s03 ドロップアイテム
この世界でいうアビリティについて説明しよう。
アビリティとは、自分の中にある力、もとい能力のことだ。
そしてアビリティは、それ相応の肉体や経験、知識などがあってのものなのだ。
まぁ、1番の土台になるのは肉体だ。
俺には知識や経験などは記憶があるため総合的な能力は十王だった時とほとんど変わっていない。
だがしかし!!
問題は肉体の方なのだ。
アビリティを水に。そして肉体を水槽に例えよう。
大きな水槽には沢山の水を入れることが出来る。
だが、俺は母上に肉体の情報を15歳程度まで巻き戻されてしまった。
よって肉体を形成する筋肉や骨、神経などに寄せられていた経験値(怪我や成長など)が無くなり、土台が急激に小さくなった。
ここで少し話が戻るが、先程冒険者にかました蹴りや、その直前の跳躍だが、1度目の跳躍が不発だったのは、土台に入り切らないアビリティを無理に使おうとしたからだ。
2度目は土台ギリギリにアビリティを調節し、跳んだ。
だがら、十王の時より数十段以上跳躍や蹴りの威力が落ちた。
あの男にボス部屋で食らわせた蹴りはだいぶ手加減していたので、先程の蹴りと同じ威力だったというのは、あながち間違いでもない。
このことから1つ、言えることがある。
今の俺ではノインには勝てない、ということだ。
騒ぎに乗じてさっさとオアシスに潜り込んだ俺は対策を考えるのだった。
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「いや、ほんとに一撃でやられたんだようちのボス」
「登録したてのガキに?」
「はい。私も近くで見ていました」
ギルドのギルド長室では帰還した《グリフォン》の団長がギルド内の壁を傷つけた件でギルド長のダルフォン・トラスが《グリフォン》の副団長と目の前であの一撃を見ていた受付嬢が事情説明をしていた。
「ならなんで止めなかったのだ!!」
「止める間もなくやられてたんです」
「はぁ?そんなことができるやつは私の知る限り存在しない」
「ですが」
「ホントなんだってギルマス」
「はぁ。ならそいつはどこに行ったんだ!!」
「恐らくダンジョンに潜ったものと思われます」
「分かった。おい、ゴルディックの犬。壁の修理代を払いたくないならダンジョンに行ってそいつを捕まえてこい」
「そんな無茶なぁ..........ちなみに賠償額はどのくらいで?」
「ひび割れた壁を部分的に直すことは不可能だ。つまりまるまる壁一枚分。9万ゴールドぐらいかな?」
「え?シルバーじゃなくて?」
「うん。ゴールド」
「ブロンズじゃなくて?」
「ゴールド」
「ゼニーでもなくて?」
「ゴールド」
「え?コゼニー?」
「ゴールド!」
「................」
あまりの銀額の大きさに、副団長はジト目でギルド長を見つめる。
「大丈夫大丈夫。ゴールドで表してるだけでプラチナならたったの9枚だから」
「プラチナって銀行とか大金の取引で使うやつだろ。9万ゴールドなんて.........あぁ」
「そうだよ。捕まえてくればいいんだよ」
「その依頼、受けさせて頂きます」
「え?ギルド長本気ですか?あの子にそんな大金払わせるわけですか?」
「まぁ無理でしょうねぇ。だが、条件を付ければギルドの、いや私の駒になる」
「なるほど、それが狙いですか」
悪巧みするギルド長を前に副団長はニヤケ、受付嬢は呆れ果てていた。
5分後。《グリフォン》の団員たちは団長不在の中、再度ダンジョンに侵入していった。
そんな中、真実を報告するのが仕事とはいえ、自分を庇った少年を貶める結果になってしまったことを、受付嬢、ニーナ・カルシフォンはギルドの一室で1人後悔していたのだった。
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この世界のお金はコゼニー、ゼニー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、あとプラチナの7種類。
画面の前のみんなのために説明すると、
コゼニーは1円
ゼニーは10円
ブロンズは100円
シルバーは1000円
ゴールドは10000円
プラチナは大金の取引で使われるお金で1枚1億円
なんでこんな話をしているかというと.....
...目の前に山積みになってるドロップアイテムがギルドで売れるのか?という疑問が頭の中に浮かんでしまったからだ。
それはオアシスに入って10分ぐらい経った時だった。
1階層にいた俺はスキル《支配》を使用しながらモンスターを倒し、2階層に進もうとしていた。
その前に唯一残してもらったスキル《支配》について説明しよう。
スキル《支配》はその名の通り、支配する能力。
まぁ色々細かい条件などもあるが、モンスター相手だと条件は簡単。倒せばいいのだ。
一度倒したモンスターと同種のものはスキル《支配》によって俺の支配下にできる。
倒したモンスターの能力も自分のスキルとして使うことが出来る。
もちろんモンスターにもレベルがあり、同種でも、俺が倒した者よりレベルが高い、または能力値が高い場合は支配することが出来ない。
つまり、1Lvのゴブリンを倒しても2Lvのゴブリンは、支配することが出来ないという事だ。
十王だった時は、1階層から99階層までのほとんどのモンスターを支配していたが、身体が巻き戻されるのと同時に支配していた経験も戻された。
こればっかりは仕方ないので、ゼロからやり直しだ。
物体に対する支配に関してはまたの機会に。
そんなこんなで2階層に続く階段を降りた時だった。
俺の目の前に現れたのは、『ドロップスライム』。
俺が十王時代に唯一倒せなかった、いや見つからなかった超絶レアモンスター。
特徴としてはアイテムのドロップ率が100%でドロップアイテムは超レアなポーションや鉱石などなど。
見た目は基本的に真っ黒で額(額が何処だかは知らん)に大きい白色のハテナマークがついている。
目撃例は過去の1回だけ。
別に逃げ足が早い訳でもないので、見つければ万々歳。
母上曰く、エンカウント率は0.000000000000023%だそうだ。
俺は無事にドロップスライムを倒し、ドロップしたアイテムは母上が全部残してくれた魔法の一つ。《アイテムボックス》に収納した。
ドロップスライムから手に入れたスキルは《アブソリュートドロップ》というスキル。
効果はモンスターを倒すと100%アイテムがドロップするというものと、モンスターを倒すと3分の1の確率でレアドロップが出る、の2つだ。
スライムでさえ、アイテムのドロップは10分の1ほど。レアドロップとなればその10倍の、100分の1だ。
スライム意外となればもっとドロップ率は落ちるだろう。
それが100%というとは少々チートがすぎる気がするが.......これからも多用することになるだろう。
大変お久しぶりです。
こっち書くの意外としんどいんですけどこれからはこっちも転メドと並行して書きたい。(願望)
まぁこっちは文字数も多いですし、元から僕、不定期なんで許してくれるよね。
たぶん、キット、maybe。
誤字など気づきましたら報告していただけると大変ありがたいです。『この表現あってる?』っていう意見などでも大歓迎。
それじゃあ次話で会いましょう。サイナラ。