一章 僕が社になった日 1
狐の耳、狐の尻尾の少女はそいつらを倒していく。
その少女は一匹を手に握っていた刀で切りつけると宙でくるりと舞い二匹目を刺した。
そして目の前にいたそいつらを刀で切りつけながら、横から攻撃してくるやつらに長方形の紙を投げつけた。
するとそいつらは呻きだし、消えていった。
「美狐!後ろだ!」
近くで他のそいつらと戦っていた男がそう言った。
「わかっています。」
美狐、と呼ばれた少女の尻尾から青白い炎が飛び出して後ろから襲おうとしていたやつは灰となった。
そしてその少女は残り一匹となったそいつに小走りで走っていった。
その手は光っておりその手をそいつに押し付けた。
するとさっきまでいたはずのなにかはいなくなっていた。
「今日もこれで終わりだといいんだけど。さぁ、帰ろう。」
「もちろん今夜も油揚げですよね?」
少女はそういうと男の方の隣に立った。
その男は溜め息を吐いた。
「どうしてこんな目に……。あの日なぜ僕はあんなことを。」
その日、僕はとある地域の薄暗い田舎道を一人で歩いていた。
季節は冬で時刻は丑三つ時を少し過ぎた辺り、今は祖父の家を目指していた。
突如慌てて家を飛び出してきたので、持てるものを持ってきたとはいえ食品がなくお腹が空いてしまった。
現在所持してるお金はいつも持ち歩いているたったの5円。
その5円をなぜ持ち歩いているのか、どこで手に入れたか全く記憶になかったが持ち歩かなければならない気がしていたので持ち歩いていた。
ふと前を見ると分かれ道になっていた。
右に行けば祖父の家で左に行けば古い神社に繋がっていると看板に書いてあった。
「どうせすぐ着くし、寄り道でもするかな。」
左に向かってから数分でボロボロになっている神社を発見した。
少し眺めてから寒かったのでポケットに手を入れた。
そこには5円玉があった。
「せっかくだし入れていくか。」
その時、なぜか大切にしていたものなのにお賽銭箱に入れなければならない気がしていた。
チャリン
「若いのにお賽銭ですか。関心ですね。」
背後から死にかけたようにかすれた声がした。
振り替えると耳と尻尾の生えた少女が倒れていた。
「どうしたんですか?大丈夫ですか!?」
僕は急いで駆け寄った。
その少女は今にも消えそうな雰囲気であった。
その少女を起き上がらせようと触ったがその少女を通り抜け地面に指が触れた。
最初は何が起きているのかわからなかった。
焦っているから幻覚を見ている気分であった。
「え?君には私が見えるのですか。でも触れることはさすがに無理なようですね。」
少女は弱々しく言葉を発した。
「最後にお賽銭貰っただけで生きててよかったと感じられるとは不思議なものです。」
僕はどうしてもその少女を助けようと思った。
すると体が勝手に動いた。
僕は触れられないはずの少女の右手を自分の手に取ると自分の小指と少女の小指を絡めた。
なぜかそうしなければならないような気がしたのだ。
その姿はまるでなにかを約束するかのようだった。