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No.3 『マイナージョブの戦い方』

「さぁ支援行くわよ!」

――――SKILL 【剣の舞】


「リペア俺からもだ!」

――――SKILL 【花を持たせる道化師】


 『踊り子』のジョブであるマイの攻撃力を上げる支援スキルと、その得た支援を任意の相手に全て渡すユートのスキルによってリペアの攻撃力がさらに上がる。


「おっしゃあ! 力が漲ってくるぜ!《まき割りラッシュ!》」


「キエェェェェェェ!!!」

 襲いかかってきた木型のモンスター、トレント5体をリペアはあっという間に切り刻んだ。『木こり戦士』のジョブ特性である木型モンスターへの大ダメージも勝利の決め手だろう。


「キエェッ!」


「おっと、《エッジ・スローイング》!」

 トレントが最後の置き土産とばかりにやる《爆発木の実》もユートがテーブルナイフを投擲する事で難無く対処した。




 ダンジョン探索者にとって最低でも知らなければならない事がいくつかある。まずダンジョン探索者であるからして、ダンジョンについては知っておいた方がいいだろう。


 一般的にダンジョンとは、大型ダンジョンと小型ダンジョンの2種類に分類されている。

 大型ダンジョンは、別名で主ダンジョンとも本ダンジョンとも呼ばれ、メインのダンジョンとされている。その理由はいくつかあるが、1つはその大型ダンジョンの入り口がこの世界の至るところで発見されているからというのがある。つまり大型ダンジョンは、入り口こそ無数にあれどダンジョン内はすべて共通しているという訳である。

 それを証拠に、自分の最寄りの入り口からダンジョンに入ったが別の地域にたどり着いたという事も多々あるし、何より商人などはそのダンジョン内を通る事で経済圏を広げている現状だ。


 それに比べて、小型ダンジョンと呼ばれるダンジョンには、その地域にしか存在しないダンジョンとなっている。大型ダンジョンのような別の地域に繋がる入り口も無ければ、ダンジョンの階層も高くはない。小型ダンジョンはサブダンジョン、つまりおまけのダンジョンという認識が一般的であるのだ。

 だが小型ダンジョンと言えど、ダンジョンに変わりはない。放置しておけば、ダンジョン内に魔力が溜まりモンスターの氾濫なども起こり得る。そのため小型ダンジョンでも定期的にモンスターを狩り減らさなければならない。ダンジョンに絶対安全という事はない。ダンジョンとは、基本命を落とす可能性のある極めて危険な場所であるのだ。


 一方、例外としてダンジョンを安全化させる方法がある。それはダンジョンを攻略・掌握することだ。支配すると言い換える事も出来る。ダンジョンはいくつかの階層で分けられている構造をしている。その階層ごとにその階層を掌握できる・支配できるキーのようなものがあり、そのキーを使うことでその階層を掌握することが出来るのだ。

 それをする事のメリットは計り知れない。何故なら例え、その階層で死んでしまってもその階層の始めの空間に戻されるというある種の安全装置のようなシステムが起動するようになるからだ。それによって、すべてのダンジョン探索者にとって階層の掌握は悲願であり、国やギルドも階層を掌握したものに報奨金を出すという体制をとって推奨している。


 ここまでの重要なことをまとめると3つ。

 大型ダンジョンがメインのダンジョンであり、その入り口は無数にある。

 小型ダンジョンはサブのダンジョンであり、その地域にしかない。

 ダンジョンは危険であるが、掌握する事によって安全になる。


 ユート達の来たこのソエウラにあるダンジョンは、いわゆる小型ダンジョン。全3階層からなる林・草原型のこのダンジョンは既に掌握済みのダンジョンであり基本安全である。

 小型ダンジョンにはそれぞれ危険度や階層数、ダンジョン内のモンスターを加味された上でランク付けがされており、ここソエウラのダンジョンは半星ダンジョン。半星・1つ星・2つ星・3つ星・黒星というランク順位から見ても一番下であるダンジョンだ。


 つまり、ダンジョン大学校卒業間近であるユート達にとって、ここのモンスターは取るに足らない存在であった。それが例えダンジョンの探索は6人パーティーが基準だとしても。その半分の人数で対処するユートたちは優秀であった。




「GYAAAAAAAAAAA!!!」

 トレントを倒して次に現れたモンスターは、バトルベアー。人の背丈ほどのクマ型モンスターだが、その習性は名前でも分かる通り凶暴な性格で、動物を見たら見境なく襲いかかるモンスターである。


「さて、次は俺の舞台にしようか。マイ頼む!」


「ええ。分かったわ!」

――――SKILL 【剣の舞】


 マイのスキル発動後すぐにユートとリペアの身体から黄色いオーラが現れる。それに加え、ユートは探索前にマイから貰った攻撃力アップのポーションを飲み干した。その間にリペアは1人でバトルベアーを相手取っている。


 ポーションを飲んだことにより、ユートのオーラは黄色から赤に近いオレンジ色へと変わる。


――――SKILL 【ミスディレクション】

「《サプライズ・スローイング》!」

 ユートはそして攻撃力を気付かれにくくするスキルを発動し、1本のフォークをバトルベアーに投擲する。


「GYA!?」

 バトルベアーの顔付近で音と煙を発しながら爆発したフォークにより、バトルベアーの気が一瞬だけ逸れる。ユートはその狙っていた隙を逃さない。


――――SKILL【ILLUSION-SPACE・CHANGE】


「うぉっと!」

 ユートがスキルを発動させると、もう既にリペアとユートの位置が入れ・・替わって・・・・いた。


――――SKILL 【花を持ちたい道化師】


 続けてスキルを発動するユート。先ほどとは逆に、今度はリペアに掛かっているバフをユートが貰いうける。


「《鳥獣解体》!!!」

 そして、いつの間にかユートの手にあった刃渡りの長い包丁によりバトルベアーは倒された。


「ふぅ」

戦闘を終えたところでユートは息をついた。マイが踊りを辞めた事によりバフも切れている。


「やったな。ユート! 以前よりも攻撃力が上がってるんじゃないのか?」

 リペアが自らの斧を背負い直しながら聞いてくる。


「あぁそうだと良いけどな。実際のところマイのバフもポーションの効果も上がってるからな。一撃で倒せはしたが俺の力がどこまで上がってるのかは微妙なところだ」

 『道化師』というジョブの特性上、ユートは攻撃力が低いのをずっと気にしている。他に戦闘系のジョブに適正が無かったユートは取得可能な生産系ジョブで最も戦闘が出来て攻撃力があった『料理人』を第二ジョブに選んでいるのだ。

 本来ならば、同じジョブのスキルや技でコンボを決めた方が威力も高くなる傾向にあるのだが、ユートの場合はそのコンボの威力を考慮しても、まだ『料理人』の《技》を使ったほうが威力が高いのだ。『道化師』は固有の【スキル】や《技》も多い反面、決定力不足である。これが日頃からのユートの頭を悩ませている種であるのだ。


「いや。でも前衛は1対1でバトルベアーを倒して一人前って言われてるだろ。支援があったとしても遊撃でバトルベアーを倒せるのは凄いんじゃねぇのか?」


「そうね。今回の卒業生の中でもバトルベアーを1対1で倒せる人なんて数人しかいないと思うわ。そんなに自分を卑下しないで自信を持ちなさいよ」


「そうなのかなー?」

 リペアとマイ、2人に褒められてもピンと来ないユートであった。


「それよりもさ。バトルベアーって食えないのか?」

 と、リペアがユートに聞いてくる。


 ダンジョン内で生まれたモンスターを倒すと一定時間経過により消失する。これはモンスターが持っている魔力がダンジョン内に再び戻るという説が有力だ。しかし、一定時間内であれば、その倒したモンスターから肉などの素材を採取することが出来る。リペアが言いたいのは、今日のバーベキューの食材にならないのか? と聞いているのだろう。


「バトルベアーは筋が多くてな。食べられなくもないが美味しくはないな」

 一応、第二ジョブが『料理人』である。ユートが答える。


「ちぇ。じゃあいいかな」


「ちなみに、バトルベアーもクマだからな。熊胆は採れるぞ? どうするマイ?」

 熊胆は古来から漢方薬の原料とも知られている。ジョブが『薬師』のマイにとっては使用することもあるはずだとユートは尋ねる。


「えーと、今回はパスで!」

 しかし、ユートの問いかけにマイは断った。まぁ当然だろう。ダンジョンでクマ系のモンスターは結構多い。当然それだけ討伐もされている訳で、自分たちで調達するよりも市場に安くて高品質なものが流れているだろう。それを買ったほうが断然いいしな。それに、マイは基本植物系の材料から作られる薬を研究している。熊胆にそれほど興味もないのだろう。


 しかし、ユートは思うところがあったので熊胆は捨てたが、一番良い肉の部位を取り出して、常時持っている保存用葉っぱで包むとカバンに仕舞ったのだった。



~モンスター図鑑~

『トレント』

 いわずと知れた木型のモンスター。倒される直前、最後の置き土産とばかりに《爆発木の実》という技使う。主な戦闘方法は、擬態による囲い込みで相手を逃げられなくした所で一斉に攻撃してくる。


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