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No.26 『サバンナのボス』


「GAAARUUUU!!!」

 サバンナのボスは一目で分かった。

 探すのは手間取ったが、サバンナエリアにおいて、これほどのボスは他にいないだろう。


 サバンナのボス――――百獣の王ライオンは、ユート達の前に立ちはだかった。


「基本通り行くぞ!」

 ユートが最後の確認とばかりに大声でメンバーに言う。

 それぞれユートの言葉に短く返事をすると、打ち合わせ通り散開する。


 ボスである巨大ライオンを見つけたのは、巨大ライオンがユート達に気付くより先だったため、不意打ちは避けられたが、すぐに巨大ライオンもユート達に気付いたため、万全の状態で戦闘に臨めるとは言えなかった。


「GAAARUUUU!!!」


「うおっしゃあ! 《向日葵》!」

 リペアの頭の上から振り下ろされる巨大ライオンの前足をリペアがはじき返す。


「《ラピッド・スローイング》!」


 リペアが前足を弾いたことで、一瞬動きを止めたライオンの隙を見逃さず、ユートはナイフをライオンの顔めがけて投擲するが、顔を背けられたことで避けられてしまった。


 しかし、これでライオンの初撃を止めることが出来た。

 リペアが前衛で相手の攻撃を受け止め、ユートが遊撃として走り回り死角から攻撃をすることによりライオンの注意を逸らす。注意を逸らしたところで再び前衛のリペアが攻撃する。あとはこれを繰り返すだけだ。前衛と遊撃手の戦闘として最も基本に忠実な形である。

 そして、基本というのは発展させやすく応用が効く。


――――SKILL【剣の舞】


――――SKILL【応援歌】

「《戦士のビート》」


 前衛と遊撃手の連携は、後衛のメンバーが動く時間が作られるということだ。


 そのユート達が作りだした時間により、マイとリープが支援スキルに技を発動する。

 これにより、表立ってライオンと相対するリペアやユートの能力が更に向上した。


「GAAAAAAAAAA!!!」

「おらああぁあ!」

 ライオンの攻撃をリペアが再び受け止める。先程技を発動して跳ね返していた攻撃もマイとリープの支援により、技を発動せずとも跳ね返している。


――――SKILL 【防御結界】


 そして、生成に時間のかかるクレハの結界がひとまず完成したことにより、後衛のメンバーの安全化が進んだ。結界が壊されたりしない限りは、これで後衛のメンバーがダメージを受けるという事はほとんどなくなる。

 後衛が多いユート達パーティーにとって、クレハの結界の役割はとても大きかった。


 結界が完成するのを確認したユートとリペアは、より一層攻撃の手を強める。


「《パワースラッシュ》!」

 

――――SKILL 【ミスディレクション】

――――SKILL 【ジャグリング】


「《サプライズ・スローイング》」


「GAAAAAAAAAAAA!!!」

 しかし、流石3層のボスといったところか。

 ユートの投擲はそれほど脅威とならないと即座に判断し、甘んじて攻撃を受けるも、致命傷になりそうなリペアの攻撃は回避した。そして、後ろに飛びのくと魔法を発動する。



「まずいリペア! 結界の方だ!」

 ボスライオンの左右に出来ていく2つの魔力の塊を見てユートが叫ぶ。


――――MAGIC ACTION 《アースバレット》


「おっと!」

 土で出来た散弾が飛び交う。

 リペアの身体能力では、守るなり避けるなりダメージを食らうことはほぼないが、後衛の4人を守るため迎撃に専念しなければならなくなった。クレハの『結界師』としてのスキル【防御結界】は、物理攻撃から身を守る結界であり、魔法による攻撃は通してしまうのだ。


「あ! リペアさんが!」

 リペアの身体に土の弾丸がヒットしたのを見てククが叫ぶ。これまで愛用の斧を振り回し土の弾丸を迎撃していたリペアだが、一度被弾したことで連鎖的にどんどん被弾していく。


 ククは思った。ここは自分が動くしかないのではないかと。

 クレハは新たな結界を張ろうと集中していて動くことは出来ない。

 マイやリープにしても、今、支援の技やスキルの発動を辞めてしまったら、それこそリペアがやられてしまう。

 もともとククの戦闘時の役割は、他のモンスターが乱入してこないかなどの周囲の警戒と、何かがあった時いつでも動けるようにしておく事だ。前者はともかく、後者のその「何か」とは今のようなイレギュラーな事が起きた場合なのではないか。

 ククがそう考えた時にはもう身体が動いていた。予めパーティー全員に配られていたマイお手製の回復ポーションをククは手に取る。


「マルハちゃん!」

「めぇー!」

 流れるような動作でマルハの背に乗ると、リペアのもとに駆け出す。

 回復ポーションは、傷を治すのに飲食する必要はない。その傷に回復液をかけるだけで傷が回復するアイテムだ。その場から動けないリペアに、ポーションを投げ戻ってくるだけ。ククはそれだけなら自分でもやれると思っていた。


「!!!??」

 しかし、クレハの【防御結界】からマルハと共に飛び出したククを見て、後衛にいる全員が目を見開いた。


 リペアの迎撃することの出来なかった土の弾丸がククの目前まで迫っていたのだ。


 ククもその弾丸に気付く。しかし、マルハに乗るスピードも相まって、迫りくる土の弾丸を対処できる術はククにはない……。


 あぁ、私ダメだったんだ……このまま弾丸に当たって死んじゃう。

思い切って行動したのに……みんなに迷惑かけてばっかり……死んでもまた迷惑をかけちゃうんだ……。


 走馬灯でも見ているかのように、ククの頭の中で、ここ最近の思い出がフラッシュバックされる。

そして、ククは諦めたように目を閉じ――――。


「良い判断だ。そのままリペアの元に向かえよ」

 弾丸の衝撃に身をゆだねようとしたが、目の前に降り立つ影がククの代わりに弾丸を受けた。


 ユートだ。ユートがどうやったかは知らないが、ククの元まで辿り着き、弾丸の身代わりとなったのだ。


「ユートさん!!」

「めぇー!」

 加速するマルハにしがみつきながらもククは後ろを振り返って叫ぶ。

 そこには、頭から血を流して倒れ込むユートの姿。


 しかし、ユートは言った。リペアの元まで向かえと。倒れるユートに後ろ髪を引かれながらも、ククは前を向く。

リペアの元まであと少しだ。ポーションはちゃんとリペアに当てなければならない。そうしなければ、身代わりになったユートに申し訳が立たない。


「リペアさん!」

 未だ身体を張って、土の弾丸を迎撃するリペア。ククはその頼りになる背中にポーションを投げた。


「クク、サンキューな! すぐに離れろよ!」

 割れたポーションの瓶から回復液がリペアに染み渡ると、リペアの受けた傷がみるみるうちに回復していく。


「はい。分かりました!」

「めぇー!」

 リペアが言葉を言い終える頃には、既にマルハも来た道へと方向転換をしていた。


――――skill【土魔法結界】


 ククがユートの倒れている場所まで来た時、クレハが新たに結界を張り直した。


「ククちゃん。早く結界の中へ! ユートは放っておいていいわ!」

 そして、ククがユートを拾うか悩むところに、それを予期していたかのようにマイが指示を出す。自身の身代わりとなってくれただけに、助けたいという気持ちがククにはあったが、未だボスライオンの土魔法も続いている。薄情かも知れないがマイの言葉に従ってククは、マルハの走るスピードを落とさず脇を通り抜けて結界へと帰還した。


「いやーまさか土魔法を使ってくるとはな!」

 ククの帰還後、リペアも結界の方まで土の弾丸を迎撃しながら後退すると、結界へと入ってきた。クレハの結界により、土の弾丸は結界にぶつかった後に消滅していく。


「まったく。笑い事じゃないわよ。」

 と、マイは踊りを辞めてリペアを小突く。

 マイが踊りを辞めたことにより、支援のバフは消えてリペアの向上していた能力が少し下がり、更にリープも支援を辞めたため、リペアも能力は元の値へと戻った。


「ひとまず、小休止というところかな? ボスもこちらに効果がないと分かったのか、魔法を撃つのを辞めたようだしね」

 リープが言った。


「あの。ユートさんはあのままで良いんでしょうか?」

 誰もユートを気にしないことに疑問を感じ、ククは指を差して尋ねる。


「あれは、あのままで良いのよ。それよりもそれ程ボスは待ってくれないようね」


「?」

 マイがククの質問に答えるが、ククは更に首をかしげることとなった。

でも確かに、安全化されているダンジョン内では一応死に戻りが出来るため、致命傷を受けた仲間を場合によってはそのままにしておくケースもあるとダンジョン大学校の授業で聞いた話をククは思い出した。それと同じような事なのだろうとククは頭と感情を切り替えて、すぐに動き出したボスに意識を集中することにした。



~スキル図鑑~

【防御結界】

 物理攻撃から身を守る結界。しかし威力の高い物理攻撃は防ぎきれずに結界が壊れてしまう。


【土魔法結界】

 土魔法を一切通さない結界。しかし他の属性の魔法は通してしまうし、やはり結界のデメリットとして威力の高い土魔法で壊されてしまうこともある。



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