◆122.濃褐色の追憶
──……すけ、りゅうのすけっ!!
何処か懐かしさを覚える、若い女の声。
馴染みのあるようで、ないような。
遠い記憶の果てで聞いたことがあるような、いつも間近で聞いていたような。
真っ直ぐで、優しくて、時々ワガママで自分を困らせる、その声。
「……夕季」
漏れ出た自分の声に低さに、一瞬だけギョッとする。
自分の声はこんなに低かっただろうか?
──けっこう渋くて良い声じゃねーか、なんて、他人事のようにすら聞こえて来る自分の声は。
彼女を『ゆき』と、確かに呼んだ。
(──…………!?)
驚いて瞳を開けた自分の眼前に飛び込んで来たのは、綺麗な黒髪をきっちりとポニーテールで纏めた少女。
普段はクールぶっていたくせに、自分の前でだけはコロコロと表情を変えたし、言葉より先に手が出て来ることなんかしょっちゅうだ。
他人とは何処か一線を引いて接していたような彼女だけれど、自分の側にいる時だけは、それこそ子犬のように纏わりついて来る。
ポニーテールってよりはドッグテールだな、なんて思っていたなんて言ったらきっとまた腹パンされるだろうから、言った事はないけれど。
……だが、そう。彼女の名前は『蘇芳 夕季』。自分──綾瀬 龍之介の幼馴染だ。
懐かしいとさえ感じる、守りたかった彼女の方へ伸ばした、自分の手。
今では見慣れてしまった、白くて小さな、それこそ白魚のような手とはまるで違う。
節くれだっていて、傷だらけで大きなその手を、目の前の彼女が嬉しそうな笑顔を浮かべて握ってくれる。
──りゅうのすけ!
心の底から嬉しそうに自分の名を呼んだ直後──彼女の笑顔は、文字通り、弾けて消えた。
「夕季ッ!!」
慌てて叫んで、光に消えた彼女の粒子を掻き集めようとすらするように、無我夢中で空中を掻き毟る。
だがその手には何も残らない。
感じていた筈の彼女の温もりすら、初めからなかったのように消えていく現実を認めたくなくて。
声にならない声を上げ。
目的もなくジタバタと動く、滑稽な自分を……なぁ夕季、見てやってくれよと、心の何処かで問い掛けていたように思う。
本当の自分はこの程度だ。
どんなに格好つけていたって、何も出来やしないし、何も守れてやしない。
この命を賭けたって……結局、守れなかったんだと。
……なぁ夕季、わざわざ教えてくれに来たのか?
空に向かい、そう問い掛ける自分の耳に、彼女の声とは違う声が聞こえて来る。
『綾瀬くん。こっちよ、いらっしゃい』
聞いたことがあるような。
初めて聞いたような……それでいて懐かしいような、優しい声がそう告げる。
不思議なその声が聞こえた方向をふと見やれば、穏やかな光が降り注いでいて……なんだか心を惹かれる、良い香りがするような気がした。
そして足を一歩、踏み出す。
『おかえりなさい、綾瀬くん』
優しい言葉と温もりと光に包まれ、彼は意識を失った。
───◇──◆──◆──◇───
「おはよう、妃沙ちゃん。目が覚めて良かったわ」
優しい温もりの中で目を覚ますと、その側では初老の女性が優しそうに微笑んでいる。
……確か一度、出会った事があるのは覚えているのだけれど、その時彼女は夢と現の狭間に居て、どちらかと言えば自分の割合を多く占める前世の記憶に引き摺られていた。
「……夕季様……? 随分とお老けになられましたわねぇ……」
「綾瀬くん!? 君は少し正直すぎるところが玉に瑕だったわよ!?」
ピン、と額に優しい痛みを感じ、意識が少しだけ戻って来る。
……そう、今の自分は『水無瀬 妃沙』だ。
知玲を探しに行ってその目的を達成し、何やらヒロインを自称する少女から光が放たれ、知玲を突き飛ばしてそれを一身に受けた後の記憶は……まるでない。
寝ていたので当たり前なのだが、その間、彼女が見ていたのは前世の記憶で、未だその自我が強い妃沙にとっては『目の前で夕季が消える』幻影は強烈な印象を残すものであるらしい。
「生きていて下さるならそれで良いですわ……。わたくしは、その為に……」
「惚気は前世だけにしてくれるかしらぁ!? まったくもう、君たちは本当に……」
再び額に感じる、デコピンの痛みが、彼女を完全に覚醒させた。
寝かされていると思しきベッドの中で額をさすりながら、側にいてくれた女性に声を掛ける。
「翠桜様、でしたかしら? 理事長のお母様ですわよね? わたくしは一体……」
正確に名前を言い当てた妃沙に、女性が優しく微笑んで言った。
「一度来てくれただけなのに覚えていてくれて嬉しいわ。
貴方、ちょっと珍しい魔法を受けて眠ってしまっていたのよ。魔法というより、能力と言った方が正しいかしら。光にヒロインのキラキラオーラを乗せて『気』持ちに作用させたようね」
「キラキラオーラって何ですの……。あの河相さんの破天荒っぷりは常に想像の斜め上を行って下さいますわね……」
ハァ、と溜め息を吐いて柔らかいベッドの上に身体を深く沈める妃沙。
ふと傍らを見れば、洗面器に真っ白なタオルが添えられており、自分の額もまた、濡れて心地の良いタオルが覆っている。
この女性が自分の介抱をしてくれていたのは間違いがないようだ。
「……手当てに慣れていらっしゃいますのね。魔法や能力についてもお詳しいようですし……」
「ええ。私はね、昔、魔法療法士として働いていたの。魔法と医療を合わせたらきっと以前の世界では出来なかった素敵なことが出来るに違いないと思ったし、私に与えられた能力は魔法や能力を正確に鑑定することだったから、不思議な力を理解して活用して……なんとかこの世界で便利に使おうと躍起になっていた時期があるのよ。
だから、莉仁さんが貴女を連れて来た時に症状はすぐ解ったし、手も打てたのよ。本当は、このまま綾瀬くんの意識に引き摺られてしまったら少し危険な状態だったけれど……ちゃんと還って来てくれて、本当に良かった」
安堵したように、そして懐かしそうに目を細めて微笑みながら語る女性。
だが、語られる言葉は以前、とか、この世界、といった不思議な響きを持つものだ。
自分や知玲、そしてあの転生ヒロインならともかく、この世界で生まれ育ったにしては不思議な言い回しである。
疑問を表情に乗せ、妃沙が隣に座っている女性を見やると、その顔には何処か悪戯っぽい笑顔が浮かんでいた。
「フフ。あなたが私の前世の名前を言い当ててくれたら、嬉しくて泣いてしまうかもしれないわよ、綾瀬くん?」
「……何故わたくしの前世の名前をご存知なのか、少し疑問だったのですけれど……さっきまで前世の記憶に引き摺られていたので解りますわ。このコーヒーの香りで、わたくしの覚醒を促してくれたのでしょう?」
──ねぇ、都竹 恵夢さん、と、挑戦的な微笑みを浮かべて告げる妃沙の前で、女性の瞳から、ツッと美しい涙が一筋、零れ落ちた。
「……敵わないわね、本当に、貴方には……」
そう言って妃沙をキュッと抱きしめる結城 翠桜──前世では都竹 恵夢と名乗っていた彼女。
その腕の中で妃沙もまた、前世と今世の不思議を感じ、戸惑いながらも幸せを感じていたのであった。
───◇──◆──◆──◇───
「私はねぇ、貴方たちが転生してくるずっと前にこの世界に生まれ落ちてしまったのよ。女神様の悪戯、というものかしらね」
未だベッドの中にいる妃沙の横に座り、視線を何処か遠くに向けて話し出す翠桜。
彼女の前世の姿である恵夢とは一度しか関わったことがないけれど、自分を恐れずに接してくれ、美味しいコーヒーを御馳走してくれたことは良く覚えている。
比較的、この世界に転生する間近の出来事であったことも影響しているのかもしれない。
前世での名を問われ、ほぼ反射的にその名を出してはみたけれど、なるほど、自分や知玲とは年齢が違いすぎる、ということに、妃沙はこの時初めて気が付いたようである。
「……この世界に、孤独で……?」
キュッと眉を顰めてそう問う妃沙に、翠桜は目尻の皺を濃くして微笑み言った。
「生まれて来る時は誰だって孤独よ? 私は、たまたま前世の記憶を持ってこの世界にやって来ただけのこと。それにね、私だってただ大人しくしていた訳じゃないのよ。
突然に命を奪われ、一人でワケの解らない世界に、不自由な赤ん坊の身体に魂を落とされて……フフ、文句の一つも言いたくなるじゃない。
だから、思いっ切り『女神様』に文句を言ったの。この世界ではそれは泣き声わ変わってしまったけれど、ひたすら言い続けたら女神様も降参してねぇ。一つだけ、素敵な能力を授けてくれたのよ」
女神を屈服させるとは、なかなか肝の据わった女性である。
前世で関わった時は、そんなに気の強い印象は受けなかったのだけれど、女はこえーな、なんて、自分の性別を棚に上げて妃沙がドン引きしている横で、翠桜はクスクスと楽しそうに微笑んで言葉を続けた。
「この世界に同じ世界からやって来た人がいたら解る能力を、能力とは別に授けてくれたのよ。だから……莉仁さんが貴女をここに連れて来てくれた時は本当に驚いたわ! 金髪髪の可愛い女の子の姿に重なるようにして綾瀬くんの姿が見えたんだもの! そして貴女は、前の世界と同じように、私の淹れたコーヒーを美味しいと言ってくれた。
実はね、貴方の命を奪ったあのバスに、私も乗っていたの。そして、最期の瞬間に願ったのは……貴方にもう一度コーヒーを提供して、美味しいって言って欲しいというささやかな願いだった。
だから……女神様もきっと、私が貴方を見つけられるようにと、その能力を授けてくれたのだと思うわ。その事には感謝しかないのだけれどね。でも、時間をかけすぎよねぇ?」
また文句を言わなくちゃと楽しそうに微笑む翠桜に、妃沙は思わずツッコまざるを得なかった。
「やめて差し上げて下さいましっ! さすがのわたくしも、女神様に同情してしまいそうですわ!」
「あらあら。やっぱり優しいのねぇ、あなた」
コロコロと笑う翠桜の前で、妃沙は本能的にこの人には敵わないと悟ってしまう。
前世での邂逅時はまるでそんな雰囲気ではなかったが、なるほど、孤独でこの世界を生き抜いて来た経験は如実に現れているようである。
「でも、この世界への転生はそんなに悪いものでもなかったわ。いえ、前世より恵まれた人生を歩むことが出来たとすら思っているのよ。
魔法の力も授かっていたし、研究に夢中になることも出来たし、それなりに成果もあげられた。それに……」
そこで一度言葉を切り、改めて妃沙に向き直って浮かべた彼女の微笑みに、妃沙は思わず見惚れてしまっていた。
幸せに満ち溢れたその笑顔は、己の人生に誇りを持つ者が持つ、強さと神々しさに溢れていたのである。
「……恋をしたわ。そして、愛した人に愛されて、子どもも授かった。自分を顧みることのなかった前世の家族の分まで子どもに愛情を注げたし……莉仁さんという、かけがえのないもう一人の子どもとも出会えたのよ」
突然に出て来た『莉仁』という人物の名前。
以前、ここに連れて来られた際に、彼から血は繋がっていないが大切な母親だということは聞いた気がするが、そんな繊細な事情を、何の関係もない自分が聞いてしまって良いものかと、ベッドの中で妃沙が身じろぎする。
だが翠桜はそんな妃沙に気付いているのは確かなようなのに、聞いて欲しいのだと言わんばかりに言葉を続けている。
「そんなに怯えないで。よくあることよ? 旦那様が薬を盛られて一夜の過ちを犯し、そこで命が生まれたけれど育てられなくなった家の前に子どもを置いて母親が蒸発する、なんて……」
「そんな話、滅多やたらとにあってはたまりませんわッ!!」
思わず起き上がってツッコミを入れてしまった妃沙の様子を、あらあら、と口元に手を当てて上品に微笑みながら見つめている翠桜。
その様子から、どうやら語られているのは事実であり、また、彼女もそのことに対して本当に大した事件だと思っていないのだということが良く解る。
そして妃沙もまた、莉仁がどんな出自の人間であろうと全く関係がないし、当の本人が落ち着きはらっているのに自分が動揺するのも何か変かと、逆に冷静になってしまった程に、衝撃のその事実は単なる道筋でしかなくなっていた。
考えてみれば、転生なんていうトンデモ経験をしている自分達なのだ、ちょっとやそっとのことでは動じないし、大切なのは出自より人となりなのだと、本能で理解しているのである。
「良いじゃないの。莉仁さんは私の愛した人の息子。それだけで愛する理由があるわ。それに……初めて出会った時の莉仁さんと来たら、本当に本当に可愛かったのよ!」
ほらほら、見て見て、と、胸元からチェーンに繋がれたロケットを取り出し、パカッと開いて妃沙に見せつける翠桜。
見開きのその中には、片方には一組のカップル、もう片方には愛くるしい男児が二人、満面の微笑みを浮かべて写っている。
その一方に莉仁の面影をみつけ、思わず妃沙の表情も綻んでしまった。
「理事長にもこんな時代があったのですわね。それにしても……母強しと良く言ったものですわ。世界を跨いでもなお、その真実だけは不変なのですね」
「そうよ。そして貴女も、きっとそんな幸せを手にすることになると思うわよ。ね、妃沙ちゃん」
その言葉に、ギョッとして翠桜を見やる妃沙。
だがその視線を受けた彼女は、慈愛に満ちた優しい……それこそ母親の表情で彼女を見つめていたのである。
───◇──◆──◆──◇───
「一緒に来た男の子……彼、蘇芳さんよね? まったく、君達ときたら転生してまで見せ付けてくれるんだから。よっぽど想いが強かったのねぇ……。
それにしてもまぁ……性別が入れ替わるなんて、本当に面白い状態でこっちに来ているなんて……。もっと早く知り合いたかったわ。そうしたらもっともっと観察が出来たのに!」
少しだけ意地の悪そうにくつくつと笑う仕草は、なるほど、莉仁に良く似ているようだ。
彼女の口から語られた人生経験と前世での記憶があれば、強かにもなるのだろう。
口で言うほど気持ちの整理は簡単ではなかったと想像は出来るし、それでも、あの恵夢が事故に巻き込まれ、自分達とはまるで違った転生を果たし、そしてこの世界で幸せだと語れる人生を送っていたことに、妃沙は不思議な縁を強く感じざるを得ない。
そして、合縁奇縁めいた彼女との関係性を何故だかとても懐かしく、好ましく思ってしまうのだ。
少なくとも今、こうして自分の介抱をしてくれている彼女が敵だなんてことはないと、妃沙はフッと肩の力を抜いて溜め息を吐いた。
「好きでこうなったのではありませんわ。わたくしだって、出来ることなら強い肉体が欲しかったし、夕季様の頼れるヒーローでいたかった。
けれど……この身体で過ごした時間もまた、わたくしにとっては幸せなものなのです。この先ずっと、この身体のまま皆さまと……知玲様と共に生きていきたい。そう願うほどには、自分の中で決着を付けているつもりですわ」
少しだけバツが悪くなり、再び柔らかいベッドに身を沈め、天井を仰いだままそう語る妃沙を翠桜が優しく見つめている。
その表情はとても慈愛に満ちていて、それでいて少しだけ寂しそうなものであった。
「……そう。やっと気が付いたのね。鈍いにも程があるわよ、綾瀬くんったら。おかげで私、すっかりお婆ちゃんになってしまったわ」
「イヤイヤ、貴女に流れた時間とわたくしの気持ちの整理はまるっきり関わりがございませんから!」
思わず起き上がってツッコミを入れる妃沙の目の前で、翠桜は楽しそうにコロコロと笑っている。
理解した上でからかわれているのだと解り、少しだけ居心地の悪さを感じる妃沙に、彼女は悪戯っぽい視線を寄越しながら言った。
「でも、本当に残念。莉仁さんのお嫁さんになってもらって、本物の家族になって、毎日美味しいコーヒーを飲んで欲しかったのだけど……まぁ、無理よねぇ。そんなの、前世から知っていたわ、私」
そう言って、翠桜は妃沙の白くて小さな手をキュッと握った。
年月を感じさせる女性の手などあまり感じた事はなかったけれど、強さと優しさに満ち溢れたその温もりに驚いて何も言えずにいると、翠桜は更に言葉を続ける。
「ねぇ、綾瀬くん。気が付いたのなら逃げては駄目。特に貴方は、絶対に駄目。ちゃんと向き合って、相手にそれを伝えてちょうだい。
……私はね、綾瀬 龍之介くんに救われて、憧れて……でもそれは『恋』ではなかったなって、特に最近、しみじみと思うのよ」
語られるその言葉の重みは、彼女が過ごして来た人生があるからこそ生まれ出るものであると、妃沙は正確に理解している。
それでなくても、年上の上品な女性の言葉を無下になど出来るはずもない性格であるし、ましてや相手は前世からの知り合いで、自分を介抱してくれた人物である。
そしてまた、ここ最近の葛藤と結論に対し、彼女であれば正確な助言をくれるだろうという確信もあったので、身体を起こしたまま彼女の強い意思を込めた瞳を、真っ向から受け止めて次の言葉を待っていた。
「……幸せになってちょうだいな、綾瀬くん。私ね、ずっと……貴方の本気で全力の笑顔が見たかった。我慢も無理もしない、心からの笑顔はどんなに素敵だろうって思っていたのよ」
そう言いながら、握られた自分の手により強い力が籠もるのを感じ、彼女の本気を悟る妃沙。
今までであれば、それは自分の役目じゃねぇとか、縁の下に潜るとか言って濁していたかもしれないけれど、自分の気持ちを自覚した今、嘘を吐く事が大嫌いな彼女は、こう言うしかなかったのである。
「……頼まれなくても、自分の幸せくらい、自分で見つけてみせますわ。そしてきっと……わたくしの幸せも知玲様の幸せも……共にある、かもしれないですわ、たぶん……きっと」
あやふやな言葉になってしまったのはご愛敬だ。
そして、照れながらも正直に自分の気持ちを吐露した妃沙を、彼女の手を握ったまま、翠桜は本当に幸せそうに微笑んで聴いていた。
「そう。孤独より共に、二人で。喜びも苦しみも分け合って行ってね、綾瀬くん。貴方は決して、孤独ではないのだから」
応、と告げた言葉は、前世の姿の言葉であったかもしれない。
けれど、『この世界で幸せになる』と宣言した瞬間であり、それを聴いた翠桜の瞳から、また、ツ、と、美しい涙が零れ落ちたのだった。
◆今日の龍之介さん◆
龍「おー、久し振りー! 元気だったか?」
翠「貴女が元気じゃなかったんじゃないの」
知「……えーと?」
龍「あ、コイツ? 俺が拾った黒猫を飼ってくれてた元・同級生。そういや、あの猫、どうしてんだろうなぁ……」
翠「雑な紹介ねぇ。まぁでも、詳しくは二部最後の幕間を読んでちょうだいな」
知(……この人も結構良い性格してんな……)
翠「あらあら。表情に出てるわよ、蘇芳さん?」
知「!?」




