◆102.お花ちゃんの苦悩
その後も魔法研究部の発表は大盛況であった。
妃沙と悠夜が対応するということがクチコミで広まってしまい入場規制がかかる程であったのだけれど、午後はアドバイザーとして参加していた知玲が妃沙の変わりに説明する予定なのでその人気が更に増す事は日の目を見るより明らかだ。
それについては心配もあるのだが、理事長である莉仁が交通整理をしながら対応することと、午後は校庭や舞台でも注目の演目が行われるので、ある程度は人が分散するだろうと目されていた。
なお、妃沙自身は午前中のごく短い間で説明員の役割を免除して貰っている。
クラスの展示の他に、彼女は充の所属する演劇部からも協力要請を受けており、数ある要請の中でも演劇部のそれは断り切れなかったのだ。
充の願いだということもあるし、彼女自身もとても興味を惹かれたお誘いだったのである。
そして今、妃沙は演劇部の楽屋に拉致されており、午前中最後の公演で立つ舞台について、最終確認をしながら着替えをさせられている。
この舞台の主役である充は既に身支度を済ませており、妃沙がなかなか来ない事にやきもきしていたようで、説教と心配と最終確認とお小言と愚痴とを吐き散らすという忙しい状況に陥っていた。
妃沙、葵、充、大輔で構成される仲良しグループの中では充は口数の多い方ではあるのだけれど、最近では妃沙が語り散らし、それに充がツッコみ、葵と大輔が苦笑しながら乗って来るという構図が一般的であった。
仲良しグループ内で良く喋る二人が、己の拘りと遅くなったことへの抗議と謝罪とそれまでにあったことの報告と感想と、とまぁ色々と話題は豊富なようで、熱を帯びた会話がずっと続いているのである。
「だからぁ! 男装の麗人を男が演じるっていう微妙な演目だから、絶対的な美少女が必要なんだって何度も説明したよね!? 執事喫茶を頑張る代わりにこれを引き受けてって条件をつけたのはズルいと思ってるけど、引き受けたからにはちゃんとやってよ!」
「不測の事態でしたのよ! わたくしだって魔法研究部の盛況ぶりや、そこで生徒会長が絡まれて、なおかつ怒りを爆発させてしまうなんて予想外だったのですわ!」
充の言葉を受けて反論する妃沙だけれど、次の瞬間には「黙って!」とメイク担当の演劇部員に強い口調で言われてぐぅ、と言葉を飲み込む。
「そもそも、台詞を排除したことだってだいぶ譲歩したんだからね!? 本当なら妃沙ちゃんを演劇部にスカウトしたいくらい、本気で演劇に絡んで欲しかったのに……」
「充様、それはもう言いっこ無しと決めましたわよね?」
グリン、と充の方に首を回す妃沙を、メイク担当の生徒が更にグリン、と鏡と向かい合わせる。
「妃沙ちゃん、時間がないんだから動かないで! 台詞がないからこそビジュアルだけはインパクト絶大にしないといけないでしょ! 栗花落君も邪魔しないで!」
演劇部員の気迫たっぷりな視線と言葉を受け、すみません、としゅん、と項垂れる妃沙と充。
彼らだって本気で喧嘩などするつもりはないしお互いに対する引け目もあるのだけれど、こんな風にポンポンと言いたい事を言える相手は本当に限られているのでただのコミュニケーションだ。
だが今、メイクを担当する演劇部員の言い分には一理あり、開演時間までに妃沙の準備が間に合うかどうかは微妙な所であるのは承知しているので、妃沙はキュ、と表情を引き締めて鏡に向かう。
その凛々しい表情は準備を進めている部員も思わず動作を止めてしまう程であった。
そして、そんな妃沙の背後では、準備のすっかり終わった充が仕方ないな、とばかりに溜め息を吐いて見守っているのだけれど、その表情はとても優しいものであった。
「髪、僕も手伝うね」
そう言いながら妃沙の柔らかな金髪に手を添え、ブラッシングをし、丁寧に髪を巻いて結い上げ、豪奢な髪型を創り上げる。
カツラにしようかという意見も出たのだけれど、充としてはリアリティーを追求したかったし、芸能一家に生まれて、撮影現場や女優である母親の楽屋に出入りすることの多かった彼にはこのくらいは朝飯前だ。
「……妃沙ちゃん、色々言ったけどさ……ホント、ありがと」
優しい手で妃沙の髪を弄りながら微かに微笑んでそんな事を告げる充を、鏡越しに妃沙も優しい表情で見つめている。
なお、妃沙のメイクはごく薄いものだったので──何しろ、長い睫毛も白い肌も完璧に整った造詣もメイクを殆ど必要としなかったのだ──今は身に付ける予定の衣装の到着を待っているところだ。
「何をおっしゃいますの。他ならぬ充様の頼みだとしても、自分がやりたくないことは決して引き受けませんわ。王妃だなんて、こんな機会がなければ出来ない経験ですもの」
「どうだろうね? 妃沙ちゃんなら、いつかきっと異国の王子様が突然迎えに来ても違和感ないなー」
「来たとしても素直に応じるお姫様ではございませんわね、わたくしは」
「……言えてる」
アハハ、と笑いながら妃沙の髪の準備を終え、その両肩にポン、と手を置く充。
彼は今、地毛である金茶色と同じ色の襟足ウィッグを付け、キラキラした糸が編み込まれた生地で造られた派手な軍服を身に纏っている。
もともと睫毛の長い彼であるけれど、本日の主役であるので長い付け睫毛を装着し、目尻には黒いアイラインがスッと凛々しく引かれていた。
その姿は何処から見ても男装の麗人そのもので、今日の演目は王妃──妃沙の演じるそれ──を護衛する親衛隊長という役どころであった。
「今日の演目はね、母さんが若い頃に演じていたもので……もっとも、母さんは妃沙ちゃんの役を演じていたんだけど。でも、高校の演劇部で演じたそれが話題になって女優の道を一気に駆け上がったんだ。
それにあやかる訳じゃないけど、純粋にこの演目にはボクもずっと憧れててさ。でも、王妃なんて普通の高校生にはなかなか醸し出せる雰囲気じゃないしね、半ば諦めてたんだ」
そう語った途端、充の纏う雰囲気がピリッとしたものに替わる。
身に付けた衣装やキリリとした表情も相まって、それはまるで自分を律し、重責を担い、そしてそれを全うせんとする親衛隊長そのものだ。
充の豹変には慣れているだろう演劇部員はおろか、長年の付き合いである妃沙ですらポッと頬を染めた程だ。
「親友の役に立てるなら、どんな事でも致しますわ。充様……いえ、ジェルヴェ様、とお呼びすべきですわね」
そう言って、妃沙も表情をキュ、と引き締める。
そして片手をス、と充の方に差し出すと、嫣然と微笑んで言った。
「わたくしを護衛なさいませ、親衛隊長……その、命を賭けて」
ピン、と伸びた背筋、そして相手を射抜くような視線と、挑発的とも言えるその表情は、今まで妃沙が見せたことのないものだ。
今回の演目にこんな台詞はないけれど、確かにその役柄に台詞を付けるとしたらそんな事を言ったに違いない。
そして、その台詞を受けた充もまた、凛々しく表情を引き締めて片膝をつき、恭しくその手を握りチュ、と唇を落とした。
「マリアンヌ様、この命を賭して必ず……貴女をお護り致します」
見つめ合い、微笑み合う二人の美形。
舞台上ではないのに、周囲の人々はその光景に見惚れてしまっている。
だが……一方はメイクも衣装も完璧に整った親衛隊長であるのに対し、受ける側はメイクと髪が整っているだけで、衣装はショタ執事というシュールな姿なのであった。
───◇──◆──◆──◇───
その日の演劇部の演目は大好評の内に幕を下ろした。
好評過ぎて登場人物に感情移入をした観客達が涙にくれ、アンコールの場に立つ演者に殺到してしまった為に混乱を来したくらいだ。
一番の人気は充が演じたジェルヴェ──女性ながら男装をして混沌とした世界の中で主と決めた王妃を護り抜こうとするその生き様に多くの人が感動していたのだけれど、
妃沙が演じた王妃・マリアンヌ──望まぬ結婚をし、それでも家族を愛そうと努力し、国母たるに足る自分であろうと努力し続ける凛とした彼女の立ち居振る舞いもまた感動を呼んでいた。
もっとも、マリアンヌの台詞はなかったので、ナレーターや演者による説明や、言葉を発しなくても決意を表明する妃沙の唯住まいが認められてのことである。
……だが今、そんな混乱をくぐり抜けた妃沙と充は先程まで纏っていた豪奢な衣装を脱ぎ棄て、妃沙はショタ執事、充は事前に提供されていた和装メイドの衣装であった。
なお、この充の衣装こそ、彼の姉の雫と母の那奈から無理矢理渡されてしまった和装メイド──紅い下地に白い小花模様の和服に紺地のミニスカートの上に真っ白なフリフリエプロンを合わせたものであった。
部活動の発表に力を入れたい二人ではあるけれど、クラスの出店には、もはや自分の力が必要不可欠なのだということは深く理解しているようである。
自分達が担当する接客の時間に少し遅れ気味なので、手を繋いで廊下を駆ける二人。良く見ると『黄金の脚』を持つ充に、妃沙が引っ張られているようだ。
だが、黙って立っているだけで目を引く美貌を持つ二人が、今やショタ執事と和装メイドという、性別とはあべこべとは言え目立つ衣装を身に纏っているのだ、注目するなという方が無理な話である。
彼らが通り過ぎる度に、周囲からはキャーだのオォーだのと言った歓声が聞こえて来る。
そしてまた、彼らの名を呼んでくれる生徒達に対してぞんざいな態度など出来ようはずもない。
充は芸能人なので反射的に応じるような態度を取ってしまう側面があるし、妃沙は今、自分が客引きパンダであるという役割を正確に理解しているのである。
そんなワケで、握手に応じたり手を振り返したりしているうちに時間はどんどん過ぎて行き、その周囲に人の輪ができ始め……という悪循環が出来つつある中、
その輪を抜け出す技術については妃沙より上手な充が、スッ、と空いた道筋を見出し、カッと瞳を見開いた。
「行くよ、妃沙ちゃん!」
「充様……ってあら!?」
突然、充が妃沙を抱え上げ、物凄い勢いでその場を走り出す。
いわゆるお姫様抱っこの状態で抱き上げられた妃沙は、突然の事態に目を白黒させるだけで、だが走る充から振り落とされないようにと、その首にしっかりと掴まった。
(──なんだ、充もすっかり男なんだなぁ……。まぁ、婚約者もいるくらいだし、当たり前っちゃ当たり前だけどな……)
転生、なんていう非日常の経験をして、二度目の人生を謳歌している妃沙。
だが、『大人』と呼ばれる時、どんな自分でいるのかは想像がつかない。
そしてまた、そう呼ばれる時間が近付いて来ているのだと考えて……妃沙はブルリと肩を震わせた。
前世よりも子どもの成長速度が早く、前世で見知っていた高校生たちよりずっと大人で、しっかりしているこの世界の友人達。
そんな中に、果たして自分はしっかり順応出来ているのかと考え……フ、と微笑みを落とす。
(──まぁ、人生経験だけはこの世界の奴らよりも豊富だしな。精神年齢を考えれば俺も立派なオッサンだよな)
……妃沙は正しく自分を理解しているようである。
そんな妃沙を抱きかかえて疾走する充は、腕の中にいる少女が何やら深く考え込んでいる様子を『怯え』と受け取ったようだ。
「ごめんね、妃沙ちゃん。怖いかもしれないけど、絶対に君を危険な目には遭わせないから……」
「怖い? わたくしが!? とんでもありませんわ! 世界一早くて安心出来る優しい乗り物……そうですわね、ネコバスにでも乗ってるような心持でしてよ!!」
「ネコバスって何!?」
「いつか必ず乗ってみたいと思っていた素敵な乗り物ですわ! さぁ、充様、お客様をお待たせしてしまっているはずですから早く参りましょう!!」
ゆくのでェェーーす!! と、妃沙の良く通る声が響き渡る。
そして彼女を抱えた充は、考え込んだり自嘲気味に微笑んだりワケの解らない事を突然言い出す腕の中の『親友』を……相変わらず可愛いな、と思える程には彼女に心酔しているようだ、と苦笑する。
思えば初等部時代、周囲の言いなりになっていた自分を救ってくれて以来、嫌がるどころか惜しみない愛情を向けてくれる彼女。
心を寄せる婚約者に対する気持ちとは違うけれど、妃沙に向ける感情もまた『愛』だよな、なんて考える充は、まだ少し舞台で演じた親衛隊長の気持ちを引きずっていたのかもしれない。
「充様! わたくし、少々興奮してしまいそうですわ!」
「……フフ。ボクもちょっと楽しいよ。さ、しっかり掴まって! スピード上げるよ!!」
キャーという、楽しそうな妃沙の声が響く。
執事を抱えて疾走する愛くるしいメイドの姿は各所で大勢の人々が目撃しており、長く語り継がれる『演目』となったのであった。
───◇──◆──◆──◇───
フゥ、と真顔で愛くるしいメイドが溜め息を落とす教室内……時刻は既に夕刻に近い時間。
妃沙達のクラスの出店は大盛況で、妃沙はもちろん、『お花ちゃん』と呼ばれ、やたらと注目を浴びていた充も一日中働き通しで疲れているはずの時刻だ。
しかもこの後、充には最後の衣装を身に纏っての『撮影会』が控えているのだ、溜め息の一つ落とした所で誰からも文句を言われないに違いない。
今、彼の中では色々な想いが鬩ぎ合っている。
初等部の頃から愛情を注ぎ、ことある毎にそれを言葉に、態度に表わして告げている婚約者──詠河 美子にはその想いは通じているはずだ。
そうでなければ、あの真面目な美子が黙って抱きしめたりといったスキンシップを受け入れてくれるはずもないし、そもそも婚約だって美子に気持ちがなければとっくに解消されているはずである。
だが、自分の女装姿が好評を博せば博すほど、充の心はとても沈んでいってしまうのだ。
芸能一家に生まれ、自身も芸能活動をしている充。それは自分のやりたいことでもあるし、家族の名声を利用するのはズルいかなという考えがある半面、芸能界はどんな手を使っても生き残るのは至難の業だということを深く理解している。
この場で魅力を発揮して知名度を上げ、SNSに自分の写真をアップしてくれる人が増えれば良い効果を得られるかもしれない、という気持ちの反面。
美子の前ではもっと男らしい自分でいたいなぁ……という迷いも抱いているのである。
「栗花落くん、お花ちゃんがそんなに怖い表情してるとお客さんが逃げて行くから自重してもらえるかな?」
そう声を掛けて来たのは、特別ゲストとして無理矢理乱入して来た『理事長』──結城 莉仁。
今年からこの高等部の理事長として着任した彼は、時々こうして「生徒達の気持ちを知る」と称して自分達の輪に入り込むことがあったのだけれど、その目的は充の親友の妃沙に由来するということは、彼女の周囲にいる人間なら誰でも知っていることだ。
だが、その行動原理は純粋に『妃沙が好きだ』という起点に発しながらも、身近な存在として生徒達に寄り添いたいという確かな本音も感じていたので、何処か親近感すら覚える程だ。
「申し訳ありません、理事長。ですがボクは男ですし……婚約者すら……」
「ワーワー!! 栗花落くん、アイドルは恋愛禁止だからねェ!? あと数時間は頑張ろうかァ!?」
慌てた様子で充の口を押さえ、バックヤードに連れ込もうとする莉仁。
充としても、こんな気持ちでお客様の前に立つ勇気はなかったしバックヤードに戻れることには感謝しかなかったので素直に従い、関係者しかいないバックヤードで椅子に座らされ、真正面に立つ理事長にポツリと問うた。
「……派手な衣装や役作りをしなきゃ注目されない人間なんですよね、ボクって男は。どんなに速く走っても、勉強を頑張って成績上位で貼り出されても……取り沙汰されるのは容姿や、母や姉のことばかりだ」
ポツリと呟く充。
ここに拉致した自覚のある莉仁は、最初こそ驚いて何も言う事が出来なかったけれど……その想いは、莉仁にも覚えのあるものだった。
それどころか、芸能界に特化した充の悩みより、経済界に影響を与えるであろう自分の存在の方がセンセーショナルな存在だろうなと理解しつつも、真摯に世界と向き合おうとするめ充の姿には共感を覚えたのである。
「派手な衣装が似合うんだから良いじゃないか。君の容姿があるからその衣装が似合っているんだろう? 自分に出来る事を全力でやる、それが成功の秘訣だ。
大切な人がいるのなら、なおさらだ。自信を持って自分の仕事に臨むこと。それが『イイ男』の条件だよ」
莉仁のその言葉にハッとした様子で充が息を飲む。
そうだ、意思に反して多数決で決まってしまったとは言え、演技や表現の幅を拡げる為にやり切ろうと決めたのは自分じゃないかと思い至る。
確かに、心から想う彼女に対しては、もっと男らしい姿を見ては欲しかったけれど、美子は自分の外見などそんなに気にしていないはずだと思うのだ。
姿形より、一生懸命に仕事に臨む自分こそが彼女に一番見せたい自分の姿じゃないか、と。
「……弱音を吐いて申し訳ありませんでした、理事長。
この店で唯一のメイドにして『お花ちゃん』ですものね。ボクを楽しみに来て下さるお客様に、こんな気持ちのままでは失礼ですよね」
行って来ます、と言い残して去って行く充の表情には、もう迷う所は何処にもない。
愛くるしい笑顔に凛々しさまで加わったその後の充の姿と来たら、長年、親友として過ごして来た妃沙が思わず両手で投げキッスをしてしまった程であった。
そしてまた、運悪くそれを目撃してしまった莉仁の心には妃沙の姿がまた深く残ることになってしまったのだが、それは余談と言っても良い程度の出来事である。
そうして、大盛況のうちに『執事喫茶』をやり切った面々。
最後の客を送り出した後、室内では大きな拍手が自然と鳴り響いていた。
そしてその称賛の多くを受けていたのは、見事にメイドを演じ切った充であった。
「充様、お疲れ様でした」
そう労いながら、妃沙が何やら風呂敷包みを持って充に近付いて行く。
「詠河先輩から最後の衣装をお預かりしておりますわ! お疲れの所申し訳ございませんけれど、早速着替えて頂けますか?」
メイドに扮することに集中していた為に、充ですらその存在を忘れていた『最後の衣装』。
確かそれは、接客には向かない衣装だから撮影会にだけ応じるようにと、彼の婚約者である美子が用意するという話であったはずだ。
「……そういえば、もう一着あるんだっけね。大丈夫、今の僕はどんな衣装を渡されたって着こなして、そのキャラクターを演じ切ってみせるよ」
苦笑しながら妃沙から荷物を受け取り、そっと荷物をほどいた充。
「……こ、これは……!?」
驚く充に、クラス中の仲間たちが満面の笑みを向けていた。
◆今日の龍之介さん◆
龍「いっけェェーー充! スッ飛ばせェェーー!!」
充「ちょっとー!? 人をスピード狂みたいに言わないでッ!!」
龍「ヒューヒュー! 良いぞ、俺たち、風になってるゥー!!」
充「いやなってねぇから! 危険な発言やめよっか!?」
(遠くから)知「……何やってんの、あのメイドと執事……」
(頷きながら)莉「……本当に目立つことしかしないよねぇ……」




