s04 中ボス戦
冒険者ギルドで団長を蹴り飛ばされ、挙句の果てに多額の賠償金を請求されそうになっていた王都最強クラン《グリフォン》の団員たちは、クリスタルで薄らと照らされる自然洞窟を分隊長達を先頭に猛スピードで駆けていた。
そんな中、分隊長の1人。パトリック・グプタは、ちょうど2階層に入った辺りから、ダンジョン内に違和感を感じる。
「ん?副長!ちょっといいですか?」
「なんだ。何かあったのか?」
部隊中央にいた副団長は、1度隊列を止めて、分隊長の元へ向かう。
「これ。ドロップアイテムですよね?」
「あぁ。確かに2階層で出現するモンスターのドロップアイテムだ」
「でも雑魚モンスターとはいえ、こんなにドロップアイテムが散乱しているのは、おかしくないですか?」
薄暗いダンジョンの2階層をライトで照らすと、辺りには、ぽつぽつとドロップアイテムが落ちていた。
このことに、他の団員達も気づき始め、皆、気味悪がって、さっさと先に進もうと、副団長や分隊長に抗議し始めた。
仕方が無いので、副団長は例の冒険者の追跡を再開した。
この時、既に例の冒険者、ツェーンとの階層差は、9階層分まで広がっていることを知る由もなく、このあとも、分隊で別れてツェーンを追跡・捜索する《グリフォン》の団員達だった。
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オアシス11階層
ここからは、初心者冒険者の死亡率が一気に上がるそうだ。
理由は、モンスターの攻撃方法やレベルの変化だ。
1階層から10階層にいるモンスター達は、動きも遅く、攻撃も軽くて、攻撃方法もワンパターンだ。
レベルに関しては最大でも12レベルまで。
12レベルでも、初心者は軽く死ぬるが、12レベルなんか滅多に出ない。
そして、11階層からは、モンスターの動きが極端に早くなり、攻撃力も防御力も、それまでの比にならない。ほとんどの冒険者たちは、ここで挫折し、引退するか、命を落とす。
まぁ、ここで冒険者として、一種のふるいにかけられる訳だ。
200階層とか、500階層とかは別だが、100階層までなら、ここが最大の難所だな。
そんな11階層だが、今の俺でもモンスターの攻撃パターンなんかは、全然覚えているので、問題なく進んでいる。
ちなみにドロップアイテムは、あとで武器を作ったりするのに使えるやつと、売ったら高そうなやつ、それにレアドロップだけ拾って、他はポイ捨て。と言うより放置している。
まぁ、これなら21階層まで楽勝だな。
◇◇◇◇◇
.............と、思っていた時期が私にもありました。
ここは20階層。
なんともタイミングの悪いことに、20階層の階層主。アーマーゴーレムが、ちょうどスポーンした。
アーマーゴーレムは、その巨体とは裏腹に、動きが素早く、体が堅い。討伐には、業物のブレードか、大砲なんかが必要になるだろう。
だが、ツェーンが持っているのは、初心者用のダガーとロングソード。
これでも、討伐が不可能な訳では無いのだが...........
........ツェーンはやらかした。
ゴーレムの気を逸らし、ゴーレムの背に弱点。ある細い隙間にロングソードを差し込むために、ツェーンは、ゴーレムの顔に向けて、ダガーを投げた。
投げた瞬間思い出した。
このアーマーゴーレムの最大の特徴を。
アーマーゴーレムは、一定以上の硬度の物体を喰らうと、その素材で、壁を生成することが出来る。また、その壁を自身の表面に生成すれば、それは立派な鎧になる。
結果から言うと、ゴーレムは鉄のダガーを喰らい、全身を厚い鉄で覆った。
よってロングソードの攻撃が通ることはなく、それどころか呆気なくへし折れた。
打つ手なし。
俺に出来ることは、ゴーレムから離れることか、素手で殴る。又は蹴ることしか出来ない。
あっ。投げることも出来るじゃんね。
思い立ったが吉日。
俺は、《アイテムボックス》から18階層でジャイアンパイルという亀のモンスターがドロップした《ジャイアンパイル》。つまりデカい杭を取り出す。
この固い杭なら、たぶん貫けるでしょ。たぶん。
長さ70cmもある刺?針?杭?を右手で握りしめ、左手で、14階層のスパイダーアントから入手したスキル、《絡め糸・強》で、ゴーレムの動きを封じる。
そのまま背後に回り込み、今、出すことが出来る最大の出力のアビリティを右腕に集中し、弱点に投げ込んだ。
ジャイアンパイルは、アーマーゴーレムを貫き、コアを砕いた。
同時に、アーマーゴーレムは、その巨体を仰け反らせて、凄まじい断末魔を残し、灰となって崩れ落ちた。
あっ、コアっていうのは、中位以上のモンスターの心臓みたいなものです。
詳しく説明すると、中位以上のモンスターが活動するためのマナの塊のこと。これを失うと、モンスターはたちまち崩れ落ちる。だが、コアは必ずドロップする。
ドロップするのはだいたいレベル30ぐらいから。
アーマーゴーレムは、レベル75だ。
俺は、真っ二つに割れた真っ赤な色の水晶玉のようにも見える直径12センチほどのコアと、アーマーゴーレムのドロップアイテムをアイテムボックスに詰め込み、オアシスの攻略を進めようと思ったが、自分腰の鞘に入っている剣の柄を見て、1度地上に戻ることにした。
お久しぶりです。
やっとこさ、勉強の方が落ち着き、こちらの方も書く時間が出来ました。これからは、平日は基本『転メド』を。土日祝日は『ダン追』を投稿していきたいと思っております。(もちろん不定期ですが)
誤字報告や、感想などございましたら、是非ぜひ。
もし、『この部分よく分からんので説明プリーズ』とか、『ここは、こっちの方がいいと思う』などの御意見がありましたらぜひ感想の方に。
それではまた次話でお会いしまょう。
サイナラ。