独白2
ついに出会うことができた。あの人こそ、わたしの肉片の一つまで切り刻み、その血でわたしを飾り立ててくれる人に違いない。わたしはあの人に会うために、こんな苦しみを抱えて生まれてきたのだ。
あの人はいつも仮面を被っている。だけどわたしは騙されたりしない。その瞳の向こう側に、とてつもなくぞっとする冷たいもう一つの目が隠れているのだから。わたしにとってむしろ邪魔なのは、その仮面だ。はやくその仮面を捨て去って、滅茶苦茶にして欲しい。それこそがわたしの望みだ。
初めてあの人が仕事をする場面を見た。あの人は隠しているようだけど、わたしにはお見通しだ。ようやくわたしの手で、あの人の本性を引き出すことができたのだ。あの人にとって良い人間なんていない。あの人は人形を求めている。あの人にとっては全てが素材なのだ。わたしも願わくば、その素材となりたい。
邪魔な仮面が、またしてもわたしたちの邪魔をしている。せっかくわたしが引き出したあの人を、この仮面は覆い隠そうとしている。そんなことは許されない。許していい筈がない。この仮面はわたしを大事にしたいと言うけど、そんなことわたしは望んでいない。わたしが望むのは、わたし自身の破滅だ。わたしを切り刻まない限り、わたしの望みを叶えることなんてできない。
幸い、わたしには協力者がいた。わたしの提案する実験を、彼は快く引き受けてくれた。
〈人形における記憶と人格の分離移植実験〉
それがレポートの命題。記憶と人格、切り離せないものとして考えられている両者の相関関係とは? もしそれを、別の入れ物に分けたらどうなってしまうのか? それこそ彼が解き明かそうとするもの。でもそれは、公表されることはない。意味も持たない。それでいい、結局のところ、彼も馬鹿だったのだ。
誰も彼も馬鹿だ。救いようのない、馬鹿なのだ。だって誰もわたしを理解してくれない。わたしを理解してくれるのは、あの人だけだ。
この長袖の下を見せたら、あの人はなんと言ってくれるだろう? 微笑むだろうか? それとも、驚くだろうか? 捨てられはしないだろうか? でもわたしは確信している。
あの人はきっと微笑んで、そして悦びに打ち震えながらわたしを“解体”してくれる。
その時になって、ようやくわたしたちは結ばれるのだ、とてつもなく深い、魂のところで。それはきっと、この世にある他のどんなことよりも、ずっと素敵なことだろう。
その時には、わたしは白いドレスを着たいと思う。その白無垢が真紅に染められる瞬間こそ、わたしの幸福だ。




