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その22 ゆらぎ (1)

武田編一部終了


越後にもどって来ました!!

忘れられがちな方からの登場ですが(藁)

よろしくおねがいします!!

「戦がないのに「国」はまとまらない。。。。」



深まりつつある秋の景色を横目に写本をしていた「宇佐見」は筆を下ろすと

障子を開けて海を望みながら苦々しくもらした

海岸に近い枇杷島びわじまにも波と同じように繰り返し吹く風の中に冷たさを感じられるようになっていた


小綺麗にまとめられた

文台の上には「長尾政景ながおまさかげ」からの親書がまだ開けられないままに置かれていた


春日山から使者が来たのはこれで三回目

内容はわかっている

あれやこれやと遠巻きに長ったらしい文面を連ねてはいるが

簡単に言えば

「守護代晴景」に組みせず自分に「頭」をさげろ」という


馬鹿馬鹿しいものだった


「いったい「いつ」この越後は一つになったと言うのか?」



春日山に入城した政景はすっかり国主きどりだ


すぐにでも

晴景に取って代わるための「根回し」に余念がないらしい。。。。

同じ内容の親書を何度も送ってくるなど。。。自分を「貶める」行為だと言う事さえわからなくなるほどに

どす黒い渦巻く調術があの山では行われ

ともすれば

この「恥ずべき」親書が諸将に飛ばされているに違いない



「戦」は無い。。。。表向き

だが

裏では黒い戦が展開し始めている



「どうでるかな。。。。」


宇佐見は二度とも政景の手紙の返答をしなかった

というか

「見極め」の甘さが気に入らなかった


対局の見えていない春日山に従うのは「盲目」の案内人に手を引かれるようなものだ


現守護代晴景はいったいどういうつもりでこの無骨な政景と手を組んだのか。。それを先ず考えた

おそらくは

はかりごと」において晴景の方が頭の回転に自信があったのだろう

しかし

長年「戦」から離れ。。「懐柔策」を実施してきた彼には表に立って戦う自信はない

逆に

政景は無駄に血の気が多い「戦」をいつも望んでいるとも言われてきた

「強い」?「弱い」?は別として長尾宗家の名のもと多くの兵の動員が見込める


そこでお互いの「損得勘定」に合点が見られた。。「手を打った」。。。。といったところだろう



「損得」の焦点は「影トラ」



政景は自分の事を「為景ためかげ」以来の戦上手。。。。とでも思っているのか?

少なくとも今はそういう「奢り」が絶対にある

でなければあんな手紙を臆面もなく送りつけられるわけがない

「影トラ」を追い落とせば

「越後」の実権を握れると見ているのならばなおさらに


そういう視野の狭い政景に比べれば

晴景の方がたしかに「守護代」にふさわしい全体を見渡す大きな視界を持っている

だが

晴景は器量がない。。。。

その器量のなさが。。。。


「影トラ」の戦功に対する「嫉妬」として現れている




許し難き「女」なのだろう




「困ったものだ」


宇佐見は海の景色から目を離し反対側

山の方に目をやった

あの山の向こう

「栃尾の城に住まう虎」はこのどす黒い「謀」に気がついているのか


それとも。。。。

相手が「兄」という事もある


気がつかないふりをしているのか?


「あまり簡単に降伏されても困るな。。。」



宇佐見は達観しながら情勢を伺っていたが

一つわかっている事は

いまさら「宇佐見」が旗をあげても「勝てない」事だった

それは「軍学」を学んだから「故」に冷静にわかってしまう事で。。。

苛立ちの元にもなっていた


しかしながら現実的に小勢力になってしまった「宇佐見家」の進退という事になれば


どちらに着くのが自分にとって「有益」かを見定める事は当主として必須だ

個人の思案などは本来「度外視」しなければならないお家存亡の決断


風を避けるため障子を。。つい勢いよくしめた

遠くない昔も。。。同じような決断の時があった


あの時の事をを思い出す

目を落とし

やはりつまらなそうに政景の手紙を見た


お家の存続。。。。それが第一使命であるのはかわりないが

それ以上に[生き甲斐」が欲しかった



身につけた「軍学」を使える場所を。。。。未だ求めていた


「力」を振りかざす男。。。は「謀」には弱い

政景はそういう部類の典型だ

そういう場所であれば多少の窮屈さを差し引いても「重用」されるだろう


では

晴景ならばどうだろう「謀」や「会話」に重きをおいている

彼の元ならば「論客」のような扱いを受けるだろうし

多くの仕事も得ることができるかもしれない。。。。しかしきっと退屈だ



どちらに着いても自分の生き甲斐は「多少」見いだす事のできる場所にはいられそうだが


「影トラ」は。。。

宇佐見は顎をさすり書に簡単ながら「勢力図」のようなものを走り書きしながら思った





強すぎる将には従う「意味」を見いだせない





深呼吸。。。目を閉じ身体を伸ばしてみる

かつて為景に破れた日

「軍学」を学び知謀,知識を駆使して戦ったが

あの「乱暴者」には通じなかった

恐ろしいほどの強さに付随する「閃き」


あれは「天」が与えた才だ


今も鮮明に覚えている

大敗北の果て

朽ち燃え尽きる城と町

全面降伏をし

ひれ伏して為景に仕える事を誓った時の事


「これよりは為景様のためにもてる全ての知識を使い「強き国」を造りおし「負けぬ戦」を策として奉じましょう」


それは己の培った「知識」という力を奉じ

この「強き」の将にとって必要とされる「男」なるための自分の策を打ち負かした男に「心酔」した

己の「名誉」をかけた「誓い」だったが



あの男は炎を背負ったまま笑った


「そんなんものはいらん」


あっけなく

宇佐見の生き甲斐。。。生き方を「否定」した

そして

伏せる宇佐見の顎をはね上げて言った


「何も考えるな。。。ただ従え。。。ただオレのやり方に従えばいい」


必要とされなかった





こわばった顔のまま

目を開いた

いつの間にか立ち上がり柱を何度も叩いていた


「影トラ」の強さはあれに似ている

唯我独尊の強さ

孤高の強さ


それは宇佐見を必要とするか?

強い者に自分の存在を渇望されたい


なのに為景はその願いをかなえてはくれなかった

多くを学んだ自分を他の諸将と変わらぬ「ただの将」として扱った



屈辱を賜った。。。。



彼の前では一度として「軍議」において発言を重用された事はなかった

むしろいつも「頭の固いヤツ」だ。。。と笑われた


やはり影トラに素直に従う事など出来そうにない

大人げない事だと自嘲気味に笑う


「しかし。。。まだ若い」

考えるまでもなく本来なら

「晴景」か「政景」かという二択しかない場所に「影トラ」がいる理由


「選択」の中に影トラが残っている理由は「若さ」だ




「若さ」というものには「老獪」さが必ず必要とされる


思うように「戦」を運ぶことが出来る機会が訪れる可能性は高い

ましてや

会見であった影トラは「気短者」だ

それを抑え

自分の言葉に「良し」を言わせるのは容易に思えた


なにより魅力的なのはどの勢力よりも一番「力」がみなぎっている事だ

栃尾を始め

栖吉すよしまでを手に入れている影トラに今は揚北衆の大物「中条藤資なかじょうふじすけ」さえ従っている


これを「危険」とみなし「警戒」し始めた晴景の気持ちはわからぬでもない

それほどの「力」になった影トラの元に下るのは決して悪い道ではない。。。。が



まだ


従うには足りない

いや

従えない


目元が鋭くなる


どんなに強かろうがしょせん「女」


「女」になど頭を下げられない

それこそ為景のあの言葉以来の「屈辱」だ


ならば別の「策」を

この先

影トラを使い。。春日山の二人を争わせ覇者を自分の手で作り出す手はないか

間抜けな春日山の二人組をうまく操るには



先手の。。。。「駒」を



それが「影トラ」だ


どちらかが「影トラ」を取るか「殺す」かした方が勝ちだ

いや

この「策」を使えば影トラは「自滅」するやもしれない


「ふ。。。はははっははっ」


つい声を出して笑いが漏れた


三つどもえの状態。。。宇佐見の手の中で楽しんで見ようではないか

かつて「いらぬ」と否定された己の「軍学」を試しつつも生き残る道を模索する方が「楽しい」だろう


自分の手のひらを見て

良からぬ事を考える。。額がひくつく

だが思い描かれる「策」を試してみたい


文台に戻り

着座した


「策」は出来た。。。。

どう出るかな「猫又殿」と達筆に走り書きした






「長尾影トラは守護代の地位を狙ってそうろう

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