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「そろそろ出発の時間ね・・・。」
今日から帝国魔法学園に入学するミキスティは、玄関に向かって長年使っていた部屋を後にする。
まだ、朝日が昇りだしたばかりの時間帯なので今はいつもの賑やかさはなく少し寂しくみえた。
この施設から王都に行くのには、定期的に来る馬車に乗らなければならない。
馬車に乗るには、近くの町まで1時間ほど歩くので早い時間に此処を出発しないと入学式に間に合わないのである。
施設で最年長であるミキスティは皆に慕われていた。
お別れが嫌だと昨日の夜泣いていた血の繋がらないが、大切な家族をなだめて今日で最後だからと大部屋で皆といっしょに寝たのである。
「ミキ」
家族との思い出をおもいだしながら歩いてたら
いつの間にか玄関に着いていた。
「先生・・・」
その人は少し寂しそうに笑って
「いつもみたいに、マリアお母さんとは呼んでくれないの?」
「そう呼んでしまうと泣いてしまいそうなんです。」
そう言ったミキスティをマリアは抱き締め
「辛かったらいつでも帰ってきて良いからね。ミキ、心から愛してるわ」
マリアは最後に強く抱き締めてミキスティを見送った。
施設を出たミキは涙がこぼれないよう気を付けながら町までの道を黙々と歩いた。