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その3 栃尾城(1)

栃尾城までのくだりを

書き直したりしました。。。。


未熟者ゆえの事と思ってゆるしてやってください

栃尾城に入ったのはその翌日だった



私たち一行の後ろを大男のやたろーと

これまた大男の仲間達が粗末なかっこながらも「共」として着いてきた


「いいのか。。あれ?」


馬を引いていたジンはさすがに城の総構えをくぐる時になって私に聞いた

ジンは終始あの大男の頭の方を見ていたところから

身の丈にびっくりしていたのだろう

近くで見ると本当に大きな壁のようでもっと驚くに違いない


「着いてこいと私が言ったんだ。。。問題ない」


と呆けているジンに笑って答えた

となりの直江は茶化すように言った


「陣江殿も大きくなりたいのですなぁ」


背を気にしているという心の内を見抜かれジンは口ごもりながら返答した


「あのぐらい。。。すぐに届きますよオレだって。。。」


拗ねた感じのジンの顔にいい気になった私は言った


「その前に私がジンの背を抜いてやる!!」

顎をあげて自慢げな私にジンは答えた

「頭がでっかくなっちゃうんだろ!!考え過ぎで!!」

と頭でっかっちと手で頭の上に円を作って舌を出した

「何だと!!!」


周りにいる近習たちの笑い声が聞こえる

私は鞭をもって引き綱を放し逃げていくジンを追っかけた


もう栃尾の総構えは目の前での大はしゃぎだった



総門の番所を越え

やたろー達も城の構えを一緒にくぐらせた

やはり大きな体に城内にいた者たちが驚いているのが微笑ましかったが

それだけではない「警戒」という視線も十分に感じられた


はりつめた「緊張」


番所から向こうの

城人達の顔には厳しいものが漂っていた


それは城内の様子からもよくわかった

見渡せば

総門から向こう

物々しい備えがあちこちになされていた


乱杭に

空堀


春日山以外の城は初めてみるがそれにも劣らぬ厳重に施された堀切り


ココは中郡なかごおりの最前線「栃尾城」

それをあらためて理解するの十分な備えだった



思いを引き締めながら進む私たちの前に

鎧直垂よろいひれたれ姿の男が

本城郭前にたっているのが見えた


懐かしい顔


「道中ご無事で何よりでした」


私を栃尾に呼んだ男

栃尾城城主「本庄実乃ほんじょうじつの

深々と礼をして迎えた


実乃には林泉寺にいた頃から何度か会っていた

栃尾の土産を持っては年に何回か来てくれていた

囲碁を教えてくれたのも「実乃」だった



ひさしぶりにあった彼の顔は疲れていた

理由はもはや聞く必要もなかった

中郡なかごおりのこの地は「略奪」と「死」で溢れている

ココにくる途中に見た物は

やたろーと出会った道中で見た物を凌駕する「傷跡」だった

目を覆いたくなるような姿をたくさん見た

そしてそれがこの栃尾を周辺で行われている「蛮行」という真実だった





実乃は深くお辞儀して言った

「この日を待っておりました。。。。影トラさま」


「うむ。。。」


覚悟は決めてやってきたのだ

少々顔が引きつっていたかもしれない


ココから私は「長尾」の家のために。。。。ひいては越後のために

越後を守る職務の御旗「長尾守護代家の旗」と共に

戦っていく事になると思うと身の締まるおもいでいっぱいになっていた


頭の中

表情。。。きっと色んな思いでいっぱいになっていた私に気がついた実乃は

少し顔をほころばせて言った


「まず今日はゆるりとお休みください」


張りつめ顔の「決意」が

かえって気を遣わせてしまったようだが

実乃はそのまま城内に私たちを導き

夕食の支度をさせた









「直江殿。。。よくココまでおトラ様を導いて下さいました。。。ご苦労にござった。。」

「直江」に酒をつぎつつ栃尾の主はかみしめるように言った


本庄実乃ほんじょうじつの

前守護代為景の頃からの家臣である

直江に比べると,いくぶんふくよかで肉好きの良い中背のこの男の顔にも

あまたの戦傷があった

鼻っ柱を横切る傷を,指で触りながら

到着を心待ちにしていた事をしずかにもらした


「良かったのか?悪かったのか?今の状況ならそうするしかないと思ったまで。。」

酒をすすりながら

直江は俯いたまま返事をした


「越後のために。。。。わしはそう信じてお願いした。。。きっとおトラ様は我らに「報いる」働きをしてくださる」

実乃は手酌をしながら少し口調を強めて言った


「長尾守護代家の旗。。。。か」

直江には聞きたい事が山ほどあった

「影トラ様は。。。残念な事に「女子おなご」だ。。。多くの人心を集めるのは。。。無理ではないのか?」


直江の言葉は的を得ていたが

実乃は動じなかった

やんわりし微笑むと返した


「そうだとお思いなのにココに導いてくださったのですかな?」

杯を下ろすとさらに強めた口調で

「私は長年「おトラ」様を見てきた。。。亡きお屋方様(為景)の後を継ぐのは強き者として十分な物をもっていらっしゃると知っております」

「お屋方を継ぐ者?」

直江は少し首を傾げて見せた


「正統なるご嫡子として。。。」


直江の懐疑的なそぶりに実乃は毅然と答えた


「しかし。。。「女子おなご」でござるぞ。。。」


正統という嫡子。。。

男でない以上多くは望むことのできない立場の影トラに。。。直江が考えている以上に実乃は「何か」を望んでいた


「晴景様のように。。。。「あやふや」でない事は大きい」

直江は実乃の返事を鼻で笑った




「あやふや」


ずいぶんと「濁した」言葉を使うものだと

だが

その「あやふや」さに引っかかり。。諸将や国人衆。。。果ては親族衆である同じ長尾の者たちからの「力」を現守護代晴景が十分に得られず未だ「越後」混沌とした状態にあるのは隠せない事実だ


「あやふや」

それが

現在の越後の統一を阻んでいる第一のものである事


杯のふちを指でなぞりながら直江は聞いた



「旗持ちで戦に出られますかな?」


ココに

影トラが来たのはただ「守護代家」の旗を持ってきた。。。というだけであっては意味がない


ココは「戦場」への最前線だ


終始

まるで試すような問答をする直江に改めて向き直った実乃は言った


「きっと戦われる事であろう。。。」


顎下にある槍傷をなでながら鋭い目で答える

戦う

文字通り自ら出馬するのか?

杯の酒をのみほした実乃は笑った


「ずいぶんと「お試し」ですな。。。まだ迷いを持っていらっしゃいますか?」



直江は。。。。影トラの存在を幼少の頃から知ってはいたが近くにいたわけではなかった

虎御前の実家「栖吉すよし」衆の親族衆「栃尾」の実乃は林泉寺に預けられた影トラの後見を影ながらする事によってその「姿」を見てきている

そこで何かをみつけた?

いや

それ以前から影トラには色々な噂もあった。。。




藪の中か?



灯籠の光の下二人の武将は静かに「何か」を探るように語りあっていた

為景と共に戦った男達だ

「武」については

隠し事など通用はしない事も承知の仲の武士


「直江様は「おトラ」様では。。。。不安かね」


むしろそちらの方が聞きたかったと実乃は言った

直江は杯を置き,灯をみなが言った


「虎御前の娘。。。トラさま。。。」



つぶやくような言葉に実乃はニヤリとしながら言いかえした

「だからこそ。。。「守護代」を継がねばならん」

その言葉に直江は目をあげた

自信?願いなのか?

繰り返すよう実乃は言った


「お屋方と御前の子。。。。おトラ様こそが。。。。」


直江はこの「問答」にはもう何も答えなかった

言葉を選んでまで腹のさぐり合いはしたくなかったからだ

代わりに

今は亡き親方である為景が城内で倒れたときの事を思い出していた

あの日

残念な事に直江はその場にはいなかった


しかし後日談ともいえる「噂」は聞いていた





「この恐ろしい「トラ」を早く殺してしまえ!!」





為景はそう叫んだと言う

そこで何がおこったのかを知っているのは

隣で酒を飲んでいる実乃だ


何があったのか?

それは家中でも

いつしか「禁忌」になっていた


「トラ」

はその日のうちに林泉寺に出された



何があった?

あの出来事が実乃の自信の「元」になっているハズだが。。。

それについては話してはくれなそうだ


立ち上がった

「直江様。。。直江様はおトラ様に仕えたいとは思わぬかね?」

実乃は引き留めるではない言葉を投げた


「それはこれから見極めねばなりませんな」

背を向けた

謎にはまだ仕えられない。。。

まだ

影トラに「何が」出来るのかさえわからないのだから

少し笑って


徳利をもって部屋をでた







疲れをいやす最大の「ご馳走」は風呂だった

栃尾の宝湯


「ありがたい。。。」


私は急にあわただしくなった自分の身の回りや

昨日までの出来事を思い浮かべていた


星が高く空に見える夜だ

ココで私は兄を助け生きていくのだ

本庄実乃ほんじょうじつのの名前は

「さねより」

というふうに読む方もいらっしゃるようですが

ココでは「じつの」でいこうと思ってます


影トラのおとーさんの時からの直臣で

トラの子供の頃からを見ていて

その器量を「良し」として

栃尾にお迎えしたそうです


ちょっと

でも。。。


タヌキオヤジっぽいとこもありそな人ですよね〜


などと思いながら

火星は実乃は丸顔だっにちがいないなどとも断定してます(爆)

きっと

頭蓋骨もまん丸だった人と信じてます


根拠はないですけどね

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