◆83.オモテナシ大作戦!
間に合えーー!!(汗
──彼女の様子が可笑しいな、と感じたのは衣替えも終り、しとしとと雨が降り続く季節に入った頃のことだ。
この世界でも前世と四季や気温の変化などは同じ法則らしいし、梅雨、というあまり好きではない季節もこの世界には存在した。もっともそれは『梅雨』ではなく『桜泪』と称されていたけれど。
この国の国花である桜を冠したこう言った名前を、妃沙はとても気に入っていた。
元々が時代劇なんていう古風めいたものを愛好する彼女だ、そうした響きが琴線に触れない筈もない。
だが、曇った空や雨というものはともかく名前は気に入っている季節に入ったあたりから、彼女の親友──遥 葵の元気がみるみるなくなって行ったことを妃沙はとても心配していた。
太陽のように明るい葵なので雨はとても苦手らしく、身体が重くなるとか、外を走れないとかいう理由でこの季節はあまり好きではなかったようだけれど、最近の元気のなさは何かが違う気がしている。
彼女にしては大変珍しく食も細くなってしまっているし、部活動でも心ここにあらずといった様子でミスを連発するようになってしまっているらしい。
だが、その原因には全く心当たりがなく、けれどもどうしても早く元気になって欲しかった妃沙は、ある日の昼休み、葵に言った。
「葵、今度の土日、わたくしの家に泊りにいらっしゃいませんか? パジャマパーティー再び、ですわ!!」
出来るだけ楽しそうな笑顔を意識しながらそんな事を言う妃沙に、葵は少しだけ戸惑った表情を浮かべている。
「え、でもアタシは部活もあるし……」
何故だか逃げ腰の葵に対し、意見を述べたのはいつものように一緒に弁当を食べていた妃沙と葵の親友、栗花落 充であった。
なお、もう一人の親友・颯野 大輔は野球部のミーティングとやらで今日は別行動を取っている。
「たまには部活をお休みしたって大丈夫だよ、葵ちゃん。気分転換してみたら? それとさ、妃沙ちゃん、どうせならボクの婚約者の美子もご一緒させてもらえないかな?
以前から美子に妃沙ちゃんや葵ちゃんとゆっくり話をする機会が欲しいって強請られてるんだよね。ボクよりそっちが大事なのかって嫉妬もあって今まで言えずにいたんだけど、良い機会だし」
「あら、素敵ですわね。それでは『女子会』なるものを致しましょう! 凛先輩にもいらして頂けるようお願いしてみますわ! あと、美陽様も!」
「わー、楽しそう! そんな会合があることを姉さんに言わなかったら後が怖いし……妃沙ちゃん、姉さんにも声を掛けて良い?」
「SHIZU様ですか!? いらして下さるなら大歓迎ですわよ!!」
ワーキャーと話を進める二人をよそに、葵の表情は沈んだままだ。
ポーカーフェイスなんて言葉とは無縁で、自分の気持ちはすぐに表に出てしまうのが長所の葵のことだから、どうやら何かに悩んでいるらしいことは明白である。
そのことには妃沙はもとより充も気付いていたし、この『女子会』は本当に良い機会かもしれないな、と思うのだ。
妃沙がどんな意図を以てそんな提案をして来たかは……おそらく、葵を元気にしたい程度の認識しかないかもしれないけれど、そのメンツは葵の悩みにアドバイスをくれるだろう人物が揃っている。
「葵、部活動に一生懸命な貴女にそれをお休みしろだなんて残酷な事だというのは解っていますわ。けれど……わたくしも少しだけ聞いて欲しいことがあって。
ねぇ葵、以前に葵のお宅にお邪魔してお揃いのパジャマを着て話をして眠ったこと、わたくし今でも良く覚えていますわ。大切な……大切な思い出で、あの時貴女はわたくしを救って下さったのです。
貴女が今、何に悩んでいるのか、おそらくはご自分でも解っていないのでしょうから……ねぇ葵、わたくしと一緒に、その問題と応えを探してみませんか?」
キュッ、と葵の手を握りながら、瞳に涙すら浮かべながら懇願する妃沙に、葵は思わずウッと息を飲む。
確かに、ある出来事に遭遇して以来、自分の心が不安定で、勉強にも部活にも集中出来ずにいることは自覚しているのだ。
葵にとってそんな事態は初めてのことで……けれど、どんなに考えても、頭を切り替えようとしてもどうしても気になって気になって、気付けば日常生活に集中出来ずにいる。
風邪を引いたってガバガバ食べていた大好きな米ですら何処か味気なく感じてしまって、食事も楽しくなくなったせいで、ここ数日で一気に数キロ痩せてしまった程だ。
けれど……葵には、何故自分がこんな状況にあるのか、全く理解出来なくて。
すわ病気かと家族にも相談したのだけれど、母親からは慈愛を込めた微笑みを頂き、父親からは「……いよいよか」なんて涙すら浮かべた瞳で自分を見つめてそんな事を言われたのだ。
医者である両親の反応に驚いた葵に、両親は病気ではないよ、と優しく言ってくれたけれど……実は自分は不治の病で余命幾許もないんじゃないかという不安を抱えていたのである。
「……ん。最期に思い出を作るのも悪くないかもな」
そんな悲壮な言葉を呟く葵。
最期、なんて衝撃の言葉に妃沙は大慌てだし充は口元に手を当てて顔を背けている──もちろん、笑いを噛み殺しているのだ。
「葵……葵!! そんな寂しい事を言わないで下さいまし! わたくしがきっと解決策を模索してみせますから……!」
「大丈夫だよ、葵ちゃん。その病で命に支障を来すことは絶対にないから」
涙を浮かべる妃沙と何処か楽しそうな表情の充という、対照的な二人に両の手をそれぞれ取られ、葵は何だか久し振りに心がほっこりするのを感じていた。
次の瞬間には再びあの、鉛を持たされたように心が重い感覚に苛まれていたけれど……二人の親友の言葉は、確かに嬉しかった。
例え自分が死ぬとしても、最期まで彼らには正直でいようと、改めて決意をする葵。
「……ありがと、妃沙、充。アタシはお前達みたいな親友を持つ事が出来て……それだけでもう、悔いはない」
憂いを含んだ表情でそんな男前な言葉を放つ葵に、妃沙の涙腺はとっくに決壊して号泣しながら葵に抱き付いているのだけれど。
(──恋の病で死ぬ人間なんか、太古の昔からいないんだよ、葵ちゃん)
初等部から寄り添って来た、彼のもう一人の親友・颯野 大輔、彼の恋の成就が近いことにいち早く気付いていた彼は、とても優しい瞳で、抱き合う『鳳上のアリストロメリア』の姿を見つめていた。
かの花にも色々な種類があるけれど、二人の姿を見るに『黄色い花びら』の中心でその存在感を放つ『紅い花弁』が、二人には一番似てるな、なんて思いながら。
そして、この会合のセッティングに成功した事を伝えるのは直接にしようだとか、ご褒美として何を強請ろうかなだとか……そんなリア充な考えを思い浮かべながら。
───◇──◆──◆──◇───
そうして迎えた約束の日。
ここに至るまで、妃沙は超頑張った。それこそ、神経をすり減らすなんて言う慣れない経験をした程に。
だがそれは、その日の招待客に対して含む所があったからではなく……むしろ逆に、彼らを敬愛すればこそ、最高級のおもてなしを、と考えた結果である。
人数が多い為に自室では泊り切れないので、来賓室の移動壁を取っ払って一部屋にした結果、空調設備に不安が残ったので今までに貯めた小遣いで大型のサーキュレーターを購入したり。
その日は是非とも手料理を振る舞いたかったので、メンバーに好みを聞き、料理人と相談し、共に食材の買い出しに行き、美少女特典のお値引きを大量に受けることに成功したり。
色々相談しながら進めていた準備にも関わらず、そちらに注力しすぎて対応がおざなりになってしまった知玲から「今度は僕のお願いを聞いてね?」なんて言葉を受け、了承してしまったり。
「女装したら参加出来るって聞いて」なんて、そのクール話題になっていた女装家政婦を描いたドラマ『家政婦のキタゾノ』よろしく女装して現れた莉仁を追い払ったり……まぁ、とにかく忙しくしていて。
「ご招待頂き有り難うございます、水無瀬さん」
「妃っ沙ちゃーん! 来ちゃったー!」
「……お兄様のお願いだから来てあげたわよ」
「充の姉で良かったって初めて思ったよー! 皆からのネタ提供、期待してるからねー!」
それぞれ手土産を手に、自宅に訪れた招待客。
詠河 美子──充の婚約者で大学生な彼女。昔の縦ロールは卒業し、いまはストレートな髪をハーフアップにしており、少し照れたような表情でペコリとお辞儀をする少し釣り目気味な美人さん。
紫之宮 凛──妃沙が最も尊敬する先輩で、高等部でもテニス部長を任されているというのに部活を放り出してこの会合に参加してくれた紫の髪が印象的な快活な少女。思わず好き、と抱き付いてしまったのはご愛敬だ。
東條 美陽──現在の鳳上学園中等部、女子テニス部の部長であり、少し先の大会に向けて練習に余念がない筈の彼女が、妃沙の大好物である銀ダラの西京焼きをズイ、と突き出している様は可愛いとしか言えない。
栗花落 雫──通称『SHIZU』の名で世間に知られている中高生向けのライトノベルで名を馳せた有名作家だが、その実態は極めて残念であることを、充を通して良く知っている、この会合唯一の社会人である女性。
……そして。
「……なんだかオオゴトになっちゃったなぁ……」
本日の主役である遥 葵──妃沙の親友にして、彼女以外の女子は何人たりとも『親友』とは呼ばないと決意させる程に妃沙の心を捉えて止まない赤い髪の美少女がそこには集合していた。、
「皆さま、ようこそお越し下さいました! ホストとしては未熟ですけれど、色々と企画を考えておりますので、本日は楽しんで頂けると嬉しいですわ!」
カシャ、カシャとシャッター音が響き渡る。
招待客が、出迎えてくれた妃沙の姿に衝撃を受け、思わず携帯のカメラを彼女に向け、シャッターを押した為である。
「……あの、皆さま、わたくしの格好、可笑しいですか……?」
不安そうな妃沙が自分の衣服の裾を握り、俯いて頬を染める様は破壊力抜群であった。
今、彼女は矢絣の着物に膝丈の紺色のプリーツスカート、そしてその上にはフリフリのエプロンという、現代日本で言うところの『大正浪漫』満載の衣装を身に着けて彼女らを出迎えたのだ。
妃沙としては、非日常を体験して欲しくて、どんな装いが良いでしょうね? と知玲に相談した結果、用意されたそれをそのまま身に着けただけなのだが、さすが知玲、妃沙の魅力は誰よりも理解していた。
金髪をハーフアップにする髪型だとか、白地に紫の矢絣がプリントされた生地だとか、膝丈ギリギリのスカートのラインだとかは絶妙すぎて、普段はそういう行動をしない美子ですらシャッターを押してしまった程だ。
「サイッコーに可愛いよ、妃沙ちゃん! ホント……食べちゃいたい……!」
一同を代表してそんな過激な言葉を告げ、あまつさえ妃沙に抱き付いたのは紫之宮 凛──全員が同じ気持ちだったにも関わらず彼女が真っ先に反応したことで、周囲もようやく自分の心のリミッターを外したようだ。
「水無瀬さん……可愛い、本当に可愛いわ貴女……!」と、美子。充から聞いている以上の妃沙の破壊力に、既に理性が焼き切れそうな勢いである。
「……ずるいわよぉーー!!」と、美陽。どうやら彼女のツボも兄と同様であるらしい。
「馬鹿、妃沙……そういうのは……アタシと知玲先輩以外には……見せんなよ……!」──何故か涙すら浮かべて抱き付く葵。なお、知玲には衣装が整った時点で披露し、長い時間の抱擁と撮影会に応じていたのでモーマンタイだ。
無言で写真を撮りまくる雫をよそに、妃沙はポッと頬を染めてその抱擁を受け止めていたのだけれど、その表情はとても幸せそうであった。
妃沙としては少し恥ずかしかったけれど……知玲が言った通り、来客を喜ばせるという意味においては成功したようだと理解したのである。
「皆さま、本日はお越し頂き、本当に嬉しく思っております。滞在頂く間の食事は厳選した食材をわたくしが調理させて頂くものもありますので、楽しんで頂ければ幸いです。
そして……どうか皆様、本日は忌憚ない意見交換を存分に交わして下さいまし。わたくし……皆様のお声を聞きたくてご招待差し上げたのですわ」
妃沙にオンナゴコロは解る筈もない。
そしてこの会合のきっかけとなった葵も、その悩みがオンナゴコロによるものだとは少しも思っていない。
だからこそ、充が提案した『特定の相手のいる』美子と凛、『オンナゴコロを商売にしている』雫は、彼女たちにとって有益な意見をくれる筈だ。
そして、それを未だ深く理解していないらしい美陽もまた、この会合でそんな人の心の機微が理解出来るようになればテニス部はもっと強くなるな、なんて知玲の思惑も少しだけ作用してのことだ。
もっとも、最初こそこの会合への参加を躊躇っていた妹を満面の笑顔で説き伏せたのは、会合の内容を録音して自分に献上させるという作戦の為だなどということは、妃沙も知らずにいたのであった。
───◇──◆──◆──◇───
そうして始まった『女子会』。
妃沙はまず、家の中を一通り案内し、今日の為にセッティングされた来賓室に案内すると、荷物をそこに置いてもらい、食堂へと誘導する。
集合時間はお茶の時間に設定していた為、昼食は各自で摂って来た筈なので、持参されたお菓子や用意してあったものでお茶でも飲みながらまずはリラックスして貰おうと考えていたのだ。
特に、こんな風に話すのは初めてで緊張しているっぽい美子と、場違いなんじゃないかと感じていそうな美陽、そして相変わらず元気のない葵に馴染んで欲しくて、お茶受けは彼女達の好みを優先させていた妃沙。
「さぁさぁ、皆様ゆっくりして下さいまし。本日はジャスミンティーをご用意しましたのよ。お茶受けはゴマ団子とわたくし特製のおはぎにしてみましたわ! おはぎは餡子と胡麻ときなこがございます。
たくさん用意致しましたので遠慮なくお召し上がり下さいな。甘くない物もございますので、お好きな物をお取り下さいね」
相変わらずコスプレっぽい衣装のまま、一人一人に茶を振る舞いながら妃沙がそんな説明をしている。
ジャスミンティーは美子、ゴマ団子は美陽、おはぎは葵の好物だ。中でもおはぎについては妃沙が自ら豆を焚き、甘すぎないように砂糖の分量を監修し、胡麻ときなこについても色々と拘って用意したものである。
女子会のティータイムとしてはやや重いし可愛さの欠片もないメニューだが、そこは妃沙の中身と周囲への配慮という点でご愛敬である。
夕飯にも色々用意しているし、色々な物を堪能して欲しかったので、一つ一つは小さめに作ってあるので問題はないはずだ。
招待客達がキャーと声を挙げて思い思いの品に手を伸ばす中、妃沙が一番現元気になって欲しかった葵だけは苦笑したまま、ただお茶を啜るだけである。
「葵……無理に、とは言いませんけれど、一つでも気になったものがあったら食べてくれると嬉しいですわ」
葵の動向にはずっと気を配っていた妃沙。だから、相変わらず彼女の表情が浮かない事にも、こんな事を言えば無理してでも食べようとしてくれる事も解っていたのだ。
そして実際、葵は少しだけ困ったように笑いながら、妃沙が持って来たおはぎの中から、一番小振りの餡子を纏ったそれを皿に取り、小さく切り分けて口に運び……
「……妃沙、これ……」
驚いた表情で妃沙を見やっている。
彼女が食べてくれたこと、そしてその意味に気付いてくれたことがとても嬉しかった妃沙は、ヘラッと笑いながら言った。
「ええ、葵。以前に教えて下さいましたわね。つぶあんよりもこしあんだとか、餡には少し塩を入れると甘さが引き立つだとか、普通のお米で作られたおはぎが食べたいだとか。
……色々研究して創り上げたのですわ、貴女の為に。そして、今日、この場にはいらっしゃいませんけれど、試食を引き受けてくれた知玲様と理事長のお陰なのですよ」
そう、妃沙はおはぎを作るにあたり、色々研究をしたのだ。
葵のリクエストに応える為に、そのままではどうしてもパサパサしがちな米をもち米に近付かせる為に片栗粉を使ってみたり。
豆の産地や糖度に拘った上で取り寄せて作ってはみたものの、甘味に対しては疎い自分の替わりに知玲に試食して貰っていたことを何故だか莉仁に見咎められ、試食役を買って出てくれたので有り難く頼んでみたり。
ここに至るまでには相当数のおはぎを食べた筈の二人が、最後まで美味しい美味しいと気持ち良く平らげてくれることに安堵してみたり。
……正直、年上の女性を招く場のホストとして、葵に向けた食事を提供するのはどうかとも思ったのだけれど、妃沙にとり、この会合は葵を元気にする為のものだったので、申し訳ないとは思いながらもその意思を貫くことにしたのだ。
そして周囲も、葵の為だなんて言いながら、男性に比べれば食の細い自分達に配慮された大きさで用意された絶品スイーツには大満足だったし、生クリームやバターをふんだんに使った洋菓子よりは罪悪感も少なかったので、妃沙と葵の麗しい友情に少しだけ涙しながら、そんなやり取りに参加することは控え、美味しいお茶とお茶受けを堪能しており、今まで交流がなかった筈の面々は今やLIMEの交換をし始める程に馴染んでいた。
「……ありがと、妃沙。やっぱアタシには妃沙しかいないな!」
ウチに嫁に来いよーなんて言いながら、妃沙をギュッと抱きしめる葵。
葵の為につくったおはぎは、どうやら少しだけ、その悩みを軽くする役割を果たす事に成功したようである。
「葵ィィーー!! わたくしたちは一心同体、貴女に元気がなかったらわたくしも同様なのですわ! 大好きです、葵……!」
妃沙のそんな爆弾発言に、慣れていない美子と美陽はギョッとして手を止めてしまうのだけれど。
「あー、あの二人のアレは通常営業だし、ちょっとだけ浸らせてあげてねー」と、ゴマ団子を口いっぱいに入れ、リスのようにモグモグしながら語る凛。
「百合っぷるって、両方とも可愛いと滾り具合が違うよねー。私さぁ、アオキサも良いけど、実はあの二人はキサアオじゃないかと思うんだよね」と、茶も菓子もそこそこにタブレットに何かを打ち込んでいる雫。
そんな言葉に更なる驚愕の表情を浮かべながら、美子と美陽は目を見合わせ……次の瞬間には優しく微笑んだ。
充を通して彼女達を良く知っていて、どうしても話をしたかった彼女達は自分の理想通りの素直で可愛い子達だったと、ほっこりした気持ちになる美子。
大嫌いとは言いながらも、大好きな兄を不幸にも幸せにも出来るのは妃沙しかいないと、嫌というほど知っている美陽。だから、妃沙に元気がないと兄にも元気がなくなるのでとても困るのだ。
「あ、美子先輩、お茶のおかわりいかかですか?」
「有り難う、美陽ちゃん。このゴマ団子、美味しいわね」
ニコニコと微笑みながら、新たな女子の友情にも一役買った女子会は、こうして始まったのであった。
◆今日の龍之介さん◆
龍「おはぎ、なかなかイケんだろ? 本当は唐辛子入りのヤツとかも作ってみたんだけど却下されちまったんだよなー」
葵「……念の為に聞くけど、それは試食した上で却下されたのか? 試食は……誰が……?」
龍「理事長」
葵「なぁんだ。なら良いか」
一同、深く頷く。
莉「俺の扱いィィーー!!」




