歯車の回転が再開した
世界はこのまま変わろうとしないと思ったが、またその世界に戻った、そのイカレた世界に
[chapter:サイコワールド]
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「ねぇねぇ、きいた?昨日また例の事件があってさ」
「あれでしょう、あの腹斬り殺人事件、あれこわいよね」
「ってさ、今回の事件で目撃者がでたらしいよ」
「ホントー?じゃ、犯人がすぐ逮捕できるじゃん」
「それはね、たぶんムリ、だって犯人は仮面をかぶってるらしいし、犯罪現場はいつもひとけのないところ、昨日の事件含めて15件、そのうち14件は目撃者なしだよ、犯人を特定するのは難しいじゃない?」
「そうだよね、犯人は早く捕まえるといいな~、お蔭で夜に彼氏と遊べなくなった~」
「また、夜の遊びばかり考えて~」
「しょうがないじゃん、昼に授業があるから」教室に賑やかな声が響いた
「またこんな栄養のない話ばかりか、くっだらねぇ」
俺は外の景色から視線をほんの少し教室に戻り、また眺めに戻った
「ようー、綾人、なにぼうっとしてた、ってさってさ、昨日また例の事件がおきたってさ、しかも今回は目撃者ありだよ」
「なんだ、章記、さっき同じ事聞こえたよ」
「な~んだ、もう知ってたのか」
「うちの噂好きのやつはそんなでかい声で喋ったら、いやでも聞こえるよ」
「でも、目撃者は誰か、知らないだろう」
「そこまでは知らない、っていうか、興味ないし」
「つっれないな、そんな極秘情報知りたくないのか?目撃者はうちの柚木ってさ」
「別に知りたくもないし、っていうか、言う前にもう喋ったじゃないか」章記
「お前は本当に他人に興味ないな、これだから彼女ができないんだよ」
「分かり合えないできない彼女ができても、なんの意味がある、すぐお別れだ、時間の無駄だな」
「お前ってやつはな・・・」
「しかし、七目町も随分物騒なもんだ、二年前はマリオネット、今年は腹裂き魔か、一体どうなってんだ」
「そうだな、二年前のマリオネット事件は急にとまったが、犯人は未だに突き止められていない、でもなんで急に消息が途絶えたのだろう」
「知るか、サイコ野郎の考えはわかるか」綾人は溜め息して続いた「しかし、よりにもよってうちの柚木か、だからご本人はまだ来てないわけか」
「恐らく今日は休みじゃない?あんなことあって、翌日まともに学校に来るやつは逆に頭がおかしいじゃないか」綾人
「ふぅぅん、まあね、ところでさ、さっき極秘情報だと言ったな、じゃなんでお前は知ってるんだ?」
「興味ないんじゃなかったか?」
「いや、別に目撃者は誰かが知りたくもないが、ただなんで極秘情報なのに、お前は知ってるのか、気になるだけ」
「ああ、あれか、あの第二新聞部の部長からきいたってさ、あの部長はこの事件追ってるみたいんだ」
「あのイカレ部長か?確かにあの人のやりそうなことだな」俺は呆れそうに答えを返した
「今度紹介してやるよ」
「章記、お前は正気?」綾人は不思議そうにダジャレを言い洩らした
その時、チャイムが鳴った
「だから、そんなダジャレは言うなってんの、おっと、授業はじまっちゃうよ、じゃね、また後で」
「へいへい」綾人はニヤついて返した
教科書を持った先生は教室に入ってきて、周囲の生徒たちは席に戻り、章記も席に戻ることにした
「さっき連絡があって、柚木は体の調子が悪いため、今日は休むことになった、じゃ、授業を始める」
綾人はちらっと章記の方向を一瞥して、章記は綾人の視線に気付き、ほらみろを言い出すような得意げな顔をした、しかし綾人はそれを無視して、視線を戻した
「しかし、毎日が同じことをやるとはさすがにつまんないな、なんか特別なことがおきないかな」その考えは綾人の頭によぎった時間は川水のように、流れていき、ついに放課の時間になった
生徒たちはまるで何こともないように荷物を片付けはじめ、部活に行ったり、家に帰宅することにした
学生たちの賑やかな声
綾人は荷物を片付け、帰ろうとしたとき、後ろから声をかけられた
「先に帰るぜ、今日は彼女と遊びに行くんだ」
「りょーかい、例の殺人鬼に気をつけろよ、お前の訃報は聞きたくないからな」
「心配してくれんの」
「違うよ、今日で喋ったやつの訃報を翌日聞くと後味がわるいからな」
「まったく、素直じゃないな、このツンデレ男は」
「誰かツンデレ男だ」
「じゃね」綾人
「待て、こら」
章記は素早く帰ることにした
「ちっ、逃げたか、まあいい、さあって、俺もバイトにいくか」
夕陽が差し込む閑静な商店街、そこに、周囲の景色に溶け込まない、外壁が古び、蔦が覆われているレストランが建っていた
その景色があまりの異様なので、綾人は入ることを躊躇った
「しっかし、一年続いたとはいえ、慣れないな、この景色、周囲にはまったくあわない」言いながら、入ることにした
空は黒く染まり、空の茜色はだんだん暗くなっていく、時間は明日へ走り、時は9時を廻った頃、今日の仕事におわれた綾人は上がることにした
「お疲れ様です」綾人は同僚に挨拶して、裏口から出て、家の方向に向かっていった
もうすっかり夜になり、周囲は魔界のように暗くなった、殺人鬼のせいか、道路は人気が少なく、静寂だった綾人は周りを警戒しながら、歩道を歩んでいき、歩速はややはやく、いくらまだ商店街にいるとはいえ、油断は禁物なものだ、この時すでに狙われた可能性がある
商店街から出ていき、つい住宅街の小路に入った、商店街と違い、住宅街は人間その存在まること消えたように人気がまったくなかった
綾人は更に警戒度を上げて進んだ、流石に内蔵を丸出しにして、どこかの人気のない小路に晒されたくないなと綾人は思いつつ、さらに歩速をはやくした
いつまで歩いただろう、丁字路が見えた、あともう少しで家につけるなと思い、ほっとした時、綾人はある“懐かしい”匂いを感じた、その匂いの正体に気づき、綾人は警戒レベル最大限にした
「ありえない!?なんで!!」とまるでこの匂いは“この世界”のものではないように唸った、綾人はすぐ隣の横道に駆けつけ、そこには、袋道だった、その袋道に異物が入ってた水たまりがあった、でも綾人はわかる、水たまりは赤くはない、それにその水たまりを形成したものなんだか、綾人はわかる、いや、“知ってる”と言うべきだそれは死体だ、生きてた人間が息が絶えて為り得るものだ、それに、この血は明らかに腹から出てくるものだ
そこに、もう一つのこと気づいた、その赤色に染まれた“人”着てるものは、自分の高校の制服に似てるものだった、綾人は死体に近づき、確証を得た、確かにその制服うちの高校のものだ、それだけじゃない、この“人”は知ってる
「柚木」綾人は呟いた、この腹が斬り裂かれ、この世に絶望して狂ったのような表情した“人”は同じクラスの柚木だった[newpage]綾人はホケットから携帯を取り出し、通報しようとした時、後ろ3メートルに誰かが立ってると気づいた
綾人はすぐ振り向いた、そこに、仮面を被り、右手がナイフを持ってる人物がいた
綾人はわかっていた、こいつが今うわさにしてた腹斬り魔だ
「とんだ不運だ、俺は」この言葉は綾人の口から漏れた、「さあって、どうする、唯一の入り口は塞がれた、どうすれば逃げられる」と考えつつ、綾人は警戒を劣らなかった
しかし、殺人鬼はまるで綾人に猶予の時間を与えずに、右手のナイフを上げ、突っ込んできて、切り刻んできた
「!?」綾人は構え、攻撃を後退しつつ躱して相手のスキを見計らっていた、最後の突き刺しに体を右側に回旋して、今だと気づき、殺人鬼の左側をすり抜けたしかし殺人鬼も甘くはなかった、すぐ綾人の左手を掴んで引っ張った
綾人は予想外のことに、重心を失い、後ろ向きで倒れていた
倒れた綾人をみて、殺人鬼は再び斬りかかってきた
綾人は倒れたまま、攻撃を躱したが、しかし、分が悪く左手は斬られてしまった、さすがに、この体勢では、攻撃は躱しきれなかった
左手は傷を付けられたが、綾人は焦らずに、道にある石ころを手にし、相手を睨みつける
殺人鬼は石ころを手にした綾人みて、まるで石ころを拾っただけで、どうやって足掻くんだかのように、嘲笑った
でも、綾人はわかる、これがあれば、逃げるつもりはないけど、少なくとも逃げられる
綾人は手にした石ころを殺人鬼の左目に投げつけた、石ころはちょうど仮面の目の隙間に飛び入り、見事に目標に当たった殺人鬼は一時的何が起こったかわからなかった、ただ痛かった、ただそう感じただけだ、激痛のせいで、体が震え、しばらく動きを取れなかった
そのスキで、綾人は体当たりで相手にぶつかり、殺人鬼はその衝撃で吹っ飛ばされ、体は後ろの壁に叩きつけられた、叩きつけられた際、ナイフは落ちてしまった
綾人はナイフを拾い、殺人鬼に向けた、「さあって、どうする、帰ってくれたらありがたいが、またやる気だったら、こっちも刺し返すしかない、そのまま見逃してくれたら、俺は何も見なかったにするよ。」と綾人は涼しい顔で言い放した
だが、殺人鬼はすでに理性を失い、綾人の勧告を聞かずに突撃してきた、「はーっ、俺はこの世をつまらないと思ったが、まだ死ぬ気はないな」と綾人は逆に前に踏み進み、あまりにも涼しい顔で言ったせいで、それをみた殺人鬼が一瞬とまどった、そのスキを見逃さなかった綾人はナイフを突き刺した、「確かに、心臓はここだな」と見事に心臓に刺した
「痛い!?痛い!?痛い!?痛い!?痛い!?痛い!?痛い!?痛い!?痛いーーーーーー!?お前の顔を覚えたぞ、必ずお前を殺す!?」殺人鬼は初めて口を開いた、恐らくそれも最後だろう、その語気は殺意と呪いを込めたものだ、しかし
「地獄への直通電車に乗車したお前がどうやって俺を殺すんだ」「その時になったらわかる、ま・だ・な」と息が絶えた
「終わったのか」と綾人は血に染まれた両手をみて震えながら「俺が、殺したのか」と呟いた、しかし、なぜだろう、顔が笑ってると気がする、気のせいなのか、綾人そう感じた
「やばい、はやく逃げないと、ナイフは既に指紋をつけたから、今の技術じゃ拭いても消えないか」綾人はポケットからハンカチを取り出して、ナイフの柄を抜いてから包み、カバンに入れた
袋道から出て、周囲を見回し、誰もいないと確認したあと、素早く家に帰ろうとした、途中で近くの公園の公衆便所に手を洗った、公衆便所から出て、真っ正面にある草むらの隙間に霊牌のような物体が置いてあった、なんか嫌な予感したが、でもいまはそんな場合じゃないと好奇心を抑えて家に向かった10分ぐらい歩いたところ、ある二階建ての一軒家がみえた、ようやく家についたと緊張がとけた
ポケットから鍵を取り、ドアを開けた、「ただいま、母さん、今は食欲はないから、晩ご飯はあとで食べるから、冷蔵庫に入れといて」と簡単な伝言して部屋に帰ろうとした
「お兄ちゃん、今日はお母さんは仕事で家にいないんだ」という返事が聞こえた、しかし、いつものように、母の声じゃなかった
リビングから少女が出てきた、黒髪でロング、そのカレンな少女は妹の星鳴だった
「食欲がなかったなら、あたしが晩ご飯を冷蔵庫に入れといてあげるよ、・・・・って、その手どうしたのよ!?」少女は綾人のケガした手をみて、大声を出した
「ただ転んじゃっただけだ、放っといていい、これぐらいは自分でなんとかするよ」「そう、ならいいけど・・・・・・でもね、でもね、何があったら、呼んでね、そうしたら、あたしは介護してあげるから」
「なにそれ、いらないよ、大したことじゃないし」と言い放して部屋に戻った
「なによ、お兄ちゃんのバカ」
後ろが何が怒鳴りしてたが、まあいっかと綾人は振り向かず部屋に入った
ペットに横になり、今日の出来事を顧みた、「またやらかした」と
疲労さのせいで、綾人はすぐに深い眠りについた