表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

s10 模擬戦

「あー全員、集合してくれ」


団長の一言で、100人を超える団員が一斉に声の方を向き、小走りで集合して、気をつけの姿勢になる。

その一切乱れのない動作は、どこかの国の軍隊を彷彿とさせる。


「皆に紹介したい人がいる。ツェーンさん、前へ」


指名された俺は、スタスタと団員たちの前へ移動する。


やはりこんなに大勢の前に出ると緊張するものだな。しかし、ここで悪い印象を与えるわけにはいかない。


「新人冒険者、ツェーン・ユレシアルと申します。本日はよろしくお願い致します」


「えー、彼は新人冒険者ではあるが、その実力は底知れず、正直に言うと、私でも互角に戦えるかどうかってところだ。そんな彼だが、このクランに入団を希望している。もちろん受けるつもりだ。しかし、皆もいきなり入団してきた者が、自分たちより優遇されるのは気に食わんだろう。」


コイツ。もう入団させること前提で話してやがる。

まぁ、こちらとしても、その方が進めやすくていいのだがな。


「だからと言ってはなんだが、皆には彼と模擬戦をしてもらいたい。もちろん強制はしない」

「団長、質問よろしいですか?」


団長が話を進めていると、最前列の一番中央にいた男の団員が団長に質問の許可を求める。

そして団長は、それを許可した。


「では質問させていただきます。彼との模擬戦は、1体1の模擬戦ですね?」

「.......ツェーンさん、どうします?」


ここでフルなよ!

っと、心の中でツッコミを入れつつ、質問に答える。


「何人でも大丈夫です」

「「「「!!!?」」」」

「えっ、それは、同時に何人で持って事ですか?」

「えぇ。私はそれで構いません」


質問をした団員は、俺をただの生意気なガキとでも思っているのだろう。

そして、そんな俺のこの舐め腐った態度に、だいぶ頭にきているみたいだ。鋭い視線でこちらを睨みつけている。


いいぞ。俺はこの身体(ハンデ)を持って、お前らと戦ってみたい。あの感覚をもう一度味わいたい。

()()()との戦闘の時のように。


「他に質問がある者はいるか」

「もうひとつよろしいでしょうか!」

「まだ何かあるのか」

「はい!もし彼が()()に手も足も出ない場合、彼の入団を取り消すと言うことでも、よろしいでしょうか!」


さすがに自分よりも年下のガキが優遇されているのは、気に食わないようだな。

団長のシャッフルは俺の方を向き、俺は一度だけ頷く。


「いいだろう。そこまで言うなら、彼をコテンパンにしてみろ。このクランの戦士なら出来ると信じているぞ!」


団長は、俺を目の前にして、俺をコテンパンに倒すという目標を掲げ、団員達の士気を上げる。


なかなかいい仕事をするじゃないか。


「それでは始めるか!模擬戦用術式7番を展開しろ!」


団長がシーファーにそう言うと、シーファーはため息混じりにハンドサインを出す。そしてまもなく、この巨大な一室に、巨大な結界が張られる。次には、ガコンガコンと言う音とともに、高台がいくつも展開された。


「ツェーンさん。スタート位置はご自身で決めていただいて結構ですよ」


シーファーにそう囁かれると、俺は『そうか』と一言残し、展開された舞台(バトルフィールド)の中央に移動する。


「「「え?」」」という幹部たちのマヌケ顔が見えるが、気にしない。

高台に囲まれ、多対一の戦いであれば最も好まない場所。そんな場所をあえて選ぶ。


不利の中で。そんな逆光の中での戦い。俺が求めるのはそういう闘いだ。そういう闘いの中にこそ、()()()()がある。


幹部以外の団員達は、俺を戦闘初心者だと思ったのだろう。どういたぶってやろうかワクワクしているようだ。ここからだと、質問していた団員がニヤけているのもよく見える。


それから俺も含め、模擬戦参加希望者全員もとい団員全員に、それぞれが得意とする武器が配られる。

もちろん刃は潰してあるようだ。


俺が選んだのは、長さ180cmほどの槍。刀身は20cmほど。柄は軽い金属製で、刃は鉛のように重い金属が使われている。遠心力をかければ、モンスターだろうがなんだろうがぶっ飛ばすことが出来るだろう。


そしてこの囲まれるような位置。

何がしたいかもう分かっただろ?


俺も他の奴らも自分の定位置に着いたようだ。団長から合図がかかる。


「始め!!」


その怒号とともに、俺を中心に半径20m展開する団員たちが、一気に駆け出す。人数は20人ってところだろう。その中でも、5人ほどが飛び出す。


奴らが俺の射程(有効距離)に入ってくる間、俺は頭よの上で反時計回りにクルクルと槍を回し、飛びかかってくる少し前、俺から半径2.3mの範囲に入ってきたタイミングで、瞬時に柄の下の部分に持ち替え、遠心力をそのまま利用して、ハンマー投げのように振り回す。


団員達は、突然の真横からの攻撃に対応しきれず、槍での重い一撃を横っ腹にモロに受ける。その流れで2人3人4人と団子の如く連なって吹き飛ばされ、少し出遅れた最後の1人は、柄の中央の部分で思い切り叩き付けられた。


勢いは弱まったが、身体を捻り槍を少し勢いづける。そして、倒れた者達の後ろから飛びかかってくる奴らの脇あたりを狙い、右下から斜め上に打ち込む。


打ち込まれた団員は回転して、仲間を巻き込みながら吹き飛ぶ。


そこからは20人あまりの戦士(ファイター)との乱戦が始まる。


乱戦ということで、魔術での攻撃も、弓での援護射撃も出来ない。仲間に当たっちゃうからね。


こんな中でもけってしヤケにならず、しっかり一人ひとり、たまに2,3人ずつ相手取っていく。


早々に槍を手放し、突き出された短剣を華麗に避け、短剣を握る手首に手刀を入れる。


反射で、ビクッ!っとした手から解き放たれた短剣を下段でキャッチし、柄でそいつの意識を刈り取る。


三百六十度囲まれたその状況から、短剣片手に超低姿勢加速を始める。


向かう先では、上段や下段、横凪などを構えていたが、全てスレスレで躱していく。


そこから数分で、前衛のファイターどもを倒し終えた。

残りが半分になった辺りから、ちょくちょく矢が飛んできたりしたが、ア○タカ顔負けの剣技で、切り落としていく。時々いい剣技をかましてくる奴もいたが、そいつも今では、床に転がっている。


前衛に混ざっていた回復担当(ヒーラー)は、基本女性なので、《首トンッ》で優しく気絶させる。

一度、ヒーラーごとぶった斬ろうとした大剣使いがいたが、顔面に一発入れたので数日は意識不明状態だろう。


さぁ、残すは弓士(アーチャー)魔術師(メイジ)、十数人のヒーラーだけだ。


ローブを羽織り、杖を構える魔術師に正面から向かっていく。その手には、先程拾ったロングソードが握られている。


魔術師共は、それぞれ炎や風、土や水などの属性魔法を打ってくるが、マナを纏わせたロングソードで、全て弾き落としていく。


弾かれた魔法は、地面に当たるや否や、ある所では燃え盛り、ある所では一部が水浸しにした。


魔術師まで残り20mといったところか。

そんな時に、前列の魔術師がゾロゾロと横にはけていき、後列から5人ほどの魔術師が姿を現す。


5人は、杖を一つの魔力球に向けて、魔力を込めているようだ。赤い色からして、炎属性の大魔術だろう。

そしてその巨大な魔球を俺に打ち込んできた。


「「「「「《豪火球(イグナススター)》」」」」」



面白い。断ち切ってやる。


ロングソードに無属性のマナを込め、高速で向かってくる魔球に斬り掛かる。


「《一太刀・斬》」


強大な魔力(マナ)魔力(マナ)の衝突。


初めこそ、その攻防は均衡しているように思えた。

しかし次の瞬間、シュバッ、という効果音を付けたくなるほどに、真っ二つに豪火球が割れた。

それから数秒も経たないうちに凄まじく荒れ狂う風が発生した。マナの衝突による衝撃波の残りだろう。

結界内の人間は、誰それ構わず宙に浮かび、その嵐に巻き込まれる。まるで小さく大きい竜巻のようだ。


風が治まると、宙に浮いていた者達がドタドタと床に叩きつけられ、バトルフィールドに立っているのは、魔球に斬り掛かったツェーンだけどなった。


「なんでアンタは立ってられんだよ」


シーファーは結界の外でそう呟いた。

なんだか久しぶりな気がする。

今回のお話は、何回か日をまたいで書いたので、視点がバラバラになってる気がする。

そんな気がする。読み直しはしてない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ