ニ章 波乱の学校 2
「何だって?この時期に?」
「本当なんだって。」
「二人も?」
「そう。しかも無茶苦茶可愛い。」
朝、学校へつくとクラスメイトたちは何故か盛り上がっていた。
どうやら二人も転校生が来るらしい。
高校二年生の冬、こんな時期に転校してくる人がいるとは驚きだった。
「あ、でも一人は一つ下の年らしいよ。」
「そうなのか。」
朝は転校生の話で持ちきりだった。
「はーい。皆さん席について下さい。」
少しすると担任の先生が来た。
担任の先生は三十代半ばの女性の先生である。
「皆さんも知っているのかも知れませんが子のクラスに転校生が来ています。」
様々な声が教室中のいたるところから聞こえてきた。
「皆さん静かに。それでは入ってきてください。」
転校生の女の子はメチャクチャ可愛いという表現が正しかった。
優雅な立ち振舞いで行動の一つ一つが上品だった。
先程までうるさかった教室もその上品さに静まり返っていた。
美しいウォーキングで教卓の前に立つとチラッと僕のほうを見た。
「初めまして。神田真帆です。本日よりこちらへ転校することになりました。急なことで不安もありますが皆さん仲良くしてください。」
神田さんはどうやらクラスに馴染んだらしい。
昼休みになることには話しかけてきてくれた人や噂を聞き付けた別のクラスの何人かと仲良くなっていた。
僕のクラスでの立ち位置は目立つわけでもなくクラスの空気というわけでもないザ・普通であった。
昼御飯をいつも食べてる何人かと食べると僕は毎日雨の日以外いつも昼休みを過ごすお気に入りの昼寝スポットへと向かった。
向かう途中下級生のクラスの前を通った。
後輩の転校生は明らかに異色の雰囲気を漂わせていた。
一言で言うなら元気っ娘のような感じがする。
その雰囲気のとおり何人かと仲良くなっているふうに見える。
転校生はチラッとこちらを向くと友達との会話に戻っていった。
「美狐さん。」
僕はお気に入りの昼寝スポットへ到着すると授業中も僕の周りをふわふわ浮いていた美狐さんを呼び掛けた。
「はい。何でしょう。」
美狐さんは誰も周囲にいないことを確認すると話してくれた。
「そういえばじっくり聞きたいことがあるんだ。」
「どうぞ。」
「僕たちって離れられない分けでは無いですよね?」
「そうですね。不可能ではないです。もしかして授業中などに気が散りました?なら消えますが。」
「消えることできるんですか?いやそうじゃなくてですね。離れた場合どうなるんですか?」
「ある程度は大丈夫ですがそうですね。三十分離れただけで私は弱り一時間離れていれば死にます。」
「何でそれを早く言ってくれないんですか?」
「誰とお話しなさっているのですか?」
僕が驚きで声を張上げたとき近くに同じクラスの転校生である神田さんがいた。
「えーと。神田さんですよね?」
「はい。あなたは……。」
「同じクラスの鬼灯俊太です。」
「鬼灯さんですか。すみません。まだ全員の名前を覚えていなくて。」
「いえいえ。まだ会話したことなかったですし。」
すると神田さんの顔が少しピクッと動いた。
「それで今どなたとお話しされていたのですか?」
「お恥ずかしながら独り言なんです。」
「おかしなかたですね。それでは私は用事がありますのでここで失礼させてもらいます。」
神田さんは最後に美狐さんがいるところをチラッと見るとどこかへ消えていった。
「神田さんには私が見えているかもしれませんね。私の方をまるでなにかがいるかのように見てきましたし。」
「たぶん気のせいですよ。」
「私の気のせいで終わってくれればいいんですが。」
授業が終わり放課後になると騒がしかった転校生騒動も収まりいつも通りの日常生活へと戻っていった。
僕は帰宅部なのでいつもすぐに帰っている。
僕は帰り道でも美狐さんと話していた。
「じゃあ家事は美狐さんに任せます。」
「任せてください。疑問に思ったんですが生活費などはどうしているんですか?」
「叔父さんから毎月、貰っているので。」
叔父さんは定期的にお金を送ってくれる。
それでなんとか生活しているのだ。
「そうですか。失礼ながら両親は……。」
「あっ。大丈夫です。二人とも元気です。」
「誰と話してるの?」
美狐さんと話しているといつも誰かが割り込んでくる。
気を付けなきゃ。
「えーと。君は確か……。」
「うん。転校生の鬼束理恵。よろしく。」
「僕は鬼灯俊太。一つ言うけど先輩だから。」
「え?そうなんですか?すみません、先輩。」
「しょうがないよ。話したこともないんだし。」
鬼束さんは少し傷ついた顔をした。
「私は急がなきゃいけない用事があるので少し先をいきますね。」
そう鬼束さんは告げると前を走っていった。
「なんかデジャブだな。」
「今見ました?」
「どうしたんですか?」
「鬼束さん。今、私のことを避けて走りっていきましたよ?」
「それはたまたまなんじゃないですか?」
「あの転校生たちには少し気を付けなければなりませんね。」
「考えすぎじゃないですか?」
「用心は大切ですよ。」