s09 軽すぎる返答
「ちょちょちょちょちょ!ちょっと待っていただいてもよろしいでしょうか!」
「ん?別にいいですけど。用があるなら早めに済ませて下さいね」
「もちろんです」
謝罪の意を込めて、昨日のゴーレムのコアを渡し、部屋を去ろうとしたのだが、このクランの団長だという男に止められる。
まぁ、そこまでオアシスの攻略に肩入れするつもりもないし、何か話があるなら聴いてやろう。
俺が先程と同じ席に座ると、先程まで激昂していた奴も含め、全員でコアを鑑定しているのが、よく見える。
手で掴み、指で触り、光に透かし、目で細部まで観察する。
そして、イシュール言ったかっけ?その女が、口を開く。
「団長......これは.........ボスのコアかと」
「だ....だよなぁ........あの......ツェーンさん?」
団長のシャッフルが、何か気まずそうに話しかけてきた。
「なんでしょう?」
「こ、これはいったいどこで?」
「普通に20階層のボスからドロップしたものですが」
「...........えーと......私の記憶が正しければ、20階層のボスは、《アーマーゴーレム》。攻撃、防御、スピードを兼ね備えるボス。発見されているモンスターの中でも最強格のモンスターです」
俺の返答を聞いて、フレルとかいう女がシャッフルに助言する。
その助言を受け、シャッフルは、ガガガガッと、錆び付いたロボットのような首の動きで、俺の方を見る。
「だ、誰かに譲ってもらって」
「ません」
「たまたま拾って」
「ませんよ」
「自分で倒してなんか」
「はい」
「......やっぱり?」
「もちろん」
ツェーンの軽い答え方では、本当のことなのか、全くの嘘なのか、ゴルディック達には判断できなかった。
しかし、そんなことで止まるほど、トップクランの幹部たちは、やわではない。
「ツェーンさん!失礼を承知で、私たちと模擬戦をして頂けないでしょうか!」
「???。なぜに?」
「こちらとしても、出処のわからないコアを受け取ることは出来ないのです。ですからツェーンさんに、実際にボスを単独討伐出来るほどの実力があるか、試させてはいただけないでしょうか!」
「.............」
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ツェーンさんは目を瞑り、考え込む。
その姿は、先程までの軽い雰囲気とは一変しており、どこか懐かしいピリピリとした雰囲気を醸し出す。
まさに、先日遭遇した『王』のような風格であった。
彼が目を開けると、空気感から解放された。
「いいですよ。その代わり、実力があると判断されたら、私をこのクランに入隊させてもらっていいですか?」
「「「「「えっ?」」」」」
それまでだんまり決め込んでいた(念話を除く)団員たちも俺と同様に、驚きを声にしてしまった。
ツェーンさんが提案した条件は、こちらにとっては願ったり叶ったり。こんなに都合のいい条件を、まさか相手側から出されるとは、1ミクロンも考えていなかった俺は、何か裏があるようにも、思えてしまった。
しかし、ここで引くわけにはいかない。この流れに乗って前身あるのみ!!
「も、もちろんです!!実力があると確認できれば、こちらもしてもぜひスカウトしたいと考えておりました!」
「なるほどそうでしたか。ですがこちらにも少々野暮用があるもので。もしも、入隊が決まった場合、入隊までに1ヶ月ほど期間をいただけませんか?」
これで決まりだな。この少年は、私たちなど取るに足らんほどに強い。少なくとも彼はそう確信しているのだろう。こちらとしても、この好条件で断る理由はない。それは、彼になにか裏があるとしてもだ。
「では、交渉成立と言うことでいいですかな?」
「えぇ、もちろんです」
「それではさっそく、訓練所に向かいましょう」
「そうですね」
こうして、私たちは少年との交渉に成功?し、彼の実力を測るため、館に隣接する訓練館に向かった。
朝食は、移動する前に速攻でいただきました。
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トップクランと、呼ばれるこのクランに俺が入隊したい理由は、1人だと後々面倒だからだ。
なぜ面倒かって?それは、だいぶ簡単なお話。
実は昨日、メイドさんに色々教えてもらっていたのだが(変な意味ではないぞ)、やはりパーティーも連れていない冒険者が、20階層のまで攻略しているなんてことは、だいぶ目立つし、色々やばいらしい。ましてやボスを単独討伐するなんて話、酒の肴にもならないとか。
だから、トップクランの影に入り込む。
そうすれば多少俺の名が上がっても、基本的には、『ゴルディッククラン』が、功績を上げていることになる。
つまりここは俺の隠れ蓑ということだ。
ついでにこいつらは、ノインと面識がある。
あいつが何か動くとすれば、使うのはこいつらだろう。それを俺は邪魔したい。
1ヶ月ほどの期間を空けるのは、それまでにできるだけ体を成長させたいからだ。
できるだけ。ほんの数パーセントでもいい。
アイツを殺すために、できる限り可能性を。
ゴルディック達に案内されるがまま、着いて行った俺の目に映ったのは、超デカい体育館?みたいな。
いや、中の設備からしたら、自衛隊の基地の中みたいな感じか。これはなかなか楽しくなってきたぞ。
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