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No.18 『大型ダンジョン入り口』


 借りた事務所に必要最低限の家具を揃えたユート達は、その次の日には早速ギルドにクラン設立の申請を出していた。条件さえ揃っていれば申請の時間事態はそう長くはなく、申請料に必要なお金10万Rリウを最後に払うとあっけなく申請は終了した。


 その3日後。

 ユート達6人と2匹改め、クランのメンバーは、大型ダンジョンへとやって来ていた。大型ダンジョンは、その入り口がどこにでもある事で有名なダンジョンだが、一番近い首都ナナハにあるダンジョン大学校近くの大型ダンジョンの入り口前へとユート達は来ていた。


 ダンジョンの入り口の外観は、古びた遺跡のような建物であったりするのだが、ここのダンジョンの入り口は、首都ナナハという事もあり、ダンジョン大学校の生徒たちもよく使用することから、綺麗に補修されている遺跡といった建物である。


 朝早くから来たユート達であったが、もう既にダンジョンの入り口前には、探索者たちによる長蛇の列が出来ており、ユート達もその列に加わった。


「じゃあ並んでいる間に今回の目的でも改めて確認するか」

 ユートがそう言うと、メンバーはそれぞれ同意を示す。


 今回のユート達の目的は、パーティーの連携の確認と、3層への到達でククの第2ジョブを解放する事である。

 一応、お互いの戦闘方法の確認も終えているが、慎重を期して行動するに越したことはないのだ。練習と本番は全然違うものである。この言葉はダンジョン大学校でも口酸っぱく言われている事であり、ダンジョンの中ではいつ状況が変化しても不思議ではない。頭で理解しているつもりでも、いざ本番になると上手くいかないことなどよくある事だ。


 ユートとリペア、マイの3人は定期的にパーティーを組む仲であったこともあり、お互いの戦い方も理解しているし連携も出来ている。またユートとリープも時たまパーティーを組む仲であったために、一緒に戦うこと自体もそれほど問題ではない。


 しかし、このパーティーでダンジョンを探索することは初めてであり、予想だにしていない事態が起こるかもしれない。いや、必ず起こる。それが些細なことならいいが、重大なことならダンジョンでは命に関わるかもしれないのだ。そして、それは起こるなら、まだ比較的安全なダンジョンの低層で起こったほうがいい。


 深層で危機的状況に陥るよりも、低層でまだ挽回できる・改善できる時に起こったほうがいいのだから。ユート達の今回の目的は探索メインではなく、メンバー間の連携などをより密にすることで、これからのダンジョン探索の基礎となる戦闘方法を確認することだった。

 ククの第2ジョブの解放はとりあえず状況を見てという事である。最も3層までは問題ないだろうというユート達の見立てで、今回の目的としてはいるが。




 そうこうしているうちに、ユート達パーティーがダンジョンへと入る番となった。

 石造りの遺跡の中に足を踏み入れると、すぐに2つの道に分かれる。一方がダンジョンへと入るための蒼く輝くオブジェのある部屋であり、もう一方が帰りの転移先の部屋となっている何もない広間だ。


 すると、帰りの転移先の部屋の方から男のみで構成されたパーティーが出て来た。


「おう。兄ちゃんたち。どうやら今の時間帯は、迷宮と草原、それに浅瀬の海岸エリアだそうだぜ。俺たちは迷宮エリアだったからリターンだ」

 大剣を背負ったそのパーティーのリーダーっぽい人がそうユート達に声をかけてくる。


 小型ダンジョンにはない大型ダンジョンの特徴として、転移先のダンジョンの環境が一貫してないというのが挙げられる。ダンジョンに入る地域や時間帯などによって、ダンジョンの1層の環境が大きく異なるのだ。


 「リターン」というのは、俗に言うダンジョン用語であり、入った先のダンジョンの環境が自らのパーティーに合わない環境だった場合に、すぐにその環境から戻りもう1度自らに合う環境に入り直す事である。今日のようなダンジョンに入る探索者が多く並んでいる場合は、また最後尾から並び直さないといけないが、特定の採取物やモンスターのドロップ品を狙っている場合、パーティーの戦闘に不利な環境の場合に「リターン」することが多い。


 また、いつからか「リターン」した者は、次に入る探索者に自分達のリターン先を教える事が慣例となっているため、こうして大剣を背負ったオッサンはユート達に話しかけてきた訳だ。


「どうもありがとうございます」

 と、ユート達も答え、そのパーティーとすれ違っていく。

 その声をかけてきたオッサンを始め、重装備の前衛が3人に後衛に魔法使いと弓士が1人ずつ。もう1人は剣を腰に差しているが斥候系のジョブだろうと当たりを付けたユートは、なかなかバランスの良いパーティーだなと思った。


「オッサン達強そうだったけどな。リターンなんだな」

「そういえば、そうですね……」

 すれ違ったあとにリペアがポツリと言い、ククもその言葉に首をかしげた。


「素材採取の依頼ちゃうやろか? 迷宮なら素材はあまり取れんさかい」

「僕もそれに1票かな」

 クレハがそう予想して言い、リープもそれに同意する。


「あの装備だと水辺も苦手そうじゃない? 草原狙いだと私は思うわ。ユートの予想は?」

 自分の意見を述べてマイがユートにも尋ねてくる。


「いや、おそらく迷宮エリア以外だったらどこでも良かっただろうな。それにおそらく浅瀬も苦手ではない」

 ユートは答える。


「ほう。なんでや?」


「理由はいくつかあるが、まずリーダーっぽい声をかけてきた人の武器が大剣だったからな。狭い通路の迷宮エリアでは扱いにくいだろう。それに狭い通路では、重装備が3人もいたら動きづらいだろうし後衛も前衛が邪魔であまり役には立たない。あのパーティーは広い所でこそ力を発揮できるパーティーだ。だから迷宮エリア以外だったらどのエリアでもいいだろう」


「ユートさん凄いです」


「ちょっと待って。水辺が苦手じゃない理由は?」


「あぁ。それについての可能性は五分五分だが、斥候っぽい人の腕輪と魔法使いっぽい人のネックレスが水用系の宝石だったと思うんだ。おそらくだが、水を弾く効果のあるアクセサリーだろう。

 あと魔法使いの人は『付与術士』でもあるはずだ。そちらが第1か第2ジョブかは分からないが、持っている杖がおそらく兼用できる物だったはずだ。『付与術士』なら付与魔法で味方の水を弾くことも出来る。

 斥候がアクセサリーを持っているのは、先行して様子を見する時に付与魔法の効果範囲外から出るためだろうな」


「ほぉー。総合1位はやっぱり見るべき所が違うねんな」


「いや、まぁただの観察と予想だしな。誰にでも出来るよ」


「いや少なくともここにいる人で、ユート以外は出来なかったからね」


「そうね。そんな予想されちゃあこっちも完敗だわ」

「ホント、ユートは反則だよな!」

「にゃあ!」

「めぇー!」


「まったく、すぐ人を反則扱いしやがって。まぁこの話はこの辺でいいだろ……着いたぞ。ダンジョンでは気を引き締めろよ」


 ユートはそう言うと、部屋の真ん中にある床から突き出した鍾乳石のようになっている蒼く輝くオブジェに手を触れる。他のメンバーも慣れた様子でそのオブジェに触れていく。


 オブジェに触れると、6人それぞれの頭の中に、自分のステータスの表記が思い浮かんでくる。そこに書かれているのは、自分の名前と現在就いているジョブに、そのジョブのレベルだ。また詳細を見たい旨を頭の中で念じるとそのようにステータス表記が切り替わり、詳細な情報が見られる。そこでジョブの変更や自身の【スキル】や《技》の確認が出来る。


 ユート達は慣れた様子で各種項目に目を通すと確認終了の意を込める。すると、次に自分の簡易的なステータス表記の他に、このオブジェに触れているパーティーメンバーのステータスが確認を終えた順番に表示される。



〇 ユート・コメット

  『道化師:Ⅴ』『料理人:Ⅴ』


〇 リペア・ウッドウォーカー

  『木こり戦士:Ⅴ』『修理士:Ⅲ』


〇 リープ・トラッド

  『吟遊詩人:Ⅴ』『罠士:Ⅲ』


〇 マイ・グラスヒール

  『薬師:Ⅴ』『踊り子:Ⅳ』


〇 クク

  『羊飼い:Ⅳ』  →使役:黒猫のララ・羊のマルハ


〇 クレハ・フォックスシールド

  『商人:Ⅳ』『結界士:Ⅳ』



6人全員が確認を終えたところでパーティーの了承となり、自動的にダンジョンの1層へと転移された。



~スキル図鑑~

【アピールポイント】

 相手の注意を自分に向ける。


【フラフラダンス】

 フラフラと踊ることで、その踊りを見た相手のバランス感覚を狂わせる。



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