一章 僕が社になった日 4
「ここがお前さんの家か。案外狭いの。」
あんなことがあってから黙々と歩いた。
家は約一時間ほどで着いた。
僕が住んでる家は七畳間ほどのアパートであった。
家具がちらほらとありアパートの部屋の中央にはちゃぶ台がどーんと置いてあるだけの部屋であった。
「一人暮らしにはこれくらいがちょうどいいんだよ。」
のじゃロリはそれ以上なにも言わなかった。
「おいのじゃロリ。何か飲むか?」
「のう、お前さん。気になっていることがあるんじゃが。何故お前さんはあっちの儂を美狐と呼び儂をのじゃロリというのだ?」
「じゃあなんであっちのお前は僕を隼汰と呼び尾前はお前さんと呼ぶんだ?」
そう言うとのじゃロリは歯を食い縛りぐぬぬと呻いていた。
「二人を分けて呼びたいんだよ。お前はのじゃロリ。あっちは美狐さん。」
「儂だけバカにされてるように聞こえるのじゃ!」
「はいはい。そうですねー。ほらこれお茶。」
明らかに怒った表情でのじゃロリはお茶をすすった。
「あ、まだ熱いから気を付けろよ。」
「ゲホゲホ。飲んでからそれを言うでないわ!」
「すまんな。悪気はなかったんだ。」
のじゃロリはさらに怒ったような顔になった。
なので僕は話をそらすことにした。
「そういえばさっきのあいつらなんだったんだ?」
「ふん!知らないのじゃ。」
「そう怒るなって。」
「ほんとに知らんのじゃ。魔術で動いておることは確かなのじゃが。」
「また襲って来る可能性もあるのか?」
「あるじゃろうな。お前さんを狙っていたようじゃった。」
「これからどうすればいいんだ。」
「安全に帰ってこれた所を見ると人が比較的多いところでは襲ってこないじゃろうな。人が多くなってきた辺りのとこから後をつけてきておったが襲ってこなかったからの。」
「そうなのか。おいのじゃロリ。お前は何食うんだ?」
「油揚げじゃの。」
「油揚げ入ってるインスタントうどんでいいか?」
「よいぞ。」
「じゃあ僕もそれでいいや。」
お湯を沸かしていたのでそれをインスタントのカップに注いだ。
そしてそれをちゃぶ台へ持っていった。
「いただくのじゃ!」
「まて!のじゃロリ。まだ食えんぞ!」
のじゃロリからふと目を放した隙にまだ出来上がってないカップ麺に飛び付いていた。
「なぜなのじゃ?さては儂を餌付けするつもりか!」
「違うわ。あと三分しないと食べられない食品なんだよ。」
「あと何分じゃ?」
「だいたい二分だな。」
のじゃロリは目を輝かせながらカップ麺を見つめている。
「あと何分じゃ?もうよいか?」
「あと一分半だな。」
そうのじゃロリは尋ねるとカップ麺に目を戻した。
「あと何分じゃ?もうさすがによいじゃろ。」
「あと一分だよ!いちいち聞いてくるな。」
「早く食べたのじゃ。」
「次聞いたら夕飯なしだからな。」
のじゃロリは硬直し静かになった。
「おいのじゃロリ。もういいぞ!」
「いただくのじゃ。熱い……が美味じゃ!さすがは油揚げじゃな。」
「あんまりあせるなよ。ほら僕の分もあげるから。」
餌付けって楽しい!
「お前食うの早いよ。」
またまた目を放した隙に麺を完食していた。
僕の分まで。
「じゃあお風呂でも入るかな。」
「待つのじゃ。まだ準備が出来ておらぬ。」
「ん?いや先に僕が入るからまだ大丈夫だぞ。」
「お前さんこそ何を言っておる?まだ言っておらんかったか。」
いったいのじゃロリは何を言っているのだろう。
「二人でお風呂へ入るのじゃ!」
何言ってるのかよくわからない。
目の前にいるロリは二人で一緒に風呂にはいるって言った?
のじゃロリとあと誰だ?
僕しかいなかった。
「そうしてこうなった。」
「お前さん何をぶつぶつ言っておるのじゃ?」
結局二人でお風呂へ入っている。
先程説明を受けたが僕達は一定距離以上離れすぎることができないらしい。
「ほら髪洗ってやるよ。」
ヤバイ。
案外楽しいかも……。
「もう少し力をいれい。」
「こうっすか?」
どうやら力加減が気持ちいいらしい。
「儂が逆にお前さんを洗ってやろうぞ。」
「いやいいよ。」
「よいから。よいから。」
そう呟きながら立ち上がったのじゃロリだが床が石鹸でツルツルということに気がつけなかった。
「おい危ないぞ。」
僕は滑ったのじゃロリを抱き締める形になってしまった。
その時、やはりのじゃロリも女なんだなと思った。
よく見ると可愛い顔つきであるし体つきも華奢だが可愛い感じがする。
そしていい香りもする。
まさかのじゃロリのことを女として見るだなんて。
「お前さん。すまないの。」
「あ、ああ。いいよ。気を付けろよ。体洗うのは自分でやるから風呂にでも浸かっとけよ。」
「そうするかの。」
のじゃロリは浴槽へ向かっていった。
僕は軽く体を洗うと僕も浴槽へ向かった。
「いや向かうか!」
「なんじゃお前さん。びっくりしてしもうたわ。」
「いや浸かる場所ないなって。」
「ここにあるじゃろ。」
「狭すぎるだろ。」
のじゃロリが指を指した場所は僕がギリギリ入れるかくらいのスペースであった。
「もう少しどけよ。そうだ明日から学校へ行くか。」
「なんじゃ唐突に。お前さんは学生じゃったのか。」
「行くの面倒くさいからサボってただけだ。」
「じゃあ儂も着いていくとするかの。」
「ダメに決まっているだろ!」
「安心せい。あっちの姿になれば普通の人には見えんしの。」
「へぇ?そりゃ便利だな。ほらそろそろ出るぞ。のぼせるといけないし。」
どうやらのじゃロリは学校へ着いてくる気まんまんだった。
お風呂にたっぷりと浸かり出てちらっと時計を見ると深夜の2時であった。
「明日の早起きのためにもう寝るとするか。」
「そうじゃの。」
「おやすみ。のじゃロリ。」