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令嬢男子と乙女王子──幼馴染と転生したら性別が逆だった件──  作者: 恋蓮
第二部 【青春の協奏曲(コンチェルト)】
53/129

◆52.宴の夜に。

……ま、間に合った……! 遅くなり申し訳ありませんっ!!(スライディング土下座)

 

「知玲、卒業おめでとう!」


 周囲の大人たちがグラスをカチン、と打ち鳴らし、彼の卒業を祝ってくれる。

 ここは東條・水無瀬両家の主人、家人がこよなく愛している彼らの家から程近いイタリアン・レストランの一角。

 店内は予約客で埋まっているけれど、併設された庭は今、東條家とその関係者達、そして次期当主である知玲の婚約者である水無瀬 妃沙を擁する水無瀬家の面々を招待してのパーティーが開催されていた。


「知玲様、ご卒業おめでとうございます」


 水色のドレスに身を包み、肩にパールがあしらわれたショールを掛けて妃沙がにこやかに知玲にそう告げる。

 手に持った炭酸水が入ったグラスをチン、と綺麗な音をさせて打ち鳴らし、幸せそうな微笑みで彼女を見つめた知玲が「ありがと」と返した。

 そのまま見つめ合い、この一年の中等部であった事に想いを馳せる二人。


 思えば色々あった。

 妃沙はテニス部、知玲は剣道部という別の道を選んだのに、何故だか両部活の合同練習が度々開催されたり(これは知玲の策略によるもので、礼節を学ぶ、という一応の目的があった)、

 剣道部の稽古場所は校庭から一番近い場所に設定されており、女子テニス部の練習コートは何故だか校庭の端の、一番道場に近い場所にされていたりだとか(誰の仕業かはお察しである)、

 女子テニス部と剣道部の間で何故だか恋の花が咲き乱れたりだとか(これは知玲も想定外)、男子テニス部の今年度の一番人気が何故だか銀平だったりだとか(これは全く予想外)、

 まぁ色々あったけれど、本年度のテニス部は団体で全国制覇、剣道部は団体優勝すら逃したものの、知玲の全国優勝によって一応の面目躍如を果たしていた。


「……けど、同じ校内で見守る事が出来なくなっちゃうから心配だな。妃沙、本当に中等部では部活に心血を注いでくれる?」

「頼まれなくても、心血を注がねば来年の選手の座すら怪しいのですから、全力でテニスと向き合いますわよ!」


 ぷく、と頬を膨らませて妃沙が言う言葉に、一応の安堵を見せる知玲。

 だが、妃沙にとっては大問題なのであった。

 この一年、部活動にひたむきに取り組んで来た妃沙だけれど、その前向き過ぎる姿勢は周囲にも影響を与えたようで、女テニのレベルがグン、と上がってしまったのである。

 今年の代表選手の座は、前部長・紫之宮(しのみや) (りん)のやや贔屓とも言える判断で大抜擢して貰えたけれど、今の部長である竜ヶ根(たつがね) 倖香(さちか)は冷淡なまでの実力主義だ。

 妃沙の事は認めてくれているらしいことは態度から見て取れるし、スキンシップも凛以上ではあるのだけれど……その瞳の奥には何処か冷めた鑑定者の色を感じる事があるのだ。

 もちろん、妃沙としてもそれは願ったり叶ったりである。倖香が自分を認めてくれるのはテニスの練習や試合で成果を残した時だけで、それ以外は厳しい先輩の態度で妃沙を指導してくれる。

 この容姿に絆されることなく、厳しい言葉で自分を叱咤してくれる先輩の存在は妃沙にとってはとても有り難いものであった。


「……強くならなければ。上手くならなければ。わたくしのテニスはあと二年なのですもの、余所見している余裕などありませんわ」


 そんな妃沙に、知玲は心底嬉しそうに微笑んでチュ、と音を立ててその額にキスを落とす。

 この世界ではそんなスキンシップは珍しいものではないのだと妃沙も諦め半分に理解していたのだけれど、さすがに衆目の集まる場所で、曲がりなりにも婚約者からそんな行為をされることには恥ずかしさを隠せない。

 頬を染めて硬直していると、そんな妃沙の窮地を救ってくれたのは知玲の妹、美陽(みはる)であった。



「お兄様! 卒業おめでとうございます! でも、一年くらい浪人しても人生には影響がないという美陽のお願いは綺麗さっぱり無視して下さり、少しだけ面白くないわ!」



 黒髪にルビーのような紅い瞳を輝かせる知玲の実の妹──東條 美陽。

 その顔立ちは知玲に似てとても美丈夫なのだけれど、彼女の性格は我が儘な部分がとても強く、癇癪を起こして暴れる、という子ども特有な部分がまだ抜け切っていなかった。

 知玲と妃沙にとってはそれは『可愛らしい』程度のものなのだけれど、相手にされない美陽にとっては大問題である。

 兄好き(ブラコン)が過ぎる彼女にとっては、妃沙は邪魔者以外の何者でもなかったのである。


 今も、甘い雰囲気を纏ったままイチャイチャしそうになる知玲と妃沙の間に割って入り、知玲の手を取ってぷくっと膨れている。

 彼女は来月から鳳上学園の中等部に通う事になっており、知玲とは入れ違いになってしまうので、一年待って欲しいと昔から言い続けているのだ。

 どうやら知玲と同じ校舎に通う事が出来ないのが相当に不満と見える。


「美陽、東條家の次期当主が留年なんてする訳にはいかないだろう? 僕だって出来れば中等部にはいたいんだよ。色々心配だしね……」


 そう言いながら美陽の頭を優しく撫でてやり、チラリと妃沙を見やる知玲。彼の心配の種は主にはこの妹よりは大切な婚約者であるようだ。

 だが、妃沙はその視線を『美陽を頼むよ』という風に受け取っており、トン、と片手で胸を叩き、もう片方の手ではサムズアップを返しながら「合点承知之助!」なんて検討違いな返答を返していた。

 彼女のそんな残念っぷりにはいい加減慣れていたので、仕方ないな、とでも言うようにフゥ、と溜め息を吐く知玲の傍らで、美陽は益々強くギュッとその腕に縋りついて鋭い視線を妃沙に向けていた。


「お兄様、いつまでも一箇所にいる訳にはいかないでしょ? 主役なのだからお客様達にご挨拶もしないと。美陽も一緒に行くから、ささ、あちらへ!」


 やや強引に知玲の手を取り、別の場所へ連行しようとする美陽。

 そんな二人を楽しそうに見つめながら「行ってらっしゃいませ」なんて手を振っている。

 知玲もまた、美陽の機嫌を損ねると面倒臭い事になることは実感していたので、苦笑しながら客たちの方に向かっていった。


(──やっぱ良いなー、妹。美陽、可愛いよなー)


 立食パーティーの形式であったので、目に付いた食べ物を片っ端から食べながら呑気にそんな事を考えている妃沙。

 さすがに東條家、水無瀬家御用達のレストランだけあり、提供される料理はどれも美味であり、立食パーティーの形式は小食な妃沙にとっては色々と堪能出来る都合の良いものであった。

 婚約者の卒業パーティーだというのに食に走るあたりが流石の妃沙クオリティだとでも言うべきか。

 そんな彼女に、大人びた表情で来賓の対応をしながらチラリと知玲が視線を送っていたのだけれど……


(──ヤバ、この肉、うまっ!)


 モグモグと料理を堪能している妃沙がそんな意味ありげな視線に気付くことは……もちろんなかった。



 ───◇──◆──◆──◇───



「妃沙、歩いて帰らない?」



 賑やかなパーティーの後、知玲がそんな声を掛けて来た。

 え、と言い淀む妃沙。夜更けとはまだ言えないながらも、空はとっぷりと暮れていて、綺麗な月が出ている時間だ。

 今日は土曜日で明日は休みだし、部活も生徒の自主性に任されており、決められた練習がある訳ではないが、もちろん妃沙は参加するつもりでいた。

 しかも、自宅から程近いとは言え、ドレスアップしている今はスニーカーを履いている訳ではないので、やや歩きづらいしお腹もいっぱいだ。

 早く帰って風呂に入って寝ちまおう、と両親と一緒に迎えの車に乗り込もうとした所で、何故だか切羽詰まったような表情の知玲に腕を取られている。


「どうなさいましたの? 何かお話があるのでしたら、車の中ででも……」

「……いや、特に話がある訳じゃないんだ。ただ、もう少しだけ妃沙と一緒にいたくてさ……駄目?」


 必殺の捨て犬のような瞳で自分を見つめる知玲に、あー、そう言えばまた暫くガス抜きしてなかったか、と思い至る妃沙。

 だが今日は、美陽もいる筈で、二人で歩いて帰るなんて言い出したらまた癇癪を起して大変なことになりそうだ。


「でしたら後日、またお出掛けでも……。今日は美陽様もいらっしゃいますし、二人で、という訳にはいかないのではありませんか?」


 その妃沙の言葉に、ああ、と優しく微笑んでクイ、と親指をある方向に向ける知玲。

 そちらに視線を向けると、ずっと知玲にベッタリだった美陽は、はしゃぎ過ぎたのか、知玲の父に抱きかかえられてぐっすりと眠っていた。

 来月から中学生とはいえ、彼女は妃沙や知玲と違う、ごく一般的な子どもなのだ、はしゃぎ、お腹がいっぱいになれば眠くなるのは仕方がない。


「……仕方がありませんわね。食後の運動、お付き合いしますわ」


 お父様、お母様、そういう事ですから先に戻って下さいまし、と、車の中の両親に声を掛けると、中から「あまり遅くなるんじゃないぞ」「妃沙を宜しくね、知玲くん」という声が返って来る。

 既に東條家には話が通っているようで、幸せそうな微笑みを浮かべた知玲が「ちゃんとお姫様は御守りします」と請け負い、水無瀬家の車は出発した。


「……知玲様、いい加減、わたくしをお姫様扱いなさるの、止めて頂けません?」

「なんで? 君はずっと僕のお姫様だし……今日のドレスも、すごく似合ってるよ。さ、行こう」


 そう言って当たり前のように手を取られ、春とは言えすこし肌寒さの残る夜空の下を、二人は歩き出した。


(──まだちょっと風が冷てェな。くっそ、ドレスってなんでこんなに薄地なんだ? 歩き難いし……)


 ブルリ、と妃沙が腕をさすると、フワリ、と何か温かいものが肩に掛けられる。どうやら知玲が上着を掛けてくれたようだ。

 ありがとうございます、と、今ではだいぶ高くなってしまった知玲を見上げる妃沙は、当たり前の事ながら上目遣いになってしまっていた。

 だがそんな彼女を、知玲は優しげに微笑んで見つめるだけで、何も言おうとはしない。

 その様子から、何だか彼が悩んでいる訳ではないと察した妃沙は、少しだけ安心したのだ。

 前世よりずっと口数が少なくなってしまったので、その想いを察するのが難しくなってしまっているのはとても残念にも思っている。

 表情や仕草から人の心の機微を悟るなんて繊細な真似は、今でもまだ苦手なのだ。だから、なんでも言ってくれないと解らない。特に知玲の心情については本当に解らねェな、と思う毎日なのだ。

 前世での彼──夕季がとても解り易い人物だっただけに、そのギャップに最近少し戸惑っている。

 だが、もちろん、夕季が秘めていた想いについては前世でも全く気が付いていなかったので、夕季が解り易い人物であった、という認識は正確ではなかったのだけれど。


「知玲様、何かお話でもございましたか? こんな夜更けに歩こうだなんて、心配性な知玲様らしくないですわ」


 そう問うても、空を見上げながらフフ、と微笑むだけの知玲。

 なんだかやたらと幸せそうなので、落ち込んだり悩んだりしてないなら良いか、と、フ、と妃沙も微笑んで溜め息を吐いた。



「……ね、妃沙。来月から僕は高等部だから君とは校舎が離れてしまうけど……君と離れる事になるっていうのにすごく前向きな気分なんだよ。なんでか解る?」

「やっと『龍之介離れ』出来たという事ですか? おめでとうございます、知玲様!」


 やったじゃん! と笑顔を向ける妃沙に、知玲は少しだけ頬を膨らまして「その逆だよ」と、ソフトタッチのデコピンを寄越す。

 だがそんな様もとても幸せそうで、妃沙はなんだかとても嬉しくなった。


「逆、とは?」

「もう少しだな、と思ってさ。君が中等部を卒業するまで……そして、僕が前世と同じ年齢になるまで」


 知玲の言わんとする事が良く解らず、コテン、首を傾げる妃沙。

 だが知玲はそんな彼女を見ようともせず、空を見上げたまま、呟くように言葉を続けた。


「待て、されてる状態もあと二年だなーと思ってさ。それに……僕は知りたいんだ、十八歳の、その先にある未来。

 きっとその世界には、前世とも今とも違った立場の君がいてくれると思ってる。

 ……もちろん、離れてしまうことは不安なんだよ? でも、正直、僕も今以上に努力をしなくちゃ、君のヒーローのままではいられない。

 高等部は今までと違って外部から来る生徒も多いから、君を迎え入れる地盤を造り上げるのに、果たして二年で足りるかどうか……その心配もあるしね」


 けど、と言葉を続ける知玲の表情は、本当に楽しそうだった。

 正直、言われている事の一部分についてはスルーしている妃沙だ。あの遊園地で、待って、と頼み、その期限を自分が中等部を卒業するまでと区切ってしまったという認識はあるのだ。

 けれど、そんな事よりも、もうすぐ前世と同じ年齢になるのだという事に改めて驚いている。

 十八歳のその先の未来がどんなものなのか、確かにそれは不安だけれど、希望もたくさんあるだろう。そして、コイツとの付き合いも随分長くなったよなーなんて改めて実感するのだ。


「勉強も剣道も余裕シャクシャクって訳にはいかないかもしれない。それでも僕は絶対に、君のヒーローでいる事を諦めたりしない。

 今よりもっと自分を磨いて自信を付けて……待ってるからね、妃沙。前世では見られなかった未来を、一緒に見ようね」


 優しさと力強さが交錯する表情がとても大人びて見えて、妃沙は一瞬、知らない誰かと話しているかのような錯覚に陥ってしまう。

 けれど、次の瞬間にはクシャリと愛好を崩す知玲の顔が……一瞬だけ、夕季のそれと重なった。

 そして握られた手にキュッと力が籠もる。

 その温かさすら、夕季のそれと同じような気がして……ああ、コイツはやっぱり前世から良く知ってる存在なのだと、何故だか改めて実感するのであった。



「知玲様、二度目の中等部ご卒業、おめでとうございます」



 ニカッと笑ってそんな事を告げる妃沙の瞳は、星でも落ちて来たのではないかと思わせる程に、夜空の下にあっても尚、キラキラと輝いていた。

 だって彼女は嬉しかったのだ、こんな風に未来に想いを馳せる事が出来ること、そしてもう永いことずっと隣にいてくれる人物もまた、未来に希望を抱いているのだという事が。

 心から大切に思っていた相手が、幸せそうに笑っているのを嬉しく思わない人間などいる筈もない。

 その『大切』な気持ちは……残念ながら、今のところ、知玲の期待する意味合いとは違っていたけれど。



「ありがと、妃沙」



 そうして、知玲はポケットの中から何かを取り出すと、ふわりと妃沙の小さな左手を持ちあげ、その小指にそっと何かを嵌めた。

 驚いた妃沙が手を見やると、そこには細い金色の本体に小さな紫色の宝石が付いたピンキーリングが嵌められていた。


「これは?」

「……少しの間、距離が離れてしまうからさ。御守りと……虫除け、かな。本当はその隣の指に嵌めたいところなんだけど……今はまだ、ね」


 アハハと悪戯っぽく笑う知玲は本当に楽しそうだ。

 そんな彼に、妃沙はまったくしょうがねぇな、と肩をすくめて苦笑する。


「知玲様、学校でアクセサリーを付ける訳にはいきませんのよ? 部活中も外しますし、それより何より、虫除けなんて必要ないでしょう?

 お陰さまでこの一年で『水無瀬 妃沙は東條 知玲の婚約者』だという事は全校生徒が知っておりますもの」

「それはまぁ……めっちゃ頑張ったしね。それに、僕が側にいなくてもその手の事からは護れるように護衛も育てたし……」

「ちょっと知玲様!? いつのまにそんな不穏な動きをしていたのですか!?」


 必要なことでしょ、と、相変わらず楽しそうに笑う知玲の横顔を、妃沙はぷくっと頬を膨らませて見つめている。


「……まったく。祝われる側の貴方から贈り物を頂くなど……格好が付かないではありませんか」


 どうやら拗ねている理由はそこらしい。相変わらず、中身はアニキ属性な美少女である。


「そう? それじゃ、お返しを期待しても良いかな。と、言っても今じゃなくてさ……妃沙、君が高等部に入学したら……」


 そう言って、ふと、知玲が立ち止まる。

 手を繋いだままだったので、必然と妃沙も立ち止まる事になり、何故だか俯いた知玲を不思議そうに見つめていたのだけれど、顔を上げた知玲の表情はとても真剣で……そして何処か、縋るような表情だった。



「……その時は妃沙、覚悟してね。散々待ったし……その時はもう、僕も遠慮はしないからね」



 その知玲の告白に、妃沙は黙って顔を背けた。

 けれど知玲は、その頬が微かに染まっていたこと……そして、片眉がピクリと動いたのを見逃さなかった。

 どうやら天下一の鈍チンの心を、少しでも動かす事には成功したようだと、今はそれで満足することにしたのである。


「さ、早く帰ろう、妃沙。夜更かしは美容に良くないよ?」

「貴方に付き合って差し上げているのではないですか!」

「アハハ、そうだったね。それじゃ、お姫様をきちんと送り届けないとね」

「だから! お姫様扱いは止めて下さいまし! なんかこう、背中がムズムズするのですわ!」

「背中が痒いの? 掻いてあげようか?」

「結構ですわ!!!」


 ギャーギャーと騒ぐ妃沙の愛らしい表情を堪能しながら、知玲が心から幸せそうに微笑む。

 高等部という新しい環境への不安と期待はあるけれど、変わらずにいてくれる幼馴染の反応が、やっぱり大好きだな、なんて思いながら。


 こうして知玲は中等部から巣立って行った。

 なお、知玲が中等部の妃沙に残した最後のお土産は……



「……なぁ、妃沙、なんでウチの学校、突然にピンキーリングのみ日常的に装着許可だなんてことになってんの? んで、なんで早速妃沙が付けてんの? そういうの、興味なさそうなのに」


 不思議そうに妃沙の左手を見つめる葵の横で、情報通であり突然のこの決定に一役買わされてしまった充がぷくく、と笑っている。


「さ、さぁ!? どなたの仕業なのか存じ上げませんし、わたくしもちょっと色気付いただけで深い意味などございませんわっ!」


 すっとぼけるのが下手なのは前世からであり、それは如実に自分がその原因の一端である事を周囲に知らしめてしまっている。

 だが、決してその紫の石の付いた指輪を外そうとはしないあたりが可愛いなと、不思議そうな葵をよそに、充は改めてこの友達に心を寄せることになったのであった。


◆今日の龍之介さん◆


龍「何なに? 次回は閑話の予定? しゃーねぇな、格好良い俺様の活躍を……って主役は凛先輩!?

 てめェこら、人を都合良く予告に利用した上に出番を奪うたァ何事だ!?」

知「仕方ないんじゃない? 一応ラブコメなんだし、鈍チンのキミより恋を成就させた紫之宮(しのみや)の方がそれっぽいでしょ」

龍「!!??」


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