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令嬢男子と乙女王子──幼馴染と転生したら性別が逆だった件──  作者: 恋蓮
第一部 【正義の味方の為の練習曲(エチュード)】
33/129

◇33.君はヒーロー【Side 知玲②】

 

「こんにちは、おばさん。妃沙はいる?」


 それから数日後の日曜日。水無瀬家に知玲が尋ねて来た。

 知玲にとっては第二の我が家と言っても過言ではない程に馴染みのある家であったので、いつもなら勝手知ったると言った態で挨拶だけしてそのまま妃沙の部屋に直行するのだけれど、ここ最近、何故だか妃沙が自分に対して線を引いているのを感じ取り、未だにその距離を詰めきれていないので少し臆病になってしまっているのだ。


「あら、知玲くん、こんにちは。妃沙なら部屋にいると思うわよ」


 だが、そんな知玲の心情など知らない妃沙の母親がニコニコと微笑みながら教えてくれる。

 ありがとう、と軽く礼を言うと、知玲は少しだけ重い足を動かし、妃沙の部屋に向かった。


 コンコン、と、ノックをするも中から返事はない。

 妃沙、いないの? と声を掛け扉を開けてもその部屋の主人の姿はなく、少女の部屋としては酷くシンプルなその部屋はもぬけの殻で、庭に面した大きな窓は大きく開かれており、カーテンが風を受けてヒラヒラと揺れていた。


 (──また脱走したのか……)


 ハァ、と溜息を吐きながらも、何かに悩んだり落ち込んだりした時に見せる妃沙の行動が変わっていないことに安堵すら覚える知玲。

 どうやら妃沙が何かに悩んでいるらしいことは明白であった。

 そして、昔から変わらない、解り易い幼馴染の行動にクスリと微笑みを落とす。

 一番怖いのは悩んでいる姿すら見せてくれないことなのだ、『あの場所』で一人、何かに悩んでいるのならその悩みを聞き、励まし、いつもの妃沙に戻ってもらうだけだ。

 自分は、妃沙の笑顔が一番好きなのだから。



「水無瀬 妃沙さーん? そちらにいらっしゃいますかー?」



 やがてやって来たあの木の麓に蹲る妃沙の姿がない事を確認し、頭上に向かって声を掛けると、常緑樹であるその木の、冬も間近だというのに青々としたその緑の葉の間から髪の毛に葉を付けた妃沙がパッと顔を出し、何処か吹っ切れたような晴れやかな表情で言った。



「知玲様! やっぱり来て下さいましたのね! 今日はなんとなく、知玲様がいらっしゃるかなーと思ってましたの。そして、是非ここでお話したくてお待ちしておりましたのよ!」



 久し振りに見る、妃沙の溢れんばかりの笑顔に知玲は少し戸惑ってしまう。

 ここ最近の妃沙は、笑ってはいても心の何処かに心配事を抱えているような、少し曇った笑顔が多かったのだ。

 それが今は完全に吹っ切れているようにすら見える。

 先日、友人の遥 葵の家に招待されて泊まって来たという話は聞いていたが、その場で何かがあったのだろうか。

 ……妃沙の悩みを払拭するのは自分の役目なのにな、と、少しあの活発な少女に嫉妬を覚えながら、それでも、心がポカポカと温かくなるのが解る。

 自分はやはり妃沙の笑顔が一番好きだな、と改めて実感する知玲であった。


「今日はどうしたのかな、お姫様?」

「ラプンツェルごっこですわ! 王子様、早く私をここから救って下さいまし!」


 フフ、と楽しそうに微笑む妃沙を、慈愛に満ちた瞳で見つめながらそよ風のように優しく微笑む知玲。

 待っていますわ、と言い残し、妃沙が再び葉の中に姿を隠してしまうと、仕方ないな、と呟いて大きなその木を登っていく。

 登り切るとそこには、悪戯が成功した子どものような笑みを浮かべる妃沙がキラキラと瞳を輝かせて座っており、「ようこそ」と彼に手を差し伸べていた。


「お転婆も大概にしなよね、妃沙。怪我でもしたらどうするの。それに、ラプンツェルは助けられるのを待つような女の子じゃなかったと思うけど?」

「そうでしたかしら?」


 妃沙の手を取り、導かれるままに隣に腰掛ける。

 すると妃沙は、コテン、とその小さな頭を彼の肩に乗せて言った。



「知玲様……いえ、この場所でだけは『夕季様』とお呼びしても構いませんか? 今日はね、どうしても『夕季』と『龍之介』としてお話をしたくて……その為にこんな所にまで来て頂いたんですのよ」



 自分が来なかったらどうするつもりだったんだとは少し思うけれど、今、こうして妃沙の思惑通りにここに来てしまっている以上、あり得なかった現実の事などどうでも良いか、と知玲は思う。

 妃沙が悩んでいたのは、やはり前世絡みの事だったのだと、今、知る事が出来たから。

 そして妃沙は、知玲の返事を待たずに、ポツリ、ポツリと話し出した。


「わたくしね、最近少し悩んでいたんです。この外見と中身のギャップと言うか……ほら、本当のわたくしは皆が思うような素直で可愛い女子なんかじゃないではありませんか。

 ですから、周囲の人々を好きだなぁ……と思う度にね。本当の自分を出せない事が心苦しいというか、騙しているんじゃないかという気がしてしまって……」


 静かに語る妃沙の言葉を、知玲は黙って聞いている。

 根は真面目な妃沙なのだ、そんな風に思ってしまうのも仕方がないとは思うのだけれど……この時彼は、そんな風に感じてしまう環境に彼女を置いてしまっていた事に後悔を感じていた。

 妃沙には、もっと自由に、もっと天真爛漫に、前世では出来なかった事を心から楽しんで欲しいと思っていたのだ。

『龍之介』は、本当に普通に日常生活を楽しみたいだけの心の優しい人だったのに、人相が怖すぎる、それだけで、非日常と言わざるを得ない毎日を強いられていたから。

 そんな龍之介に対して何も出来なかった自分を後悔しているのは自分の方だと言うのに、『妃沙』となってこの世界に転生してまで、彼女はまた悩んでいて。その悩みが……先程までの表情から察するに、妃沙自身と、その友達の手を借りて吹っ切る事が出来てしまっていて。

 自分こそ、彼女の側にいるに相応しい人間なのかと、また黒い感情が自分を覆いそうになる。


 この世界に転生してからというもの、知玲はこうした負の感情に、時折負けそうになる事がある。

 そしてそんな彼を救い出してくれるのは、決まって妃沙だった。

 彼女の明るい笑顔だけが、自分の後悔を「そんなことはないよ」と言ってくれるような気がしていたから、その笑顔は絶対に守りたいと思っていたのに……。

 今、彼女にこんな明るい笑顔を齎したのは自分ではないのだと、後悔と自己嫌悪と嫉妬の感情に飲み込まれそうになる自分を、妃沙の小さな手をキュッ、と握る事で辛うじて押さえる。

 けれど妃沙は、知玲のそんな感情に気付く様子もなく、安堵に満ちた声で言葉を続けた。


「夕季様、わたくしは……貴女に謝らなければなりませんわね。前世の自分に飲み込まれ、今世(いま)の自分をないがしろにしそうだったのですもの」


 そう言って、妃沙はキュッと知玲の手を握り返し、肩から頭を離して、真剣な瞳で知玲を見つめている。


「……心の何処かで『綾瀬 龍之介』を恥ずかしいと思っていた自分がいたのは否めませんわ。前世でのわたくしは、迷惑を掛けてばかりで……」

「そんなことない!」


 その言葉を最後まで聞きたくなくて、妃沙の言葉を遮って知玲が叫ぶ。

 冗談じゃない、龍之介が迷惑だなんて、そんな事があるもんか。自分がどれだけ、彼に救われていたと思っているんだ。自分がどれだけ……龍之介を好きだったと思ってるんだこの朴念仁は、と、手に力を込める。


「……それ以上言ったら怒るよ、龍之介。

 迷惑? それって僕が君にかけていたものじゃない? 僕がいなければ、君はもっと自由に前世を謳歌出来たんじゃないの?

 僕さえいなければさ……君は……死ぬことすら……なかったかも、しれないんだよ……?」


 自分さえいなければ、龍之介が事故に巻き込まれて死ぬ事はなかったんじゃないかという後悔。それが知玲の負の感情の原点だ。

 だから今世では絶対に妃沙を護ろうと誓っている。もちろん、好きだから、という出発点から始まってはいるけれど、とにかく、自分さえいなければ、という『後悔』はずっと知玲の中にドロドロと淀んでいたのだ。

 あの事故のことは、今でも夢に見ることがある。そしてその度に、龍之介を殺してしまったのは自分なんじゃないかという後悔に蝕まれるのだ。

 今もまた、そんな黒い感情が知玲を支配しそうになるけれど、そんな知玲に妃沙はカラッと笑って言った。

 『夕季』が一番好きだった、あの、困ったように片眉をピクリと上げて笑う、あの表情で。



「貴女が拒んだって、何度でも何度でも……それこそ生まれ変わっても、あの場にわたくしがいたならば絶対に同じ事をしましたわ。この世界でだって、わたくしはきっと同じ事をしますわよ。

 言いましたわよね、それは理屈じゃないし、あれは事故だし、貴女が止めた所でわたくしの身体はきっと勝手に動くだろうし、今もそれは変わっていませんわ。

 ……ねぇ、夕季様、わたくし気付いたんですのよ。今世(いま)のわたくしたちは、決して前世の続きを生きている訳ではなくて……記憶を持ったまま新しい世界を生きているのだって」



 知玲の肩から頭を外し、知玲の淀んだ感情とは対照的に、カラッと晴れた空のような色をその瞳に落として、同じような色の空を、妃沙は晴れやかな表情で見上げている。

 それは確かに『水無瀬 妃沙』のそれで、夕季が前世から恋焦がれていた『綾瀬 龍之介』の様相は、すでにそこにはなかった。


「好きなのにそう言えない。大事なのに関係ないと振り払う。守りたいのに勝手にしろと突き放す……それは、確かに前世のわたくしがしていた事ですけれど。

 ねぇ、夕季様、『今世(いま)』のわたくしがそんな事をした所で、説得力がないではありませんか。それどころか……また無理して、なんて思って下さったり、しません?」


 こちらを振り向き、悪戯っぽく笑いながら妃沙が言う。

 龍之介のそんな表情は見た事がなかったなと、知玲は思わずその笑顔に見惚れていた。


「別に『綾瀬 龍之介』であった自分を否定する訳ではありませんわ。彼の人生があったから今のわたくしがあるのですし、言葉がどんなに変わっても、その行動原理は全く変わっていませんでしょう?

 そんなわたくしを……好きだと、真正面から言ってくれる人が、いて。この姿でならば、その好意を受け止めて、自分も、と、返してしまっても迷惑にならないなんて……それってなんて幸せな事なんだろうって実感しましたのよ」


 朗らかに笑う妃沙。

 けれど彼女のそんな様子を、素直に喜べない自分がいる事に知玲は少し自己嫌悪を感じそうになっている。

 だが、溢れだした気持ちは止められなくて、言葉が勝手に口から零れ出す。



「……前世と今世なんて悩みを、君に齎したのはあの運動会の『借り物』? そしてその悩みを払拭してくれたのは君の親友?

 ねぇ、龍之介。僕は……僕ってそんなに頼りないかな? 君の悩みを打ち明けて貰う事すら出来ず、一緒に悩む事も出来ず、ただ……ただ君を見守るのが僕の仕事なら……」



 そんなの嫌だと言いかけた知玲の唇を、妃沙の細くて白い指がそっと押さえる。

 そして悪戯っぽく微笑みながら、言った。



「何を仰いますの。夕季様、わたくしはね、いつだって貴女にだけ(・・)は余裕しゃくしゃくの自分を見ていて欲しかったのですわ。

 だって、ピンチでカツカツのヤンキーなんて、格好良くないでしょう?」



 真顔でそんな事を言う妃沙に、知玲は思わずプッと吹き出してしまう。

 確かに強面のヤンキーが絶体絶命だなんてサマにならないなと、想像してしまったのだ。

 だがしかし、龍之介ならばピンチでカツカツだって余裕な素振りを見せてくれただろうな、とも。


「当たり前の事ですけれど、貴女は貴女の前にいた『綾瀬 龍之介』しか知りませんわよね。

 でもね、『彼』は……すごく余裕がなくて、いつもピンチでカツカツで。それでいて貴女の前でだけは虚勢を張りたいと見栄を張っていたのですわ」

「……どうして、と、聞いても良い?」


 そう問い掛けた自分に、アホか、と、龍之介が返してくれた気がする。

 顰めた眉のその角度は……龍之介と、まるで一緒だったから。



「正義の味方はいつだって余裕シャクシャクだから、ですわ!」



 真面目な顔でそう告げる妃沙に、知玲は思わずアハハ、笑いを漏らしてしまう。

 そうだった、龍之介が目指すのはいつだって時代劇の主人公で、ピンチをチャンスに変えるようなヒーローではないのだと。

 約束事に縁取られた時代劇をこよなく愛した彼は、とても『当たり前』な勧善懲悪を目指していて、自分の人相は『悪役』に徹する事で物語に彩りを添える事が出来ると知っていても、弱きを助け強きを挫く主人公達への憧れを募らせ、いつか自分がそうなりたいと願うような純粋無垢な高校生であったのだと。


「……変わってないね、龍之介。それってどの時代劇の主人公なの?」


 それを語らせたら一晩かかりますから自重しますわ、と、美少女らしくなく鼻の穴を膨らませて答える妃沙に、知玲は再びプッと吹き出してしまう。

 ……本当にこの幼馴染には敵わないなと、つくづく実感しながら。


「つまりは、『今世(いま)』を楽しめと、過去に負けるなと……君はそう言いたいんだね?」


 そう問う知玲に、妃沙はニヤリと微笑んで頷いた。


「この世界でだって、時間は常に流れているのですもの、楽しまなければ損ではないですか。

 前世ではそんな事にも気付かず過ごしていましたけれど……ねぇ『知玲様』、二度目の学生生活、とっても楽しくありません?

 戸惑いは……確かにありましたけれど、どう足掻いても以前の自分に戻ることはなさそうですし、せっかく『女神様』が与えて下さったチャンスなのですもの、この身体で自分の理想を追求せねば勿体ないですわ!」


 話の中で自然に自分への呼び掛けが『知玲』に戻っていることに気付き、妃沙の中でも自分はもう『知玲』なのだと実感しながら、そうだね、と優しく微笑みながら頷く。

 確かにその通りだ。前世の記憶があればこそ、『今世(いま)』どうすれば良いのかが見えているし、優秀でもいられる。

 ずるい事をしていると思う反面、志半ばで死ぬしかなかった前世の埋め合わせをさせてもらっているのだと思えば、罪悪感は全くない。

 そして一番大好きで大切な人は、今もこうして自分の目の前にいるのだから。



「ホントに君は最高だよ。こうやって君はいつだって、僕の闇を払ってくれる。

 ……前世でもさ、試合前の僕に怪我をさせようと目論んでいた奴とか、龍之介とモメてその意趣返しで僕に手出ししようとするヤツとかがいつの間にかいなくなってたんだけど、気のせいだよね?」



 フゥーと、鳴らない口笛を吹くフリをしながら、妃沙が視線を反らす。

 龍之介が陰ながらそうして自分を守ってくれていたことなど、夕季にはお見通しだったのだ。

 そしてその鳴らない口笛が龍之介の動揺を表しているようで、思わず笑ってしまう。

 『龍之介』であればこんな場面では、顔を背けて唇を尖らせながら「関係ねぇよ」と突き放す場面だっただろうけれど……この世界の『彼』は本当に素直で可愛くなってくれたものだと思わずププ、と噴き出してしまう。



「良いよ、龍之介。自分に素直に、周囲を大事に、楽しく真っ直ぐに生きて行こう、一緒に。

 ……言っておくけど、婚約は継続するからね? 君は、どうも僕がいないと危険極まりない存在みたいだから」



 そう言って、妃沙の小さな身体を抱き締める。

 そこには、確かに血が流れていて温かく、心臓もトクトクと動いていて……甘い匂いが、した。


「わたくしは猛獣でも何でもありませんわ! ヤンキーの魂を宿したただの一学生ではないですか!」

「その魂がさ……素直で優しくて……人を夢中にさせちゃうんだよ、龍之介。キミが思う以上にずっと……」


 彼が思う以上に、前世でも好かれていた事など教えてやるものかと、知玲が言葉をつぐむ。


「言いたい事は全部言って下さいと以前からお願いしておりますのに!!」


 妃沙がポカポカと知玲の胸を叩きながら抗議をする。

 あの事故の前にキミが言ってくれた言葉だねと、少しだけ『夕季』の意識に持って行かれそうになりながら、しっかりしろ、と知玲は自分を鼓舞する。



「……言いたい事を全部言ってしまったら、困るのはキミだよ、『妃沙』」



 抱き締めたその小さな額に、チュッ、とキスを落としながら、知玲は自分に素直なこの生き物の心根を何があっても守ろうと決意を新たにする。

 周囲にとっては『妃沙』が天真爛漫に発しているだけのその言葉も、自分にとっては『龍之介』の魂の言葉だ。

 世界を変え、姿を変え、性別すら変えてやっと、素直に自分の気持ちを告げられるようになってくれたのだ、守れないなんて男じゃないと、グッと妃沙を抱きしめる腕に力をこめる知玲。


 腕の中で何やらギャンギャン叫んでいる『彼女』は、『水無瀬 妃沙』だ。前世で恋をしていた『綾瀬 龍之介』ではない。

 けれど、あの誘拐事件の後、自分は確かに『東條 知玲』として彼女を欲していると実感したのだ。そして、もう『蘇芳 夕季』は完全に死んだのだなと、認識を改める。

 記憶は、ある。自分が過去にその存在であった事も認識しているけれど、自分はもう、迷わない。

 過去から続いた恋心は一度ここで途切れさせ、またここから新たに彼女に恋をして行こう、と知玲は己に誓った。

だから。



「妃沙。もう一度、『今世(いま)』の『僕』の名前を……呼んで?」



 真剣な声色でそう告げた自分の言葉に。



「……ちあき、さま」



 未だ無垢な表情の彼女がそう返してくれる。



 今はそれだけで充分だ。

 いつか、自分を『特別』なのだと彼女が認識してくれるように、自分を磨きながら色々試して行こうと、腕の中に宝物(きさ)抱き締めながら知玲は決意を新たにする。




 そうして、知玲と妃沙はその微妙な距離はそのままに、周囲との距離を広げたり爆発的に縮めたりしながら成長していく。

 過去と完全に決別した知玲の姿にもう迷いはなく、ますますその王子様っぷりに拍車を掛けていった。

 そして妃沙もまた迷いが吹っ切れ、この世界を全力で楽しんでやるぜ、とばかりに校庭を駆けずり回り、勉学も学校行事も全力投球しており、その無垢な姿はますますキラキラとした光を纏うような魅力を放って行った。

 そんな彼らの周囲にいる葵や銀平、充に大輔といったこれまたクセがありながらも魅力的な人物たちを巻き込み、知玲と妃沙の初等部生活は優しくも賑やかに過ぎていったのであった。



◆今日の龍之介さん◆


「正義の味方はいつだって余裕シャクシャクだからな!」(ドヤァ!)


「……ってまたメモ!? せっかくキメたのになんだよ!? 一部終了!? 閑話を挟んで第二部開始!? 

 オイコラ、俺様を誰だと思って……って便利な次回予告役!? てめェこら歯ぁ食いしばれッッ!!」


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