No.10 『パーティーバランス』
「それで……実際にあとパーティーメンバーを3人増やせるならどういうジョブが良いかしら?」
羊皮紙に書いたユート達3人のそれぞれのジョブを見てマイは言う。
「まず絶対に近いくらい必要なジョブは、後衛で火力のあるジョブだな」
マイの質問にユートは答えた。
「ってことは、『魔法使い』とか『弓士』か?」
「そうだな。出来れば『魔法使い』が良い。今回のワタグモ・水晶アリ戦でも思ったが、やはり後衛に攻撃力のあるジョブがいたら俺たちの戦闘は格段に良くなるだろうな。前衛にリペアもいるし、何なら俺も前衛に回れる。それで後ろから威力のある魔法を撃って貰えれば戦闘の効率も上がるだろう」
「確かにそうね。でも『弓士』じゃダメな理由は?」
ユートの説明に納得しつつもマイは質問をする。
「『弓士』でもいいが、『弓士』の場合『魔法使い』と比べて広範囲に攻撃が出来ないのが難点だ。熟練の弓士になれば広範囲の《技》や【スキル】も覚えるだろうが、それでも『魔法使い』の方が自由度も高いし応用も効きやすいだろう」
「そうね。それにそういえば、『弓士』はコストパフォーマンスも悪いんだったわ。弓はともかく矢は消耗品だしね」
ユートの答えにマイも記憶にある情報を思い出す。
「あぁそうだな。リペアの『木こり戦士』で経費を軽くする事は出来ると思うが、出来れば避けたいジョブでもあるな。その点『魔法使い』は自身の魔力次第だしな」
「でもユート達がそう考えるんだったら、大手クランもそう考えて『魔法使い』ばっか採用して、『弓士』に内定をあげねぇんじゃねぇか?」
「あっ!」
リペアのその単純な質問にマイは考えてなかったと気付き声を上げる。
「いや、その心配はない。実はここから少し遠いが、ココザの町に1年程前新しく小型ダンジョンが発見されたんだ。その小型ダンジョンなんだが、どうやら鳥型モンスターが多くいるらしく、『弓士』は引っ張りだこらしい」
「へぇそうなのね。知らなかったわ」
ユートの情報にマイは驚く。マイ自身もダンジョンに関するニュースは随時情報を仕入れているがユートには負けるのだ。
「鳥型モンスターか。一度行ってどの鳥が一番美味しいか比べてみてぇな!」
「もうリペアったら!」
「リペアの食い意地は置いといて、一度行ってみたい所ではあるな。空から攻撃してくる敵のいい練習にはなりそうだしな。……話しを戻すとして、そういう事情もあって例年よりも『弓士』の内定率は高いと考えられるな。まだ未内定者の後衛を狙うなら、攻撃に時間のかかる『魔法使い』あたりが狙い目だな」
「そうね。前衛のリペアもいるし、その辺りが妥当かもね。威力さえあれば時間は稼げるものね」
ユートの言葉にマイも賛同を示した。
「そんな人がいればの話になるがな」
「それは分かっているからそういう発言はNGよ。というか、ユートは知り合いにそういう人はいないの?」
「うーん。『魔法使い』に知り合いはなぁ……いないな。ただでさえマイナーなジョブ同士でパーティーを組まされるし、そもそも攻撃できる後衛職が少ないしな。さっきのココザの話を聞いた『弓士』の知り合いもそこに内定決まったから知った情報だしな」
「そうなのね。私の知り合いの『魔法使い』も何社も内定貰ってるって言ってたし、やっぱり『魔法使い』はそれだけ需要があるのよねぇ。この話はこの辺で終わって次の候補の話にしましょうか」
「そうだな」
「え? マイもユートも俺には知り合いいるか聞かねぇの?」
「だって、筋肉馬鹿なリペアに、頭の良い『魔法使い』の友達がいるとは思えないもの」
「ひでぇ! ま、その通りだけどなー! あ、でも目の前の友達とうちの奥さんは頭が良いぜ!」
「ほらね。聞くだけ無駄よ」
夫に対してたまに理不尽なマイだった。
「それで次の候補だが、後衛の次に必要なのは……斥候係のジョブか?」
ユートがまたも提案する。
斥候とは、本体のパーティーよりも道を先に進み、敵をいち早く見つけたり罠の有無などを確認したりするジョブである。
「うーん。正直言って私は必要ないかなって思うわ。リペアの『修理士』で罠の解錠も出来るし、何よりもユート、あなたが罠を発見するじゃないのよ。普通は罠の発見の方が難しいのよ?」
ユートの提案に、マイは理由をつけて否定した。
「そうだぜユート。スキルも何も使ってないのに、どうして罠を見つけられるんだよ」
リペアもマイの言葉に同意して聞いてくる。
「いや、それはあれだよ。何となくこの辺にあるだろうなって分かるだろ?」
それを答えになっていない理由で答えるユート。
「だから、それが普通出来ないのよ」
「そうだ。そうだ」
「いや出来ないって言われても、俺も半ば半信半疑なんだけどな。ダンジョンで歩いてて、一切罠が無かったらそろそろあるなって思うだろ? それに見るからに不自然なところは目につくだろ?」
「その半信半疑が100%近く当たるから言ってるのよ」
ユートの言い分に呆れながら言葉を返すマイ。
実際に、ユートはこれまで一度もダンジョンに生成される罠に引っかかった事は無かった。ダンジョンに潜り始めてまだ3年ほどしか経っていないという数値的な問題もあるが、人よりも抜群に罠を見つけ出す能力が高いのだ。ダンジョン大学校で行う罠対策の訓練でも一度も引っかかった事がない。これは斥候系のジョブを除き、学年でも数人しかいないうちの1人である。
「それを言ったらリペアだって反則じゃないか。罠が発動してから避けるってどんな反射神経してるんだよ」
そうユートの言った通り、リペアは罠が発動しても関係なく避けるか防御に入る。リペアもリペアで罠を別の意味で無力化できる1人であるのだ。曰く、罠が発動しても対処できるなら問題はないを素で行く男である。
「えへへ。ユートに褒められたぜ」
ユートの言葉に、当の本人は嬉しそうに頭をかく。
「そうなのよ。だから私は斥候職の必要性を感じないのよ」
マイがやれやれといった仕草でそう言った。
「そう言われたら何も言えないが、一応俺の罠の発見も外れる時は外れるしな。専門的なジョブがいたら確実だし良いと思っただけだよ」
「まぁそうね。一口に斥候系と言っても沢山いるものね。『戦士』と併せ持った戦闘系もいれば『荷役』のようなサポート系の人もいるし、第二ジョブでも持っている人がいたらそれはそれで良いのかも知れないわね」
マイが最後にまとめて、斥候系のジョブに関しての話はこれで終わった。
その後もあーでもないこーでもないと議論しながら、理想的なパーティーを考えていった3人だが、結局のところ魔法系の攻撃が出来るジョブがもう1人いるなら、パーティーは安定するため、他の2人はどんなジョブの人が来ても大丈夫だという結論になった。その時になってから対応しても問題ないという事だ。一応、大事な事は最初に決めた「ダンジョンを攻略する気概のある者」である。そこさえ一貫していれば、どんなパーティーでも大丈夫だろうと。
とりあえず、ユート達の当面の目標としては、該当する後衛職を探しながら残り2人も見つける事である。
長時間の会議の帰り道、マイとリペアと別れたユートは寮の自室に向かいながら、後衛職の知人を頭の中で考えていた。しかし交友関係は狭くもないが、あまり広くもないユートである。ましてや『魔法使い』というジョブはどこのクランも引っ張りだこである。ユートの頭の中でも早々に候補はすべて出し尽くされた。みんなほとんど内定を決めている者ばかりである。そんな悶々としているユートに声を掛けて来た人物がいた。
~ジョブ図鑑~
『料理人』
生産系ジョブであるが、包丁やフライパンなどで戦うことも可能。
『修理士』
生産系ジョブ。「カラクリ」という道具を製作・修理する事ができる。
『踊り子』
支援サポートをする後衛のジョブ。踊ることで、味方の能力を引き上げたり、敵の能力を下げることが出来る。




