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一章 僕が社になった日 2

 僕はその時どこかにいた。

 さっきまでショックな夢を見ていたせいかなぜか心地のよい場所だった。

 白くて温かく、それでもって優しい光に包まれていた。

 なぜか僕は走っている。

 どうせまた追われているのだろう。


 いつだってそう。

 僕は暗い道を……走る。



「お前さん。大丈夫か?目を開けい。」


 何かに体を揺さぶられ、目が覚めた。

 目を開けるとそこには女の子が立っていた。

 夢で見たのと同じ狐耳、狐の尻尾の少女であった。

 夢と違うところはその少女が苦しんではいないと言うところであった。

 そして喋り方も違う。


「確か君は……。え?あ!」


 その少女の正体を確かめると言う行為は、今自分のおかれている状況を確認すると立ち切られてしまった。

 僕は今、狐耳の少女に俗に言う膝枕をされていたのだ。


「おっとお前さんも目覚めたんじゃし若いものには刺激が強いかの。」


 狐耳の少女は僕を自らの膝からどけた。

 そして疑い深い目を僕に向けてきた。


「それで何が目的なのじゃ?」


 まるで怒っているかのごとく強い語尾で僕に訪ねてきた。


「何の話をしているんだい?目的なんて無いけど。」


 僕はいったい何について問われているのか全くわからなかった。


「とぼけるでないわ!なぜ契りを結んだのかと聞いておるのだ!」


 僕は倒れる前の記憶を探った。

 確か今目の前にいる少女が倒れていて駆け寄って……。

 そこから記憶がなかったがそれは夢だろうと思っていた。

 なぜなら喋り方が違っていたし、膝枕をされてた時点で触れられているのでそれは夢であると認識していたのだ。


「何の話だい?僕には思い当たる記憶がないんだが。」


 すると少女は鋭い目でこちらを睨み付けるとそのまま固まってしまった。


「あのー。すみません。もしもし?」


 少女の前でずっと手を降ったりしているが全く動く気配がない。

 それから一分ほどずっと手を降り続けていた。

 他にも耳をくすぐったり尻尾を引っ張ったり。


「えーい。やかましい。やめんか!」


 少女は目の前に振られていた手を払いのけると咳払いをし、言葉を紡いだ。


「確かにお前さんは嘘をついていないようじゃの。じゃがまだ疑っているということを覚えておくのじゃぞ。」


 目の前に人差し指を突きつけられたが何を言ってるのかわからなかった。


「そもそもどこであの行為を覚えたのじゃ?一般人があのようなこと、まぐれでもするはず無いしの。」


 少女はこちらの答えをじっと待っていた。

 耳がピョコピョコ動いている。

 その仕草は普通に可愛い。

 色々あったのでその幼い少女をじっくり眺めていなかったが、よく見ると長い黒髪の隙間からふわふわしている黄色っぽい色の耳が除いている。

 まるで巫女のような服装だがこれまたもふもふしていそうな黄色っぽい色の尻尾が生えていた。

 言葉遣いを聞いていたがこれは「のじゃロリ」と呼ばれているものなのではないか。


「あんまり見つめるでないわ。照れるじゃろ。それよりさっさと質問に答えるがよい。」


「え?あ?なんだっけ?のじゃロリ。」


 そう言った瞬間、通称のじゃロリは雷にたれショックを受けた顔をするとなにかを唱え始めた。

 次の瞬間のじゃロリは光始めた。


「なんだよ急に。やめろよのじゃロリ。眩しいだろ。」


 光が収まったのでのじゃロリの方を見るとそこには先程と変わってないのじゃロリがいた。

 だが少し雰囲気がおとなしくなったように感じた。


「のじゃロリじゃないので変なあだ名はやめてもらえます?」


 声も全く変わってないがのじゃロリではなくなっていた。

 だが先程喋っていた少女とはまるで別人であった。


「えっと、のじゃロリだよね?」


 少女はのじゃロリと呼ばれたことに怒っているのかそのワードが飛び交う度に眉を潜めていた。


「さっきまで喋っていた人物と言う点では私ですがのじゃロリではありません。」


「え?なに?二重人格?」


 まるで別人のように感じられたので二重人格だと思い込むことにした。


「まあ確かに二重人格に近いです。ですがこちらの私はほら、あなたに触れられることができないんですよ。」


 その大和撫子のような感じの少女は僕に向かって手をつきだして来た。

 だがその手は僕の腹を通り抜けた。


「うぁ!なんだよ!やめろよ。」


 僕は腹に穴を開けられているような感覚がして気持ちが悪かった。


「ふふふ。大丈夫ですよ。私が手を引っ込めれば、ほらすぐ元通りり。」


 僕の腹を貫通していた手が引っこ抜かれると先程感じた気持ち悪い感覚は無くなった。


「何がどうなって?のじゃロリが大和撫子になり大和撫子の手が僕の腹を貫通した?のじゃロリが手になって大和撫子が腹を通り抜けて?」


「落ち着いてください。意味のわからない言葉を発していますよ。」


 大和撫子は僕の回りをふわふわと漂い落ち着かせようとした。


「ふわふわと浮いてね。……ふわふわと浮いて?」


「おっとこれではさらに慌てさせることになってしまいますね。」


 僕はもう何がなんだかわからなくなってしまった。


「落ち着いて聞いてくださいね。」


 僕は軽く頷くと全ての思考を断ち切り大和撫子の話に集中した。


「いいですか?まず私は油揚げが大好物です。」


「は?」


 彼女の今おける状況を説明してもらえると思っていたので急な質問には突発な返答しかできなかった。


「ふふふ。少しは冷静になれたようですね。先程の話の続きです。

私の正体から始めましょう。私の正体は神であり妖怪。お稲荷様で妖狐です。」


「は?」


 今回はちゃんと話を理解した上でさっきと同じ返答をした。


「まず今の状態から説明します。私は妖狐です。なので人とは触れられないし宙にも浮けます。そこまではオッケーですか?」


「いや唐突すぎて何を言ってるのか。まあそういうものだと理解はできた。」


 つまり目の前いるこの少女は妖怪であるということか。

 すると先までの謎が解けてきた。


「次にこの前になっていたあなたのいうのじゃロリはお稲荷様。あなたは神に喧嘩を売ったの。わかっているの?」


「ある程度は理解できたと思います。」


 つまりのじゃってる時はお稲荷様で丁寧語は妖狐。

 そういう認識だろう。


「次に私から質問。だいぶ話は戻るけど、どうしてあなたは契りを交わす方法を知っていたのか。」


 触れられないことは現実だったので夢と思っていたことは現実だったと認識できた。

 確かに僕は最後、彼女に触れたしなにかをした気がする。


「それが全くわからないんだよ。僕は何をしたのさ。」


「いいですか?私の神社は潰れかけていて、というか先日神社としての機能を失いました。神社の機能とは私のような神を奉るだけでなく、お賽銭から得られるお小遣いや私たちの命を繋げるものです。」


 確かに彼女の言う通り神社は潰れかけていた。

 まさかお賽銭は神のお小遣いだとは驚きである。


「命を繋げるものが無くなると神は死にます。ですが私は珍しい半神半妖。妖狐になり命をなんとか持たせていましたがとうとう力を失い今にも消えかかっていたところにあなたがやって来ました。」


 彼女を始めて見たとき死にかけているのが一目でわかるほど弱っていた。

 そこまでは理解することができた。


「そしてあなたは私と契約しました。」


「ちょっと待てーい。何がどうなってそうなったんだよ?」 


「あなたは弱っている私と契約し私の社となったのです。」

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