No.20 『ドロップ品』
ヨヨヨのような一部のモンスターの身体からは素材を剥ぎ取ることは出来ない。虫型や獣型のモンスターと違い、倒すとすぐに粒子となって消えてしまうため素材が取れないのだ。しかし、素材が取れない代わりに、ドロップ品と呼ばれるアイテムが粒子の消えたあとに出現することがある。この仕組みは未だに解決されていないダンジョンの謎の1つではあるが、一部学説によるとモンスターの魔力が倒されて消える際に、アイテムとして形作られて生み出されるのではないかと言われている。モンスターを倒すことで手に入るそれらドロップ品には特殊な効果が付いているアイテムも多く、その効果次第では高値で取引されることもあるダンジョンのお宝の1つである。
ヨヨヨは、アクセサリー系のドロップ品を頻繁に落とす事でも知られており、更には比較的低層で出現することもあって、ダンジョン大学校の生徒の中でちょっとしたお小遣い稼ぎになる事でも有名なモンスターであった。
「ふむ。指輪か」
そして、今回倒したヨヨヨもドロップ品があり、ユートはそれを拾った。
「模様も装飾もないただの銀色の輪っかって感じね」
ユートの手にある指輪を覗き込んでマイが言った。特殊効果がなくても、模様や装飾次第ではコレクターが買い取る事もあるため、若干ガッカリした様子のマイであった。
「指輪のドロップ品か? どれうちに見せてみい。特殊効果が分かるかも知れへんで」
すると、ユートに向かってクレハが手を出してきてそう言った。
「そういえば、『商人』は【アイテム鑑定】を覚えるんだったな」
「そうや。『商人』がいるパーティーは、こうやって手に入れたアイテムを即座に鑑定できるのが強みやで。自分でいうのもなんやけどな」
――――SKILL 【アイテム鑑定】
そういってクレハがスキルを使用した。
この【アイテム鑑定】というスキルは、その名の通りアイテムを鑑定することが出来るスキルだ。見た目では分からない特殊効果の有無やその特殊効果の詳細を見ることができる。主に価値を見極める際に使われるので、ジョブが『商人』でなくとも商いを生業とする人たちにとっては必須のスキルである。
「お、特殊効果が付いてるで。効果は……まぁまぁやけど。1層で出てくるドロップ品としては良いほうやろな」
クレハはそう言いながら、自前のメモ帳にサラサラっと【アイテム鑑定】で見えた情報を書き写していく。
『銀色の指輪』
〇装飾も何もされていない銀色の指輪。ダンジョンでのドロップ品。
〇特殊効果:装備する事で水魔法の攻撃力が3%上がる。
「確かに1層としては、まずまずと言った性能ね」
クレハの書き写したメモを見てマイも同意するように言う。
パーセンテージで効果を増減させる特殊効果のアイテムを作れる職人で、100%越えを作れる職人は未だに存在していない。ドロップ品で見れば、歴史的にも100%越えのアイテムは度々発見されているものの、ドラゴンナイン王国史上最も優れた職人と言われる武器鍛冶師の作った片手剣に付いている効果でさえも95%で止まっている。特殊効果のアイテムを作るのはそれほど難しいという事なのだ。
3%という低いパーセンテージであっても需要はあり、さらにダンジョン1層で出るドロップ品としては性能が良い方であるのは確かだった。
とりあえずドロップ品の指輪は、『荷役』を志望するククに渡して、ユート達パーティーはダンジョンの先へと進むのであった。
「《スラッシュ》!」
リペアが迷宮コウモリを一刀両断し。
「《サプライズ・スローイング》」
ヨヨヨをユートが倒す。
――――SKILL【舞踏会】
「《踏付けステップ》」
たまに、マイが迷宮ネズミと戦ったり。
「《音爆弾》」
リープがヨヨヨと戦ったりする。
「めぇー!」
「《体当たり》!」
マルハに跨ったククも負けじと迷宮ネズミを突き飛ばしたり。
「そこや! ゴーちゃん! そのまま一撃や!」
クレハも『商人』の力を出せるゴーレムを操り、モンスターを倒していく。
「おそらく、ここを曲がった先が1層のボス部屋だろうね」
相変わらず、移動中はポロロンとウクレレを弾くリープが歌うように言った。
迷宮エリアの特徴として迷路のような構造という事が挙げられるが、もう1つの特徴として2層に上がるための転移オブジェの部屋の前に、1層で出現するモンスターよりも少しだけ強いモンスターが必ず出現する部屋、通称「ボス部屋」と呼ばれる部屋があるという特徴がある。
つまり、ボス部屋を発見することが次の階層へと進む道であり、リープはそのボス部屋を見つけたと言った。
「おう、確かにこの先の部屋は広めだな」
パーティーの戦闘にいるリペアも、先に曲がり角の様子を見てリープの発言を肯定した。
「そうだな。じゃあ、とりあえず装備を整える時間も必要だし一旦休憩とするか。あぁ、クレハは結界を張らなくてもいい。その代わり、リープは引き続き、音で周囲を警戒していてくれ」
「ボス部屋」と呼ばれる部屋は、探索者がその部屋に進入をするとそのボスと言われるモンスターが出現する仕組みとなっている。逆に言えば、足を踏み入れない限りボスは出現しないので、その手前の通路や部屋ではボス戦を前に、装備を整えたり体力の回復に努める事がダンジョン探索者の間でも一般的であるのだ。だからといって、ボス以外のモンスターは現れるのでボス部屋と挟み込まれないように警戒を怠ることも出来ない。
その事を理解しているユートは、先の部屋を確認すると、素早くメンバーに指示を出して休憩を促した。そして自らの装備をサッと確認すると、リープと交代で周囲の警戒にあたった。
「それじゃあ、ボス特有の【眷属召喚】に注意しろよ」
「そうね。私達のパーティーは後衛が多いから特に注意が必要ね」
「予定通り最初は、うちが結界を張るさかい。うちらはそれで時間稼ぎをしてればいいんやな?」
「そうだな。俺とリペアでボスを攻撃している間は後方で支援を頼む。どうしてもやばくなってきたら、リープが範囲攻撃をするしかないな」
「そうだね。その時は合図をするよ」
「じゃあ、予定通り――行くぞ!」
休憩を終えた所でユート達は、最後に注意点を確認するとボス部屋と進入した。
「よっしゃー! なんでもかかってこい!」
リペアが最前列に、その後ろにユート、そして後方に他の4人という予め決めていた陣形を部屋に入り次第に作る。
大剣を思うように振れない程の狭い通路に比べて、ボス部屋は広く正方形の形をしていた。また、天井が先程の通路と比べて5倍ほどの高さがある。そこはまるで一種の闘技場のような空間であった。
その部屋の真ん中、ユート達の頭の上の天井付近に黒い渦が出来はじめる。
この謎の黒い渦は、ボスモンスターが出現する際に起こる魔力の歪みだという説が一般的であり、大型ダンジョンだけに限らず小型ダンジョンでも見られる現象である。ダンジョン内やそのダンジョン内エリアでの魔力が十分に溜まった時に起こるとされる現象であり、その黒い渦からボスモンスターと呼ばれる強いモンスターが生まれるのだ。草原エリアや森林エリアなどの広いエリアで、このボスモンスターの出現はランダムであるが、迷宮エリアのようなボス部屋があるようなエリアでは、その地点にしか出現しない。
「GYAAAAAAAAASS!!!」
そして、その黒い渦が形作られて現れたのは巨大コウモリだった。先程通路に出てきて倒した迷宮コウモリよりも、一回りも二回りも大きい。ボスモンスターの傾向として度々あるそのエリア内に出現するモンスターを巨大化したパターンだ。
クラン結成後、初めてのボス戦の火蓋が切って落とされた。
~モンスター図鑑~
『迷宮コウモリ』
迷宮に潜むコウモリのモンスター。小さい身体を活かして縦横無尽に飛び回り隙あらば噛みついてくる。




