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令嬢男子と乙女王子──幼馴染と転生したら性別が逆だった件──  作者: 恋蓮
第三部 【君と狂詩曲(ラプソディ)】
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◆123.Open Heart

 

 一方その頃、店の入り口で放置されてしまった知玲は、何もすることが出来ずに佇んでいたのだが、すぐに妃沙を運んで行った奥の部屋から、理事長でありここに彼を連行した結城(ゆうき) 莉仁(りひと)が戻って来た。



「知玲くん、半ば強制的に連れて来たのに一人にしてごめん。俺がいなくて寂しかった?」

「強制的に連れて来られた事は否定しませんが、別に理事長がいてもいなくても全く関係がないですね。僕が寂しく思う理由があるとしたら妃沙がいないことだけです」

「君は本当につれないなぁ……」



 苦笑しながら、莉仁が知玲を促して手近にあったテーブルに座る。

 知玲としては何処かに連れて行かれてしまった妃沙が心配で落ち着いている場合ではなかったのだけれど、目の前の莉仁がやたらと落ち着いているので、フ、と軽く溜め息を吐いて少しだけ緊張を緩めた。

 何だかんだで、理事長という立場にあり、大人で冷静な判断も出来るこの人物のことは、知玲も信頼しているのだ。

 そしてまた、恋敵(ライバル)という立場ではあれど、自分の大切なひと──水無瀬 妃沙を大切に想ってくれているのは日々実感しているので、妃沙にとっても悪い状況にはならないという確信もある。

 自分には妃沙の状況は解らないし、この男が手を打ってくれたのなら大丈夫に違いないと、莉仁の前に座って物思いに耽っていると、やがて給仕がカップを二つ運んで来て、彼らの前に置いた。

 胡桃色をした中身からは、ホカホカとした湯気と優しい甘い香りが漂って来る。

 給仕ににこやかに礼を告げて嬉しそうな表情でカップを手に取り、フゥ、と一息吹きかけて口を付ける莉仁の様子を、知玲は黙って見つめていた。


「ん? どうした? 毒なんか入っていないから安心して君も飲んでよ。俺の好みでカフェオレにしたけど、ここのコーヒーは俺の母親が豆から厳選しているもので、とても評判が良いんだよ」


 そう言って美味そうにカップの中身を啜る莉仁。

 別に毒を心配している訳ではなかったけれど、妃沙が倒れてしまっている今、そんな気分ではないのにな、と思いながらも、何処か人の心を安心させる香りと温もりに思わずカップを凝視する。

 どちらかと言えば、コーヒーを好んでいたのは妃沙で、知玲自身は紅茶や緑茶といった飲み物の方が好きだったし、妃沙もそれは良く知ってくれていたから、二人で食事をする時は自分にはそうした飲み物を用意してくれていた。

 だがそれは、妃沙の気遣いと長い付き合いのよるもので、こうして初めてテーブルを共にする相手には伝わらないものなのだと、そんな当たり前のことに少しだけ驚く知玲。

 当たり前のその事実にすら気付く事がないほど、自分は彼女に甘えていたのだなぁ、と実感して、フッと苦笑してカップを手に取った。

 丁寧に淹れられたと思われるそのカフェオレはとても良い香りを放っていたので、知玲には抗うことなど出来なかったのである。


「妃沙手ずから用意されたものじゃなきゃ口にしないなんて言うなよ?

 確かにあの子は料理が上手だし、接待する人間の好みを把握しようと努力をした上で用意をしてくれる心遣いも完璧だ。だけど、そんな人間は稀有なんだから、慣れてしまったら苦労することになるぞ」

「大丈夫ですよ。今に一日三食、妃沙のご飯を当たり前に食べる生活をすると決めていますから」

「……まったく、その不動の自信はいっそ憎たらしいほどだよ……」


 練習でもしたのだろうか、妃沙よろしく片眉をピクリと動かしてそんな事を言う莉仁に、少しだけ面白くないものを感じる知玲。

 自分だってまだあの片眉ピクリは上手く出来ないのに、この人はどこまで器用なんだと軽く嫉妬すらしてしまいそうなほどである。


「……貴方の方が、もしかしたら僕より正しく妃沙を理解しているのかもしれないと思うことはあるんです。でも、それでも引けない程に僕の想いはとっくに拗れているんですよ。

 ねぇ、理事長、この世界の平均寿命って、男女で違ったりしますか? 僕は妃沙が……あの存在が再び自分を置いて消えてしまう現実に立ち合ったら……きっと壊れて、二度と立ち上がれない。

 だから彼女には、一分一秒でも良い、僕より長生きして貰わないと困るんですよね」


 何処か遠くを見つめながら、知玲が言葉を続ける。

 聴いているのは自分の恋敵(ライバル)だというのに言葉を止めることが出来ないのはきっと、自分の気持ちをこの男に聞いて欲しいと願っているのだという事実は、何だか口惜しいのでこの男に聞かせる事は一生ないだろうけれど。

 時々コーヒーカップを幸せそうに煽りながら自分の言葉を余裕しゃくしゃくで聴いているこの男には、自分の真意が伝わっているに違いないという推測は正しいもののようである。


「それが愛だとでも言いたい? 若いねぇ、君は。

 言っておくけど、年齢的な問題で言えば、俺は妃沙より先に命の灯を消すことになるだろうけど、そんなことはあまり気にしたことがないし、俺の恋には全く影響がないかな。

 と、言うか、恋ってさ、自分と相手の立場とか理屈とか世間の目とか……そういうの、軽々と凌駕してしまわないかい?

 少なくも俺にとって妃沙への想いはさ……今ある地位とか名誉とか、資産ですら投げ捨てても叶えたいと思ってしまうほどに鮮烈で……幸せな時間だった(・・・)よ」


 何処か遠くを見るように視線を知玲から反らし、ズッとわざとらしく音をたててカップの飲み物を飲み干す莉仁。

 そのまま言葉を続ける莉仁を、知玲は何故だか何も言う事が出来ないまま見ている事しか出来なかった。

 正直、彼の姿など進んで見つめていたいものではなかったけれど……その時の彼には、そうせざるを得ないほどの迫力があったのである。


翠桜(みお)さんは、血は繋がっていないけど俺の自慢の母親だ。

 魔法療法士という、またとない職業で輝かしい実績を築いていたのに、俺の父親と出会って恋に落ち、あっさりとその地位も名誉も捨てて家庭を選んだ。

 その経験と知識は本物だから、時々彼女を知る人に頼まれて診察をすることはあるし、俺も、ややこしい術にハマッた妃沙を思わず連れ込んで来てしまったけど……彼女にとってはどうってことない事案のはずだ。

 ……俺はね、翠桜さんにとっては、とてもじゃないけど受け入れる事が出来ない出自の子どもなんだ。でも翠桜さんは、子どもに罪はないし、莉仁さんは可愛いからって、何の躊躇いもなく抱きしめてくれる、そんな人なんだよ。

 だから、彼女から少しで良いから妃沙と二人で話をしたいと言われた時は意外だったけど、恩義もあるし……何より、そうすることで翠桜さん自身も前に進めるような気がしたから、こうして君を拘束している訳だ」


 そう語る莉仁に、知玲の思惑などまるで関係がないのだろう。

 実際のところ、知玲は彼の語る内容に引き込まれていたし、あの上品な初老の女性と莉仁の間に血縁関係がないからと言って「それが何?」程度の感想しか抱けなかったのだけれど、彼がとっておきの秘密を語っていることは理解が出来た。

 知玲にとっては『前世の意識を持つ自分』と『東條 知玲』との間の乖離は今に始まったことではなかったし、だからと言って両親や妹の美陽にその事実を伝える利点まるでなかったし、自分が彼らに対して感じる親愛の情もまた確かなのだ。

 妃沙と違い、赤ん坊の頃から意識を持っていたので、今では正しく自分は東條 知玲だと認識しているし、家族のことも愛している。

 妃沙のことは……少しだけ、前世でのことを引き摺ってしまうこともあるけれど、それだって愛情のうちだ。何しろ彼は、妃沙と自分が同じ性別で転生していたとしても絶対に恋をしただろうという程に強い想いを持っているのだ。

 その妃沙に対し、想いの深さなど測ることは出来ないけれど、確かにこの男と自分は同じ人物に恋をしているのだという実感もあり、知玲としては少しだけ複雑な気持ちだ。

 別に自分だけがあの存在を好きでいたいなんて不可能なことは言うつもりはないけれど……それでもやはり、彼女の側にいるのは自分だけでいたいという、恋をすれば誰もが感じる独占欲も捨て去ることが出来ずにいるのである。

 そんな事を考えながら黙り込んでいる知玲の前で、莉仁はフッと肩をすくめて苦笑しながら言った。


「俺が妃沙に惹かれたのは……多分、外見は関係がない。いや、正確に言えばあの綺麗な瞳には惹かれたかな。初めて逢った運動会の時には、恋に落ちていたような気がするよ。

 普段の俺なら、うんと年下で……ましてや生徒にこんな感情を抱くなんてことは絶対になかっただろうし、今でも何故、自分がこうも昏倒しているのか不思議なほどなんだけどな……。

 でも知玲君、恋ってのはきっとこういうものなんじゃないだろうか。もっとも、俺も初体験なんで、これが正しい結論なのかは解っていないけどな」


 知玲の想いをよそに、真剣な声色でそう告げる莉仁。

 知玲がその表情(かお)を見やると、何処か厭世的な雰囲気すら纏った彼が真っ直ぐに自分を見つめていた。



「……初めてで、俺にとっては大切な恋なんだ。俺の都合や思い込みで終わらせたくはない。ましてや妃沙には、ちゃんと告白をしたのにきちんと返事をもらえてないしな」



 ──だから、ちゃんと妃沙に想いを伝える機会をくれと、真っ直ぐに自分を見つめて懇願する一人の男に、同じく恋をする男として、知玲にNOとなど言えようはずもない。

 恋をすることの切なさや焦燥、そして何より……幸せになる気持ちは、自分だって長い年月をかけてイヤというほど実感しているのである。

 一つひとつが大切な恋だ。替りなど何処にもない。

 今、その一つの恋に結論が出ようとしていて……それを当事者でもない自分に止める権利などないことは、知玲だって理解しているのだ。



「……フラれて泣いても慰めたりしませんよ。それと、妃沙を泣かせたら殴ります」



 そう告げる事が出来た自分を褒めてやりたいほどだ。

 おっかないなぁ、なんて言いながら自分の希望を引っ込める気などまるでない莉仁に、知玲は何の(しがらみ)もなく想いを告げられる彼の立場を、少しだけ羨ましくも思ったのだけれど、



 ──自分はもっと印象的な告白シーンを演出してやると、何処か斜め上を行った決意を抱いていたのだった。



 ───◇──◆──◆──◇───



 その日はすっかり遅くなってしまったから今日はここに泊まって行けという、結城親子のやや強引な誘いを、知玲と妃沙は受けることになった。

 眠っていただけとはいえ非常識な攻撃を受けて倒れてしまった妃沙のことは知玲としても心配だったし、安静にしていて欲しかったので、その申し出を受けることにしたのである。

 知玲の母親は二人は一緒にいるはずと思っていたので簡単な説明で済んだし、理事長である莉仁の存在もまた大きく、家族へもさほど心配をかけることがなく了解をもらえたのは子どもの立場にいる身としては一安心だ。

 もっとも、何故だかとても楽しそうな翠桜さんの過剰とも言える接待によって食べきれないほどのご馳走を振舞われ、二人の関係についてあれこれ尋ねられてこそばゆい想いをすることにはなったけれど、それすらとても幸せだと思えるものだ。

 目を覚ました妃沙の側を片時も離れようとしない知玲には、当の妃沙は閉口しているようだが、結城親子はどこか優しい眼差しでそれを見つめていたのがとても印象的なその不思議な集団。


「知玲様、トイレくらい一人で行けますわ!」


 ……知玲の粘着は割りと手強い様子である。



 翌日の朝、コンコン、と控えめに扉を叩く音に、妃沙はふと目を覚ました。

 飲食店に併設された、翠桜さんの自宅も兼ねた小さな家であるので客間の数はそう多くなく、知玲の強い希望もあって彼とベッドを並べて寝ていた妃沙だが、もともと、その日は非常識な術にかかって眠りこけていたという話であったので

 深夜になってもあまり眠くならず、浅い眠りと覚醒を何度も繰り返していた状態だったので、その音によって完全に目を覚ましたのである。


「……どなたですの……?」


 知玲を起こさないよう、そっと扉を開けると、そこには少しバツが悪そうに微笑む莉仁が立っていた。


「朝早くにごめん、妃沙。以前にここに来た時の約束を果たそうと思って。この庭園の中庭は、朝の景色が本当に素敵なんだ」


 そう言われ、そういえば以前ここを訪れた時に庭園を案内すると言われていたのを思い出す。

 確かその時は、翠桜さんに振舞われたキノコのパスタを巡って莉仁と攻防戦を繰り広げたり、母親に言い包められる莉仁の姿を目の当たりにしたりといった出来事があったはずだ。

 入学式の日の出来事だから、まだそれほど時間は経っていないのに、遠い昔のことのようだと妃沙が物思いに耽っていると、目の前に立った莉仁から拗ねたような声がかかる。


「妃沙、早くしないと一番良い時間を逃してしまうよ。今日、君に絶対に見せたいんだ。次の機会を待っていたら、いつになるか解らないからな」


 ほら早く、と、妃沙の手をやや強引に取って何処かに向かおうとする莉仁。

 だが今、妃沙は翠桜さんから借り受けた寝巻き代わりの浴衣姿なのだ。

 いくら相手が気心の知れた莉仁だからとは言え、その格好のまま表に出るのは躊躇われた。


「おい莉仁! 着替えて来るからちょっと待て!」


 待て(ステイ)をされた番犬(りひと)は、妃沙の服装について、その時初めて気が付いたようである。

 莉仁としてはそのままでも構わなかったのだが、なるほど、少し焦っていたのかもしれないな、と、フッと軽く溜め息を吐いた。


「オーケー、お姫様。俺の為にすぐにめかし込んで来て?」

「バーカ。手持ちは制服しかねぇっつの。俺も一番綺麗な景色は見たいからな……40秒で戻って来るぜ!」


 ニカッと笑う妃沙の白い歯に、キラリと朝日が反射する。

 その光をどこか眩しそうに見つめながら、莉仁は、少しだけ切なそうに微笑んでいたのだけれど、40秒早着替え宣言をした妃沙にはもう、その表情は映ってはいなかった。

 そして、その騒ぎの中で、知玲は毛布にくるまり、莉仁との男の約束を全うしようと、身じろぎもせずにいたのである。



 ───◇──◆──◆──◇───



 そうして莉仁が妃沙の手を取って案内したのは、海が一望出来る高台に設えられた庭園だ。

 翠桜さんの人柄を反映するかのように丁寧に整えられ、所々に季節の花が咲いているその小さな庭園には、ペストスポットと思しき場所に大人二人が入れるくらいの小さな東屋が建てられている。

 莉仁に促されベンチに腰掛けると、そっと、莉仁が肩にストールのようなものを掛けてくれた。


「……おぅ、ありがとな」

「どういたしまして。君は俺のお姫様だから、どんなに大事しても足りないんだ」


 眼鏡にキラリと朝陽を反射させながら心から楽しそうに笑う莉仁。

 気障な男だということはよく知っているつもりではいたけれど、改めてこんな風に扱われてしまうと気恥かしさが半端ない。

 だが、その時の莉仁はいつものおちゃらけている雰囲気の他に、何処か思い詰めているような雰囲気を纏っていて、いつもの軽口も思うように告げることが出来ない。

 攻撃をくらって眠りこけていたという時間、翠桜さんという前世からの知り合いとの邂逅、そして爽やかな朝の空気がそうさせるのだと思い込もうとしている妃沙の前で、莉仁はクシャッと愛好を崩す。


「そんなに構えてくれるなよ。襲いたくなるだろう?」

「朝から盛ってんじゃねーよ!」


 思わずツッコミを入れてしまった妃沙の言葉に、莉仁がアハハ、と存外大きな声で笑った。

 その様子はいつもの莉仁そのままで、妃沙も少しだけ肩の力を抜く事が出来るようになったのである。


「……まぁ、構えてくれるのは嬉しいけどな。それは君が、真摯に俺の話を聞いてくれようとしている証拠だから」

「別にそんなんじゃねぇけど……。改まられると尻のあたりがモゾモゾすんだよ。じれったいのは苦手でな」

「君は本当くっきりサッパリだねぇ! 本当に飽きないし……ずっと隣にいて欲しいよ、妃沙」


 寂しそうな声でそう告げて妃沙の隣に座り、すっかり小さくなった『妃沙』の手をキュッと握る。

 この世界では前世よりスキンシップが過剰であることや、自分の性別のことなどもあり、今ではすっかり慣れてしまった妃沙はまたかよ、という程度の感想しか抱く事はないのだけれど。

 何故だかその時、自分の手を掴んだ莉仁の手が少しだけ震えているのを察知し、ましてや真面目な表情で自分を見つめている莉仁に、普段のツッコミ満載の言葉など言えなくなってしまっていた。



「君は本当に俺の心を堪えて止まない。好きだよ、妃沙」



 握った手を引っ張られ、そのまま、隣に座った莉仁の腕の中にキュッと抱き込まれる妃沙。

 自分の肩口に顔を埋めた莉仁の表情は見えないけれど、相変わらず微かに震えているようだし、何やら熱い液体のようなものも感じてしまう。

 ……それが涙だと察する事が出来る程度には、この世界ではすっかりお馴染みになってしまっている、感情が動いた時に勝ってに出て来る、それ。

 その想いがとても真剣なものであることを裏付けるには充分な証拠を突き付けられ、妃沙が戸惑っていると、莉仁はそのまま、囁くような声で言葉を続けた。



「俺の話を聞いて、妃沙。その上で……約束を果たして欲しい。君を……もっと知りたい、妃沙」



 約束。

 そう言えば、知玲を一緒に探す代わりに、もう話しを聞く事と『もう一つの名前』を教えて欲しい、という約束を交わしていたように思う。

 その時は知玲の事が心配で、深く考えずに請け負ってしまったけれど、約束は約束だ。

 約束を違えることを忌み嫌う妃沙の性格を良く知っているのだろう莉仁は、その多少廻りくどいと言わざるを得ない、けれども真剣な想いをぶつける最後(・・)のチャンスだとばかりに、言葉を紡ぎ出す。



「俺の名前は、結城 莉仁。ご存知の通り、鳳上(ほうじょう)学園の理事長だ。だけど、そこに至るまでには……本当に色々あったんだよ」



 自分から身体を離し、真っ直ぐにその瞳を射抜きながらそう語る莉仁の表情。

 妃沙にはそれが、未だかつて見たことのないくらい、格好良く見えていたのである。


◆今日の龍之介さん◆


龍「……(´・ω・`)……」

莉「どうしたの?」

龍「40秒以上かかっちまった……。すまねぇ……」

莉「いやいや、そこにはそんなにこだわってないよ!? 気にして欲しいのはもっと他のことで……」

龍「朝っぱらから事前アポもなく襲撃したことなら気にしてねぇぜ! 約束だからな!」(ニカッ)

莉「そこも違ァァう!! ちゃんと俺の話聞いてた!?」

知「(……うるさい……)」


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