


ポータルを使ったからね。


ちなみに、行きに会った奴らの前では、戦闘は全て避けて進んだ。

大量のドロップアイテムを見られると、地味に面倒だからね。


「ま、まぁ不思議なこともあるもんだな」


「そうですね」


佇む不思議ちゃん、と言うより不思議くんを前に、ギルマスも職員も、諦めて本題の方に移るようだ。


「で、お前!」


いきなり大きな声出さないでよ。


「なんですか?」


「お前、《グリフォン》の団長とことを蹴り飛ばしたろ!」


「はい」


「そのせいでこの由緒正しきギルド本部の巨壁に大きな凹みもといひび割れが出来てしまった。よってお前に賠償金を請求する!!」


「あぁ、確かに『脆い壁だなぁ』とは、思ったけど、それってそんなに問題かね?」


「あったりまえだろ!」


ギルド長は、ツェーンの薄ぅーい反応と、ふざけた返答に、ブチギレる。


だが、ツェーンの舐め腐った態度は、治されることなく、ツェーンは続ける。


「で?いくら?」


「いっぺんぶっとばすぞ?じゃなくて、賠償金額か。賠償金額は、およそ9万ゴールドだ!プラチナに換算すると、9プラチナ。それが払えなければ、お前は俺が借金奴隷として、こき使ってやる!」


「あっそ。ねぇ、お姉さん。ドロップアイテムとかを換金するのって何処でやればいいの?」


ツェーンは、話を聞いてない。聞いてはいるけど聞いてないような反応をするのだ。仕方ないね。


「え、あっ、カウンターを左に行って、通路を真っ直ぐ行くとあります」


「ありがとう」


「お、おい!人の話を」

「あっ!ていうかさ、壁直せばいいんだよね?」


「え?まぁ、それはそうだが」


「じゃあ俺に任せとけって。しっかり直しておくからさ」


「は?何言っ」

「じゃーね」


バタッ


もう一度言っておくが、ツェーンは、話を聞いていないのではなく、自然にそんな態度をとってしまうのだ。


応接室に、一時の静寂が訪れる。(デジャブ感)


その僅か1分後。

ギルマス達がロビーに戻った時には、既に壁の凹みやひび割れは一切残っておらず、ツェーンの姿もなかった。


後からギルマス達が聞いた話だと、ひび割れた壁に少年が近づいたと思ったら、突然壁に大穴が空いて、少年が崩れた壁の破片を口に入れたと思ったら、壁が直ってたとか。


意味がわからないね。


────────────────────


「ってことがあったんだよ」


「.........全然わからないです」


「ですよね」


ギルド長のダルフォンと、《グリフォン》副団長のサイスの空気感は微妙なものであった。


「ま、まぁ壁も直っていますし、今回の件はなかったことに」


「それもそうですね。それでは今回はこれで」


そう言って副団長のサイスは、既にピンピンしているゴルディック団長を回収して、ホームへ帰っていった。

今日はこちらを投稿しましたが、平日は基本『転メド』を。土日祝日は『ダン追』を投稿していきたいと思っております。(もちろん不定期ですが)


誤字報告や、感想などございましたら、是非ぜひ。

もし、『この部分よく分からんので説明プリーズ』とか、『ここは、こっちの方がいいと思う』などの御意見がありましたらぜひ感想の方に。


それではまた次話でお会いしまょう。

サイナラ。

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