第三話 悪夢の孤島
レイナルド・ル・バンナ博士。
フランスの細胞生物学の優秀な学者であるが、精神に異常があり、人を拉致しては自分の作った『細胞』を体内に注入させ人体実験を行っていた。
ある日、彼は旅行に来ていたイタリア系マフィアのボスの娘を拉致して人体実験して殺したという情報がそのボスの耳に届くと、部下達にフランスに居るレイナルド博士を暗殺指令を出した。
レイナルド博士はマフィア達から逃げるように、姿を消した。
それから数日後、血眼になって探していたマフィア達はレイナルド博士が日本のとある無人島に住み着いているという情報を聞きつけた。
ボスは早速、その無人島に刺客を数人差し向けた。
刺客達は日本の海保の目を潜り、その島に上陸するが、その刺客達は戻って来る事はなかった。
その事を聞いたマフィアのボスは躍起になりショコラート達が所属している『組織』に暗殺依頼を出す、その依頼は丁度日本に居るショコラート達に頼まれ、白応会の構成員の榊原がクルーザーの免許を持っている事をチョコレイトケイキがチクって榊原がプライベート用クルーザーでレイナルド博士が潜伏しているという無人島まで送ってくれた。
「こんな朝っぱらに行く必要ないだろ…」
目を擦りながら榊原はクルーザーを操縦する。
今現在4時50分、朝とはいえ辺りは完全に闇に包まれていた。
「今の時間帯しかないんだよ、海保の警備が浅いのは」
窓の外の真っ暗な海を見ながらショコラートは言う。
「大体、船ぐらい自分等の組織から出してもらえよ全く…」
榊原はぶつくさ愚痴を言いながら黙々と運転を続けた。
「久し振りッスかね?チョコレイトケイキが暗殺の任務やるなんて」
チョコレイトアイスが雑誌を読んでいるチョコレイトケイキに向ってそう言う。
チョコレイトケイキは暗殺任務はよっぽどの事がないと参加しなく、暗殺任務は大体欠席していた。
「本当は嫌なんですけどねー、信用の為ですしー」
チョコレイトケイキは苦笑いを浮かべながら言う。
「おい、島が見えてきたぞ」
うっすらと空が青くなってきた頃、ようやく目的地の島を見つけた。
「お前ら、戦闘員でもない相手に三人がかりでやる気か?」
榊原が言うとショコラートが勝手にクルーザーの中にあったスナック菓子を開けてボリボリと食いながら答える。
「何があるか分からないだろ?一人で行くなんて無謀だぜ」
「そーッスよ無謀ッスよ無謀」
チョコレイトアイスも勝手にクルーザーの中にあった2Lのスポーツドリンクが入ったペットボトルをラッパ飲みし始めた。
それを見た榊原は乱暴に島の岸にクルーザーを止めた。
榊原の乱暴な停泊でクルーザーは大きく揺れて、ショコラートは大きく前に転倒してスナック菓子をブチ撒いて、チョコレイトアイスは勢い良く左に倒れて側頭部をクルーザーの壁に殴打してスポーツドリンクを盛大にクルーザーの中にブチ撒いた、チョコレイトケイキは船にしがみついて難を逃れた。
榊原はスナック菓子とスポーツドリンクまみれになったクルーザーを見て少々後悔しながら、クルーザーの舵を下ろし、痛みに苦しみ悶えるショコラートとチョコレイトアイスを余所にクルーザーから降りる。
続いてチョコレイトケイキがポンプ式のショットガンを持って降りてきて、その後から頭にチップスを乗っけたショコラートとスポーツドリンクでびしょ濡れになったチョコレイトアイスがそれぞれ銃を持って降りてきた。
「なんて乱暴に停めるんだ…」
フラフラになりながら弱々しい声でショコラートが言う。
「悪いな、障害物があったんだ」
適当にそう説明して榊原は浜辺まで向った。
「この奥に居るのか?」
榊原は奥の森を指差して言う。
「あぁ、確かにここの先に居ると聞いた…早速行くぞ、榊原はどうする?」
ショコラートが尋ねると榊原は首を横に振った。
「悪いが、お前達の仕事に手を貸すつもりはない。俺はここで待ってる、日が沈みかけたら帰るからな」
榊原がそう言うと「昼飯までには帰って来るよ」とショコラートが言い、三人は森の奥へと消えて行った。
ショコラートとチョコレイトアイスはちゃんとした服だが、チョコレイトケイキはいついかなる時でもいつも白衣だ。
森だと100%浮くこの白衣がチラチラとショコラートの目に入って気が散るが、我慢して森の奥に進む。
ある程度進むと古びた建物が見えてきた。
「この中に居るんですかねー」
チョコレイトケイキは呑気な声で言う。
「あぁ、用心して行くぞ――」
ショコラートは何かに感づいた。
草むらの中から二人の人影が三人に向って襲い掛かってきたのである。
しかしショコラートは拳銃を早業で取り出し、その二人の人影の脳天を正確に撃ち抜いた。
人影は血を噴出しながら倒れると、チョコレイトアイスが拳銃を持ってその撃ち殺した人物を確認しに行った。
「な、なんッスかコイツら…!?」
チョコレイトアイスの顔は青褪めた。
その死体の顔は蜂にでも刺されたかのように顔が腫れ上がり、顔の色が紫色に変色して眼は真っ赤になって眼球の焦点が合っていない。
舌も顔同様腫れ上がり、歯もボロボロに抜け落ち、髪も抜け落ちて、痩せこけていた。
爪も剥がれかけている、見た目では男か女かすら分からない。
ショコラートが性別を判断する為にその死体のズボンを下着ごと脱がした。
「きゃっ!」
チョコレイトアイスが甲高い声を出して目を背ける。
「おぅぇぇ………こいつら二人共男だ、恐らく依頼人が送った行方不明になった刺客達だろう」
その下半身も完全に腫れ上がっており、『イチモツ』も無惨な事になっていた、その『イチモツ』の状態を見て、数々の死体を見てきたショコラートでも吐きそうになった。
「どうしてコイツら襲い掛かって来たんだ…?まるでゾンビじゃあないか……やはりこの中に居るのかもな…頭のイカレた博士が」
そう言ってショコラート達は辺りを警戒しながら研究所の中へと入って行った。